アメリカのギタリスト「Larry Coryell」。70 年代中盤に ELEVENTH HOUSE を結成し、クロスオーヴァー/フュージョン・サウンドを究める。 マクラフリンに比べるとプレイは豪快一直線であり、一方でクラシックへの傾倒も強い。
| Larry Coryell | guitars | ||
| John McLaughlin | guitars | Chick Corea | electric piano |
| Miroslav Vitous | bass | Billy Cobham | drums |
70 年発表のアルバム「Spaces」。
マイルス・スクール出身で後にフュージョン会の名士となる面々をオーガナイズしたスーパーバンドによる作品である。
コリエルはジャズ寄りのプレイを中心にしつつも、破裂しそうなテンションで突っ走っている。
このテンションと熱気がロカビリーやロックンロール、サイケデリック・ロックとシンクロしたところに、ELEVENTH HOUSE が生れたのであろう。
ヴィトウスはスコット・ラファロばりのランニングのみならず、スピーディなアコースティック・ベースのボウイングなどテクニカルなプレイで前に出てくる。
プロデュースはダニエル・ウェルス。
(VMD79345-2)
| Larry Coryell | guitar |
| Randy Brecker | trumpet |
| Alphonse Mouzon | percussion |
| Mike Mandel | piano, synthesizer |
| Danny Trifan | bass |
74 年発表のアルバム「Introducing The Eleventh House With Larry Coryell」。
内容は、MAHAVISHUNU ORCHESTRA に対抗したといって間違いない、気概あるハードなジャズロックである。
中心は、明らかに、無茶なリズム隊とともに暴れる豪腕ギターなのだが、さらに特徴的なのは、トランペットやキーボードのプレイなどを中心に、ライトなファンキーさがあるところだ。
エレクトリック・マイルス路線を仰ぎつつも、他の直系グループにやや出遅れた分を、ポップで雑食的な音楽性でカヴァーするような印象もある。
そのファンキー・テイストは、ハンコックのような煮えたぎるファンクネスとは異なる、軽やかでリズミカルな調子であり、アメリカンなこだわりのなさが感じられる。
この頃流行った黒人映画(シャフトとかスーパーフライとかね)のテーマのようなイメージもある。
ギターは、ヘヴィ・ゲージの武骨なジャズ・ギタリストが、そのまま爆音ハードロックへのめり込んだようなプレイ。
超速ピッキングの速弾きはまだしも、ワウを駆使したソロやフェイズシフタ系のエフェクトを用いたバッキングなど、ジャズ・プレイヤーにしては大人気なくておもしろい。
さらに圧巻は、「手数王」アルフォンソ・ムザーンの遠慮会釈のないドラミング。
一方、トランペットはどうしてもマイルスに聴こえてしまうのだが、濃厚にしてスペイシーなサウンド作りには、確かに寄与している。
キーボードは、クレジットに加えてクラヴィネット、ローズ・ピアノなど、クロスオーヴァーの主役というべき楽器が用いられている。
アクセントとしての効果と、適材適所を心得たセンスあるプレイである。
THE BEATLES のフレーズが飛び出すところなど、英国ジャズロック・シーンと同じユーモアと無邪気さがあるし、ひょっとすると中国語を思わせる曲のタイトルなども、MAHAVISHUNU のインド指向へのくすぐりなのかもしれない。
こんなコメントをして、キワモノ的なイメージを抱かれると困るので言を改めますが、スピーディなユニゾンやダイナミックな変拍子アンサンブル、インパクトあるソロなど、ジャズロックとしてはやはり別格の内容といえるでしょう。
そして、コンパクトな楽曲にキャッチーなテーマがあるのもうれしい。
ギターのタイプを考えると、BRAND X よりは ISOTOPE のファンへお薦め。
プロデュースはダニー・ワイス。
「Birdfingers」(3:07)超絶ユニゾンで迫る強烈な作品。
「The Funky Waltz」(5:10)
「Low-Lee-Tah」(4:17)
「Adam Smasher」(4:30)変拍子テーマが冴える名曲。
「Joy Ride」(6:08)ライトでメローなフュージョン・ナンバー。
シンセサイザーがカッコいい。
「Yin」(6:03)トランペット、ギター、ノイジーなシンセサイザーをフィーチュアした疾走型ジャズロック。
地面が沸立つようなドラミングにあおられて、突っ込み気味のインタープレイが続く。
痛快。
「Theme For A Dream」(3:26)初期 WEATHER REPORT 的な瞑想的で美しい作品。
「Gratitude "A So Low"」(3:21)エレアコ・ギターによるソロ。
ジャズというよりは、7th 系やアウト・スケールを多用したモダンなクラシック・ギターというべきかもしれない(同じことか)。
マニアックなところでは英国人作家ウォルトンの「五つのバガテル」に通じます。
「Ism-Ejercicio」(3:59)ファンクにしてサイケそしてアヴァンギャルドなヘヴィ・ロック。
ここでも現代音楽的な素養を感じさせる。
ヘヴィなブギーを、身悶えるようなトランペットと挑戦的なシンセサイザーが貫く。
「Right On Y'all」(4:21)
(VSDA-79342 / VMD 79342)
| Larry Coryell | guitars | ||
| Terumasa Hino | trumpet, flugelhorn | Randy Brecker | trumpet |
| Mike Brecker | tenor saxophone | Dave Sanborn | alto saxophone |
| Gerry Brown | drums | Mike Mandel | keyboards, synthesizer |
| John Lee | bass | Mtume | percussion |
| Danny Toan | rhythm guitars | Steve Kahn | acoustic guitar |
76 年発表のアルバム「Aspects」。
ELEVENTH HOUSE の最終作。
内容は、ハードなギターをフィーチュアしたファンキーなジャズロック/フュージョン。
管楽器セクション(なんと BRECKER BROTHERS そのものである)を拡充するとともに、ヘヴィ・ファンク調と油っこいソウル・テイストを強めている。
パワフルな管楽器と独特の垢抜けなさのあるヘヴィなディストーション/ワウ・ギターのコンビネーションというこのグループの特質は、本アルバムでも十分に現れている。
リズム・セクションはリー/ブラウンの名コンビであり、シャープで攻撃的かつ洗練されたプレイを放っている。
パーカッションを加えた細かく弾力に富むリズムである。
コリエルは得意のロック・ギターを伸び伸びと弾き捲くっている。
プロデュースはランドール・E・ブレッカー。
(AL 4077 / BVCJ-37352)
| Larry Coryell | guitars |
| Alphonse Mouzon | drums |
| Philip Catherine | guitars |
| John Lee | bass |
| Cheryl P.Alexander | background vocals |
| Tawatha Agee | background vocals |
77 年発表のアルバム「Back Together Again」。
コリエル、ムーザンの再コンビ作。
内容は、ハードロック風のジャズロック。
技巧のあるプレイヤーが、何かが吹っ切れたせいか、突然やりたい放題やってしまったようだ。
無理やり喩えると、スティーヴ・モースのバンドをより荒々しく節操なくした感じである。
キーボードレスでギターがどーんと主役を張る豪快な作風であり、ドラムスも大暴れである。
コリエルのプレイは、天晴れ、ジャズ・ギターの片鱗すら留めていない。
ムーザンのドラムスは、うまいのかへたなのかよくわからないが、うるさいことだけは確かである。おまけにヴォーカルも取っている。
そして、セカンド・ギターには、ヨーロッパの名手、フィリップ・カテリン、ベースも名人、ジョン・リー。
この二人が参加してこれだけ品がなくなるのだから、残り二人の度外れ具合がわかるというものである。
ここまでコワれたのだからそのまま終わるのかと思ったら、最終曲のアコースティック・ギター・ソロではやはりハードロックにとどまらない只ならぬテクニシャンぶりを発揮している。この作品は、フュージョンとしても極上。
プロデュースは、ラリー・コリエルとアルフォンソ・ムーザン。
(Atlantic SD 18220 / WOU 8220)