KOTEBEL

  スペインのプログレッシヴ・ロック・プロジェクト「KOTEBEL」。キーボーディスト、カルロス・プラザを中心に 99 年結成。作品は五枚。「ネオバロック」を標榜する現代プログレの新星。最新作は 2009 年発表の「Ouroboros」。同年来日。

 Ouroboros

 No Image
Carlos Franco Vivas drums, percussion
Cesar Garcia Forero guitars, keyboards, bass
Jaime Pascual Summers bass
Adriana Plaza Engelke keyboards
Carlos Plaza Vegas keyboards
guest:
Calrolina Prieto vocals

  2009 年発表の第五作「Ouroboros」。 内容は、無機質で抽象的、ササクレだったタッチのシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 アコースティックな音質を活かした、稠密だが結晶格子のような空隙もある独特のアンサンブルであり、モノクロームの反復の果てに、荒涼とした凶暴なドラマが牙を剥く。 和声はあるが、いわゆるメロディはない。 強力な存在感を放つのは、ロングトーンで絶叫するギターとアコースティック・ピアノ。 ギターとキーボードのくんずほぐれつのスリリングな交錯度合いは今まで一番高いような気がする。 身もふたもない感じの即興演奏は後期 KING CRIMSON に近いと思うが、CRIMSON と一線画すのはピアノの存在だろう。 このピアノは、クラシカルなロマンチシズムの演出に大きく寄与している。 ギターやリズム・セクションの攻撃的なオスティナートを受けとめて鮮やかに反応する役割も果たしている。 したがって、アンサンブルの印象には、CRIMSON 本家よりも、AFTER CRYING と共通するものがある。 また、メタルな、オルタナな、パンキッシュな KING CRIMSON という表現手法は、北欧からフランスやアメリカのグループなどがここ 10 数年の間に極めたが、ここでの純クラシカル・タッチのまま原始の血を沸騰させるという手法は、本家が 75 年以降も存続していたらならば採用したかもしれない。 3 曲目のギター・プレイでは HR/HM と CRIMSON の相違が明快になっておもしろい。 (このギタリスト、最終曲ではジャジーなタッチやプログレ・クリシェをさり気なく繰り出してメロドラマティックな演奏をしている。なかなかの傑物だ) (AFTER CRYING はまさにこの手法で CRIMSON を承継した) ウロボロスは自らの尾を呑み込むドラゴンの姿であり、究極の自己再帰の象徴。 ハインラインの奇作「輪廻の蛇」を思い出す。 全体にもう少し展開を切り詰めてもいいような気がする。 最終曲は、ライヴ収録のボーナス・トラック。
  
(FGBG 4798)

 Fragments Of Light

 No Image
Omar Acosta flute
Cesar Garcia Forero guitars, keyboards, bass, percussion
Juan Olmos voices on 5
Carlos Plaza keyboards, bass, drums
Calrolina Prieto voices except 5

  2003 年発表の第二作「Fragments Of Light」。 内容は、妖美な近現代クラシック調シンフォニック・ロック。 EL&P の「Toccata」と KING CRIMSON のジャズ・タッチを交ぜあわせて、今風のエレガンスをパラリと散らしたような作風である。 エキゾチズムや邪悪さは主としてモダン・クラシックの流れから来ており、また、小刻みなリズムでしなやかに走るスタイルはジャズロック的といっていい。 主たる配役は、ピアノ、シンセサイザー、ギター、フルート、ソプラノ、そしてメロトロン。 ピアノのオスティナート、シンセサイザーのプレイは、キース・エマーソンのクラシカルなタッチをやや細身にして鋭く尖らせたようなイメージだ。 ラベル、サティ風のプレイも特徴的だ。 一方ギターは、ヒステリックなロング・トーンでフレーズを紡ぎ、神経をなでてゆくタイプ。 フルートは、トリルを多用した饒舌な狂言回し的存在。 ギターとフルートがユニゾン、ハーモニーで敏捷に動き回る場面も多い。 そして、ソプラノのおかげで、一気にエキゾティックな印象が強まる。 分かりやすい演出といえるだろう。 全体に、緻密な室内楽風アンサンブル+ジャズロック調といった演奏スタイルであり、そこから立ち昇る、ややおとなしめではあるものの、妖美で邪悪な空気が特徴だろう。
   選任ドラマー不在なのだが、この音でツーバス・ロールやあまりにパワフルな打撃技が入ってしまうと、単調なプログレ・メタル化しそうなので、このくらいの音でちょうどよかったと思う。(「小太鼓」としてのスネアの連打が多いところなど、アルゼンチンの MIA を思い出していただけるといい) 5 曲目、ゲスト・ヴォーカリストをフィーチュアした作品がカッコいい。 バンドとしての運動性はそれなりだが、圧倒的なパワーを感じさせることが少ないため、今のロック・ファンには受けが悪いかもしれない。 しかし、クラシカルなモダン・プログレという観点では、一級品である。 作曲の要は、リーダー格のキーボーディストとギタリストであり、この二人の作品の趣味の違いが、アルバムの幅をぐっと広げている。 ボーナス・トラックは 12 分にわたるソロ・ピアノ曲。印象派風の幻想的な佳作です。
  
(FGBG 4509)

 Omphalos

 No Image
Carlos Plaza keyboards
Adriana Plaza keyboards
Cesar Garcia Forero guitars, keyboards, bass
Jaime Pascual bass
Carlos Franco drums
Calrolina Prieto vocals
Omar Acosta flute

  2006 年発表のアルバム「Omphalos」。 内容は、管絃、ピアノをたっぷり盛り込んだ、高尚でヘヴィなクラシカル・ロック。 ハードロック含め典型的なプログレのスタイルを継承して、クラシカルなサウンドでまとめた作品であり、女性的なたおやかさと知的センス、邪悪な表情もたっぷり盛り込んだ佳作である。 透明感ある上品な、そしてエキゾティックなメゾソプラノ、クラシカルなピアノ、素朴なタッチのフルート、分厚いストリングスらが緩やかで美しい波を作り上げ、ヘヴィなギターとオルガン、リズム・セクションによる力強いダイナミズムとアクセントを加味して、ドラマを描く。 ゴゴゴと不気味な音を立てて突き進むトゥッティの迫力は相当なものだ。 クラシカル・テイストは、キャッチフレーズ通り、バロック音楽と近現代が主。 アコースティック・ギターが入っても土臭くならず、典雅なバロック調が貫かれる。 アンサンブルは、まったりメロディアスなだけではなく、ギターやピアノ、フルートを中心とした現代音楽的な切れと重みがある。 ギターのヘヴィなパワーコードも、HR/HM というよりは、現代音楽的なアレンジの中でしっかり処理されており、単調さや勢い任せなところはさほどでもない。 ただし、クラシカルで高尚なグループに必ずといっていいほど見受けられる「カッコいいロックへの理解の浅さ」は、残念ながらここでも感じられる。 別に思い切り「なんとか」風なメロトロンやギター・プレイが悪いわけではなく、アレンジのセンスの問題なのだろう。 その辺はわたしもプロではないので、よくわからない。 積み重ねるのは得意だが、思い切って刈り取ってしまうのがヘタ、または、基本的なユーモアやリスナーを面白がらせようというサービス精神に欠けるのかもしれない。
  特徴的なのは、ツイン・キーボードによるカラフルなサウンド・スケープ、脂っこいながらも技巧派ギター、フルート、ソプラノだろうか。 フルートは、メロディアスな場面だけではなく、ギターやオルガンとともに技巧的なアンサンブルでも存在感を示す。 ゆったり歌ったり、飛び跳ねたりとなかなか忙しい。 ところどころで、リコーダーに近い素朴なニュアンスが感じられるのも興味深い。
   さて、かように音楽/サウンドともに高度な水準にあるのだが、可笑しいのは、きわめてモダンでトリッキー、オリジナリティあふれるアンサンブルと、コピー丸出しのプレイが平然と並んでしまうところである。 弦楽奏を完全に再現できる機材とソフトウェアがあるのに、どうしても CRIMSON のようなメロトロンの音を出したくなってしまう、ということなのだろう。 また、音楽的なヴァラエティに富みながらも、ポップス風なところだけは決して見せないあたりも興味深い。 いわば、あまりに真面目なのでちょっとちょっかいを出したくなるけれど、決してヤナやつではない、そんな内容である。
  1 曲目では、エマーソンなオルガンを印象つけ、古典的なテクニカル・ハード・プログレ路線を突っ走る。 そして、持ち味であるクラシカルでメロディアスな表情もしっかりとアピールする。 シンセサイザーやベースのプレイもカッコいい。 2 曲目はヘヴィなギターが主役だが、変拍子のアンサンブルが明快に作り込まれていて聴きやすい。 ドラムスは、かなりジャジーなプレイをしている。 3 曲目の伝奇ロマン風超大作は、エキゾティックな風味が印象的。 GENESIS 的な抒情味あふれる展開あり。 10 曲目では、プログレの醍醐味たるミクスチャー感覚を披露する。 リーダーは、かなりキース・エマーソンに近いセンスを持つのでは。 全体として、個人的には、SOLARISEZRA WINSTONCAFEINE などを思い出した。 ドラムスの弱さ、ギター・プレイに胸焼けさえしなければ、かなり聴き応えがあります。
  
  「Ra」(13:10)カルロス・プラザ作。キーボードのリードで強引に攻めたてるトゥッティがカッコいい。
  「Excellent Meat」(8:51)チェーザレ・ガルシア作。
  「Pentacle's Suite」(30:11)6 部から構成される超大作。カルロス・プラザ作。
  「MetroMnemo」(4:13)チェーザレ・ガルシア作。
  「Joropo」(4:53)カルロス・プラザ作。
  「Omphalos」(6:57)カルロス・プラザ作。
  
(FGBG 4652)


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