KAYAK

  オランダのプログレシッヴ・ロック・グループ「KAYAK」。 72 年 HIGH TIDE FORMATION を母体に結成。 アルバムは九枚。 82 年解散。 ダッチ・ポップスの伝統を感じさせるメロディアスなシンフォニック・ロック。 初期は英国プログレの影響が強く、次第にポップ・テイストが強まる。 親しみやすく、甘美にして気品もあるサウンドが特徴だ。 2000 年再結成後も安定した活動を続ける。

 Merlin - Bard Of The Unseen

 
Ton Scherpenzeel piano, keyboards, backing vocals, percussion
Pim Koopman drums, backing vocals, voice-over
Bert Heerink lead & backing vocals
Rob Vunderink lead & backing vocals, guitars
Bert Veldkamp bass
Joose Vergoossen electric & acoustic guitars
guest:
Cindy Oudshoorn lead & backing vocals

  2003 年の作品「Merlin - Bard Of The Unseen」。 名作「Merlin」のタイトル組曲に新曲を交えて拡大し、往年の名曲を再録音した作品である。 なめらかなヴォーカルとキャッチーなメロディ・ライン、タイトなバンド演奏による極上のポップ・ロックにオーケストラを動員した荘厳なアレンジが施され、これ以上望むことのできないほど豊麗なロック・シンフォニーとなっている。 全編を貫くこの気品はどこからくるのだろう。 暖かくポジティヴな作風にヨーロッパ大陸らしいトラジックな響きを吹き込むと生れ出てくるのだろうか。 メランコリーの内に豊かなロマンを感じさせる歌ものシンフォニック・ロックの傑作。 アップテンポのポップスから慈愛のバラードまで、旧作の楽曲の良さをしみじみ再確認できる。 プロデュースは、ピム・コープマンとトン・スヘルペンゼール。コンセプトは、スヘルペンゼールと旧作に参加していたイレーネ・リンダース。

(MICP 10190)

 See See The Sun

 
Ton Scherpenzeel acoustic & fender & french piano, organ, moog
 harpsichord, davoli-synth, accordion, percussion, vocals
Pim Koopman drums, percussion, davoli-synth, organ, vocals
Max Werner vocals, percussion, mellotron
Cees Van Leeuwen bass, percussion, vocals
Johan Slager electric & acoustic guitar, flute

  74 年の第一作「See See The Sun」。 内容は、英国プログレの影響をあらわにするアンサンブルと優れたメロディ・センスが合体した、エキセントリックながらもキュートなイメージのロック・アルバムである。 後期の甘いメロディアス・ロック路線からは想像がつかない、独特の作風である。 ピアノ、オルガン、メロトロンが高鳴り、ベースが鋭いタッチで唸るなど YESGENESIS 果ては GENTLE GIANT 風のプレイやアレンジが現れるのだが、歌メロとヴォーカル・ハーモニーには 10CCE.L.O ばりの華やぎとなめらかな手触りがあり、全体としては、SUPERTRAMP 辺りと共通するロックとポップ・テイストの絶妙のブレンド感がある。 マニアックなところでは、英国プログレと大陸風味の重なり具合という意味で、MACHIAVEL を思い出すのも正解だろう。 ピアノを主に、華麗な鍵盤さばきで演奏を支えるのは、後に CAMEL へ参加する名手トン・スヘルペンゼールである。 このスヘルペンゼールのプレイを軸に、鋭いビートを刻み細かなリズム・チェンジをこなすドラムス、レガートに歌うかと思えばエキセントリックな和声やひっかかるような速弾きを見せるギター、ブーストされた音色がカッコいいベースらが、小ぶりながらもタイトで小気味のいいアンサンブルを構成する。 そして、このアンサンブルによるリズムを強調した技巧的な演奏と甘く切ないメロディをフィーチュアしたパートのコンビネーションが絶妙なのだ。 やや性急で凝った演奏と卓越したメロディ・ラインが生み出すのは、緊張感と甘美な快感の今までにないブレンドである。
  
   1 曲目の中篇「Reason For It All」(6:29)は、ハイトーンのハーモニーとリック・ウェイクマンばりの華やかなピアノ、ギターがリードするゴツゴツしたアンサンブルなど、欧米に散らばる YES 影響下のバンドと同じ質感の音である。
  
   2 曲目「Lyrics」(3:42)では、歌メロこそ胸キュンものだが、大胆な 8 分の 5 拍子やシンセサイザー・サウンドはいかにもプログレ調。 メロディアスだがどことなくニヒルなハーモニーは 10CC に近いイメージだ。
  
   3 曲目「Mouldy Wood」(5:16)は、ギター、ベースを中心とした弾力ある演奏とモーダルな歌メロから GENTLE GIANTYES の中間に位置するようなイメージの作品。
  
   4 曲目の大作「Lovely Luna」(8:19)は、再び GENTLE GIANT 的だが、「Acquiring The Taste」の抽象世界により分かりやすい哀愁を盛り込んだ感じである。つまり、初期の P.F.M ということだ。 メロトロンが轟々と鳴り響く。ドラマーのピム・コープマンによる作品は一筋縄ではいかないものが多い。
  
   5 曲目「Hope For A Life」(6:49)は、ブギー風にもかかわらずギターとベース、ピアノらユニゾンによる堅調な反復が奇妙な酩酊感を生み出す。不思議な味わいの名曲。
  
   6 曲目「Battle Of The Cripple」(4:39) メランコリックなトーン、ポップな歌メロ、逞しいリズム/ビートなど相反しそうな要素を巧みにまとめた不均衡の美学ともいうべき佳作。クラシカルなブリッジも効果的。 エキセントリックなものを緻密に編み上げてポップに仕上げる手腕は GENESIS ばり。
  
   7 曲目「Forever Is A Lonely Thought」(5:26) メロディアスで非常に繊細な弾き語り風の作品。 サビではメロトロンが夢幻の嵐を吹き上げる。ジャジーなピアノ・ソロによる間奏が鮮烈だ。コープマン作。
  
   8 曲目「Mammoth」(2:57) マイナーの THE BEATLES 風のセンチメンタルなポップスをコミカルな器楽、ヴォーカルが彩る。
  
   9 曲目「See See The Sun」(4:13) なんというか、正統的なポップス。主役のヴォーカルをメロトロン、ピアノ、オルガンが支える。 アコーディオンのおセンチな響きがいい。 メロディアスな KAYAK 節はこの作品が始まりだろう。
  
   10 曲目「Still Try To Write A Book」(2:01) ボーナス・トラック。
  
   11 曲目「Give It A Name」(2:44) ボーナス・トラック。
  
   作曲は、スヘルペンゼールとコープマン。 プロデュースは、ジェリー・ヤン・リーンデルとグループ。 リミキサーとしてアラン・パーソンズの名前もある。 邦題は「金環食」。 CD にはボーナス・トラック 2 曲付。

(EMI 5C 056-24 933 / CDP 1024 DD)

 Kayak

 
Ton Scherpenzeel grand piano, electric piano, French piano, synthesizers
 orgn, harpsicord, vocals, accodion
Pim Koopman drums, percussion, marimba, vocals
Johan Slager electric & acoustic guitar, flute
Max Werner mellotron, percussion, vocals
Cees Van Leeuwen bass, harmonica

  74 年の第二作「Kayak」。 内容は、前作よりもメロディアスでバランスのいい英国風ポップロック。 アイデアの感じられる個性的なシンセサイザー・サウンドやメロトロン、ギターとキーボード中心のアンサンブルなど、サウンドや演奏の面では凝ったプログレッシヴ・ロック的な展開もあるのだが、音楽総体としては、プログレッシヴ・ロック風の展開は味付けであり、ヴォーカル中心のよりキャッチーで耳にしやすい音が目指されている。 洗練というとスタイリッシュで知的なイメージがあるが、そこはそれ、ダッチ・ロックの本能たる親しみやすいメロディが前面に出るため、クールさではない愛らしさが全編を彩っている。 逆に、甘めのポップロックと思って流していると、ふいに目まぐるしく音を詰め込んだアンサンブルが現れて、ドキッとさせられたりする。 得意のメロディアスな甘さとエキセントリシティの絶妙のバランスの上に成り立った佳作である。
  

(EMI 5N 062-24993 / CDP 1025 DD)

 Royal Bed Bouncer

 
Ton Scherpenzeel keybords, backing vocals
Pim Koopman drums, lead vocals on 4
Johan Slager guitars, backing vocals
Max Werner lead & backing vocals, mellotron
Bert Veldkamp bass, backing vocals

  75 年の第三作「Royal Bed Bouncer」。 内容は、さらにポップ度を増しつつも尖がったプログレ風味と甘めのロマンチシズムをアレンジに交えた好作品。 THE BEATLES 直系の英国ポップ、すなわち 10CCSTACKRIDGE と同質の音楽性に、よりストレートな甘みを加味してシニシズムを薄め、まろやかにしたような作風である。(CARAVAN に共通する感じもある) この卓越したメロディ・ラインを誇る隙のないポップ・チューンを支えるのは、多彩かつ的確なキーボード・サウンドだ。 要は、70 年代中盤にラジオで流れていた一流のポップ・ロックの音なのだ。 そういうところへ、さりげなく、変拍子や鋭いアンサンブルをちらっと盛り込むところが、こちらの琴線にふれるのである。 傑作といわざるを得ない。
   5 曲目「Chance For A Lifetime」は、KAYAK らしさ満点のパワーポップ・チューン。間奏部で変拍子アンサンブルからバロック風に展開する辺りが並みではない。 9 曲目「Said No Word」のギター・リフは、完全に GENTLE GIANT だし、硬い感触のアンサンブルは YES に近い。
   全 10 曲中、9 曲までトン・スヘルペンゼールが作曲、1 曲をピム・コープマンが作曲。 PSEUDONYM からの再発 CD には 9 曲のボーナス・トラック付き。 うち、未発表のデモ曲 1 曲、シングル B 面が 2 曲(第一作の再発 CD にも収録)で、残りは第一作と第二作の作品。 本作品が再発 CD 化の第一号だったと思います。ジャケットはその CD のもの。US 盤 LP はジャケ違い。

(EMI 5C 064-25271 / CDP 1012 DD)

 Merlin

 
Edward Reekers lead vocals
Peter Scherpenzeel bass, recorder
Ton Scherpenzeel keyboards, vocals
Johan Slager guitar, banjo, flute
Max Werner drums, percussion, vocals
Katherine Lapthorn vocals
Irene Linders vocals

  81 年の第八作「Merlin」。 旧 A 面全部を占めるタイトル組曲をもつ事実上のラスト・アルバム。 中ジャケの写真を見ると、いいお歳のお兄さま、お姉さまが白い衣装に身を包んでおり、すっかり ABBA のようである。 前半の組曲以外は、シングル向けのポップ・ソングが並ぶ。 メンバーが「あまり意識していない」と語る通り、いわゆるプログレ臭さはなく、ギター/キーボード中心の 80 年代型ハード&メロー・ポップ路線に通じる音である。 バラード、アップ・テンポのロックといった明快な曲調の作品がバランスよく配置され、聴きやすさはチャート・ポップス並。 それでも、前半の組曲では、巧みな構成力と「優美にして快活、親しみやすく品がいい」という、「憧れのクラスメート」のような個性を発揮している。 ダッチ・ロックらしいセンスと音楽的な素養の広さが現れた佳作である。 ヴォーカルは英語。

  組曲「Merlin」は、ドラマチックな展開とシンフォニックな広がりのある、五部構成の大作。 甘くキャッチーなメロディと分かりやす過ぎるアレンジ。 ソロやアンサンブルにはプログレらしさが散見される。
  1曲目「Merlin」(7:23) メロディアスなハードポップ・チューン。 ヴォーカル、ギターなどのキーとなるメロディのよさ、明快な押し引きによるダイナミックな展開、カラフルなサウンド、切れのいいリード・プレイなど、ポップにして劇的な語り口がみごとな傑作。 音数少ない単調な 8 ビートやシンセサイザーのリフはいかにも 80 年代初頭風ではあるのだが、ロマンティックで明快なロックという意味では卓越した内容だろう。 美声のヴォーカルが、クサ目のドラマを堂々と仕切り、驚いたことに次第に説得力が生まれてくる。 厚みのあるアンサンブルから泣きのギターやシンセサイザーが飛び出してはソロを繰り広げるというシンプルなパターンが実に効果的だ。 また、何より全編印象的なメロディがある。 これに尽きるだろう。 管弦楽風の音はシンセサイザーだろうか、本物だろうか。

  2曲目「Tintagel」(2:41) ロマンティックでややメランコリックなバラード。 アコースティック・ピアノがしっとりと歌に寄り添う。 このピアノが、クラシカルにして甘いファンタジーの香りを放つ。

  3曲目「The Sword In The Stone」(3:31) 8分の 6 拍子の堅実なシャフル・ビートが支える行進曲風の作品。 力強さと繊細さを交差させた、劇的なオープニング。 ヴォーカルは微妙に緊張した面持ち。 ここでもギター、シンセサイザーによるフックのあるオブリガートが抜群にいい。 したがって、ヘヴィにならず、小粋で品がある。 最後にクラシカルな弦楽で受け止めるしかけがいい。 ものすごく懐かしい音です。

  4曲目「The King's Enchanter」(2:42) 前曲からリズムを引き継ぐ、リズミカルなダンス・ミュージック。 シンセサイザーによるトラッド風のテーマがあまりに印象的。 メロディ・メーカーとしてのセンスは抜群だ。 トラッド風味とモダンなハードロック風味のバランスがいい。

  組曲のエンディング5曲目「Niniane(Lady Of The Lake)」(7:22) 気品あるロマンティシズム、哀感、シンフォニックな感動を詰め込んだ終曲。 CAMEL の「Snow Goose」を思わせる感動作である。 第一曲のテーマも振り返りつつ、切々と歌を綴ってゆく。 演奏もアコースティック・ピアノから始まって、ストリングス、ギターが次々と現れて、大きなうねりのような盛り上がりを演出してゆく。 シンプルな歌ものバラードを華麗な終曲に仕立て上げた。 そして、やはり耳に残るのは、哀愁のメロディ・ラインである。

  6曲目「Seagull」(4:10) EAGLES などのウエスト・コースト・サウンドか、はたまたナイアガラ・トライアングルかというポップ・チューン。 ヴォーカルは甘い声にもかかわらず品があり、ベタベタしない。 ちょっぴりメランコリックなメロディもいい。 海へ向かって吹き抜ける涼風のように爽快な作品だ。

  7曲目「Boogie Heart」(4:11) ハイティーン向けのロックンロールを華やかに生まれ変わらせたナンバー。 THE BEACH BOYS から Billy Joel さらには E.L.O にも通じる世界である。

  8曲目「Now That We've Come This Far」(4:29) ロマンチックな AOR 風バラード。 ピアノやヴォーカルのメロディ・ラインにクラシカルな品と落ちつきがある。 シンセサイザーやコーラスによる都会的な陰影も冴えている。 ギター・ソロはクサ過ぎ。

  9曲目「Can't Afford To Lose」(3:19)ブラス・シンセサイザーの軽快なリフがワクワクさせる ALAN PARSONS PROJECT 風のポップス。 このリフは間違いなく耳に残る傑作だ。 シンセサイザーと呼応するように動いてゆくベースの生むビート感もよし。 シングル・ヒットしても何ら不思議のないポップ・チューンである。 贅沢な一級品。

  10曲目「Love's Aglow」(6:03) ドリーミーなヴォーカルとフワーと広がるキーボードに包まれたスペイシーなナンバー。 ピアノ、アコースティック・ギターとシンセサイザーが生むビート感と、広がりあるシンセサイザーの音によるふんわりした雰囲気が、うまく補完しあっている。 名曲。 APP の「Eye In The Sky」を思い出す。


(Vertigo 6423 432 / CDP 1017 DD)

 Eyewitness

 
Ton Scherpenzeel Prophet synthesizer, Minimoog, Hammond L100, YAMAHA CD 80 piano
Johan Slager Ibanez guitar
Max Werner Customized Arbiter Drums
Peter Scherpenzeel Fender bass
Edward Reekers vocals

  81 年の第九作にしてラスト・アルバム「Eyewitness」。 新旧のレパートリーをスタジオ・ライヴ形式で収録し、「ライヴ」な KAYAK 最後の姿をとどめようとした作品である。 契約消化なのかもしれないが、後味のすっきりした「回顧録」とは冴えたアイデアだ。 かつての代表曲を並べ、別れの挨拶としてまとめ上げようというグループの意気込みがうかがえる、理想的なベスト・アルバムである。 内容は、ロマンの香りとわななくようなセンチメンタリズムをもつメロディを卓越したギターとキーボードが支える、ぜいたくなハードポップスである。 作曲は全曲トン・スヘルペンゼールによる。 こうして代表曲が一堂に会すると、改めて彼のメロディ・メーカーとしての才能を実感できる。 本作制作後グループは 82 年に解散。 CD と LP ではジャケットが異なる。ここの写真は、PSEUDONYM の CD のもの。
  内容は、キャッチーなヴァースと明快なサビをもつヴォーカルを中心になめらかなシンセサイザーそしてドライヴ感のあるギターで盛り上げる典型的なハード・ポップ、そしてロックン・ロール路線、さらにピアノを用いた甘いバラードなど。 ほぼ完璧なメロディ・ラインを備えた、親しみやすくヒネリもあるポップスであり、スタジオ・ライヴとは思えぬ堅固なアレンジが圧巻である。 その一方、前作前半のようなシンフォニックな部分はほとんどない。 曲は長いものでも 5 分半弱。 リズムの単調さなど気になる部分もあるが、テクニシャンの意地のようなソリッドなギター・プレイや躍動感あるキーボードのフレージングを散りばめたインストゥルメンタル・パートの充実は、さすがといえるだろう。 特にトン・スヘルペンゼールのシンセサイザー、オルガンは、作品を単なるハード・ポップ・ソングに終らせない贅沢な彩りをつけており興味深い。 もちろん普通のポップ・アルバムとしてみても 80 年代の到来をしっかりと意識したセンスが感じられる一級品だ。 各曲も鑑賞の予定。

Eyewitness
Periscope Life」同名アルバムより。
Ruthless Queen」アルバム「Phantom Of The Night」より。
Want You To Be Mine」アルバム「Starlight Dancer」より。
Lyrics」アルバム「See See The Sun」より。
Chance For A Lifetime」アルバム「Royal Bed Bouncer」より。
Who's Fooling Who
Irene」アルバム「Starlight Dancer」より。
Only You And I Know
Winning Ways」アルバム「Phantom Of The Night」より。
Starlight Dancer」同名アルバムより。
No Man's Land」アルバム「Phantom Of The Night」より。
The Car Enchanter」ボーナス・トラック。
Ivory Dance '94」ボーナス・トラック。 94 年にトン・スヘルペンゼールによって再録音された。

(Vertigo 6399 312 / CDP 1018 DD)

 Close To The Fire

 
Ton Scherpenzeel piano, organ, keyboards, accordion, backing vocals
Pim Koopman drums, backing vocals
Max Werner vocals, percussion
Rob Winter guitars, backing vocals
Bert Veldkamp bass

  2000 年の作品「Close To The Fire」。 ほぼオリジナル・メンバーが顔をそろえた 99 年の TV 出演をきっかけに活動を再開した KAYAK の復帰第一弾アルバムである。 内容は、ほんのりケルト風味を取り入れた大人向け叙情派シンフォニック・ロック。 というか、年月を積み重ねた KAYAK を想像したときのイメージそのままである。 歳降るとともに渋みこそ増したものの、音楽は往年そのままの姿といっていい。 華やぎと翳りが幾重にも重なりあい、えもいわれぬ色合いを放っている。 そして、サウンド、楽曲、演奏すべてにわたり、大げさではないのにちゃんと耳をとらえるセンスがみごと。 セルフ・カヴァーも堂々たるものだ。 いわゆる再結成ものとしてとらえるにはあまりに充実した内容といえるのだが、プロデューサーとして今なお活躍するスヘルペンゼールのメイン・バンドなのだから、当然といえば当然だ。 ヨハン・スレイガーの後釜であるセッション・ギタリストであるロブ・ウィンテルのプレイがアンディ・ラティマーに聴こえてしまう瞬間も。 プロデュースは、ピム・コープマンとトン・スヘルペンゼール。

(MICP 10190)

 Night Vision

 
Ton Scherpenzeel keyboards, vocals, accordion
Pim Koopman drums, vocals
Bert Heerink lead vocals, percussion
Rob Winter acoustic and electric guitars, mandoline
Rob Vunderink vocals, guitars
Bert Veldkamp bass

  2001 年の作品「Night Vision」。 リード・ヴォーカリストが元 VANDRBERG のベルト・ヘーリンクに交代、ロック・シンガーらしいパンチのある、しかし安定した歌唱を提供している。 今までのヴォーカリストと比べると格段にパワフルなのだが、メロディ・ラインとバランスのいい演奏があれば、このような交代が結局さほどインパクトをもたなくなってくるところが、このグループらしさである。 内容は、メロディアスでモデストな 70 年代終盤風ポップ・ロック。 管弦楽も動員し、前作よりも都会的でモダンなポップ・フィーリングを強調している。 それでも基本的な特徴は変わらない。 つまり、何よりメロディにのせて心のこもった歌を送り届けることを目指した音楽である。 14 曲中、12 曲をトン・スヘルペンゼールが担当し、ピム・コープマンは 2 曲しか提供していない。 スヘルペンゼールはメロディアスなバラードを基調に丹念なアレンジ(ギターやキーボードの入れ方はしっかり計算されている)で落ちついたシンフォニック・ポップ・チューンを仕上げているが、トーンが一本調子になるところがある。 派手にぶちかますピムの作品が多ければ、アルバムにもっとダイナミックな変化が出たように思う。
   「Icarus」は、ロマンティックなヴォーカルとゴージャスなアレンジで迫る重厚なシンフォニック・ロック。 ハードロック寄りの作風がなかなかのインパクトだ。 しかし、ヴォーカリストもハードロック畑出身であるにもかかわらず、なぜか音楽は KAYAK 以外の何物でもない切なすぎるロマンをあふれさせている。この辺がスヘルペンゼールの卓越したセンスというかマジックなのだと思う。後半には、カッコいいシンセサイザーでさりげなく見せ場を作っている。 E.L.O 風のへヴィさで迫る「The Way Of The World」、「Tradition」は傑作。前者は曲とヴォーカルの声質がよく合っている。続く KAYAK らしさあふれる「Hold Me Forever」も違和感なく歌えているところはさすがだ。 一方後者は CAMEL の作品を思わせる叙情大作。コープマンらしい、いや KAYAK そのものといっていい切なさが胸にこみ上げる作品である。 「Carry On」は、往年のポール・マッカートニーやスティーヴィー・ワンダーのように完成されたポップ・バラードである。 ほのかなスコティッシュ風味がたまらない。 「Good Riddance」は、再びハードポップ路線であり、ヴォーカルとの相性は抜群。 「Rings Of Saturn」は、ほとんど大瀧詠一。どうしたって 81 年位を思い出す。
   全体に、ややパンチを効かせながらも得意の「愛くるしさ」をごく自然に盛り込めていて、大人向けのメロディアスなロック・アルバムとしての水準は軽くクリアしている。 しかし、それだけになおのこと、もう一つ変化があればと贅沢な願いをしてしまうのだ。 プロデュースは、トン・スヘルペンゼール。

(PROCD 2057)


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