イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「JONESY」。 72 年ジョン・ジョーンズのバックバンドを母体にロンドンにて結成。 作品は三枚。 初期 KING CRIMSON の影響明らかなヘヴィでアヴァンギャルドな作風である。 典型的なプログレ・サウンドから三作目でジャズロックへと変貌。 DAWN レーベル。2003 年幻の四作目発掘さる。
| John Jones | guitars, VCS3, vocals |
| Jamie Kaleth | mellotron, keyboards, vocals |
| David Paul | bass, vocals |
| Jim Payne | drums, percussion |
72 年発表のデビュー・アルバム「No Alternative」。
サウンドは、ヘヴィなリフを用いたハードなナンバーからメロトロンの鳴り響くバラードまで、初期 KING CRIMSON の影響を強く受けたもの。
変拍子を駆使し、ブレイクや強圧的なユニゾンの多い演奏である。
メロトロンはバッキングやオブリガートの要所に的を絞って効果を上げる、というのが普通の使い方のようだが、この作品ではそれがリフやテーマにオルガン並に使われている。
プロデュースはジョン・ジョーンズ。
ジャケットはロンドン、ビルの足元で縮こまる中産階級住宅の裏庭。
生活臭が漂う煙突からの煙が全てを灰色にしてしまう、陰うつな絵である。
このジャケットを見ていると「No Alternative」とは、ここを逃げ出して別の場所に行こうたってそうはいかない、というような意味にも思える。
1曲目「No Alternative」(8:14)
オープニングは、にぎやかな楽隊の演奏がフェード・イン。
そして突如飛び出すのは、ベース、ギター、メロトロンのユニゾンによるたたみかけるようなリフ。
ブレイクをはさんだ 3 連のリフへと変奏すると、ヘヴィにしてどこか歪んだイメージが浮かび上がる。
そして轟くパワー・コードが毛羽立ったヴォーカルを呼び覚ます。
ギターとメロトロンが叩きつけられるワイルドな演奏だ。
ヴォーカルは狂おしい表情である。
再び最初のリフが繰り返される。
一パターンごとに待ち構えるようなブレイクをはさむ奇妙な演奏だ。
ねじを巻くように高まる演奏とともに、テープ逆回転効果を巧みに用いたギター・ソロが始まる。
バックはヴォーカル伴奏と同じパワー・コード。
サイケな演奏はかなりやけくそ気味である。
再び 3 連リフから無伴奏のギター・ソロ。
それも一瞬再びリズム、メロトロンが迸り、ギターが荒れ狂う演奏へと戻る。
ユニゾンによる圧迫感のあるリフが執拗にたたみかけるヘヴィ・シンフォニック・ロック。
さほど技巧的に注目すべきことはないのだが、CRIMSON をなぞるような、ワイルドにして狂的なリフを真正面から叩きつける勢いはいい。
どこか滑稽さと紙一重で逸脱寸前なところも、CRIMSON に通じる。
迸るメロトロンそしてテープ逆回転の特殊効果を用いたギター・ソロも強烈だ。
狂おしく回っては突然止まる歯車のような演奏は、尋常ならざる不気味な世界の描写にはピッタリである。
「21世紀の精神異常者」の影響は大きいと見た。
ジョーンズの作品。
2曲目「Heaven」(8:13)
VCS3 だろうか不思議なピッチの揺らぐノイズとともにベースが静かにささやくオープニングである。
爪弾かれるギターとメロトロンの密やかな調べ。
ヴォーカルもデリケートな表情である。
切なく無常感の漂うバラードだ。
憂鬱な歌メロにピアノが和音を刻みつけ、ややアクセントの強まるサビがコントラストする。
セカンド・ヴァースは、ほぼピアノとメロトロンのみの伴奏。
ギター・ソロも生音で切々と歌い、丹念なベンディングで表情をつけている。
VCS3 の変調音、銃撃のようなノイズは SE としての意図があるのだろうか。
メロトロンをフィーチュアしたリリカルなバラード。
哀愁を湛えたメロディ・ラインは、切ないまでにブリテッシュ・ロックのものである。
重厚さよりも強い哀感が特徴。
歌詞でも分かるように、CRIMSON の「風に語りて」や「Letters」の影響が強い。
アコースティックな音の質感を活かした作品である。
ジョーンズの作品。
3曲目「Mind Of The Century」(4:09)
重苦しいビートがミドル・テンポを刻み、メロトロン、ギターらのユニゾンによるヘヴィなリフが繰り出される。
シンセサイザーの轟音が通り過ぎると、ヘヴィな伴奏を受けて、イコライザ処理されたヴォーカルがけだるげに歌い出す。
シンプルなメロディに独特の含みをもたせる、いかにも古典的な英国ロック調である。
サビはヴォーカルと伴奏がユニゾンする。
次第に催眠術にかかったようになってくる。
間奏は、メロトロンとギターのロングトーン・フレーズのユニゾンが繰り返される。
唐突なブレイク、そしてヘヴィなリフにのって狂おしいギター・ソロ。
やがてメロトロンが再び切り込み、ユニゾンによるヘヴィなリフが甦る。
そして三度ヴォーカル・パート、サビから間奏へ。
最後に止めを刺すようにヘヴィなリフを叩きつけ、ヴォーカルと演奏がユニゾンしたままフェード・アウト。
重くスクエアなビートに支えられ東洋的なリフとイコライザでトリミングしたヴォーカルが不気味に迫るヘヴィ・ロック。
ワイルドでざらついているにも関わらず虚脱したような曲調が、「Cold Turley」など初期のジョン・レノンの作品に通じる。
クールな声質のヴォーカルと、刺々しいリフの対比も面白い。
ミドル・テンポが、爆発を懸命にこらえているような印象を与える。
シンプルな反復だけでここまでもたすのも、音の面白さのおかげだろう。
グループの作品。
4曲目「1958」(7:53)
ギターとエレピ、ベースによる、クラシカルな 3 連パターンのユニゾン・リフレイン。
受けて立つのは迸るようなメロトロン、ギターであり、細かくリズムを刻み、シンバルを打ち鳴らすドラムスが緊張感を高めてゆく
ギターとベースが叩きつけるようにリードするアクセントの強い 3 連パターンを伴奏に、やや弛緩気味のヴォーカルが走り出す。
オブリガートのギターは絶叫のようだ。
演奏に 8 分の 6 拍子特有の神経質な緊迫感がある一方、ヴォーカルやハーモニーには、素朴なフォーク・タッチや R&B っぽい逞しさがある。
初期の KING CRIMSON と異なるのは、この普通っぽさと無遠慮な無茶弾きのハードロック・ギターだろう。
8 分の 6 拍子でたたみかける調子が初期 KING CRIMSON を思わせる、迫力あるヘヴィ・シンフォニック・ロック。
絶叫しながら音を叩きつけるギター、凶暴に唸るベース、手数の多いドラムスらが一体となって神経質でハード、なおかつスピーディな演奏を繰り広げる。
メインのヘヴィなリフが再び「21世紀の精神異常者」を思わせる一方で、ヴォーカル・ハーモニーはビートポップ色を残した、若干古めかしいスタイルである。
もっとも、切り刻むようにたたみかける演奏とバランスを取るために、メロディアスなハーモニーを用いている可能性もある。
ギター・ソロに代表されるように一つ一つのプレイはさほどではない。
やはり全体の調子と勢いによる一体感が売りなのだろう。
本曲も独特の「間」がドライヴ感を生んでいる。
1 曲目と 3 曲目を合わせたような作風だ。
ジョーンズの作品。
5曲目「Pollution」(9:40)
メロトロンをバックにワウ・ギターがファンキーにコードを刻む演奏がフェード・イン、しかしすぐにフェード・アウトする不思議なオープニング。
静かにメロトロンが湧き上がりヴォーカルが歌い始める。
風の音のようなシンセサイザーと遠いアルペジオ。
安らかなヴォーカル・メロディ。
リズムの入りとともにヴォーカルはメロトロンをバックに高らかに歌い上げる。
密やかなアルペジオ。
そしてベースのリフレインが響いてヴォーカルを支えギターが叫ぶ。
突如ギターの 3 連アルペジオが鮮やかに響き渡りドラムが細かいリズムで叩き始める。
ベースは唸りを上げて演奏する。
ギターとエレピのユニゾンの 3 連アルペジオが続きメロトロンが響き渡ると再びギターとエレピのユニゾン・リフレインが繰り返される。
決めが入ってベースとギターに導かれて 8 ビートに戻ると静けさの中をギターがゆったりとソロを奏でヴォーカルが入ってくる。
ヴォーカルはギターと絡みつつ盛り上って行く。
ベースがソロでリフを刻む。
リズムとともにシンセサイザーとメロトロンが入って響き始める。
最後はベースがするするとスケールを駆け上がり爆音とともに消えてゆく。
迫力あるアルペジオで攻めるという新手の展開を中間部にもった、YES 風のドラマチックなナンバー。
イントロの静けさと柔らかさが、いかにもブリティッシュ・ロックらしい詩的な余韻をもつ。
ベースのリフレインからボレロのように盛り上ってゆく趣向がおもしろい。
長調であることとベースが一貫して目立っているところ、そしてややフォーク/カントリー色があるところなどから、YES のイメージにつながるのだろう。
ところでオープニングの短い演奏は一体何?
ポールの作品。
6曲目「Ricochet」(4:59)
アシッドなワウ・ギターのコード・カッティングに厳かなメロトロン・ストリングスが重なるオープニング。
一気にリズム・セクションが動き出し、ヘヴィな演奏が始まる。
ヴォーカルはメロディアスにしてワイルドそして R&B 調のしなやかさをもつ。
センスのいい不良というイメージが昔の CHAR を思い出させる。
サビはハイトーンのコーラスが決まる。
間奏もメロトロン、ワウ・ギターで突っ走るのだ。
8 分の 6 拍子のオブリガートをはさんでアクセントをつけつつグルーヴィに進んでゆく。
メロトロンのテーマがさまざまに変化し、オブリガートを受けてドラムの短いブレイクビーツ、そしてベースが一気に高まってヴォーカルを支える。
ファンキーで熱い 70 年代らしい曲である。
そして泣かせるサビから、狂乱のギター・ソロへ。
しかし演奏はフェード・アウト、なぜかアルバムのオープニングと同じにぎやかな楽隊の行進が始まる。
ソウルフルなヴォーカルをフィーチュアした英国ロックらしい R&B チューン。
こういう曲に、ギターとベースによるヘヴィなリフとメロトロンを激しく用いるところが珍しい。
リズムも本来ならもっと洗練されているべきところを、あえて武骨に音を叩きつけているようなところがある。個人的には CRIMSON、YES のコピーのようなサウンドよりもずっと好み。
ジョーンズの作品。
シングル・カットされている。
変拍子と強圧的なリフ、そして手数足数で勝負のヘヴィ・シンフォニック・ロック。
クラシックやジャズの素養はさほど感じられず、あくまでロックのスタイルの範囲で、当時流行の変拍子やポリリズム、そして怪奇で強引な曲調を取り入れたイメージである。
基本はハードロックなのだろうが、KING CRIMSON の影響のもと一気に前衛ロックへと進んだようだ。
ブリテッシュ・ロック独特の屈折したカッコよさをもち、さらにそのカッコよさをあえて外して崩すような大胆さもある。
ノイジーな VCS3 がなんとも時代を感じさせるのだが、KING CRIMSON ファンなら一度は味わいたい音だろう。
なぜなら初期 CRIMSON の影響をこういう形で受けているバンドが、かなり珍しいように思うからだ。
また長調のパートでは高鳴るベースとピッキング主体のギター、メロトロンらのおかげで YES にも接近する。
(VICP-61403)
| John Evan-Jones | guitars, vocals |
| Jamie Kaleth | mellotron, keyboards, lead vocals |
| Alan Bown | electric trumpet/flugelhorn, percussion |
| Gypsy Jones | bass, recorders, lead vocals |
| Plug Thomas | drums, percussion, vocals |
73 年発表のセカンド・アルバムは、バラの花を縛り首にするというジャケットが印象的な「Keeping Up」。
新メンバーとして、ジョン・ジョーンズの兄トレヴァー・"ジプシー"・ジョーンズとプラグ・トーマス、そしてベテラン・トランペット奏者アラン・ボウンを迎えている。
ボウンによるジャジーな管楽器演奏と、前作を越える大胆なメロトロンの使用が、「Lizard」、「Islands」あたりの KING CRIMSON に影響されたサウンドを完成へと進めている。
しかしながら、CRIMSON のクローン然としないのは、ストリングス・アレンジやメランコリックにしてキャッチーなメロディなどが生む英国ロック本流の品のあるポップ・テイストが強いせいだろう。
クローンではなく、あくまで近接する傍系なのである。
静けさに満ちた叙情的な表現では CRIMSON 風味が強まるが、動きを見せるところでは、独特の R&B、フォーク・タッチが飛び出し、プログレッシヴというよりは普通のポップス・ノリに近くなる。
ヴォーカル・ハーモニーやワウ・ギターによるコード・カッティングなどが、特にそう思わせる一因だ。
一方 5 曲目では、ギターとポエトリー・リーディング風のヴォーカルをフィーチュアし、「Moon Child」の向こうを張る即興的でアヴァンギャルドな試みも見せている。
プロデュースはジョン・ジョーンズとグループ。
1曲目「Masquerade」(6:05)
プログレらしい道具立てを用いたキャッチーなハードロック。
大仰なストリングスや間奏、オブリガートのみならず主旋律まで堂々とリードするメロトロンなどのサウンド面や、ぎくしゃくした独特の調子の変化などに耳を奪われるが、軸となっているのはポップな歌メロである。
ボウンのトランペットとメロトロン、シンバルのざわめきとくると確かに CRIMSON 風といわざるを得ないが、それでも歌メロやハーモニーにはビート・ポップ的な面が現れている。
ヴォーカル・メロディ自体はごく普通のロックなのだが、構成と楽器の音色で聴かせてしまう大作だ。
ガラスを打ち破る音とともに、ストリングス・アンサンブルによる緊張に満ちた演奏をバンド演奏が断ち切るオープニングが強烈。
2曲目「Sunset And Evening Star」(3:39)
メロトロンによるトラジックなテーマが印象的な哀愁のバラード。
厳かなメロトロン、もの悲しいヴォーカル、マーチング・スネアが作り上げた雰囲気に比べると、ギターのオブリガートがあまりに普通のペンタトニックなので拍子抜けするが、これは CRIMSON が染み付いてしまった私が悪いのだろう。
「Old soldiers die..」と繰り返す歌詞が、いい知れぬ悲しみを湛えている。
ジョーンズの作品。
3曲目「Preview」(2:00)
アコースティック・ピアノ、トランペット、弦楽奏による小品。
哀しい夢を辿り打ち寄せるピアノの調べ、空ろな遠吠えのようなトランペットの響き、そしてすすり泣くストリングス。
後半はトランペットをストリングスが引き継ぎ、クラシカルなアンサンブルを成す。
無常感に満ちた本作は、次の曲へのイントロと思われる。
ケイレスの作品。
4曲目「Questions And Answers」(5:13)
さまざまなイメージがごった煮のように詰め込まれたジャズロック。
細かく刻み込むようなリズムの上で、ワウ・ギター、トランペットなどが暴れシンプルな歌ものを過激に彩ってゆく。
オープニングのピアノのオスティナートで緊張が走るが、歌メロはまたしても R&B 風の普通っぽいもので、拍子抜けする。
間奏部のピアノの和音や、高まるメロトロンに続くサビの部分は、CRESSIDA や初期の GENESIS のようにプログレっぽいのだが、中途半端にファンキーなメイン・ヴォーカル・パートがやや浮き上がっている。
後半は、意を決したようにバッキングがファンキー路線で突き進み、フロントではジャジーなギターとトランペットのスカスカなかけあいが続いてゆく。
構成力はあるのに、どこか人を食ったような「外し」を見せるのが特徴なのだろう。
ケイレスの作品。
5曲目「Critique」(9:29)
アシッドなワウ・ギターと吠えるようなヴォイス・パフォーマンスを経て、強引なフリー・インプロヴィゼーションへと突入する大作。
前半はロバート・フリップ風のサスティンをテープ逆回転で実現したギターや、THE BEATLES のパロディまでご丁寧に散りばめて、不気味な雰囲気のまま進んでゆく。
ボウンのエレクトリック・トランペットが絶叫する辺りから、フリーなジャズ・インプロヴィゼーションへと変化する。
トランペット、ギターが気まぐれなプレイを散りばめ、リズム・セクションは堅実に展開を支えている。
隙間だらけの演奏が珍妙となる一歩手前で踏みとどまっているのは、エレクトリック・マイルスをほうふつさせるボウンの冴えたプレイのおかげだろう。
きれいな音のベースもいいアクセントになっている。
終盤は、ギターが思うさま弾き捲くり演奏をリードする。
ジョン・ジョーンズの独壇場だろう。
ボウンの管楽器はもちろんギターも序盤はジャジーな味わいをもち、それがなかなかいい感じなのだが、後半のヘヴィなギター・アドリヴが類型的になってしまった。
リズム・セクションも少し単調。
確かに爆発力はあるのだが、この最後の 2 分間がもう少しカッコいいともっとイメージ・アップしただろう。
ジョーンズの作品。
6曲目「Duet」(0:49)
穏やかなギター伴奏でトランペットが静かに歌う。
前曲の雰囲気を断ち切り、静かな調べが次曲へのイントロとなっている。
ジョーンズの作品。
7曲目「Song」(3:32)
ストリングスを用いた哀愁のバラード。
おそらくリード・ヴォーカルはジェイミー・ケイレスなのだろう。
ケイレスの作品。
8曲目「Children」(9:02)
トランペット、リコーダーによるクラシカルなアンサンブル、R&B 風のブラス・ロック、メランコリックなフォークロックなどをメロトロン、ストリングスで貫いた一種英国ロックのカタログの如き、野心的シンフォニック・ロック作である。
夕空へと響き渡るような空ろなトランペットと多彩なメロトロンが、みごとな存在感を見せる。
特に、後半メロトロンのリードで走るタイトな演奏がみごと。
ギター抜きの方がシャープになってしまうというところが面白い。
メイン・ヴォーカルの R&B 風味がなんとも懐かしい名作である。
ジョーンズの作品。
メロトロンを駆使したプログレッシヴ・シンフォニーかと思えば、トランペットによるリリカルな小品や、ブラスとギターで晦渋な展開を見せるフリー・ジャズ風のインプロヴィゼーションなど、きわめて多彩な音楽である。
一つの曲の中でもエアポケットのような空白を巧みに用いた独特の作風をもつ。
リード・メロトロンには驚愕。
ボウンのジャズ・センスを活かし、プログレとしての完成度を一気に高めた名盤でしょう。
(VICP-61404)
| John Evan-Jones | guitars, vocals |
| Jamie Kaleth | electric & acoustic pianos, Mellotrons, lead vocals |
| Alan Bown | electric trumpet, electric flugelhorn |
| Gypsy Jones | bass, lead vocals |
| Plug Thomas | drums, percussion |
| guest: | |
|---|---|
| Bernard Hagley | electric saxes |
| Ken Elliot | clavinet, ARP 2600 |
| Maurice Pert | percussion |
74 年発表のサード・アルバム「Growing」では、アラン・ボウンの存在感が強まるとともに、シンフォニックなサウンドからよりファンキーでジャジーなサウンドへと変化した。
SECOND HAND、SEVENTH WAVE のケン・エリオット、後に BRAND X へ加入するモーリス・パートら多彩なゲストに加えて、ストリングス・アレンジメントにはサイモン・ジェフズを迎えており、新たなサウンド作りを試みている。
痺れそうなほどエレクトリックにしてファンキー、切れ味もいい。
そしてメロトロンもしっかり位置をキープしている。
内ジャケットには、タイトル通り全メンバーの「成長」の軌跡が写真で示されている。
プロデュースはルパート・ハイン。
「Can You Get That Together」(8:28)
躍動感あふれるハイ・テンションのジャズロック。
エレクトリック・トランペット、ギターのユニゾンによるビッグバンド風のテーマから、ヴォーカル・パートを経て、全パートのソロ回しを経てテーマへ回帰する。
ファンキーで R&B 色が強く、ジャズロックといってもフュージョンではなく、ソウル・ジャズに近い。
ヴォーカル・パートやソロのバックでは、メロトロン・ストリングスがぶわっと吹き上がる。
ソロはギター、エレピ、エレクトリック・トランペット、ベース、ドラムスと続く。
感電しそうなほどジンジンのサウンドがカッコいい。
リズム・セクションも逞しい。
こういう曲でメロトロンを使い捲くるのも珍しい。
リード・ヴォーカルはジプシー・ジョーンズ。
エレクトリック・ピアノやトランペット、ギターのコード・カッティングなど、マイルス・デイヴィスの諸作をほうふつさせるところもある。
「Waltz For Yesterday」(4:10)
弦楽アンサンブルをフィーチュアしたブルージーなバラード。
アカペラからスタートし弦楽奏がバックアップする、エレガントな歌ものへ。
繰り返しではトランペットも伴奏に加わる。
後半は、うってかわってピアノ伴奏によるブルージーなギター・ソロ。
ヴォカリーズに続いて次第に弦楽奏の伴奏が高まってゆく。
ワルツというタイトル通り、後半は終始 3 拍子。
メランコリーとブルージーという雰囲気の異なる二つの小編をつないでしまった大胆な作品。
主役は弦楽アンサンブルかもしれない。
「Know Who Your Friends Are」(6:11)
R&B 風味あるアップテンポのヴォーカル・ナンバー。
いかにも英国ロックらしい音であり、前作までの作風に近い。
軽やかなアコースティック・ギターのコード・ストローク、シャープなベースとオルガンのオブリガート。
中間部ではぐっとテンポを落とし、メローな AOR 調のバラードへ変身。
間奏のギター、エレクトリック・トランペットが切ない。
こういう演奏がちゃんとできるのに、乱れてしまうところがすごい。
最後は再び快速でメイン・ヴォーカルが走り、ギター、トランペットが激しいインタープレイを見せる。
メロトロンもしっかりサポート。
そしてドラムスも華麗な打撃技を連発。
リード・ヴォーカルはケイレス。
「Growing」(5:01)
エフェクトににじむギター・リフ、機敏に動くベースなどが立体感を生む、初期 YES 風の軽快なロックンロール。
スタカートで打ち込むベース、オブリガートでサラリと浮かび上がるギター、キラキラときらめくピアノがヴォーカルを取り巻く。
最後のかけあいがカッコいいと思っているうちに、ストリングスがだんだんと盛り上がってくる。
最後はほとんどベースとストリングスのかけあいとなっている。
スピードと切れがありなおかつ親しみやすい。
ベースが存在をアピール。
リード・ヴォーカルはジプシー・ジョーンズ。
「Hard Road」(3:55)
管楽器、弦楽アンサンブルをぜいたくに配したジャズ・タッチのブリット・ポップ。
ポール・マッカートニーや ELO を思わせるリッチなサウンドである。
ホルン、ピアノによるオープニングは、ほとんど CHICAGO。
後半は、ややラテン風のにぎやかな演奏から、エレクトリック・トランペットとギターのジャジーなかけあいへと発展する。
ファンクなトランペットはまるでマイルス・デイヴィス。
ヴォーカルはケイレス。
小曲だが存在感あり。
「Jonesy」(11:40)
即興風の大作。
オープニングこそ美しいストリングスの調べが響きわたるが、以後はギター、ホーンらも交えた混沌としたインプロヴィゼーションが続く。
ワウ、ディレイなどエフェクトや編集・効果を駆使。
7 分辺りからは、世界が歪んだような不気味な定位を用いる。
ホーンはやはりマイルス風。
ギターは、一貫して無茶弾き風の早業。
ストリングス、メロトロンも即興演奏の一員である。
ゲストのエレクトリック・サックスが、CRIMSON にも迫るイメージを与える。
エンディング、ダメを押すように美しいストリングスが高まり去ってゆくと、一体何を聴いていたのか、すべては幻覚だったのでは、と自分の記憶に自信がなくなる。
ファンキーなジャズロック作品と片付けるには、あまりに破天荒でサイケな内容の佳作。
極端に電気化したホーン、うるさいハードロック・ギター、豪快なリズム・セクションそして場違い過ぎてあっけにとられる弦楽、メロトロン。
枝葉を除けばかなりポップであろう楽曲を、ゴテゴテした電飾で徹底的に飾りつけながらも、悪趣味を越えた迫力を生み出している。
KING CRIMSON に迫ろうとした勢いあまり、電化マイルスへと突っ込んでしまったのかもしれないが、ちゃんと英国情趣を漂わせているところが凄い。
弦楽奏は限りなく美しいのだ。
なにより、迷いがなく逞しい演奏が魅力の名作でしょう。
英国ロックの雑食性に惹かれる方にはお薦め。
(SRMC 1032)