イギリスのメロディアス・ロック・グループ「JADIS」。 82 年結成。 雌伏 10 年、92 年にアルバム・デビュー。 オリジナル・メンバーのゲイリー・チャンドラーのワンマン・バンドであり、一部メンバーは IQ とのかけもち。 サウンドは、チャンドラーのギター・ヴォーカルを中心とした爽快かつメリハリのあるメロディアス・ロック。 ポンプ・ロックの進化形の一つともいえる。
| Gary Chandler | guitar, vocals, keyboards |
| Steve Christey | drums |
| Martin Orford | keyboards |
| John Jowitt | bass |
| guest: | |
|---|---|
| Steve Thorne | backing vocals |
2006 年発表の第八作「Photoplay」。
冒頭のギターを聴いて「戻ってきた」という感慨を抱かざるを得ない快作。
近作でのヴォーカル面の充実度合いはそのままに、このグループらしい涼しげでメロディアスなタッチと迫力あるインストゥルメンタルを取り戻している。
そして、すべての曲にきめ細かく配慮された音楽的なストーリーが織り込まれていて、それを読み解いてゆく楽しみがある。
この「凝りよう」というか「サービス精神」は、現代の音楽産業あっては奇跡に近い。
演奏はもちろんギターが主役なのだが、本作のギターのいいところは、ハードなアタックを効かせてもいわゆる HR/HM 的なプレイにならず、サイケデリックな味わいがあること。
少し泣かせる 80 年代風味(ディレイがね)はもちろんのこと、エフェクトなどはコンテンポラリーなギター・ロック、ポスト・ロック風味もあり。(無論、世のトレンドが 60 年代付近の音を見据えているせいではあるが)
何にせよ、ギター中心の王道的ブリティッシュ・ロックといっていい音である。
ギター中心のベテラン英国勢で、あまり PINK FLOYD っぽくならずに、ハードロックやフュージョンのサウンドとグルーヴを保ち続けているグループは珍しい。
時代や流行といった周りに合わせることよりも、自分の好みの音だけを紡ぎ出す(周りはそれについてこい、ということでしょう)という姿勢が徹底しているのだろう。
頑固なミュージシャンシップに感服である。
要するに徹底的なワンパターンなのだが、それが気に入ればずっと付き合ってゆけるのだから、何も問題はない。
そしてギターのみならず、今回はオーフォードが、透明感あるシンセサイザーはもちろんのことハードなオルガンで爆発してくれる。
ギターとオルガンのエネルギッシュなやり取りは、きわめて新鮮であると同時に往年の名作たちを想起せずにいられない。
サウンド・メイキングという点でキーボードの音数はやや減ったように思うが、アンサンブルでは出るべきところではしっかりと出てきている。
明朗なメロディとリズミカルなリフによるノリなどは、改めて月影 GENESIS を見直した成果なのかも知れない。
明快なメジャー・コード主体でヴォーカルがリードする作品から、英国ロックならではの「奇天烈な独創性」を見出すのは難しいのかもしれないが、こういった独特の涼感、突き抜け感、熱いようでクールな叙情性をもつグループは他に類似を見ない。
それだけで十分プログレッシヴな存在ではないだろうか。
ひょっとすると、「劇映画」という古風なニュアンスのタイトルは、自らの作風になぞらえているのではないだろうか。
今回もそのタイトル曲はインストゥルメンタル。バッキング・ヴォーカルはスティーヴ・ソーンがつとめる。
「There's A Light」
「What Goes Around」
「Asleep In My Hands」
「Standing Still」
「I Hear Your Voice」
「Make Me Move」
「Who I Am」
「Need To Breathe」
「Please Open Your Eyes」
「All You've Ever Known」
「Photoplay」インストゥルメンタル。
(INSIDE OUT 6 93723 00352 8)
| Gary Chandler | lead vocals,guitars |
| Stephen Christey | drums, percussion |
| Martin Orford | keyboards, flute, backing vocals |
| guest: | |
|---|---|
| John Jowitt | bass |
92 年発表のデビュー・アルバム「More Than Meets The Eye」。
詩情あふれるサウンドとナチュラルなメロディが涼風のように吹き抜ける、爽やかな傑作である。
そして、ジャズ・フュージョン系でもヘヴィ・メタル系でもない、いわゆる「ロック・ギター」が楽しめる作品でもある。
音の全体的なイメージからネオ・プログレッシヴ・ロックとくくられてもしょうがないが、かの系列の音に散見される脆弱なリズムや未成熟な大作志向はない。
躍動と詩情をストレートに表現した高品位のロックなのだ。
一番の持ち味は、巧みな表現力を持ちながら微塵の暑苦しさもないギターと透明感あふれるシンセサイザーのコンビネーションが生み出す、青空へ突き抜けるような「清涼感」だろう。
 
その中でも、まずはギターの多彩なプレイを取り上げるべきだろう。
ソロにおいてはソリッドな音色で爽快かつエネルギッシュなフレーズを自在に操り、キーボードとのアンサンブルやバッキングでは相手を巧みに支えて呼吸のいい対話を行う。
ハードロックのギター・ソロのようなフレーズも多いのだが、センシティヴな音色のおかげでそういったところにもみずみずしさが生れてフレッシュな印象を与える。
そして、あらゆるメロディに直截的でポジティヴな明るさと英国伝統のメランコリックなリリシズムがほどよくブレンドしている。
この点は、ホガース以降 MARILLION のスティーヴ・ロザリーと共通する。
音色とキャッチーなフレーズに気を配る作風は、もう少しユーモアを加味してキーボードの彩色を豊かにすれば、絶頂期の CAMEL に迫るかもしれない。
また、現代的なサウンドを用いて伝統のメロディアス路線を進むという点では、逆輸入めくが、今をときめく THE FLOWER KINGS に近い音楽観のようにも思う。
一方、ギターとともに魅力の一つであるチャンドラーのヴォーカルには、80 年代のデジタル・ポップを消化したような、したたかなうまさがある。
1 曲目のオープニングで、水平線いっぱいまでまぶしい太陽に照らされて悠然と広がる海にサァっと涼風が吹きぬけるような感覚が味わえれば、すべてはしっくり心に馴染むだろう。
デジタル・シンセサイザーの音がこんなに魅力的に聴こえたのは、ほとんど初めてかもしれない。(ちょっと ASIA か VAN HALEN ですが)
やはりこのグループについては、音色がすべてのキーである。
それは、アコースティックな感覚あふれるエレクトリック・サウンドといってもいいかもしれない。
ふと気がついたのですが、時おりリズムがモタりゆらいでいる?
「Sleepwalk」(7:45)
キレのあるギターがはち切れそうに奔放な展開を支える名曲。
ミステリアスなオープニングに続く洗練されたテーマ、そしてさりげない変拍子とチャート・ポップスの調和。
ギターはどこまでも小気味よく、シンセサイザーはそのギターとしっかり連携して、時に軽やかに時に重厚に、キャンバスに虹を描く。
そして、男性的かつ爽やかなヴォーカル。
魅せられる点は多い。
躍動感あるギターのテーマは、一曲目にもってくるだけあって自信が感じられる。(最終盤で繰り出す変奏もカッコいい)
後半、朗々と歌うギターに続くゆったりとした、ローランド・オーザバルばりのヴォーカル・パートの存在がストーリーに厚みを与えている。
「Hiding In The Corner」(4:18)
風を切って走るように軽快な作品。
前曲の「はちきれ」感と対照的に、ヴォーカルを生かしたストレートな作風であり、英国伝統である、ポップ・テイストとファンタジーの配合の妙である。
キラキラとしたシンセサイザーのリフが先導し、ギターはワンコーラスおいて飛びこんでくる。
リズムに乗ったソロもいいが、曲をガッチリ引き締めるテーマとパワーコードのバッキングが冴えている。
比較的シンプルなギターに対して、キーボードはリズミカルなバッキング、後期 YES のリック・ウェイクマンを思わせる神秘的な音のソロで存在感を放つ。
「G.13」(5:43)
限りない飛翔の始まりから穏やかなその終焉までを描いたような、ドラマのある佳作。
伸び伸び高らかなギターがリードするところは 1 曲目と同じ。
イントロでは緩やかなシャフル・ビートと 3 連フレーズで心地よい安定感を作り上げ、用意ができたところで、一気に走り出す。
ギター・リフに機敏に応じてシンセサイザーはスタイリッシュなオブリガートを次々決める。
エネルギーに満ちた前半から、後半はゆったりと受けとめるようなミドル・テンポのバラードに変化する。
全編レガートなロングトーンのギターが冴える。
「Wonderful World」(8:19)
キャッチーながらも英国風のダンディなロマンチシズムが感じられる力作。
前半は気持ちのいい躍動を続けて後半は悠然と歌い上げ、最後にはすべてが合流して、ドラマを結ぶ。
半拍おいて始まるレガートなギターのテーマと、パーカッシヴなシンセサイザーの対比、そしてシンプルな繰り返しがサビであでやかに弾けるヴォーカルの妙。
たたみかけるように歌いこみ、コーラスですっと広がりを持たせる巧みな表現だ。
シンセサイザーはややクラシカルな端正さと大仰さで迫り、ギターはあくまでナチュラルに歌い上げる。
中盤まではリズムを強調した進行だけに、後半からのゆったりしたテンポによるソロが心地よい。
ギターの二つのテーマが耳に残る。
「More Than Meets The Eye」(4:50)
アコースティック・ギターとフルート、厳かなシンセサイザーなどによる幻想的なバラード。
GENESIS ほど屈折していないが、さりげない奇数拍子や丹念なアルペジオを採用して描く同様な世界である。
一方、フルートの使い方は CAMEL 風。
オープニングは、うつむくようなフルートとアコースティック・ギターのアンサンブルが前曲からシームレスにつながる。
ドラムレス。
短い歌詞には、人生の苦悩の翳がさす。
「The Beginning And The End」(6:10)
カラフルなサウンドとややブルージーな表情が微妙な対立でブレンドしたミドルテンポの作品。
ぐっと溜め込んでスコーンと弾けるかと思えば、今回は弾けない。
淡々と意見を述べているようなイメージである。
ギターは「フュージョン風」に伸びやかに歌い、バッキングも美しく愛らしいのだが、全体にメランコリックである。
これは、主として、ほんのり耽美な翳りも交差するヴォーカルの表情からくるのだろうか。
終盤、ギターが、あたかも元気づけるかのようにさまざまなリフレイン(スタイルはスティーヴ・ハケット?)で語りかける。
この作品で見られるようなふところの深さ(屈折度合い?)が、PENDRAGON よりも大人な音に聴こえる理由だろう。
「Holding Your Breath」(9:40)
「Pomp」なシンフォニック・インストゥルメンタル大作。
品のなさはブラス風のシンセサイザーのバッキングのみに帰せられるだろう。
こういう作風でも上品に抑えが効くところはさすがだが、やや取ってつけたようなフレーズや繰り返しで嵩を膨らませているところは確かにある。
チャンドラーのギターはゆったりしたフレーズでも速く鋭いヴィヴラートがかかるところが特徴のようだ。
後半のリズムレスのパートでの淡くも妖艶なファンタジー・テイストはさすが。
終盤のギター・ソロも万感胸に迫る。
ハケットのソロ作や CAMEL の大作に通じる作風であり、進むに連れだんだんよくなる(というか「らしく」なる)曲である。
インストゥルメンタル。
(XRCN-1146)
| Gary Chandler | lead vocals,guitars |
| Stephen Christey | drums, percussion |
| John Jowitt | bass |
| Martin Orford | keyboards, flute, backing vocals |
| guest: | |
|---|---|
| Josien Obers | cor anglais, oboe, backing vocals |
| Ken Bundy | backing vocals |
94 年発表の第二作「Across The Water」。
内容は、あたかも生の高まりを伸びやかに歌い上げるような、清涼感あるメロディック・ロック。
オプティミスティックなみずみずしさのある歌メロを軸に、ヘヴィなプレイと透明感ある音色のプレイがバランスよく配された、聴き心地のいいサウンドである。
こういった清涼感は、いわゆるプログレにおいてはきわめて異例ではないだろうか。
もちろん、爽やかなだけではない。
デリカシーを感じさせる物憂げなトーンもあり、さすが英国ロックと唸らされるのだ。
そしてヴォーカルは、男性的で細やかなニュアンスもある理想的なものだ。
エモーショナルであると同時に、ここ 20 年あまりの英国ポップ・シーンを生き抜いてきたしたたかさも感じさせる。
また、ギターのプレイは、親しみやすく小気味のいいフレーズをハキハキと歌い上げるスタイル。
基本はハードロック風の音使いのようだが、オーソドックスなテクニックを自然な流れで紡いで、ていねいにメロディを刻んでゆくところが好感が持てる。
そして、このヴォーカルとギターの二本立てによる活き活きとしたサウンドに、キーボードや管楽器を用いて繊細なニュアンスを付与している。
小気味よいギターのバックでは、優美なシンセサイザーが音に奥行きをつけ、淡く仄かな輝きで演奏を彩り、ソロやインタープレイでは躍動感あるピアノが、華麗な指さばきを見せる。
そしてダイナミックなプレイの谷間では、オーボエ、フルート、コ・アングレズが哀感あふれるメロディを歌うのだ。
リズム・セクション、コーラスも文句なし。
ギター中心ながらギター以外のアクセントが抜群にいいところが、やはり CAMEL を思い出させる。
いや、これはひょっとするとハードロック、プログレ、ハードポップ、フュージョンの養分を吸い取った新世代のロックかもしれない。
PENDRAGON よりも涼しく MARILLION よりもソフト。
80 年代の音に抵抗のない方へは絶対のお薦め。
全曲チャンドラーの作曲。
繊細な感性と理性のバランスがとれた大人のメッセージとしての歌詞もいい。
5 曲目はチャンドラーの朗唱と神秘的なキーボード/管楽器が生み出すプログレ・ファン感涙の傑作。
個人的には最高傑作。2009 年現在でも年に何度かは手に取るディスクです。
「Touch」(6:38)一人コール・レスポンス風のキャッチーなテーマとメロディアスなメイン・ヴォーカルによる代表作。
歌唱とギターともに説得力があるのだが、暑苦しくなくむしろ爽やか。
そして軽くなり過ぎないなためにはこのハードなギターの存在が欠かせない。
ASIA 以降のファンには無理なく入ってくる音だ。
キーボードは、堅実なバッキングでしっかりと楽曲を支え、華やかな間奏では、つややかにして透明感あるアクセントとなっている。
「In Isolation」(6:40)
前曲とあわせて二部作のようでもある。
透明感あふれるキーボードの響きを従えた朗々たる歌唱に、ハードエッジなギターで起伏をつけてゆく。
切なくむせび泣くソロ・ギターも印象的。
「Daylight Fades」(7:55)
ロマンティックで翳りのあるバラード。
タイトル通り、胸に迫る思いに心を乱される幻想的な薄暮の一時といったイメージである。
しっとりとしたサビなど、アコースティックな響きがいい。
華麗なるピアノのブリッジを経て、テンポ・アップ後はクランチなギターをリードに、アンサンブルが朗々と歌い走る。
フレットレス・ベースとの呼応、ピアノのオブリガートも冴える。
メイン・パートへ戻った後、最終部のギターとピアノのジャジーなインタープレイが意外だった。
「Everywhere I Turn」(6:16)
再びキャッチーなアコースティック・ギターのテーマと歌メロが冴えるアップ・テンポのナンバー。
間奏の軽やかなシンセサイザーがいかにもオーフォードらしい。
ニューエイジ風の間奏部も新鮮。
後半は産業ロックギリギリ(コーラスのせいか?)をキレのいい演奏で切り抜ける。
「A Life Is All You Need」(4:30)
夕暮れのように広がりとうっすらとした色彩感のある朗唱=バラード。
ギターのロングトーンの調べがゆったりと満ちてゆく。
コ・アングレズ、オーボエは涙が出るほど美しい。
「The World On Your Side」(7:04)
再びややポジティヴな明るさを取り戻した変拍子パワー・チューン。、
アコースティック・ギターのアルペジオがさざめき、愛らしいフルートの調べが舞うオープニング。
ヘヴィなコードを 7 拍子のテーマが軽やかに取り巻く。
中間部、一瞬のカッコいいシンセサイザー・ソロを経て、またも産業ロック化するが、テーマがしっかり受け止めて軌道修正。
後半はやや迷いがあるような展開。
ギターの新しいテーマもあまり冴えない。
むしろ素直に歌い上げる方がいいようだ。
チャーチ・オルガンや
「No Sacrifice」(7:50)
トリッキーなリズムによるヘヴィなアンサンブルの切り返しを多用するパワー・チューン。
最後は 1 曲目のテーマ変奏、再現なども見せつつ、余韻たっぷりのエンディングを迎える。
(GEPCD 1009)
| Gary Chandler | lead vocals, guitars, backing vocals |
| Stephen Christey | drums |
| Steve Hunt | bass |
| Mike Torr | keyboards, backing vocals |
| guest: | |
|---|---|
| Josien Obers | backing vocals |
97 年発表の第三作「Somersault」。
ジョーウィットとオーフォードが IQ の活動に専念するため一時脱退し、新メンバーを迎えた。
サウンドは、前二作の軽快かつ抒情的なものから、重量感あるダイナミックなものへとシフトしている。
ギターも、ハードなエッジのある音色/プレイになった。
ふくよかでイマジナリーな広がりから、よりソリッドで現実的な手応えを求める方向へ進んだ、といってもいいだろう。
リズムもアタックが強くなり、全体にはハードロック色が強くなっている。
また同時に、楽曲に複雑な構築性も現れており、いわゆるプログレ・スタイリッシュなプレイは増えているようだ。
この方向転換が、力強いリズムとヘヴィなギターのコンビネーションによるダイナミックで躍動感あるサウンドの希求、ということならば、新しいチャレンジであるし黙って見守ることができる。
しかしながら、もはやクリシェと化した変拍子パターンや、GENESIS 風のキーボード・プレイ(そりゃ「Firth Of Fifth」が名曲なのはわかるけどサ)は、いかにもとってつけたようなもののように思えてならない。
さらに、これらのプログレ常套句こそ、本作の新趣向であるスピードある展開や突き抜けるようなパワーと相反しないだろうか。
個人的には、もち味であったメロディアスに歌いこむヴォーカルも、メタリックなリフに象徴される今回の器楽との折り合いが、今一つに思えてならない。
再三思うのだが、テクニカルな見せ場は音楽的な必然がなければ、意味はない。
「プログレ・メタル風が受けるから」といったコマーシャルな判断が、元来もっていた特徴をかき消すのでは何にもならない。
総じて前二作のリリシズムを期待すると、やや的を外してしまうだろう。
テクニカルでアグレッシヴなスタイルはなかなか堂に入っているのだが、どうにも借り物めいているところがあり、そこの部分の瑕疵が全体を損なっている印象がある。
安易なクリシェさえなければ、かなりの力作だったのに、とても残念。
このグループに限っては、自然な歌心をスタイルで飾り立てる必要はないでしょう。
(MICY-1017)
| Gary Chandler | guitar, vocals |
| Stephen Christey | drums |
| Martin Orford | keyboards, backing vocals |
| John Jowitt | bass |
2000 年発表の第五作「Understand」。
ライヴ盤をはさんでオリジナル四作目。
キーボードとベースに IQ コンビが復活。
内容は、再び熱きエモーションを見せながらも清涼感もあるギター・ロック。
前作の経験も踏まえたのか、ヘヴィな音とライトな音がブレンドされて美しいテクスチュアを成しており、もはや JADIS 節というべき朗々たる歌にとけ込んでいる。
それに加えて、今回はメロディアスな面と相反するような幻想的で抽象的な面も見せている。
特にギターは、今までの朗々たるソロだけではなく、エレキギター本来のパワフルな音を意識して強調したプレイになっているように思う。
サウンドのトータル・イメージには 80 年代ロックを引き継いでいることが感じられるのだが、大きな違いは、かの時代に一世を風靡した人工的なデカダンスの魔力はきっぱり捨て去り、自然な情動の生む明るさと爽快感をもっているところである。
もちろん、それでも、キャッチーな音のなかに無常感を伴う物憂げな翳りがあり、英国ロックの伝統はやはりちゃんと息づいている。
チャンドラーは個性的なヴォーカリストとしても進境著しく、そのヴォーカルがギターと対等、もしくはそれ以上にアルバムのイメージを決めている。
全体に、ヴォーカルの比重こそあがったものの、内容は「Across The Water」をしっかりと受け継ぐものになっている。
逆に、ここまでくるとややワンパターンという意見も出そうだ。
ギターのスタイルのみならず、ドラミングやシンセサイザーの音にも、新しい方向性を取り入れようとする姿勢は見えるのだが。
個人的には、オーフォードとチャンドラーがもっと音的に刺激しあって、全盛期の CAMEL のような世界を見せてくれるとうれしい。
たとえば 3 曲目のインストゥルメンタル・パートなどは、ギター・ソロに加えてギター、キーボードのインタープレイの格好の見せ場でもあると思うのです。
「Where In The World」(5:53)メロディアスな歌もの。
爽快にしてロマンティックな JADIS 節。初期の二作品と共通する音楽性であり、南米の作品に通じるところもある。
ただ、初期作品と比べると、透明感よりも歌の力強さ、熱さが印象的。
「Is This Real」(6:54) 力強いドラミングが堂々とミドル・テンポを刻むも、独特の和声、プログレッションによる幻想の霧がたれこめる作品。
ブリット・ロックに涼感を持ちこんだこれまで作風からの若干のシフトを感じさせる。
「Alive Inside」(4:51)珍しく攻撃的なギター・ソロが堪能できる。
「Between Here & There」(2:56)ギターの 3 連フレーズがリードするブリッジ風の小品。
燃え上がるようなオルガンの響きもカッコいい。
どこかの曲の一部のような内容である。
「Racing Sideways」(4:43)
若い世代に負けない芯のあるギター・ロック。
今風のドラミングと小刻みなディレイ・エフェクト、遮二無二かき鳴らすギターが新鮮だ。
ヴォーカルが入るとこぶしが効くせいか格段にベテラン風味が増しますが。
「Understand」(6:43)フリップ/イーノか音響派を意識したようなアンビエントな演奏が印象的なタイトル曲。
前曲とクロス・フェードする入りがカッコいい。
もちろんサビでは力強くギターが轟きヴォーカルは熱い。
それでもどこか物憂い。
名曲。
「Giraffe Chariot」(5:09)
メランコリックながらもなかなかキャッチーな CAMEL 風のバラード。
ヴォーカル・ハーモニーが珍しく、独特の清潔感あり。
「Counting All The Seconds」(7:00)ポスト・ロック風のドラミングが印象的な作品。
エモーショナルに歌いつつもややミニマルで醒めた表情も見せる。
後半のギター・ソロが圧巻。
(JAD 004)
| Gary Chandler | lead vocals, guitars, backing vocals |
| Stephen Christey | drums |
| Steve Hunt | bass on 4-9,11 |
| Mike Torr | keyboards, backing vocals on 4-6,8 |
| Martin Orford | keyboards, backing vocals on 1-3,7,9,10,12-14 |
| John Jowitt | bass on 1-3 |
| Tony Diaz | keyboards on 11 |
2001 年発表の第六作「Medium Rare」。
93 年発表の EP「Once Upon A Time」と 96 年発表の EP「Once Or Twice」のカップリングと未発表音源から成る編集盤。
すでに廃盤であった二つの EP をリマスターされた音で聴くことができる、うれしい内容だ。
1-3 曲目は、第一作のイメージそのままの爽やか路線。キャッチーだが誠実で涼感あるリフ、透明感と存在感を兼ね備えたキーボード・サウンド(オルガンも鳴っている)、堂々たる歌唱などすでに完成された姿を見せている。
3 曲目はオーフォードが大活躍。
ベースの音がはっきりと聞えるのもリマスターの効果だろうか。
一方、4-7 曲目は、第三作のヘヴィな音と第二作までの爽快なメロディがバランスした、なかなかの内容。パワーコードの多用もあるのだが、オーフォードに代わるキーボーディストによるアコースティック・ピアノのプレイによってアダルト・ロック的な印象も生まれる。トニー・バンクスを数倍テクニカルにしたようなプレイも入れており、陽性のテーマに救われてはいるものの、やや様式がかったシンフォニック・ロックである。
もっとも、個人的には第三作よりもいい。
「Follow Me To Salzburg」(5:03)
「All In One Day」(6:31)
「View From Above」(7:40)
以上「Once Upon A Time」より。
「This Changing Face」(5:24)
「In The Dark」(4:01)
「Taking Your Time」(4:55)
以上「Once Or Twice」より。
「Hiding In The Corner」(4:33)ライヴ・ヴァージョン。
第一作収録。ギターは当然、シンセサイザーのサウンドが往年の YES を思わせる。
95 年アムステルダム。
「Live This Lie」(4:45)リライト・リレコーディング・ヴァージョン。
第三作収録。97 年録音。
「Giraffe Chariot」(4:55)デモ・ヴァージョン。
第五作収録。98 年録音。
「The World On Your Side」(7:10)ライヴ・ヴァージョン。
第二作収録。ライヴでの再現が大変な作品とコメントされているが、この演奏はたいへん優れている。
95 年アムステルダム。
「Acoustic Medley」(3:43)チャンドラー/オーフォードのコンビによるベース、ドラムレスの作品。二人で周ったアコースティック・ツアーの成果の一つ。99 年録音。
「This Changing Face」(5:04)「Once Or Twice」より、アコースティック・ヴァージョン。97 年録音。
「Alive Inside」(4:39)デモ・ヴァージョン。
第五作収録。98 年録音。
「Old & Wise」(4:39)未発表。
ALANPARSONSPROJECT「Eye In The Sky」収録曲のカヴァー。
コリン・ブランストンに負けない名唱。
98 年録音。
(JAD 005)
| Gary Chandler | guitar, vocals |
| Steve Christey | drums |
| Martin Orford | keyboards, backing vocals |
| John Jowitt | bass |
| guest: | |
|---|---|
| Julia Worsley | backing vocals |
2003 年発表の第七作「Fanatic」。
叙情的でファンタジックな広がりにヘヴィな音も交える近年の作風に、ほんのり耽美な色調を加味した傑作。
JADIS 節といっていいメロディアスなヴォーカルはそのままに、ハードながらもヒネリも効いたギターをたっぷり盛り込み、初期の淡い爽快感も含めつつ、より多彩な表現へと踏み込んでいるイメージがある。
キャッチーなメロディを歌いつつも、そこにとどまらず、いくつかの曲折を経る展開がある。
冒頭とエンディングに躍動感ある JADIS らしい作品(グサっと刺さるようなギター・リフを用いても、決して単調にならないところがみごと)を配しているが、中盤は、内省的な視線と空ろな心象風景をイメージさせる内容となっている。
そして、今回も、大きくゆったりと呼吸するようなキーボード・サウンドのテクスチャが、ギターと好対照を成しつつ、絶妙の均衡を保っている。
サイケデリックで自由なプレイと叙情的で繊細な語り口は、現代的な英国ギター・ロックのものであると同時に、シンフォニックなプログレ色の強まりとも受け取ることができる。
また、ドラムスは、前作に続いていろいろと研究熱心だ。
結論としては、初期の涼感とブルージーな哀感、そしてファンタジー性がバランスした傑作でしょう。
基本をしっかりと固めた上でのさまざまなアプローチがあるために、初期のファンと英国ロック・ファンの両方にお薦めできる。
CAMEL のファンにもいけるかもしれません。
ところで、スリーヴがだんだんストーム・トーガソンの PINK FLOYD に近づいているような気がしますが。
タイトル曲は、美しい慈愛のインストゥルメンタル。
3 曲目も夢うつつの幻想味あふれる佳作。
ボーナス・トラックは ASIA 風のパワー・チューン。
「the great outside」(6:34)
「into temptation」(6:38)
「each & everyday」(6:09)
「I never noticed」(5:24)
「fanatic」(4:04)
「yourself alone」(5:55)
「take these words」(4:16)
「what kind of reason」(8:17)
「who can we be sure of」(4:51)
「the flame is burning out」(4:08) ボーナス・トラック。
(INSIDE OUT 6 93723 00352 8)