アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「IZZ」。2008 年 現在作品は六枚。新しいオルタナティヴ・シンフォニック・ロック。2009 年 11 月新作「The Darkened Room」発表。
| Tom Galgano | keyboards, vocals |
| Paul Bremner | guitars |
| Brian Coralian | electric & acoustic drums & percussion |
| Greg Dimiceli | drums, percussion |
| John Galgano | bass, guitars, vocals, keyboards |
| Anmarie Byrnes | vocals |
2009 年発表の第五作「The Darkened Room」。
英国王道ロック調に磨きがかかった大傑作。
オルタナティヴなマインドあふれる若々しいロックを前作で獲得した豊かな響きで包んだ作品である。
過剰なまでにセンチメンタルで、血がたぎって熱くなればなるほどクールに青ざめて、涙をあふれさせながら絶叫を止められない、そういう魂を抱えながら音を紡いでスタイリッシュに(カッコつけて)ぶつけてくる。
ロマンを掲げても決してキレイごとには足をすくわれていないし、のぼせたリスナーにはやんちゃなギターで一撃をかます。
そして、独特の色調でこれだけしっかりと全体をまとめていながらも、コンセプトなんてうんざりだぜといい放ってしまうところもいい。
そのとおり、コンセプトなんかじゃなくて音なのだ、肝心なのは。
XTC、MARILLION 、PORCUPINE TREE との共通点を云々するより、英国ロックの叙情味、ロマンのエッセンスをみごとに吸収、会得したことを賞賛したい。
今の世の中自分をゴマカサずにこういう風になれるってのはそれだけで大したものだ。
そういえば、YES はアメリカン・ロックの影響を強く受けてスタイルを作り上げたが、そのこだまがアメリカに返ってきて、こういう音を生み出している。
渡り鳥か回遊魚のように大西洋を巡る何かがあるのだろう。
とても興味深い。
また、フランスの NEMO とともに SPOCK'SBEARD や ECHOLYN を追いかけていつしか同じ地平にたどりつたように思う。
もしブレット・カルやニール・モースが見ていた景色がちょっぴりダサく思えたら、そこからがまたおもしろくなるはず。
唖然とするほど堂々としたシンセサイザーの調べ、キレのあるアコースティック・ギターと問答無用のエレキギター、沸騰するようなリズム。
カッコいいロックです。
個人的に 2010 年愛聴盤ベスト 5 入り確実。
(DOONE RECORDS DR8-669563)
| Tom Galgano | piano, synthesizer, acoustic guitar, vocals |
| John Galgano | guitar, bass |
| Philip Gaita | bass, piccolo bass, acoustic guitar |
| Brian Coralian | percussion, drums |
| Greg Dimiceli | drums |
| guest: | |
|---|---|
| Paul Bremner | guitars on 2,8,9,11 |
| Michela Salustri | vocals on 3,5,6,11 |
| Danielle Altieri | vocals on 3,11, flute on 3 |
99 年発表の第一作「Sliver Of A Sun」。
内容は、初期の YES を思わせるパーカッシヴなオルタナ系プログレッシヴ・ロック。
YES らしさは、硬質なベース・サウンドとクリーントーンで音数の多いギター(ヴォリューム奏法あり)、アナログ風キーボードの多用、ハイトーンのヴォーカル・ハーモニーなどに顕著。
エレクトリック・パーカッションも用いるツイン・ドラムス編成なだけあって、全体にリズムの強調された、鋭角的でひっかかりの多い演奏である。
メロディアスな場面だけ聴いているとごく普通のアメリカンなロックなのだが、アナログっぽいシンセサイザーのリードする演奏やヴァイオリン奏法のギター、ヘヴィに歪んだベースといった特定の「音」の与えるイメージが強烈であり、EL&P や YES を思い出さざるを得ないのである。
記名性が高い、というやつだ。
特に、ギターとキーボードは意図的なスタイルの模倣も多そうだ。
せわしなくぎくしゃくと角ばったインストゥルメンタルとゆったり緩やかなヴォーカル・パートが対比、交錯する展開もプログレらしい。
そして、アコースティック・ギターの弾き語りによるルーラルで伸びやかな演奏は、ECHOLYN や SPOCK'S BEARD と全く同質のものである。
これらのグループ同様、エネルギッシュなアメリカン・オルタナティヴと 70 年代英国プログレ的表現が結びついた作風といえるだろう。
スネアをひっぱたくドラムスの生むチープなストリートっぽいビートも、このスタイルには合っている。
一部女声のコーラスも入る。
いわゆるプログレらしい大作は少なく(もっとも短い曲の中で思い切り暴れているところは多いが)、わりとキャッチーなメロディがリードする小品が中心になっている。
YES にも似たようなアプローチのアルバムがあるが、彼のグループが時流/世間に合わせたのに対して、こちらには、ごく自然に好みの音をまぜあわせて迫った若い勢いが感じられる。
結果の音が似ていても、姿勢の違いが大きな聴き応えの差をもたらしているようだ。
REM と YES の合体、もしくはリード・ヴォーカルとギタリストが兄弟らしいというところまで似ている第二の SPOCK'S BEARD。
もっとも、ハモンド・オルガンの音が少ない分、暖かみや広がりよりも跳ねるような活きのよさが強調されてます。
また、インディ系っぽいプロダクションがじつにハマってます。
1 曲目「Endless Calling」、8 曲目「Just A Girl」、 10 曲目「Razor」がカッコいい。
ぜひタランティーノの作品で使っていただきたい。
即物的なタイトルに若さとともにある苦悩が響く。
「Endless Calling」(5:07) 「YES に影響されたアメリカのバンド」そのもののような力作。
「I Get Lost」(4:41)
「Lornadoone」(4:14)ECHOLYN そっくりのカントリー・フレーヴァーあふれるアメリカン・フォークロック。
躍動する演奏、コケットな女声のコーラス、鼓笛隊風のフルートが冴える。
トレモロ風のギター・リフは、YES というか、YES の原点 BIRDS や CSN&Y か。
物語風の展開にパーカッションが巧みに活かされている。
密度の高い作品だ。
「She Walked Out The Door」(3:00)乾いた感じのバラード。
手が切れそうなアコースティック・ギター、涙が固まったようなピアノの音。
モダンなオルタナティヴ・ロックである。
「Assurance」(9:03)英国ロック風の憂鬱なバラードから YES、EL&P、ネオプログレ調の怪しげなシンフォニック・ロックへと羽ばたく大作。
「Take It Higher」(3:14)今風の音。
「Double Bass」(2:23)ベースを目立たせたリズミカルなインストルゥメンタル。
弾力ある変拍子反復が "DISCIPLINE" CRIMSON か GENTLE GIANT 風なのだが、ぐっとストリートっぽい。
「Just A Girl」(4:16)今風の音。小気味いいリズム。挨拶代わりに横っ面を張ったらすぐさま張り返される、そんな感じです。
「Meteor」(5:21)イタリアでこの 3 連だとタランテラだが、アメリカなので妙にクラシカルかつフォークダンス調。(豆知識:映画音楽の大家ジョン・ウィリアムスの師匠カステルヌォーヴォ・テデスコは亡命イタリア人作曲家である)アコースティック・ピアノが受け止めると一気にファンタジーの世界が広がり、オルガンとヘヴィなギターで一気にプログレ化。
大仰なヴォーカル含めアメリカン・プログレらしい佳作である。
「Razor」(7:00)リズミカルでパーカッシヴなアンサンブルを活かした個性的な傑作。
ひねくれた展開とエキゾティックなアクセントもカッコいい。
サウンド面で PORCUPINE TREE、雑食性の処理の巧みさの面で SPOCK'S BEARD にも一脈通じる新しいプログレだ。
「Where I Belong」(10:19)終曲らしいメロディアスで厳か、救済をイメージさせる作品。
リード・ヴォーカルは女性。
MAGENTA や IONA のような音も、ワンポイントとして入るとなかなかいい感じです。
エピローグのサウンド・スケープは「危機」のイントロでしょうか。
(DR1-2233)
| Tom Galgano | keyboards, vocals |
| Paul Bremner | guitars |
| Brian Coralian | electric & acoustic percussion, drums programming |
| Greg Dimiceli | drums |
| John Galgano | bass, guitars, vocals |
2002 年発表の第二作「I Move」。
ベーシストが脱退し、前作のゲスト・ギタリストがメンバーとして加入。
その内容は、ダブ、ヒップホップ調のリズム、ECHOLYN を思わせるアメリカン・ロックらしいヴォーカル・ハーモニーなど乾いたアメリカの音に、OASIS にも迫る鼻っ柱の強さと PORCUPINE TREE のメランコリーなど英国の翳りがほどよく交じりあい、おまけに 70 年代プログレの香りとニューウェーヴっぽさ(タイトル曲なんてコリン・ムールディングの曲に似てないか?)、さらにはギターロック系のコンテンポラリーなセンスまでもが散りばめられた、きわめてキャッチーなロックである。(長くてすまん)
クールなハーモニーもいい感じなのだが、とりわけみごとなのがギター。
昨今 HM やフュージョンの馬鹿速弾き系以外ではどちらかといえばワサビやヒネリ、リズミックな使い方が主になってしまったギターだが、ここでは前時代的ともいうべき正統的なフレーズ・センスで堂々と真っ向勝負をしかけて、ときに大爆発している。
そして、シンセサイザーやギターによるプログレ然としたイディオムを抑えたのも正解だった。
なにせ、ナントカっぽいという入りやすさは瞬く間に陳腐になるものだから。
オブリガートやバッキング、間奏に「あれっ」と思わせるようなプレイをさりげなく置いた方が、どれだけ曲が活きるかをちゃんと分かっているのだろう。
また、ヴァイヴ含めパーカッション類は今回もカッコよく散りばめられていて、微かなラテンっぽさがリズムをしなやかで逞しくしている。(アメリカン・ロックに共通するこのラテンっぽさは、近年 MARS VOLTA によってもクローズアップされていると思う)
一部で頭の悪い大学生のようなヴォーカル表現にその審美センスを疑いそうになるのだが、要所で聴こえる個性的なキーボード、ノイジーでひねくれ返ったギターの薬味や、思いのほかロマンティックな表情をたたえて迫る展開などがあり、プログレ・ファンの琴線には必ずひっかかると思う。
かつて JAMIROQUAI を耳にしてオールド・ポップス・ファンが「おおっ」と身を乗り出したのと状況は似ているし、往年のイタリアン・ロックを思わせる「無理やりなのだが憎めない」というところもたくさんある。
SPOCK'S BEARD と比べると演奏の運動性ではやや分が悪いながらも、英国ロック直系のひねくれリリシズムとパーカッションを活かした音のトンがり具合は、かなりのもの。
プログレを核とした幅広い表現に MARILLION が思い出されることもあるのだが、違いはこちらの方がリズム中心でありタッチが鋭角的なことだ。
キャッチーな佳作が並ぶが、白眉は、インダストリアルなタッチで迫る 7 曲目のインスト・ナンバー「Star Evil Gnoma Su」と、とんでもない爆発力を発揮した 14 曲目「Coming Like Light」。
この大作はまちがいなくプログレど真ん中であり、ひさびさのヒットでしょう。
集中と発散など抑揚のつけ方がみごと。
個人的には 10 曲目の小曲「Believe」も好み。
逆に 11 曲目「Knight Of Nights」のようなモロにネオプログレな音は今一つ。
HM っぽさは皆無の英国ギターロック系の音であり、プログレを下地にしつつもベタつかず小気味いい。
ECHOLYN の再デビュー作が気に入った方もぜひ。
本作品は 2001 年 9 月 11 日の事故の関係者に捧げられている。
「Spinnin' Round」()
「I Move」()
「Weak Little Lad」()
「I Already Know」()
「I Wanna Win」()スティーヴ・ロザリーばりのギター・ソロがみごと。
「All The New」()
「Star Evil Gnoma Su」() "Nuovo Metal" CRIMSON ばりのアグレッシヴで無機的な変拍子インストゥルメンタル。
「Another Door」()
「Something True」()
「Believe」()
「Knight Of Nights」() 珍しく普通にネオプログレな作品。トリビュートものに向けた練習でしょうか。
「The Mists Of Dalriada」()ヘヴィな音を使ったヨーロッパ舞曲風のインストゥルメンタル。前作の「Meteor」を思い出します。
「Oh, How It's Great 」()
「Coming Like Light」()
「Light From Your Eyes」()
(DR2-669563)
| Tom Galgano | keyboards, vocals |
| Paul Bremner | guitars |
| Greg Dimiceli | drums, percussion |
| Brian Coralian | electric & acoustic drums & percussion |
| John Galgano | bass, guitars, vocals, keyboards |
| Anmarie Byrnes | vocals |
| Laura Meade | vocals |
2005 年発表の第四作「My River Flows」。
適所に配した的確なサウンドと安定感ある演奏に風格すら漂う傑作アルバムである。
多彩極まる表現はまさに現代的なプログレッシヴ・ロックだが、目まぐるしい演奏に悪食に感じさせないセンスのよさがある。
リラックスしたアメリカン・ロックのいいところがしっかり生きている感じだ。
この作風ならラジオから聞こえてきても違和感はまったくない。
それにしてもこのこなれた、落ちつきある作風はどこからどう辿りついたのだろう。
デリケートなたたずまいに魅せられるばかりか、すっと走り出したときのしなやかで爽やかな姿には思わず息を呑んでしまう。
躍動するエネルギーの源になっているのはツイン・ドラムス。今回も丹念に表情をつけている。
そして、意外なほどにテクニシャンのギタリスト。
キーボーディストはさりげなく全体を見渡して抑えを効かせている感じだ。
アコースティック・ピアノの響きには乾いたリスナーが心を寄り添わせるのにちょうどいい手ざわりがある。
ECHOLYN よりも音の洗練度合いは進んでおり、幻想的でナイーヴな心象風景と現世に躍動するポップを矛盾なく結びつけてメッセージを送り出すところは、往年の YES すら思い出させる出来映えです。
ドラムス含め、きわめて生っぽい音なのに、細かな音がきちんと聞こえてくる辺りは、製作面も相当に充実しているのでしょう。
現代アメリカン・プログレの代表作の一つといっていいでしょう。
「My River Flows」()
「Late Night Salvation」()
「Rose Coloured Lenses」()
「Deception」()
「Crossfire」()
「Anything I Can Dream」()
「Abby's Song」()
「Defeaning Silence」()
(DOONE RECORDS 5669563)