ISOTOPE

  イギリスのジャズロック・グループ「ISOTOPE」。 73 年ブライアン・オーガーのグループや、STOMU YAMASH'TA'S EAST WIND を経たゲイリー・ボイルを中心に結成。 三枚のスタジオ・アルバムを残す。 MAHAVISHNU ORCHESTRABRAND X と並ぶ硬派ブリテッシュ・ジャズロック・グループ。

 Isotope

 
Gary Boyle guitars
Nigel Morris drums
Brian Miller keyboards
Jeff Clyne bass

  74 年発表の第一作「Isotope」。 ベースに元 NUCLEUS のベテラン、ジェフ・クライン、キーボードにレイ・ラッセルの ROCK WORKSHOP からブライアン・ミラー、そしてドラムに新人のナイジェル・モリスを迎えたデビュー作。 内容は、鋭いビートの上でエレピとギターが火花を散らすジャズロック。 ダイナミックというよりは荒々しい音で強引に突き進み、もつれながらもぐんぐん加速してゆく豪腕タイプである。 ギター、エレピともにディストーションとワウを少々カマせたようなサイケな音であり、手数の多いわりにはガチガチと固い個性的なドラムスと重なると、全体としてかなりせわしなく、酸味の効きに息づまるような演奏となる。 ギターのスタイルには、ジョン・マクラフリンからハッタリを抜いてジャズとロックを同時に極めようとするような誠実なものが感じられる。 ただし、生真面目なだけに融通は利かない。 ピッキングでゴリ押しするプレイが痛快だ。 キーボードのスタイルには、同じ時期のハービー・ハンコックと共通するファンク趣味が感じられる。 スピーディなインタープレイは、電化マイルス後期または中期 RETURN TO FOREVER に迫り、ファンタジックな演出もなかなかだ。 軟弱さの欠片もない、テクニカル・ジャズロックの佳作といえるだろう。 全曲インストゥルメンタル。 作曲はブライアン・ミラー。 プロデュースはティム・シャーマンとグループ。

  1曲目「Then There Were Four」(4:09) 性急なドラム、ベースが飛び込み、ギターとエレピによる激しいユニゾンのキメをきっかけにアンサンブルが走り出す。 自己紹介ソロ回しは、まずエレピから。 速弾きとファンキーなフレーズ。 続いてギターはハードロック・ギターの三倍速弾き。 続いてドラム・ソロ。 息つく間もない硬質で手数の多いプレイ。 再びベースのリフに導かれてテーマの全体演奏へと戻り、派手に終わる。 ユニゾンのテーマ・リフ + ソロ回しという古典的なお作法を守りつつも、桁外れのパワー・プレイを盛り込んだハード・ジャズロック。 凄まじいソロは、形式のたがをぶち切らんとするパワーの象徴である。 目の醒めるアルバム・オープナーだ。 薄っぺらくデッドな音質がかえって生々しさを強めている。

  2曲目「Do The Business」(4:42) テーマは、ブレイクを巧みに挟んだシンコペーション気味の変拍子リフ。 ギター、エレピのユニゾンである。 ドラムのロールと、ブレイクするリフの組み合わせが、独特のノリをつくる。 リフはベースが引継ぎ、まずはエレピのアドリヴ・ソロ。 ギターは小気味のいいコード・カッティング。 やがて待ちくたびれたようにギターも勝手にソロを取ってエレピに絡み始める。 ギターとエレピが、フルパワーで自己主張する。 けたたましい演奏だ。 最後まで妥協することなく、ぎりぎりと額をすり合わせて、ついには合流をあきらめたかのようにテーマへと帰ってゆく。 どことなく居心地の悪いまま、次第に落ちつきを取り戻してゆく。 カッチリした変拍子リフがぎこちなさを生む奇妙なファンキー・チューン。 中盤、ギターとエレピが正面きってぶつかりあうエネルギーで、全てが消し飛ぶ。 最後のテーマ演奏は、あたかもギターとエレピによる喧嘩の後の仲直りのように聴こえる。

  3曲目「Oh Little Fat Man」(5:20) スピーディな全体演奏がフェード・インするも、ギターが重なりリズムが尻すぼみに消えてしまう不思議なオープニング。 一から出直し風に始まるエレピ・ソロは、荒々しい音色を用い、速弾きとスケール上昇、リズム崩しをからめてファンキーに跳ね回る。 続いてギター・ソロ。 ベンディングとペンタトニック・スケールのハードロック調速弾きに、ジャズ風のフリーな音も絡めて、時おりリズムを追い越すのも面白い。 ギターのワウが強まるとともに、演奏は鋭く収束し始め、ノリノリのエレピも合流し、オープニングのシャープなアンサンブルが走り出す。 しかしイントロ同様、ギターが重なるとすぐにエレピに絡めとられて、ヘナヘナと崩れてしまう。 エピローグ風にテンポをいったん落とすも、最後は三度強烈にリフをプッシュしつつフェード・アウト。 シャープでスピーディなジャズロック。 風を巻いて跳ねるようなリフで攻め立てるも、すかさず 3 連で受け止め切り返すアンサンブルの妙。 そして圧倒的なエレピとギターのソロ。 タイトなドラムも堪能するべし。

  4曲目「Sunshine Park」(3:57) 大きなヴィブラートで揺れるエレピが、静かにたゆとい、歌うバラード。 エレピの和音の揺らぎの中で、ギターも静かにエレピの旋律へ重なってゆく。 ソフト・タッチながらもパッションを秘めた芯の強さを感じさせるデュオだ。 シンバルのざわめきとともに情熱が高まり、ヴォリュームも上がるのだが、再び穏やかなデュオへと回帰し、美しい響きのうちに消えてゆく。 ドラムレス(シンバルはあり)の夢見がちで耽美なバラード。 アグレッシヴな曲が渦巻く中、一服の清涼剤であり、ファンタジックな余韻が心地よい。 タイトル通り、ちらちらと揺れる木洩れ日を思わせる演奏だ。

  5曲目「Bite On This」(2:21) ファズ・ベースによる謎めいた 8 分の 6 拍子リフ。 ダブル・ベースの音も重なっているようだ。 波乱を予感させる凶暴なオープニングだ。 ギター、エレピもベース・リフへと重なり、ドラムスとともにヘヴィな演奏が幕を開ける。 そして、ワイルドなギターが容赦なく割り込み、自由奔放に暴れ始める。 キーボード、ベースが一徹に刻むリフ、リズムなぞおかまいなしだ。 それでも、演奏に一塊になったような一体感があるからすごい。 坂を登ってゆくような演奏は、意外にアッサリとフェード・アウトしてゆく。 フェード・イン、フェード・アウトで超絶プレイのクライマックスだけ抜き出したような、緊張感ある作品。 頑固なリフと爆発力あるギター・ソロのコンビネーションである。 大作の抜粋のようにも思えるのだが、定かではない。

  6曲目「Upward Curve」(5:43) RETURN TO FOREVER ばりのエレピによる幻想的なオープニング。 タイトなリズムが飛び込むと、一気に曲調はファンキーに変化し、ビジーなギターとエレピのユニゾンやソロが展開される。 エレピは速弾きソロに加えてパワー・プレイでも迫る。 時おり切り込むムーグの音が新鮮。 ギターは、ジャズ出身であることがよく分かるフル・ピッキング・スタイル。 エレピのソロは、ユーモラスといっていいくらいファンキーで軽やかだ。 狂言回しは 11/8 + 9/8 のヘヴィなユニゾン。 深刻さを払底し、パワフルでファンキーな演奏を楽しむジャズロック作品。 ソロからデュオとめまぐるしく展開し、自由闊達な演奏が繰り広げられる。 ヘヴィながらもレガートな全体演奏と、細かな音の粒が弾けるようなソロの音質の対比が面白い。 ギター・ソロはジャジーにして武骨、エレピ・ソロは、R&B 色もある。 ファンキーなのに音がなめらかというよりはざらついているところが特徴だろう。

  7曲目「Retracing My Steps」(4:58) 最初は静かにベースとギターがユニゾンし、幻想的な雰囲気を盛り上げる。 シンバルの響きも妖しい。 ベースのリードで進み、決めが繰返される。 そしてギターが、密やかにすべり出す。 エレピとベースが、同じリフで伴奏。 ファズ・ベースやドラム・ロールが、耐え切れないようにヴォリュームを上げるも、ゆっくりと沈み込みバッキングとしてギターの演奏を支える。 続いて、エレピが静かにコードを響かせるソロ。 テーマ・リフのユニゾンで決めが何度も入り、ヴォリュームも上りかけるが、再び静かに落ちついたプレイに戻ってゆく。 ベース・リフとそれを支える緻密なドラムがリードするナンバー。 ギターやエレピも静かにソロを歌う。 息苦しいほど抑制されたプレイが光る。 SOFT MACHINE 的。

  8曲目「Windmills And Waterfalls」(3:30) アコースティック・ピアノの左手が静かに和音を刻み、右手とアコースティック・ギターのユニゾンが切ない調べを奏でてゆく。 転がるようなエレピの響き。 気持の高まりを、そのまま音に移し込んだようなメロディ。 アコースティック・ギターは、スパニッシュなソロで情熱を吐き出し、次第に静かになってピアノとのユニゾンへ戻ってゆく。 静かな気品あるアンサンブルは、熱い感情を秘めつつ消えてゆく。 ピアノ、ギターともにアコースティックな音を用いた珠玉のバラード。 4曲目とともに、アルバムの「静」の部分を担う。 クラシカルな美しさをもつ音が、宝石のような調べを生み出し、その翳りには情熱が埋み火のように燃えている。 ドラムレス。

  9曲目「Honkey Donkey」(6:07) フェード・インするといきなりクライマックス、全開のハード・ジャズロック。 ギターとエレピのビジーなユニゾンと、スピーディなリズム。 汗と熱気が迸る。 激しいビートにのって、ムーグによるつややかにしてスリリングなメロディ。 いい音だ。 続いて、ギターが走り出しムーグとからむと、すぐに主導権を奪って疾走する。 トレモロは手癖か。 そしてエレピが加わり、ギターにワウがかかると、激しいアンサンブルが立ち上がって走り出す。 凄まじい手数のドラム。 ビジーなユニゾンが、鮮やかに決まる。 引きはエレピの響きだが、一瞬でギターに押し流され、ユニゾンの攻めが続き、最後も短いユニゾンが決まって終る。 アルバム全体のリプライズのような内容を持つ、重量感ある快速ジャズロック。 激しく手数の多いドラミング、拍数もふっ飛ばすようなギターのフレージング、極端な決めとビジーなユニゾンなど何もかもが入っている。 とにもかくにもハイ・テンション、スピード感にあふれる強烈な演奏である。


  テクニカルなギターとキーボードが火花を散らすクロスオーヴァー/ジャズロック。 ストーリーといえるような起伏は若干あるものの、基本は、ストレートで剛球真っ向勝負の演奏である。 エレピの音は RETURN TO FOREVER 調だが、アタックの強いギターによるパフォーマンスは、圧倒的かつ遥かにワイルド。 特に 6 曲目「Upward Curve」のようなパワー・ソロになると、実に生き生きとしてくる。 そしてギター、エレピを支えるリズム・セクションの技巧も、もかなりのもの。 ドラムは手数勝負の若々しいプレイを見せ、ベースはベテランにしてはなかなか大人気ない音なのだが、さすがにプレイそのものは堅実にして俊敏である。 全体にみなぎるラフさと潔さが、なんとも魅力的である。 強引なところや音色が古臭いところもあるが、豪快なプレイとストレートなロマンチシズムのコンビネーションはかなり魅力的。 BRAND X というよりは、ギター入りの中期 SOFT MACHINE というイメージかもしれない。 73 年というと、WEATHER REPORT は「Sweet Nighter」でグルーヴ路線に転身し、RETURN TO FOREVER は初めてギタリストを迎えてロック色を強め、MAHAVISHNU ORCHESTRA は、第一期のメンバーによるスーパー・ライヴ盤が出ていた頃だ。 また、SOFT MACHINE が最高傑作の一つである、フュージョン色濃い「7」を出した時期でもある。 ジャズロック絶頂期である。 本作も、短くも鮮やかに花咲いたブリティッシュ・ジャズロック/クロスオーヴァー・サウンドの代表作の一つといえるだろう。
(SEECD 432)

 Illusion

 
Gary Boyle guitars
Nigel Morris drums
Laurence Scott keyboards
Hugh Hopper bass

  74 年発表の第二作「Illusion」。 音楽的な見解の相違から、作曲のキー・パースンだったブライアン・ミラーとジェフ・クラインが脱退(後年二人は TURNING POINT を結成)、ベースは元 SOFT MACHINEEAST WIND の同僚だったヒュー・ホッパー、キーボードはローレンス・スコットに交代する。 細分されたリズムがドライヴする緊迫感たっぷりのジャズロック・スタイルに大きな変化はないが、ギターのプレイに象徴されるように、やや荒削りな部分が減ってなめらかさが増したようだ。 硬派に押し捲る演奏とともにミステリアスな演出も巧みであり、楽曲の懐が広がった感じである。 但し前半に比べて、後半はややモチーフどまりの曲が多いようにも思える。 また、ホッパー得意のファズ・ベースやシンセサイザーが大幅に使われているところも目新しい。 ちなみにスコットは歯医者さんが本業だったそうだが、歯科医とジャズロック・プレイヤーって適性に相関でもあるのだろうか。 全曲インストゥルメンタル。 プロデュースはポリ・パーマー。

  「Illusion」(3:54) シャープな 8 ビートによる、お得意の疾走感あるナンバー。 ボイルのギターは、テーマではワウを用い軽妙な調子を見せ、後半のソロ・リードでは縦横無尽の速弾きを見せる。 ホッパーのワウ・ファズ・ベースも全開。 キーボードはクラヴィネットだろうか。 ドラミングは前作よりも固さが取れてダイナミック。 緊迫感のある演奏だ。

  「Rangoon Creeper」(6:01) 引きずるようなユニークなリフがドライヴするミドルテンポのファンキー・チューン。 あたかも前曲からつながっているような、強烈なファズ・ベースとクラヴィネットの音。 中盤は視界が開け、ギターとエレピによるグルーヴィなインタープレイが続く。 もっともギターは次第に加熱して独走するのだが。 エンディングは、再びずるずるとヘヴィでファンキーなリフ。 全体にエフェクトの酸味が効いている。

  「Spanish Sun」(7:50) ホッパーのあやしげなベース・ソロに、サラセン風のギターが重なってゆくオープニング。 シタールに似たアコースティック・ギターも交え、MAHAVISHNU ORCHESTRA 調である。 アコースティック・ギターと超絶エレキ・ギターの対話が続く。 リズムが入る中盤からは、エレピのソロ。 ベースはファズなしのオーソドックスなプレイ。 エレピはややメリハリに欠ける。 そして圧巻のギター・ソロ。 穏やかな音使いにも関わらず、すさまじいピッキング・プレイである。 なめらかなジョン・マクラフリンといたところ。 全体にミステリアスな曲調であり、MAHAVISHNU ORCHESTRABRAND X に通じる作風である。

  「Edorian」(2:01)再びテンポのいい快速 8 ビート・チューン。 前半 SOFT MACHINE 風のファズ・ベースが見せ場をつくり、エレピとギターのユニゾンへと進展する。 空高く飛び上がってゆくような曲調がカッコいい。 最後はサイケなテープ逆回転。

  「Frog」(2:31)8 分の 6+4 拍子のレガートでヘヴィなテーマをもつナンバー。 ここでもテーマに反応するギターとエレピの技巧的なユニゾンが、緊張を高めてゆく。 ファズ・ベースのハードなテーマにのって走るギターがすばらしい。 パワーと敏捷さを兼ね備えた小曲。 前曲同様曲が短いため食い足りない。 MACHINE の「7」にホッパーがいたらこういう感じだったのかもしれない、なぞと想像を逞しくするのも楽しい。

  「Sliding Dogs / Lion Sandwich」(5:58) ファズ・ベースのオーヴァーダブによる、いかにもホッパーらしい不気味な音響主義風のオープニング。 ノイジーで危険なムードが高まる。 ギターとベースのユニゾンを軸に、フリー・フォームの演奏が次第にテンポを上げてゆき、中盤からギター、ベース、エレピが奔放ながらも緊密なアンサンブルへと収斂する。 息を呑む緊張。

  「Golden Section」(5:15)エレピのフィーチュアされたナンバー。 ファズ・ベース、ギターによるややヘヴィなテーマ、オブリガートとソロはエレピがリードする。 展開部ではベースはファズなしで、ホッパーらしからぬスムースな動きを見せつつ、ジャズっぽくエレピと絡む。 次第に盛り上がってゆくポリフォニックなアンサンブルが、すばらしい。 リズミカルでファンキーなのだが、複雑さゆえかあまり跳ね回らず、おっとりソフトな感触もある。 ギターのバッキングは和音がかなり大胆。

  「Marin Country Girl」(2:10)アコースティック・ギターとピアノ、ベースによる幻想的なトリオ。 ミステリアスなテーマにのって、ギターがやや翳りのあるプレイを見せる。 これもフェード・アウトで残念。

  「Lily Kong」(2:32)テープ逆回転して再生したと思われるギターを用いたナンバー。 はじめは何の音かわからなかった。

  「Temper Tantrum」(3:46)エレピとベースによるミステリアスなオープニングから、ギターのテーマへと発展する、BRAND X 風のダークなナンバー。 アコースティック・ギターとエレピのビジーなユニゾンがふわりと着地する快感。 そして迸るギターとたたみかけるエレピ。 エレキ・ギターは二本オーヴァー・ダビングされており、左右のチャネルか攻めたてる。 アコースティック・ギターとエレピによる裏テーマ・ユニゾンが執拗に挑みかかるが、二本のエレキ・ギターはとどまるところを知らずひた走る。 シンプルだが、溜飲の下がる痛快なナンバーだ。


  内容は概ね前作の踏襲であるハード・ジャズロックなのだが、攻めのプレイに抑制の効いたミステリアスなムードが加わり、音に深みの感じられる作品となった。 ブライアン・ミラーよりも控えめなキーボードのおかげで、ボイルのギターがくっきりと浮かび上がっている。 せめぎあうアンサンブルの生み出す緊迫感、そして激しさとリリシズムのコントラストという意味では、前作よりも一歩後退しているのだが、オーヴァー・ダビングも用いて作られたギター中心の曲想はきわめて豊かである。 特にオープニングからの三曲は、前作の手腕を見せた上でヴァリエーションへと進むという自信にあふれたつくりである。 ただし後半素材どまりの作品が続き、少しフラストさせられるのも確か。 アイデアが豊富なだけに、もう少し聴かせて欲しかった。 一方ホッパーは、ゲストに近い参加ながらもしっかり色を出している。 余談だが、CD 内ジャケの彼の写真がすばらしくカッコいい。

(SEECD 432, SEECD 731)

 Deep End

 
Gary Boyle guitars
Nigel Morris drums
Zoe Kronberger acoustic & electric piano, string synth, clavinet, vocals
Frank Roberts acoustic & electric piano, synthesizer
Dan K.Brown bass
guest:
Morris Pert percussion
Neville Whitehead acoustic bass
Hugh Hopper bass on 7
Laurence Scott synthesizer on 7

  76 年発表の第三作「Deep End」。 再びキーボード、ベースがメンバー交代し、新メンバーによるツイン・キーボード構成と多彩なゲストで録音されたラスト・アルバム。 これまでのテクニカルで緊迫感のあるギター・ジャズロックに、キーボードが陰影と深みを加えており、ジャジーでグルーヴィな音という意味では一番だろう。 エレピとともにシンセサイザー、アコースティック・ピアノがフルに活かされているのも、特徴的だ。 ただし音の種類が増えた一方で、過激な衝突や何もかも振りほどくような暴走やワイルドなファンキーさとは相反する、メローで落ちついたフュージョン・タッチが目立つのも事実。 リズム・セクションがやや軽めなせいか、華やいだ上モノの音が、さらりと流れてしまう感じもする。 それでもボイルのギターが、力の入ったプレイでなんとか剣が峰へ立ち尽くしている。 彼の潔く突っ込む演奏は、健在だ。 きわめてオーソドックスなジャズ・ギターにロック・スピリットを注ぎ込んだような熱いスタイルは、ジョン・マクラフリンとともにブリティッシュ・ロック・シーンの生み出した化学反応の豊かな実りの一つといえるだろう。 このギターがリードしてこそ、まさにロックからジャズへと(ジャズからロックへか ?)一歩踏み入れた「同位体」なのだ。
   1 曲目「Mr. M's Picture」は、前作までのハードなスタイルをシンセサイザーで彩ったカッコいい快速ナンバー。 このシンセサイザーの音は、ロビン・ラムレイによるものだろう。 ギター・ソロは、唖然とするほど超絶。 2 曲目「Crunch Cake」は、リフの上でエレピが踊るファンキー・チューン。 ギターはエフェクトを効かせて、小気味いいツッコミを入れる。 6 曲目「Attila」も、シャープなドラミングが心地よい佳品。 ホッパー、スコットがフィーチュアされる 7 曲「Fonebone」目は、前作よりもぐっとソフトなフュージョン。 ベースにファズはなしだが、シンセは深みあるいい音だ。 タイトル・ナンバーは、まさに ISOTOPE らしい気合の入った名曲。 小気味よいカッティングの後に、迸るようなソロが待つ。 プロデュースはロビン・ラムレイ。 See For Miles の再発 CD は、既存曲の曲順が変更されている。 またリミックスされたボーナス・トラックつき。

  1曲目「Mr. M's Picture」(4:54)ボイル作。挑戦的なリフ、食いつきそうなドラムスが印象的な超速チューン。 シンセサイザーのソロがフィーチュアされる。
  2曲目「Crunch Cake」(3:55)ロバーツ作。
  3曲目「Another Side」(4:00)クロンバーガー作。 アコースティック・ギター、ピアノ、ベースのトリオ。 うっすらと聴こえるスキャットはクロンバーガー女史?
  4曲目「Black Sand」(5:45)モリス作。
  5曲目「Pipe Dream」(6:27)スコット作。
  6曲目「Attila」(4:25)ボイル作。
  7曲目「Fonebone」(4:25)ホッパー作。ライトなフュージョン。 アナログ・シンセサイザーがいい。
  8曲目「Deep End」(8:22)ボイル作。謎めいたオープニングが BRAND X の「Livestock」を思わせる。 シャープなリフでドライヴされるハード・アンド・ミステリアス・チューン。 アコースティック・ピアノがフィーチュアされている。

(VIP-6587 / SEECD 731)

 Dancer

 
Gary Boyle 6 & 12 string electric guitars, acoustic guitar
Zoe Kronberger acoustic & electric piano, string synthesizer, mini-Moog
Robin Lumely electric piano, string synthsizer, mini-Moog
Rod Argent mini-Moog
Dave Macrae clavinet, elecric piano, ARP synthsizer
Doni Harvey bass
Steve Shone bass
Simon Phillips drums
Jeff Seopardie drums
Morris Pert percussion

  77 年発表のソロ・アルバム第一作「Dancer」。 内容は、メロディアスなプレイや音質がいわゆるフュージョンに近づきつつも、全体の表情がぐっとストイックでタイトなイメージを与えるジャズロック。 急旋回を繰り返す破天荒なボイルのギター・プレイを BRAND X 的なサウンドの中へと導き、独特の緊張感と薄暗いファンタジーを生み出した傑作だ。 いわば ISOTOPE の本当の最終作。 BRAND X の面々からサイモン・フィリップスに至る豪華ゲストのプレイも光る。 全曲インストゥルメンタル。 プロデュースはロビン・ラムレイ。

  「Cowshed Shuffle」(5:08)BRAND X そのもののようなダークなジャズロック。 ボイルもトレモロ気味のプレイに「らしさ」があるものの、ジャズというよりはロックっぽさのあるグッドソール調のヘヴィな速弾きがメインである。 ベースのドニ・ハーヴェイは、もろにパーシー・ジョーンズ。 華麗なピッチ・ベンドを披露するキーボードも BRAND X 風である。 唯一音質の異なるのは、あまりに華麗なフィリップスのドラムス。 すばらしいプレイです。 キーボード、ギターの順でソロが進み、最後にバトルへと雪崩れ込む。 名作「Livestock」に通じるサウンドです。

  「The Dancer」(7:30)ピアノ、エレピ、ストリングス・シンセなど華やかなキーボードに彩られて、ギターが思うさま走るファンキーなジャズロック。 グルーヴィなノリはあるのだが、リズムに前曲のようなカミソリの如き切れはない。 しかしモーリス・パートのヴァイブが新鮮だ。 またもベーシストがジョーンズの真似をしているのが愉快。 いわゆるフュージョン調の軽やかさに、エレガントなピアノなど巧みなアクセントをつけている。 中盤エレピ、ムーグ、ストリングス・シンセの順で、ギターとのかけあいを見せる。

  「Now That We're Alone」(1:30)フレットレス・ベース・ソロによる小品。エレピが静かに絡む。 余談だが、ベースはクラーク、ヴィトウス、ジョンソンあたりからソロ楽器として前に出始め、パストリアスによってその存在が決定的となった。 しかしリズムを感じさせることがおろそかになり、「弾ける」がちっともカッコよくないプレイヤーが増えたのも事実。 ドラムンベースはそういう傾向へのアンチテーゼだったのかもしれない。

  「Lullaby For A Sleepy Dormouse」(5:25)ストリングスが美しい AOR 調のメロー・フュージョン・ナンバー。 ギターは、デメオラ風アコースティック。 即興風のギターがリードするのみで、特に明快な展開はないのだが、プレイに微妙な表情があり起伏をなしている。

  「Almond Burfi」(5:02)ソフトな音ながらもスピーディでドライヴ感のあるフュージョン・ナンバー。 クラヴィネット、ベースをエフェクト処理し小気味いいビートを生み、そのうえでギターがハードなソロを繰り広げる。 中盤からは一気にファンキーに跳ね始め、ぐいぐい突き進む。 最後はムーグ・シンセのリードで、変則リズムのシンフォニックな演奏へと落ちつく。 ややオムニバス風の作品だ。

  「Pendle Mist」(5:40)再び BRAND X を思わせる神秘的な即興風のナンバー。 緩やかな混沌から、静かに秩序が生まれてゆく。 リフはベース。 キーボードがそっと寄り添う。 力の入ったアコースティック・ギターは、胸のたけを吐き出すような激しい音を刻み込む。 ストリングスが染み入る。 抑制とルーズさが交じったような奇妙な味わいを残す。

  「Apple Crumble」(3:18)デイヴ・マックレエの超絶エレピをフィーチュアした快速ジャズロック。 エレピに触発されてか、ギター・ソロも初期 ISOTOPE を思わせる激しさ。 後半は、巧みなインタープレイへ突っ込む。 要所で見せるフィリップスの打撃技はカッコよすぎ。

  「Maiden Voyage(For Brian Auger)」(4:15)ハービー・ハンコックの名作のカヴァー。 ブライアン・オーガーに捧げられている。

(GULP 1020)

 Live At BBC

 
Gary Boyle guitars on 1-9
Nigel Morris drums on 1-6
Brian Miller keyboards on 1-6
Jeff Clyne bass on 1-6
Zoe Kronberger keyboards on 7-9
Steve Shone bass on 7-9
Sergio Castillo drums on 7-9
Geoff Downes keyboards on 7-9

  2004 年発表の「Live At BBC」。HUX レーベルの発掘による BBC スタジオライヴ・アルバムである。 1 曲目から 6 曲目までは、73 年および 74 年の録音、7 曲目から 9 曲目は 77 年の録音である。 内容は、よけいな加工は一切なし、真っ向勝負のジャズロックである。 煽りたてるドラムスとともにギターがエレピが前のめりで突き進む。 BUGLESASIA のジェフ・ダウンズが、最後期のメンバーであったことが分かったことが収穫。


(HUX 048)


  
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