ISILDURS BANE

  スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・グループ「ISILDURS BANE」。 76 年結成の現役グループ。 84 年アルバム・デビュー。 作品は、2017 年現在十四枚
  YESCAMELMike Oldfield らの影響を受けた音から、フュージョン風味のシンフォニック・ロックへ、さらには格調のあるトータル作品へと、時代とともに作風は変遷を重ねる。 現在は、一種の総合芸術的なスケールの大きな作風となっている。 グループ名は「指輪物語」中の故事である「イシルドゥアの禍(一連の大騒動の元凶である)」より。

 Off The Radar
 
Klas Assarsson marimba, vibraphone, tam-tam, crotale, glockenspiel, shaker, snare, tom, bass drum
Mats Johansson Arp 2600, Kurzweil 2600, Minimoog D, Nord Modular, Mellotron, YAMAHA CS-80, prepared piano, treatment, piano, Oberheim expander, Roland V-synth
Axel Croné bass, bass clarinet, synthesizer, electric guitar, tenor & alto sax, clarinet, piano
Pieter Lenaerts double bassKjell Severinsson drums, carillon
Xerxes Andrén drumsSamuel Hällkvist electric guitar
Katrine Amsler keyboards, electronicsLuca Calabrese trumpet
Liesbeth Lambrecht violinAdam Sass trumpet
Lukas Wikström electric guitarLeif Jonsson conga, timbales, timbau, repinque, pandeiro, overtoneflute
Christian Saggese acoustic guitarPat Mastelotto electric & acoustic percussion, FX

  2017 年発表のアルバム「Off The Radar」。 内容は、鍵盤打楽器をフィーチュアしたエレクトリック管弦楽ロック。 いわゆるクラシックだけではなくジャズや現代音楽に振れるところも多いので、「プログレ」といって間違いない。 冷徹なサウンドをまろやかな打楽器の響きと巧みなメロディやアレンジでオプティミスティックな味わいある音楽に仕上げる手腕はここでも発揮されている。 ややシリアスな表情もあるのだが、独特のビート感やエキゾティックなアクセント、ほのかなユーモアなどでバランスをとっている。 フリージャズ風のサックスやツイン・ドラムスによるアグレッシヴなビートなど KING CRIMSON の作風と共通するところも多い。 (4、5 曲目にはパット・マステロットが参加) 復帰メンバーであるクラス・アサーソンの鍵盤打楽器が大活躍している。 ボーナス・トラックは、ガット・ギターの美しいソロ。 全曲インストゥルメンタル。


(ATX5CD)

 Sagan Om Den Irlandska Algen
 
Ingvar Johansson bass
Mats Johansson keyboards, vocals
Mats Nilsson guitars, vocals
Jan Severinsson keyboards, flute, mallets
Kjell Severinsson drums, percussion, mallets
Bengt Johansson saxophone
Anneli Nilsson backing vocals

  84 年発表のアルバム「Sagan Om Den Irlandska Algen」。 タイトルは、「エルクの伝説」。 核戦争後の近未来をテーマとした、コンセプト・アルバムらしい。 内容は、北欧らしく、冴え冴えとした品のよさと人懐こい暖かみが同居し、ほのかに幻想的なシンフォニック・ロック。 リズミカルなアンサンブルや素朴なヴォーカルを中心に、悠然とたゆたい、躍動し、透き通るようなファンタジーを綴ってゆく。 特徴は、トラッド調の哀感ある素朴なメロディ、優美で透明感あるサウンド、CAMEL を思わせるフュージョン風味、ひんやりとした音の感触など。 いわゆるロック・ビートを刻まないティンパニ風のドラミングや壮大なシンセサイザーの響き、小気味いいオルガンなどシンフォニックな音作りはもちろんのこと、フルートからピアノ、アコースティック・ギター、朴訥とした原語ヴォーカルと神秘的なコーラスによる幻想フォーク調の演奏にも味わいがある。 情熱と透明感が矛盾なく交わるのは、このトラッド・テイストによるのだろう。 そして、静かに、穏かにばかりではなく、動くべきところでは、サックス、ギター、シンセサイザー、ヴァイブがジャジーなポップス風のプレイをしっかり決めている。 凝ったリズムでスリリングにたたみかけるところさえ用意されている。 したがって、内省的で暖かみある繊細さと胸のすくドラマチックな広がりが調和し、なおかつ躍動感もある理想的な音楽になっている。 多彩な音色とセンスのよいアンサンブルは、いわば 70 年代のシンフォニック・ロックのいいところをすべて吸収したような、総覧的な内容といえる。 フュージョン、ニューエイジ、ヒーリングなど、もはや懐かしいといっていい同時代の音の影響も強いが、自然な純朴さやひたむきさがそこここに現れるところがこの作品のユニークさだろう。 この誠実さゆえに、楽曲のメッセージが言語の違いを超えて伝わってくる気がする。 クラシカルなアンサンブルをていねいに積み上げることのできる音楽的素養と生真面目な問題意識に加えて、想像の翼を融通無碍に広げられる、いわば高級なユーモアのセンスも感じられる。 高い構築性と若々しい勢い、エネルギーがぴったりと結びついているといってもいい。 演奏、サウンドともに自主製作に近い状況とはまったく思えない、高品位の仕上がりである。 さりげなくもポップな終曲に、本アルバムを象徴するセンスのよさが集約されている。
  素朴なテーマと愛らしくもクラシカルなアンサンブル、ヴォーカルは KAIPA、マリンバの使用とマイク・オールドフィールド調のトラッド風味は TRIBUTE など、同国の名グループとの接点も多い。 さらに、トラッドとジャズ・フュージョン、クラシカルなアンサンブルということでは、PEKKA POHJOLA、シンセサイザーのサウンドのイメージからハンガリーの EAST も思い浮かぶ。 ヴォーカルはおそらくスウェーデン語。
  CD は、Sagan Om Ringen」とのカップリング。

  「Overtyr」(5:10)「序曲」
  「Saga Eller Verklighter」(4:45)「虚構のサーガ」
  「Ove P.」(3:55)「オーヴェ・P」
  「Sex Minuter」(4:05)「6 分間」
  「En Vilja Att Leva」(5:30)「生への渇望」
  「Evighetens Visdom」(5:00)「老人の知恵」
  「Marlboro Blues」(4:20)「マルボロ・ブルース」
  「Fredrik」(4:10)「フレドリック」

(IR LP 001 / SUCD 003 92)

 Sea Reflections
 
Christian Jerhov trombone
Bengt Johansson saxophone
Mats Johansson keyboards
Stigge Lijunglof bass
Jan-Ove Nilsson trumpet, flugelhorn
Mats Nilsson guitars
Jan Severinsson keyboards, mallets
Kjell Severinsson drums, percussion

  85 年発表のアルバム「Sea Reflections」。 管楽器奏者の参加とともに演奏は思い切り華やぎ、調子のいいメインストリーム・フュージョン・タッチが前面に出る。 ギターは今回もナチュラル・トーンでよく歌っており、軽快なリズムとともに走る場面の印象が強い。 明るいトーンで朗々と歌う管楽器の響きから連想したのは、「California Shower」である。 ただし、キーボードがリードするアンサンブルの一部には、メランコリックな旋律とクラシカルなタッチもある。 管楽器がリードするアンサンブルでも、たとえば 6 曲目のように官能的かつ物憂げな演奏では、あたかも美しい夕暮れを眺めているかのような自然な感動が頭をもたげてくる。 これ以上能天気になるとさすがにここで紹介するのが苦しくなるが、先に述べたようなうっすらとしたメランコリーとデリケートな美感があるおかげで、なんとか聴きとおすことができる。 つまり、おおざっぱにいえば、80 年代初頭の CAMEL とほぼ同系統で、より管楽器の音が強い感じといえばいいだろう。 ヴァイブなど打楽器系の音は、本作でも個性的なアクセントになっている。 オール・インストゥルメンタル。
  CD は、「Eight Moments Of Eternity」とのカップリング。

  「Blizzrad」(5:10)この時代らしいキャッチーなフュージョン・ポップの佳作。何かの番組でジングルに使っていたような気がします。TRIBUTE と同じ芸風です。
  「Batseba」(4:10)
  「Sea Reflections part 1」(5:34)
  「Sea Reflections part 2」(6:25)
  「Poseidon」(4:02)
  「Bilbo」(3:45)
  「Top Secret - UFO」(5:05)
  「The Story Of Chester & Sylvester」(4:25)

(IR LP 002 85 / SUCD 004 92)

 Eight Moments Of Eternity
 
Fredrik Janacek bass
Christiann Jerhov trombone
Bengt Johansson sax, percussion
Mats Johansson keyboards
Jan-Ove Nilsson trumpet, flugelhorn
Mats Nilsson guitars
Jan Severinsson flute, synthesizer, mallet
Kjell Severinsson drums, percussion

  87 年発表のアルバム「Eight Moments Of Eternity」。 内容は、80 年代エレポップ風味を若干交えたジャジーなシンフォニック・ロック。 キャッチーなテーマをフュージョン風のライトな音色と軽快なリズムで彩りながら展開させてゆく作風であり、透明感と爽快感は十分である。 わりと込み入ったアンサンブルにもなっているのだが、なにせ音質が明るすぎるほど明るく軽いのでふわっと通り過ぎてしまう感は否めない。 そして、フュージョン・タッチが最も露になるのはサックスとベースのプレイのせいであろう。 フュージョン風とはいえ、テクニカルなキメやユニゾンはない。 音質のみ倣っているというべきだろう。 そして、唐突気味に弦楽や木管といったクラシカルな音が現われると格調が上がり、マイク・オールドフィールドばりの精緻にして奔放なしなやかさが現われる。 マレットやフルートの音は個性を印象つけるアクセントとして最も有効に機能している。 CAMEL が 84 年で辞めていなかったらこういう感じになったかもしれない。 完全な脳天気系フュージョンやニューウェーヴに寄りながらもそうはなり切らなかった一番の理由は、テクニックが足りなかっただけではなく、陽性のユーモア感覚と穏やかなメランコリーの存在だろう。 いわゆるロックとしての攻撃性やグラマラスな奇天烈さ、オルタナティヴな反骨心はほとんど感じられず、あくまで愛らしいイージー・リスニング調が貫かれている。 そしてそのイージー・リスニング調に誠実さと純朴さがはち切れんばかりにあって、自分の歌を心の底から歌い上げているところが魅力である。
  CD は「Sagan Om Den Irlandska Algen」とのカップリング。

  「Lady In Green」(3:55)
  「The Factory Man」(4:44)
  「Ben-Oni」(5:12)
  「The Second Step」(3:00)マイク・オールドフィールド with オーケストラな佳作。この路線が後々まで残ってゆく。
  「Happy Hip Hop」(5:12)
  「In The Same Class」(4:16)
  「Gheel」(5:50)
  「Above The Roofs」(3:18)

(IR LP 003 87 / SUCD 003 92)

 Sagan Om Ringen
 
Fredrik Janacek bass
Ingvar Johansson bass, moog
Mats Johansson keyboards, vocals
Mats Nilsson guitars, vocals
Jan Severinsson keyboards, flute, mallets
Kjell Severinsson drums, percussion, voice
Bengt Johansson percussion
Johan Holmberg cuckoo

  88 年発表のアルバム「Sagan Om Ringen」。 ボ・ハンソンの名品と同じく、「指輪物語」にインスパイアされた最初期のカセット作品を再録したもの。 アコースティックで穏かな音とキーボード、ギターによる躍動するアンサンブルが生むファンタジック・ロックの大傑作である。 KERRS PINK やボ・ハンソンに通じるフォーク風の郷愁あふれるメロディを CAMEL 風の柔らかなサウンドで包み、思いのほか情熱的な語り口で、しかし、なだらかに綴ってゆく。 全編、2 曲目のように、素朴にしてスウィートな弾き語りの世界をさまざまな音で彩り、ゆったりと広げてゆくスタイルが貫かれている。 この起伏に富んだ流れるような筆致と完成された雰囲気は、最初期作品とはにわかには信じられないほどの出来映えである。 GENESISCAMEL を英国フォーク・ロックの世界に押し戻したような音といってもいいだろう。 やはり、同時代の音 「Sagan Om Den Irlandska Algen」と比較すると、ジャズ・タッチはさほどでなく、ニューエイジというよりは JADE WARRIOR のようなアンビエント風味がある。 もちろん、マイクオールド・フィールドもある。 最初期作品だけあって、「Sagan Om Den Irlandska Algen」よりは 70 年代風味は強い。 初期から完成されていたグループであることがよく分かる内容だ。
  本作品は、81 年にカセットのみでリリースされ、88 年にフル LP として再リリースされている。
  CD は「Sagan Om Den Irlandska Algen」とのカップリング。

(IR LP 088 / SUCD 003 92)

 Cheval
 
Kjell Severinsson drums Bengt Johansson conga, EWI, drums
Fredrik Janacek bass, guitar, mallet bass, voice Mats Johansson keyboard
Jan Severinsson keyboards, mallets, percussion Jan Schaffer guitars
Tommy Nilson guitarsBjorn J:son Lindh flute
Martin Jonsson voiceKina Svensson voice
Small humans voiceIka Nord voices
Almaz Yebio vocalsTanja Olsson vocals
Bo Schunnesson vocalsTorgny Centre vocals
Mattias Frisk vocalsMagnus Evertsson vocals

  89 年発表のアルバム「Cheval」。 敬虔なキリスト教信者であり拾い集めた石で 30 年かけて夢の宮殿を造り上げたフランス人の郵便局員にインスパイアされた作品。 20 年代のシュルレアリストが再注目された 80 年代中盤に、ガウディのサグラダ・ファミリアとともに日本にも紹介されてポピュラーになった西洋版「虚仮の一念岩をも通す」物語である。 (最近では、インドのチャンディガールにある公務員の作った庭園も有名らしい) 誇大妄想や狂気と芸術性について高尚に描いたドキュメンタリーではなく、普通の人の可能性と夢を微笑ましく見守る寓話的なとらえ方が感じられる音だ。 音楽の内容は、悠然としたオーケストラのイメージを喚起するシンフォニック・ロック。
   安易なフュージョン・タッチは霧消し、メロディアスながらもきわめて管弦楽に近いニュアンスをもつサウンドとなった。 キーボードに加え、弦と木管を主とした室内楽アンサンブルも一部用いている。 ティンパニに近い表現をするドラムス、メロディアスかつエッジのあるエレキギターやベースの音が、管弦楽と無理なく同居しており、THE ENID よりもさらに自然な筆致のシンフォニック・ロックになっている。 ゆったりとした調子に「田園」をイメージし、ふと気づけばよく歌うギターが CAMEL の「Snow Goose」を思わせる場面もある。 それは、自然なブルース・フィーリングがあるということだろう。 エキゾチックな演出も若干あり、また、マレットに象徴されるように、全体にどこかキュートな印象を残すサウンドでもある。 初期の取りつきやすさと現在の重厚さの中間にあり、聴きやすさは一番ではないだろうか。 フランス語のモノローグ以外はほぼインストゥルメンタル。 傑作。 この作品から LP と CD が同時に出るようになった。

  「Initiation」(5:00)
  「The Find」(1:29)
  「The Interpreter」(11:52)
  「33 Years」(8:42)
  「The Ciceron」(4:42)
  「The Aged」(5:40)
  「Present」(2:00)
  「The 8th Wonder」(1:59)

(IRLP004 / IRCD 004 89)

 The Voyage - A Trip To Elsewhere
 
The Zorn Trio Fredrik Emilson bass, radio, vocoder, bullroarer, Ghana marimba
Bo N Roth guitarKjell Severinsson drums, percussion, timpani
Lars Hagglund grand pianoMats Johansson keyboard, vocoder, bullroarer
Peter Schoning celloBjorn J:son Lindh flute
Johan Stengard saxJoachim Gustavson violin
Halmstad Vokalensemble voiceJan Schaffer guitar
Christian Jerhov keyboardsLars-Ake Svensson grand piano

  92 年発表のアルバム「The Voyage - A Trip To Elsewhere」。 内容は、室内楽トリオを取り込み独特のフュージョン・タッチにシリアスな現代音楽調が加わったシンフォニック・ロック。 開放感ある躍動的なエレクトリック・アンサンブルとともに、静謐で彼岸的、宗教的な響きをもつパフォーマンスが印象的な作品である。 室内楽トリオはアクセントというレベルではなく、演奏のクラシカルな部分をほとんど一手に引き受けている。 深刻な曲調への弦楽器の貢献、およびサティを思わせるグランド・ピアノの存在感は、かなりのものだ。 ピアノとビヨルン・リンドのフルートによるアンサンブルも、美しく透明感あるものである。 こういったクラシカルで叙情的な演奏とコントラストを成すのが、弦楽奏も巻きこんだ、ギター、得意の打楽器、ピアノらによるリズミカルで溌剌としたパートである。 ギターのリードで快調に走る演奏には、親しみやすく上品なイメージがある。 さほど音が厚くないのに全体演奏にかなりの手応え、モーメンタムが感じられるのは、編曲やミックスに相応の工夫があるためだろう。 ただし、こうしたエレクトリックでリズムの強調された演奏の部分が、クラシカルなパートの説得力に比べてしまうと、やや浮ついて感じられる。 これは、それだけ室内楽に代表されるクラシカルな表現に卓越したところがあるからだろう。 また、ジャジーでメローなサックスの存在が、意外な効果を上げているところもある。 全体として、クラシカルなシンフォニック・ロックを軸に、まさにイメージの奔流のようにさまざまな表現を注ぎ込んだ力作であり、ボーダーレスなきわめてユニークな音楽であることは間違いない。 溌剌とした演奏と厳かな雰囲気のバランスがいいせいか、しっとりとした、いい聴き心地の残る作品です。
  全編を貫く主題は、生涯のほとんどを精神病院で送った芸術家アドルフ・ヴェルフィリや前作のシェヴァルに通じるレイモンド・イジドア (こういう方面の作家は「手つかずの芸術」(Art Brut)という言葉で語られるらしい)、建築家カール・ユンカーさらには聖家族教会で著名なガウディらの作品に導かれる「異界への旅」である。 ちなみに、ヴェルフィリの作品を Web サイトで見ることができるが、揺るぎない秩序があるにもかかわらず焦点がないという凡人にはやや正視し続けるのが辛い抽象画であった。
  98 年にはリマスターした CD を発表。全 80 分近い力作である。 ゴッタ煮ながら勢いある大作の 8 曲目「Wild As A Toad」がみごと。 ギターとともに力強く走る終曲「Magnificient Giant Battles」もよし。

  「The Adventure Of The Whirling Delerium」(12:01)美しく躍動感ある傑作。 緊迫感のあるテーマやシリアス・タッチの弦楽奏もあるのだが、リズミカルでポジティヴな表情が勝る。 モーツァルトがロック・バンドと組んだらこんな感じかも。 弦楽トリオを巻き込んでもちゃんとロックしているシンフォニック・ロックの逸品。
  「A Telescope And A Hot Air Balloon」(9:12)PINK FOYD ばりのスロー・テンポで展開する作品。
  「Picassierre - First Walk」(5:00)ピアノを中心としたアンサンブルによるファンタジックでおだやかな作品。
  「La Sagrade Familia - El Dia」(2:03)混声コラール。伴奏はフルートか。厳粛にして優美。
  「Das Junkerhaus」(4:54)サックスを大きくフィーチュアしたスローでジャジーな作品。後半はブルージーな展開に。
  「Picassierre - Second Walk」(5:52)再びエチュード風のピアノ主導による作品。メローなサックスが参加し、ジャジーになるかと思わせて上品な弦楽奏とともに室内楽となる。一つの音の存在感をかみ締める。
  「La Sagrade Familia - La Tarde」(1:59)混声コラール。
  「Wild As A Toad」(17:45)
  「Picassierre - Third Walk」(5:01)
  「La Sagrade Familia - La Noche」(2:01)
  「Nimis - Wotan's Tower」(4:17)
  「La Sagrada Familia - La Manana」(1:59)
  「Magnificent Giant Battles」(6:10)

(SUCD 192)

 Lost Eggs
 
Dan Anderson guitar on 7Klas Assarson percussions on 16
Fredrik Emilson bass on 16Fredrik Janacek bass on 1,8,14
Bengt Johansson sax & percussions on 1,8,11,14Lingon Johansson bass on 2,3,5,6,7,10,11,12,13,15
Mats Johansson keyboards & vocals on 1-6,8-16Bengt Jonsson keyboards on 2,3,5,7,10,13,15
Stigge Ljunglof bass on 4Bo N Roth guitar on 9,16
Mats Nilsson guitar on 2-7,10-15Tommy Nilsson guitar on 1,8
Jan Severinssen flute, keyboards, percussion on 1-7,10-15Kjell Severinssen drums on 1-16

  94 年発表のアルバム「Lost Eggs」。 アルバム未収録曲集。70 年代から 90 年代前半までの作品が収められている。 初期は YESEL&P といったキーボード・プログレや叙情派 CAMEL の影響(2 曲目のキュートなスウェディッシュ歌もの)が露。 そして、同国の TRIBUTE と同様にマイク・オールドフィールド的な表現も多い。 80 年代に入るとフュージョン色が強まる。 いわゆるプログレらしさは満点の内容だ。70 分以上でオナカいっぱい楽しめる。
  
  「Second Step」(3:10)
  「I skuggan av vår tid」(6:58)CAMEL そのものなオブリガートを除いても十分楽しい叙情作。
  「Kungens musketörer」(5:45)この曲まで「Echoes」に聴こえてしまう。KAIPA とも共通する作風の疾走感あふれるインストゥルメンタル・チューン。
  「Delfinernas trädgård」(6:02)
  「Oktober」(8:48)
  「Vindarnas ocean」(4:29)
  「Den fula ankungen」(0:21)
  「Happy New Ear」(5:16)
  「Morfar」(3:03)
  「Den pliktrogne arbetstagarens undergång」(5:31)
  「Brazil Jack」(4:20)
  「Undars mosse」(3:21)
  「Attraktiva attityder」 (6:05)
  「Top Secret」(4:00)
  「Båcka bocken」(2:50)
  「Looping」(4:27)

(SUCD 194)

 MIND Volume 1
 
Klas Assarson marimba, vibe, xylophone, bells, and other percussions
Jonas Christophs guitars
Fredrik Emilson basses
Joachim Gustafsson violin
Mats Johansson synthesizers, samplers, effect
Kjell Severinssen drums, percussions

  97 年発表のアルバム「MIND Volume 1」。 内容は、管弦、打楽器、鍵盤を活かしたリズミカルかつメロディアスなシンフォニック・ロック。 クラシカルな吹奏楽や室内楽(映画音楽といってもいい)、ジャズのビッグ・バンド、ややフュージョン・タッチ(フレットレスベースやギターのプレイなどに特徴的)のロック・バンドが一体となったボーダーレスな音楽である。 明快なテーマを軸にさまざまな楽器が華やかな音でアンサンブル(積極的に他の音に反応してゆくところは普通の室内楽のアンサンブルというよりもジャズやロックの即興演奏のニュアンスが強い)を成し、万華鏡のように精緻で立体的な音の文様を躍動感に満ちたタッチで描いてゆく。 コロコロとした響きのマリンバ、ヴィブラフォンなど多彩なパーカッションとなめらかなテクスチャの弦楽器が特長であり、存在感ある全体演奏は管弦とこのパーカッション類、そして粘っこいギターがリードしてゆく。 ニューエイジっぽさはさほどではなく、あくまでロックである。 MIND とは、「Music Investigating New Dimension」なる難解なコンセプトのアクロニム。 しかし、ジャケットやコンセプトからくるイメージほどには作風は厳格で深刻ではなく、健康的で弾む調子と優美に歌い上げる調子が折々現れて、人懐こさも十分ある音楽である。 ただしその一方で、独特の美感に人間の自然な肉体性を寄せ付けないような一種の潔癖さと無機性、抽象性がちらつくのも事実である。 若者の精神状態のようなこのアンビバレンスは本作品の一つの大きな特徴だろう。 音楽に仮託した永遠の青春というべきかも知れない。 エンタテインメントやアカデミズム一辺倒ではない、知性と感受性の輝くような照応としての新しい音楽、未来の音楽の一つのありうべき姿を示しているといっていいだろう。 SE とチェスの指し手を伝える声以外は全編インストゥルメンタル。 7 曲目「Holistic Medicine」の、拡散気味の即興風の中盤から終盤への PINK FLOYDKING CRIMSON を合体させたようなヘヴィな盛り上がりがすごい。 愛らしい素朴なオプティミズムと重苦しいメランコリーが同居するところは、スティーヴ・ハケットの諸作にも通じると思う。 傑作。

  「The Flight Onward Phase 1-5」(12:05)
  「Ataraxia」(3:27)ブルージーなタッチは異色。
  「In A State Of Comprehension」(4:24)
  「The Pilot」(5:38)
  「Unity」(3:31)
  「Opportunistic Walk Phases 1-2」(15:15)溌剌としたビッグバンドによるミニマリズムやユーモラスな表情も交えた佳作。 ピエール・モエルラン GONG か、明るくかわいい ENID か、ピクサー辺りのアニメーション映画のテーマ曲。目まぐるしく展開して(忙しなさはない)飽きさせない。
  「Holistic Medicine」(14:51)デイヴ・ギルモア風のギターが印象的。
  「A Blank Page」(3:08)

(SUCD 197)

 MIND Volume 3
 
Luca Calabrese trumpet, flugelhorn
Jonas Christophs guitars
Franco Feruglio double bass
Mats Johansson synthesizers, samplers, effect
Christian Saggese acoustic guitar
Kjell Severinssen drums, percussions

  2003 年発表のアルバム「MIND Volume 3」。 イタリアの METAMORFOSI TRIO なるアコースティック・アンサンブル(トランペット、アコースティック・ギター、ベース)と合体した合同名義での作品。 内容は、フリー・ジャズやノイズ、ミュージック・コンクレートといったキーワードが想起される薄暗くスペイシーなチェンバー・ミュージック。 もしくは、最初期 RETURN TO FOREVER、初期 WEATHER REPORT のような、電化マイルスに触発された初期のクロスオーヴァー・サウンドのフリー・ジャズ的な面を強調したものといってもいいだろう。 トランペットのせいで、やや脂分の少なめなマイルス・バンドそのものという気もする。 冒頭、いきなりジャズらしい音が散りばめられるところは、このグループの作品としてはきわめて異例である。 全体として、KING CRIMSON を思わせるヘヴィにして詩的な調子、切れ切れのノイズ断片が漂うフリー・フォーム、厳格で険しい現代音楽調、さらにはノスタルジックなジャズ・テイストまでにわたる振れ幅の大きさにもかかわらず、一筋の格率に則るようなストイックな強さがある。 音そのもののみならず音と音の間隙までにも主張があるようなフリー・ミュージックなのだ。 抽象的であるはずの音の断片に、幻想性を上回る強固なメッセージ、というか祈りのような意思が込められているように感じる。
   スリーヴによれば、本作は、エレクトリックなバンド(ISILDURS BANE)とアコースティックなバンド(METAMORFOSI TRIO)、即興とスコア、内向性と外向性といった、相反する二つの要素をぶつけあう音楽的実験とのことだ。 スペイシーなトランペットの音が新鮮だが、演奏にはマイルス・ディヴィス風のエネルギッシュかつドロっとした感触はなく、むしろクールで知的な ECM のニュアンスに近い。 アコースティック・ギターやダブルベースのボウイングなどにもそう思わせるニュアンスがある。
   アルバムは表題のついた二つの作品から成り、それぞれがいくつかの楽曲(楽章というべきか)から構成される。 前者は、詩情あるジャズロックを基調に刺激的なアドリヴを交えたコンテンポラリー・ジャズ。 管弦や打楽器といったアコースティックなサウンドを主にしたエキゾチズムも漂う厳かな作風である。 特殊奏法による音創りもある。 後者はより大胆な展開を見せ、コラージュや具象音楽的な音の用法があり、即興の割合も高そうだ。 ロック的な強度で迫るシーンもあり、エレクトリック・ギターの存在感もある。 12 曲目「The Journey」は、ノスタルジックなテーマによる、北欧黄昏ジャズロックの代表格 RAGNAROK のようなジャズ作品。 その後も、微妙に即興で揺らぐ作曲もののジャズが続いてゆき、15 曲目「Capital Punishment」では、神秘的なヴォカリーズが渦を巻き、終盤は TANGERINE DREAMY.M.O のようなシンセサイザー・ミュージックと化す。
   本アルバムの即興演奏には、大まかに分けて二つの類型があるようだ。 一つは、ジャズ的な即興であり、もう一つは現代音楽的な即興である。 前者にはほのかなブルース・フィーリングがある。 何にせよ、元々のパーカッションをフィーチュアしたシンフォニックなサウンドを期待すると、かなりびっくりする内容だ。(今回は、専任のパーカッショニストが不参加)

  The Octagon
  「The Keel」(2:32)
  「The Sails」(2:21)
  「The Coachman」(2:12)
  「The Sculptor」(3:21)
  「The Lyre」(3:23)
  「The Pendulum」(2:29)
  「Sobieski's Shield」(1:17)
  「The Stern」(2:53)

  L'evento
  「The Universe」(6:31)
  「The Inception」(6:59)
  「Rewind」(7:06)
  「The Journey」(11:28)
  「The Puppet Dance」(6:46)
  「The History」(4:28)
  「Capital Punishment」(1:26)
  「Exodus」(5:24)
  「Cosmos」(3:08)


(SUCD 197)


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