イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「IF」。
ジャズ・ミュージシャンのディック・モリッシーとデイヴ・クィンシーを中心に 69 年結成。
70 年 ISLAND よりアルバム・デビュー。
オリジナル・ラインナップで五枚の作品を残す。
95 年病床のモリッシーを支援するため一時的に再結成。
サウンドはサックス、フルートをフィーチュアしたジャズロック。
CHICAGO や BLOOD SWEAT & TEARS の英国版といわれるが、管楽器の種類がサックス、フルートに限られていて(トロンボーン、トランペットはゲスト)音質がシャープな点や、ソロをフィーチュアするジャズ・スタイルが顕著な点など、サウンドはやや異なる。
リードに加えてオルガン、ギター・プレイも個性的。名作「If 4」も再発。
| Dave Quincy | reeds(flute, sax) |
| J.W.Hodkinson | vocals, percussion |
| Dick Morrissey | reeds(sax) |
| Dennis Elliott | drums |
| Jim Richardson | bass |
| Terry Smith | guitar |
| John Mealing | keyboards, backing vocals |
70 年発表のデビュー・アルバム「If」。
内容は、クィンシーのフルート、サックス、モリッシーのサックスをフルにフィーチュアしたジャズロック作品。
アップ・テンポのブルージーなロックやメランコリックなバラードに、力強いサックス/フルート・ソロを無理なく盛り込み、R&B 調の弾力性のあるサウンドに仕立てている。
そして、ファンキーなのに翳があるという、いかにも英国らしい粋な音になっている。
管楽器のみならず、パワフルにして表現力あるヴォーカルや、ジャズをベースに破天荒なプレイを見せるギターにも注目しよう。
管楽器、ヴォーカル、ギターらフロントのプレイは、パワフルにしてアンサンブルとしてもきっちりこなれており、迫力のみならず、優れたオーソドキシーともいうべき安定感がある。
したがって、とても聴きやすい。
そして、強烈な力技ソロを支えるのは、ていねいで軽やかなドラム、俊敏なベース、暖かみのあるオルガンのバックアップである。
インスピレーションに富んだソロとともに、変拍子のテーマやスリリングなインタープレイなど大胆なアプローチもあり、ブリティッシュ・ロックの醍醐味が味わえる作品といえる。
ジャズ・バンドで培った技術/キャリアを持って、堂々とジャズとロックの融合作業に取りかかり、同時にエンタテインメントとして十分楽しめる音楽を生み出している。
そのセンスは並々ならぬものである。
マイルドな COLOSSUEM といってもいい。
パワフルだがブルージー過ぎることなく、ジャジーななめらかさと英国らしい翳りのある好作品。
ブラス嫌いの方もぜひお試しを。
なぜなら、ブラス・ロックというよりは、リード・ロック(サックスは金属製(またはメッキ)だがリード楽器)ですし、それ以前にブリティッシュ・ロックです。
個人的に大好きなグループです。
「I'm Reaching Out On All Sides」(5:44) 4 分の 7 拍子によるメランコリックなヴォーカル・ナンバー。
トラッド風味のテーマが、いかにもイギリスものらしい。
古楽器のようなギターがおもしろい。
異色作。
「What Did I Say About The Box, Jack ?」(8:22)一転してジャジーなサックス、フルートのユニゾンが気持ちいい、軽やかなジャズロック・インストルゥメンタル。
ビッグ・バンド風のテーマから、トーキング・フルート、ギター、サックスとソロが回る。
全体にメローな音色がいい。
ギター、オルガンのバッキングがみごと。
傑作。
「What Can A Friend Say ?」(6:54)モータウンな雰囲気の強い R&B ナンバー。
イントロは印象的なフルート。
黒っぽくソウルフルなヴォーカルを、ゲストのブラス・セクションとギターがバックアップ。
シンコペーションやブレイクを用いたリズムの変化がドラマチック。
パワフルなモダン・ジャズ風のサックス・ソロに続き、ややロックっぽさを意識したようなギター・ソロ。
カッコいいです。
今でも十分はやりそう。
本曲で ISLAND レーベルとの契約が実現した、とライナーにコメントされている。
ドラムはハーヴェイ・バーンズ、ブラス・セクションはトロンボーンがジョン・ベネット、トランペットがバド・パークス。
「Woman Can You See(What This Big Thing Is All About ?)」(4:11)ファンキーな快速ヴォーカル・ナンバー。
スピーディなテーマは、サックスとギターのユニゾン。
ヴォーカルのパンチが効いている。
間奏のサックス・ソロは、格別にメロディアス。
ベースとハモンドのバッキングもいい味だ。
うねりよりも、ストレートな疾走がカッコいい演奏だ。
ちょっとエッチなサブ・タイトルがイけてます。
「Raise The Level Of Your Conscious Mind」(3:15)CHICAGO や BST にありそうなキャッチーなメロディ・ラインとゆったりした広がりをもつブラス・ロック。
ピアノとサビの分厚いコーラスは、いかにもなのだが、シンプルなアレンジによるノスタルジックな暖かみには、何ものにも変えがたい味がある。
シングル・カットされたポップな名曲。
間違いなく 70 年代の音です。
「Dockland」(4:45)パーカッションが心地よく、STEELY DAN 風のハーモニーが美しいメロー・バラード。
演奏は、ヴォーカルを包み込むようなソフト・タッチである。
そんな中で、ギターだけはしっかり自己主張。
後半、演奏/ヴォーカルともに熱気を帯びるが、再び 40 年代ポップス・スタンダード風のくすんだ色合いに帰ってゆく。
フュージョン、クロスオーヴァーといった新しい世界への可能性を感じさせる音である。
「The Promised Land」(3:43)キャッチーなサックスのテーマと R&B 風の調子のいいヴォーカルが冴えるアップ・テンポで力強いナンバー。
パワフルで明るいサックスの押し捲りが、いかにもアメリカン。
中盤には、ここまで裏方に徹したオルガンのソロもフィーチュアしている。
ハッピーなエンディングだ。
(EDCD 505)
| John Mealing | organ, electric piano, background vocals, arrangement |
| Terry Smith | guitar |
| Jim Richardson | bass |
| Dennis Elliott | drums |
| Dick Morrissey | tenor sax, alto sax, flute, arrangement |
| J.W.Hodkinson | vocals |
| Dave Quincy | tenor sax, alto sax, arrangement |
71 年発表の第二作「If 2」。
内容は、ホジキンソンのソウルフルなヴォーカルがテーマをリードし、スミスのギターなど充実したソロが次々と現われる、キャッチーなジャズロック。
フォーク風味もあるテーマをジャジーなグルーヴとロックのビートで鍛えた、贅沢極まるサウンドだ。
ファンキーだが、黒っぽい熱さよりも、サクっとした小気味よさがウリである。
主役は、パワフルながらもどこまでもリリカルなサックスとフルートだ。
そして、これら管楽器を凌がんとばかりに、ギターとオルガンも縦横無尽の活躍を見せる。
特にスミスは、テクニカルなジャズ・ギターからジプシー・ギターまで、幅広いプレイを決めている。
2 曲目は、エキゾチックなギターとベースのデュオが、R&B 風のファンキーなブラス・アンサンブルへと発展する、ドラマチックな作品。
終盤のオルガン・ソロはジミー・スミスばりである。
5 曲目のようなソフトなポップ・ナンバーにも、ジャズの魔法がたっぷりふりかけられている。
楽しく聴きやすいアルバムだ。
一部の録音はツアー中のニューヨークで行われている。ある日のプレス向けのギグにマイルス・ディヴィスが訪れたという逸話があるそうだ。
「Your City Is Falling」(5:07)前作の最後とつながるような、伸びやかなテーマをもつアップ・テンポのヴォーカル・チューン。
ハイトーンのヴォーカルによるテーマはきわめて快調。
ソロは、ハモンド・オルガン、テナー・サックス、そしてドラムス。
ジャジーで軽やかな R&B は、70 年代の TV 主題歌そのもの。
なぜだか、望月三起也の劇画を思い出します。クラブ受けしそうです。
「Sunday Sad」(8:25)
田園を思わせる英国らしいフォーク・タッチのなかに、エキゾチックなイメージを大胆に描く作品。
オープニングや中間部では、細やかなスパニッシュ調のギターが大きくフィーチュアされる。
長いギター・ソロ後半から、次第に緊迫感が強まってゆく。
終盤は、管楽器をフィーチュアした元気でグルーヴィなジャズ・ファンクへと変身。
ここでもオルガン・ソロがカッコいい。
「Tarmac T.Pirate And The Lonesome Nymphomaniac」(4:36)
ワウ・ギター、オルガン、管楽器で迫る粋でニュー・オリンズな R&B チューン。
ポップでストレート、リリカルな名曲だ。
テナー・サックスとオルガンのやりとりの呼吸のよさにうっとり。
ニンフォマニアてのは「色気違い」でござんす。
「I Couldn't Write And Tell You」(8:22)
アドリヴ合戦ながらも要所で英国ロックらしい叙情性を発揮する名品。聴き応えがあります。
熱気むんむんなのに音の扱いはあまりにクールで手際がいい。
ベースラインも弾けている。
中盤はテリー・スミスのギターが席巻。
長丁場を管楽器やオルガンの何気ないフレーズが引き締める。
「Shadows And Echoes」(4:29)
フルートが寄り添うメローな AOR タッチのバラード。
珍しくコーラスが入る。
イージー・リスニングのようで、ほんのりフォーキーな翳りも。
意表をついて中盤はあざやかなジャズ・ギター・コンボ。
「A Song For Elsa, Three Days Before Her 25th Birthday」(5:44)
北欧のグループが得意としそうな、パンチを効かせつつも哀愁も漂うジャズロック。
後半は二管がリード、無難に決める。
「お誕生日おめでとう」ソングでしょうか。
(EDCD 506)
| John Mealing | keyboards, background vocals |
| Terry Smith | guitar |
| Jim Richardson | bass |
| Dennis Elliott | drums |
| Dick Morrissey | reeds |
| J.W.Hodkinson | vocals, percussion |
| Dave Quincy | reeds |
71 年発表の第三作「If 3」。
再び熱気ある"ソウル・ジャズ"を聴かせる、同一メンバーによる三作目。
管楽器を中心にタフなソロを繰り広げ、ホジキンソンのパワフルな歌唱でがっちりとまとめる作風は揺らがない。
サウンド面ではストレートなアメリカ志向があるものの、英国のグループらしい叙情性やセンスある雑食性も見せる。
それにしても、ジャズ畑出身のミュージシャンでありながら、これだけのポップ・フィーリングを出せるから驚きである。
「Fibonacci's Number」(7:38)ソロをフィーチュアしたキャッチーなインストゥルメンタル。ベンベンベースがカッコいい。ミーリングはハモンド・オルガンを多用している。管楽器は、ワイルドなフルートからなめらかなテナー。ドラム・ソロもあり。
「Forgotten Roads」(4:23)勇ましくもポップな歌もの。演奏はギターをフィーチュア。
「Sweet January」(4:30)凛としたバラード。センチメンタルながらもクールな抑えが効いている。フルート、サックスをフィーチュア。
「Child Of Storm」(3:39)
「Far Beyond」(4:57)
「Seldom Seen Sam」(4:50)
「Upstairs」(4:42)
「Here Comes Mr.Time」(4:43)
(CP 80339)
| John Mealing | keyboards, background vocals |
| Terry Smith | guitar |
| Jim Richardson | bass |
| Dennis Elliott | drums |
| Dick Morrissey | reeds |
| J.W.Hodkinson | vocals, percussion |
| Dave Quincy | reeds |
72 年発表の第四作「If 4」。
アメリカン・ロック然としたサウンドが出現するとともに、シャープなクロスオーヴァー/ジャズロック・テイストが加わった無敵のライヴ・アルバム。
ジョン・ミーリングは、エレピも頻繁に用い、また、テリー・スミスのギターは、ゲイリー・ボイルも真っ青の超絶プレイを連発する。
ビッグ・バンドの豊麗なるサウンドとジャズロックのキビキビした運動性を備えた演奏、そして黒っぽくなめらかな R&B テイストたっぷりのヴォーカルと、ファンク、ジャズ、ロックなど、全スペクトルにわたる音楽性を見せつける傑作だ。
アメリカン・ロック風の力技を見せながらも、要所を技巧的なソロ/アンサンブルで引き締め、気品あるリリシズムを漂わせている。
アメリカ、カナダでは一部の曲を入れかえた「Waterfall」として発売された。
プロデュースはリュー・ファターマン。
レコード番号は日本プロモ盤のもの。
「Sector 17」目のくらむようなソロがフィーチュアされる大傑作。
ギターはかなりカッコいい。
「The Light Still Shines」あまりにカッコいい R&B チューン。
「You In Your Small Corner」ヴォーカル・ハーモニーの美しいアメリカン・ロック。
「Waterfall」フルートが大々的にフィーチュアされる。
「Throw Myself To The Wind」サザン・ロックを意識したようなハード・チューン。
ヘヴィなディストーション・ギターが新鮮。
「Svenska Soma」オルガンをフィーチュアしたゴキゲンなファンク・ジャズ。
(ECP 80534)
| John Mealing | piano, organ on 1,2,6 |
| Terry Smith | guitars |
| Jim Richardson | bass on 1,2,6 |
| Dennis Elliott | drums on 1,2,6 |
| Cliff Davies | drums |
| Dick Morrissey | tenor sax, soprano sax, flute, background vocals |
| J.W.Hodkinson | lead vocals, percussion |
| Dave Quincy | tenor sax, alto sax, electric piano |
73 年発表のアルバム「Waterfall」。
アメリカ、カナダのみで発表された作品であり、「If 4」とほとんど曲が重なる。
ただし、ハイテンションの 3 曲目、洒脱にしてパワフル(瞬間 SOFT MACHINE)な 5 曲目は別格、ジャズロックの真髄的な秀作、快演だ。
3 曲目のテリー・スミスの爆発プレイに唖然。
個人的には、ホジキンソンの声にもなんともいえぬ魅力を感じます。
「Waterfall」(5:38)「If 4」より。カントリー・フレイヴァー漂う秀作。
モリッシーのフルート・ソロのリードで疾走する。
コンガはホジキンソンだろうか。
NEON の TONTON MACOUTE が倍密、倍速となったようなイメージだ。
ライヴ録音だが、拍手は編集で挿入したような気がしなくもない...
「The Light Still Shines」(5:01)「If 4」より。
のめり気味のビートによるパンチの効いた R&B チューン。
ソウルフルなヴォーカルが伸びやかにキャッチーにキメる。
黒いです。
サックス、ギターらのキツキツのハーモニー、そしてエレクトリック・ピアノ・ソロがカッコいい。
続いてアルト・サックスのソロ。
ライヴ。
「Sector 17」(7:59)「If 4」より、別バージョン。
アドホックな即興が無茶なインストへと収斂してゆく暴発ジャズロックの傑作。
緊迫感はイタリアの AREA に匹敵。
そして、なんといっても、スミスのギター。
純ジャズ出身の人がこういう風にタガを外すのは珍しい。
マフラフリンと似た傾向だが、コワレ方は負けていない。
新ドラマーは手数で勝負型か。
ビッグ・バンド風の全体演奏が力強く全体を引き締める。
「Paint Your Pictures」(5:11)王道型ブリティッシュ・ロック。
「Cast No Shadows」(7:24)新メンバー、クリフ・デイヴィスの作品。
ヴォーカル、管楽器は変わらずパワフルなのだが、クロスオーヴァー・タッチを見せるところもあり、変拍子リフなどほとんど SOFT MACHINE。
ギター・ソロ含めかなりプログレッシヴな作風だ。
「Throw Myself To The Wind」(4:39)「If 4」より。ライヴ。
(BR 101)