ICONOCLASTA

  メキシコのプログレッシヴ・ロック・グループ「ICONOCLASTA」。 80 年結成。 83 年アルバム・デビュー。 後進に大きな影響を与えるベテラン現役グループ。 サウンドは、ツイン・ギターとキーボードを中心にしたパッショネートなシンフォニック・ロック。 演奏はかなり恐るべきものなのだが、熱気に中てられると「これでいいのかな」という気持ちになる。 最新作は 2002 年の「Live in France」。

 Iconoclasta

 
Ricardo Moreno electric & acoustic & classical & 12 string guitars
Nohemi D'Rubin bass
Ricardo Ortegon electric guitar
Rosa Flora Moreno acoustic & electric piano, string emsenble, synthesizer
Victor Baldovinos drums, timbals

  83 年発表のデビュー・アルバム「Iconoclasta」。 内容は、ギター、シンセサイザーを中心としたスピーディな演奏が特徴のシンフォニック・ロック。 クラシカルなアンサンブルを無理やり電化し、エレキギターやヘヴィなリズム・セクションなどロック的な要素を無造作に放り込んだ怪作である。 演奏をリードするのは、アコースティック、エレクトリックを交えるツインギターとオルガン、シンセサイザーなどのキーボード。 クラシックのモチーフもふんだんに現れ、シンフォニック・ロックのファンにはうれしい内容になっている。 演奏そのもののバランスは YESGENESIS に比べてかなり危ういのだが、ポリフォニックを意識した作曲と 4 ビート・ジャズが突如現れるような過激なアレンジによって、プログレとしての位置はキープしている。 また、とってつけたようなフュージョン・タッチも 70 年代にはなかった音でもある。 おもしろいのは、ワイルドなサウンドと荒っぽく突き進む演奏にもかかわらず、EL&P のようなハードロックとプログレの接点にあったグループとも異なっていることだ。 ワイルドなのに目を惹くようなプレイはさほどなく、あくまでアンサンブル志向である。 むしろ初期の GENESIS に感性/アプローチは近いかもしれない。 一部の 70 年代初期イタリアン・ロックにも通じる気がするのは、アンサンブル志向ならば演奏は丹念で丁寧なはず、という固定観念を突き崩すところが共通するからである。 また、目指している方向が違うのだが、パフォーマンスの感触が強引な演奏で破綻しかかった瞬間の YES とも共通する。
  時代錯誤的なファズ風の音色とせわしない弾き倒しで迫るギターが、無理やりジャジーなスウィング感を出そうと躍起になったり、ベースが強引にオブリガートで食い込んだりと、あっけにとられる場面も多い。 しかしながら、唖然としてるうちに、ストリングス・シンセサイザーとアコースティック・ギターによるフュージョン・タッチの柔らかな広がりの中へと惹き込まれ、気がつけば、それなりにメロディアスで涼感すらある演奏に聴き入ってしまう。 攻撃的な演奏が主なだけに、「引き」のアコースティックな演奏が映えるのも、予期せぬ効果なのかもしれない。 終曲の雄大かつオペラティックな展開には、思わずねじ伏せられてしまいそうだ。
  ギタリストは、おそらくクラシックの素養があるプレイヤーであり、ロックの方がむしろ不慣れなのだろう。 実直かつ技巧的ながらも、切れや俊敏さもしくはグルーヴ感といったポップスには普通のカッコよさの演出が、苦手なよようだ。
  平板で立体感に欠ける録音は確かに気になるが、全編を蓋うエネルギッシュなプレイは、その難点を吹き飛ばす勢いをもっている。 そして場面展開には、プレイの荒々しさとは裏腹な、クラシカルで知的な構築性や前衛的なアプローチに対する計算も感じさせる。 全編インストゥルメンタル。 作曲とアレンジはギターのモレノが担当。 各曲も鑑賞の予定。

  「Cuentos De Arquicia」(Stories Of Harlequin)(5:10)
  「Dorian」(Dorian)(6:17)
  「Manantial」(Spring)(4:41)
  「Memorias De Un Hechicero」(Memories Of Bewitching)(7:03)
  「Estudio VI」(Estude 6)(5:47)
  「Origen Cuspide Y Muerte」(Origin Summit And Death)(6:34)
  「Fuera De Casa」(Out Of Home)(8:30)

(Art Sublime ASCD 289-001)

 Reminiscencias

 
Ricardo Moreno electric & acoustic & classical guitars, synthesizer
Ricardo Ortegon electric guitar
Nohemi D'Rubin bass, acoustic guitar, orquestrator
Rosa Flora Moreno acoustic piano, organ, orquestrator, synthesizer
Victor Baldovinos drums, percussion

  86 年発表の第二作「Reminiscencias」。 アルバム・クレジットには 85 年とあるが、メキシコを襲った地震の影響で発表は 86 年にずれこんだそうだ。 内容は、前作でアピールしたたたみかけるような攻撃性に加えて、メロディアスでエモーショナルな表情も強調されたシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 今回は、ピアノやストリングス・シンセサイザーを用いた叙情的で、雄大な広がりをもつシーンが増えている。 オーケストラを模した豊かな音色のキーボードと、爽やかなメロディをさえずるように歌うリコーダー、フルートが目立っている。 一方、ギターはリリカルな歌よりもスピード感溢れる演奏で全体をリードしている。 また、本作ではジャズ色は抑えられ、よりクラシカルなプレイを中心にした演奏になっている。
  クラシカルな「静」とハードロック風の「動」の変化がアルバム全体にスケールの大きさを付与しており、前作を凌ぐシンフォニックな音楽になっている。 素朴な調べとともに悠然とたゆとうキーボード・アンサンブルに厳かなコラールが響き、パッショネートなギターがラテンの薫りを漂わせて疾走すると、そこには 70 年代プログレ王道にエキゾティックなスパイスを効かせた独特の世界が広がる。 痛快にして感動的な聴き心地だ。 最終曲の大作では、オペラ風のヴォーカルもフィーチュアし、スケールの大きさを見せつけ感動を呼ぶ。 各曲も鑑賞の予定。 おそらく全ディスコグラフィー中の最高傑作でしょう。
  CD は第一作との 2in1。 容量制限ためか、前半の曲が全てフェード・アウトしている。

  「La Guestacion De Nuestro Mundo」(The Birth Of The World)(3:10)
  「El Hombre Sobre La Tierra」(Man On Earth)(9:06)
  「La Era Del Los Metabolismos Tecnologicos」(The Era Of Technological Metabolism)(5:44) もし 1 曲だけお薦めするとすれば、これ。本作品は、このグループの音楽と性格をよく伝えていると思います。
  「Reminiscencias De Un Mundo Sin Futuro」(Reminiscences Of A World Without A Future)(17:58)
    1)「Presagio De Extincion」(Foreboding Of Extinction)
    2)「Premeras Conflagraciones」(Initial Conflagration)
    3)「Secuelas Holocausticas」(Holocaustic Sequences)
    4)「La Conciencia En El Ocaso」(Conscience At Sunset)
    5)「Un Grito En El Vacio」(A Scream In The Void)
    6)「El Abbadon」(The Abbadon)
    7)「Los Insectos」(The Insects)

(Art Sublime ASCD 289-001)

 Soliloquio

 
Ricardo Moreno guitars, keyboards
Ricardo Ortegon guitar
Nohemi D'Rubin bass
Rosa Flora Moreno keyboards
Victor Baldovinos drums

  87 年発表の第三作「Soliloquio」。 CD では同年発表の第四作目の EP「Suite Mexicana」をカップリングしている。 内容は、キーボード主体で時おり女性のスキャットが響きわたるシンフォニック・ロック。 前作から披露している、やや落ちついた演奏がそのまま続いており、元来の忙しない演奏と比べると格段に聴き心地がいい。 もっとも、モレノ氏がギターとキーボードのどちらを演奏するかで、曲の雰囲気が大きく左右に振れるようだ。 したがって、タイトル・ナンバーの大作のように、オーバーフロー気味のディストーション・ギターがアンサンブルに火を点け、幻想的な空気を孕んだまま一気に激走し始めることもある。 「Suite Mexicana」もエネルギッシュなナンバーだが、アコースティックでエキゾチックなパートも交えた陽気で祝祭的な作品。 タイトルは、「Soliloquy」(独白)の意。 録音がやや平板だ。 「Soliloquio」の 1 曲目は、軽やかなシンセサイザーのオーケストレーションが小気味いい佳作。 2 曲目は、女性のヴォカリーズも交えた非常にシンフォニックな作品。 各曲も鑑賞の予定。

  「Suite Mexicana」より。
  「Mestizaje (26-a-1)」(7:18)
  「Revolucion en 6/8」(Revolution of 6/8)(7:46)
  「Soliloquio」より。
  「Cuando La Musica Era Espiritual Y No Fisica O El Adivino Del Ultimo Periodo De Paz」(6:06)
  「Solo Tu Fruto」(6:58)
  「7:19」(7:37)
  「Soliloquio」(15:05)
  以下ボーナス・トラック。
  「Domesticando Humanos」(1:26)
  「Lectura Auditiva」(2:56)
  「La Explosion」(3:24)
  「Tenancingo」(1:23)
  
(CD SD 05)

 Adolescencia Cronica

 
Hector Hernandez guitar
Alfredo Raigosa bass
Ricardo Ortegon guitar
Victor Baldovinos drums, percussion
Ricardo Moreno keyboards

  88 年発表の第五作「Adolescencia Cronica」。 キーボードにほのかなジャズ・フュージョン色があるも、ややハケット似のヘヴィなギターがツインで饒舌に絡みオルガンの速弾きが炸裂するとハードなシンフォニック・ロックである。 シンプルであわただしいリズムはネオ・プログレ的だが、あまりに武骨で攻め一辺倒な演奏は EL&P のマインドに近い。 変拍子ハードロックといってもいいくらいだ。 その上に、現代音楽的で難解な調子をも見せるからすごい。 最終曲は、ドラム・ソロからスピード・メタル風のギターを経てフルートが舞う快作。 2000 年 MUSEA よりの再発 CD。
  
(FGBG 4356.AR)

 En Busca De Sentido

 
Hector Hernandez guitar
Alfredo Raigosa bass
Ricardo Ortegon guitar
Victor Baldovinos drums, percussion
Ricardo Moreno keyboards

  89 年発表の第六作「En Busca De Sentido」。 またもや一歩も引かぬ、勇ましきハード・シンフォニック・ロック。 サンプリングのコラールを活かしたニュー・エイジ風の重厚な作品も見られる。 シンセサイザーがチープなのが残念。 2000 年 MUSEA よりの再発 CD。
  
(FGBG 4357.AR)

 La Reincarnacion De Maquiavelo

 
Ricardo Moreno guitars, keyboards
Ricardo Ortegon guitar
Nohemi D'Rubin bass, vocals
Victor Baldovinos drums

  92 年発表の第七作「La Reincarnacion De Maquiavelo」。 モレノのアグレッシヴなギター・プレイを中心に、ジャズ・フュージョン・テイストも交えたシンフォニック・ロック・インストルゥメンタル。 ギター・ソロは、さまざまなスタイルを消化したメロディアスかつ情熱的なもの。 ツイン・ギターのアンサンブルも安定感がある。 キーボードに持ちかえると、サイド・ギターとともにカラフルなアンサンブルを見せる。 ヴォーカル兼ベースの女性によるベースのプレイもみごと。 あくまでギター主体でキーボードがアクセントを付けるというバランスである。 全体に堅実で平均点が高い代わりに、光るプレイがなかなか見つけにくい。 しかし、何度も聴く気にさせられるのは、ある意味プログレの王道を目指した作品づくりだからだろう。 3 曲目がヴォーカル入り。
  
(JRCD 010)

 De Todos Uno

 
Ricardo Moreno electric & acoustic guitars, keyboards
Nohemi D'Rubin bass, vocals
Ricardo Ortegon guitar
Victor Baldovinos drums

  94 年発表の第十作「De Todos Uno」。 あいかわらずの弾き倒しギターによるシンフォニック・ロック。 インストゥルメンタル中心である。 軽快なテンポやヘヴィなギターなど、曲調にやや強目の性格付けがなされているようだ。 3 曲目のハードロック・ギターは、新たな挑戦か。 しかしヴォーカルはあくまでローカル色が強く、ギターやキーボードのフレーズも、メロディックかつジャジーだがプログレ然としたもの。 アコースティック・ギターを交えるプレイには、70 年代のイタリアン・ロックそのものともいえる荒々しい叙情がある。 女性ヴォーカルとドラムにもう少し余裕があり、曲に緩急の変化があるとさらによかった。 7 曲目は、アコースティック・ギター・ソロによるブーレ風小舞曲。 9 曲目は、伸びやかなエレキギターとアコースティック・ギター・アンサンブルをフィーチュアした仄かにエキゾチックな佳作。

  「La Prueba De La Manzana」(2:38)
  「Invocaciõn A Lo Mejor De La Humanidad」(5:02)
  「El Perro De Pavlov」(4:49)ヴォーカル・ナンバー。
  「A Cada Paso Puedes Cambiar Un Destino」(4:06)
  「La Etica Del Verdugo」(6:01)ヴォーカル・ナンバー。
  「La Maternidad Del Alacran」(6:01)
  「No Puedo Ser Lo Que No Quiero Ser」(3:35)
  「La Profecia De Las Plagas」(4:19)
  「La Busqueda La Verdad En Si Mismo」(7:49)ヴォーカル・ナンバー。
  「Desrendimieto」(2:31)
  
(DSCD 001)


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