HAPPY THE MAN

  アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「HAPPY THE MAN」。 74 年結成、79 年解散。 後に CAMEL に参加するキット・ワトキンスが在籍。 三枚のオリジナル・アルバムに加えて初期習作、ライヴ、TV 用曲集と様々なマテリアルが近年発掘される。
  ジャズロック/フュージョン調のライトな音質と技巧的な変拍子、そしてキーボードと管楽器らによるポリフォニックな演奏がとけあうファンタジックなプログレッシヴ・ロック。 アメリカン・プログレッシヴ・シーンの奇跡である。2004 年新作「The Muse Wakens」発表なるも、2007 年現在、主メンバーは別ユニットで活動継続中。

 Oblivion Sun

 
Frank Wyatt keyboards, sax
Stanley Whitaker guitars, vocals
Bill Plummer keyboards
Chris Mack drums, percussion
Dave Demarco bass

  2007 年発表のアルバム「Oblivion Sun」。 メンバーの都合から HTM としての活動を保留せざるを得なくなったウィテカーとワイアットを中心とした新ユニット「Oblivion Sun」名義の作品。 ツイン・キーボードを生かした布陣とシャープでカラフルなおかつ独特のユーモアを備えた作風は、HAPPY THE MAN の後継といって間違いないだろう。 変拍子に聞えない変拍子がドライヴするメロディアスなアンサンブル、マイルドな管楽器系のニュアンスをもつ絶品のシンセサイザー・サウンド、ころころと転がるようなシンセサイザー・ソロ、そしてそれらが組み合わされて生み出される、ゆったりとした抱擁のような叙情性、ファンタジーは、30 年を経ても魅力を失っていない。 ウィテカーのギターに示されるように、以前より若干ハードなエッジの立ったサウンドとシンプルなノリを取り入れているところもある。 新キーボーディストのビル・プラマーが 3 曲提供しているが、その 2 曲がいかにも HTM らしい作品になっている。 特に 6 曲目「Re: Bootsy」の「いかにも」な 70 年代後半のファンキー・フュージョン・タッチがおもしろい。 ワイアットによる 9 曲目「Golden Feast」は、フュージョンのようでフュージョンでないという HTM らしさを十分に味わわせてくれる傑作。 個人的にはヴォーカルもあるワイアット作の 4 曲目「Catwalk」がいい。

(MVDA 4648)

 The Muse Awakens

 
Frank Wyatt sax,keyboards, woodwinds
Stanley Whitaker guitars, vocals
Dave Rosenthal keyboards
Joe Bergamini drums,percussion
Rick Kennell bass

  2004 年発表の再結成新作「The Muse Awakens」。 遂に現れたオリジナル新作。 キット・ワトキンスの跡をデイヴ・ローゼンタールが引き継いで活動を続けていたようだが、ようやくそのラインナップでの作品が完成した。 70 年代の作品としっかりリンクする、イメージ通りの内容である。 切り刻むような変拍子とルーニーなメロディが交錯してキリキリ舞するようなシーンとライトなフュージョン・テイストがブレンドし、やがて誰も見たことのない夢景色を描き出す、あの作風である。 油の効いた精密機械が早口でおしゃべりをするようなシンセサイザーのプレイもちゃんと再現されており、ローゼンタールの苦心の跡がうかがえる。 ドラムスは新メンバーのジョー・ベルガミーニ。 「らしさ」という点では、百点満点の内容です。 メローな語り口もみごと。 唯一文句があるとすれば、奇天烈さや叙情性にさらなる深みを与える耳を釘付けにするようなメロディがもう一歩(いや半歩?)であること。

  「Contemporary Insanity」(3:25) 変拍子リフで執拗にたたみかける、まずはご挨拶。

  「The Muse Awaken」(5:34) 第一作のイメージをよく復元した叙情的な作品。 スタッカートになったときの表情が 70 年代そのままなので驚く。

  「Stepping Through Time」(6:32) 透徹で厳かな響きを孕むオムニバス調ファンタジー。 フルート初登場。次第に躍動感が全体を支配してゆく。

  「Maui Sunset」(5:35) エレクトリック・ピアノが美しく懐かしい。

  「Lunch At The Psychedelicatessen」(4:58) 奇妙なギターを受け止めて、サックス初登場。 漫画チックなタイトルにぴったりのトンがってユーモラスな作品。ハーモニウムもおもしろい。

  「Slipstream」(4:43) アコースティック・ピアノをフィーチュアしたエレガントな作品。後半ユーモラスなシンセサイザーが現れて、ピアノと交歓する。

  「Barking Spiders」(4:12)

  「Adrift」(4:03)

  「Shadowlites」(3:53)

  「Kindred Spirits」(5:26)

  「Il Quinto Mare」(7:22) なぜにイタリア語?

(INSIDEOUT6 93723 40542 1)

 Happy The Man

 
Kit Watkins Synthesizer, Keyboards
Mick Beck Percussion
Rick Kennell Bass
Stanley Whitaker Guitar, Vocals
Frank Wyatt Keyboards, Vocals, Wind

  77 年発表の第一作「Happy The Man」。 キーボードを駆使した華麗なサウンド、そしてテンポ/リズムの多彩な変化をものともしないテクニカルで精妙なアンサンブル。 ソフトで爽やかなフュージョン・テイストという第一印象は、聴く毎に、センシティヴでユーモラスなフレーズが宝石のように散りばめられた、ファンタジックなサウンドというイメージにかわってゆく。 そして夢見るような音を用いながらも、テーマ/ソロはユーモラスというにはあまりに知的な企みを匂わせ、リズミカルなアンサンブルはもはや疾走する精密機械である。 全てが結晶のようにきらめく幻想の世界であり、優美でありながら冷ややか、そしてパラノイアックなまでに細部のくっきりとした夢なのだ。 フュージョン・タッチのなめらかな音にすら、実験的な本質を華やいだ表情で包み込みアクセスしやすくするという試みなのでは、と構えさせるものがある。 なにせよ突然変異のような無比のオリジナリティである。 そしてデリケートできめの細かい、きわめてヨーロピアンなニュアンスの音にもかかわらず、恥じらう姿すらもあっけらかんと明るく、ハイテンションで押し進んでしまうところはやはりアメリカのバンドである。
  キーボードは、プログレッシヴ・ロックの要求に応えつつ成長し、次第に演奏の主導権をギターと分け合うまでになった。 このグループは、そういうキーボード主体のプログレッシヴ・ロックの完成形ともいえるだろう。 本作では、そういったキーボードが、サックス、フルートなどの管楽器やギターとめまぐるしくもスムースで奇天烈な音楽を織り成している。 プロデュースは大物ケン・スコット。ARISTA レーベル。 曲名はおそらく早口言葉。

  「Starborne」(4:31)繊細な音がいつしか雄大な世界を描いてゆくイントロダクション。 タイトルのイメージそのままの幻想的なインストゥルメンタルだ。

  「Stumpy Meets the Firecracker in Stencil Forest」(4:21)サックス、ピアノがフィーチュアされたジャジーで緩やかな演奏が、小気味よくテクニカルなアンサンブルへと変化する華やいだナンバー。 ユーモラスなトゥッティそしてスタカートとレガートを強烈に対比させるアレンジ。 リズミカルなクラヴィネットとつややかなムーグが印象的。 インストゥルメンタル。

  「Upon the Rainbow(Befrost)」(4:38)エレピ、フルート、サックスが柔らかく縁どるヴォーカル・ナンバー。 メロディアスなヴォーカルのボトムはつまずきそうな変拍子パターン。 ここでもスタカート気味に全体を支配する変拍子リフに対し、ヴォーカルとムーグのなめらかな演奏が映える。 AOR 調のグルーヴもあるのだが、あまりにきめ細かく凝りまくった演奏のため、これでリラックスできる人は少なかろう。

  「Mr.Mirror's Reflection on Dreams」(8:52)1 曲目の世界をさらにおしひろげたような、美しくも緊張感のある大作。 華やかな三拍子と小気味いい二拍子の交錯、舞い踊るピアノ、深い水の底を漂うようなフルート、アコースティックともエレクトリックともいえぬひたすらシンフォニックな広がり。 そし、スリリングなユニゾンが受け止め、なめらかなタッチのギターが歌う。 P.F.M の「Photos Of Ghost」を思わせるところもある。 タイトル通り奇想曲風である。 インストゥルメンタル。

  「Carousel」(4:08)ロマンティックなピアノと厳かなストリングス、ギターがオーヴァーラップするヘヴィな作品。 ムーグやギターのソロにも、ユーモア以上に邪悪な雰囲気がにじむ。 フェード・アウト後の余韻も奇妙だ。 やや間奏曲風。 インストゥルメンタル。

  「Knee Bitten Nymphs in Limbo」(5:21)8 分の 5+7/5+6.5 拍子のテーマと 4 分の 4/4.5 拍子(!?)のテーマが呼応しあい、その間にシンセサイザーの超絶ソロが散りばめられたスーパー・テクニカル・チューン。 奇妙なリズムでドライヴされるユーモラスなテーマとルーニーな超絶ソロが、かわるがわる現れ、息つく暇もない。 しかしあくまで音質は夢想的であり、いわゆるジャズロックとは明らかにタッチが異なる。 こういうところが、このグループの面白さである。 後半、テーマと重なって突っ走るオルガン風シンセサイザー・ソロのカッコいいこと! ギターそっくりのニュアンスのソロもシンセサイザーだろう。 終盤には 16 分の 11 拍子(!?!)や 16 分の 13 拍子(!?!?)がめまぐるしく変わる驚異のアンサンブルがひた走る。 変幻自在に加減速して演奏をリードするのは、ワトキンスのムーグである。 インストゥルメンタル。 代表作。

  「On Time As a Helix of Precious Laughs」(5:22) ファンタジックな歌ものをしなやかなギターと多彩な打楽器で彩った比較的ジャジーでポップな作品。 たゆとうような幻想美をもつメイン・パートから始まって、珍しくヘヴィなギターのリードで「普通のフュージョン風」の演奏を見せる間奏パートを経て、マリンバのスピーディな伴奏とメロディアスなヴォーカルの対比がおもしろいメイン・パートへと帰る。 8 ビートでもアクセントの置き方がユニークなために独特の抑揚がある。これは GENTLE GIANT との共通点である。 最後には得意の「デリケートなのに圧迫感のある」変拍子トゥッティも現れる。

  「Hidden Moods」(3:40) デリケートな管楽器をフィーチュアしたエレガントなインストゥルメンタル。 ほのかなラテン・テイストや典型的なベース・サウンドなど、いわゆる「フュージョン」なのだが、清潔感というかニューエイジっぽさもある。 打ち寄せる波のようなストリングス・シンセサイザーのせいかもしれない。 序盤はエレピとフルートによるドリーミーなアンサンブル、中盤は美しいアコースティック・ギター・ソロを経て木管の典雅な調べ、後半はさりげない変拍子でムーグとワウ・ギターが軽やかなユニゾンを繰り広げ、さわやかな緊張感を呼び覚ます。 またも間奏曲風。

  「New York Dream's Suite」(8:30) ドラマティックなオムニバス風のジャズロック大作。 ファンタジックな質感を残しつつも、ここまで披露してきたシニカルなユーモアにとどまらない正統的なロマンが沸き立ち、ダイナミックかつパワフルな流れが感じられる。 シンセサイザーに負けずにギターもドラムスも積極的に攻めている。 せめぎあうようなアンサンブルがカッコいい。 しかし、緩急の変化もみごとである。ゆったり歌うアンサンブルはまるで夢の揺り篭である。 さまざまに変化しつつも骨太でナチュラルな流れがあり、気がつけばおだやかな終焉の滝つぼへと流れ込んでいる。 完成度高し。 カラフルなファンタジーと前半の作品や「Knee Bitten Nymphs in Limbo」で見せたルーニーなユーモア感覚をドラマにまとめ上げた力作だ。

(AL 4120 / ERC-32005)


 Crafty Hands

 
Stanley Whitaker 6 & 12 String Guitars, Vocals
Frank Wyatt Pianos, Harpsichord, Saxes, Flute, Words
Kit Watkins Pianos, Harpsichord, Moog, Fake Strings, Clavinet, 33, Recorder
Rick Kennell Bass
Ron Riddle Drums, Percussion

  78 年発表の第二作「Crafty Hands」。 前作の音楽性を、より確実化し、ダイナミックなフュージョン・タッチと繊細にして深みのあるシンフォニックな響きを合体させることに成功した傑作。 たゆとうような幻想性に加え、自然でメロディアスな面も強まり、聴きやすさという点でも優れている。 また、ドラムスがロン・リドルに交代し、リズムそのものもやや力強く押し出されている。 あえて華麗な奇を衒うことで個性を示した前作に比べると、ほんの少しながらも、落ちつきと血の通った表情が感じられるのだ。 とはいえ、これだけのミュージシャンが力まずに迫るのだから、それはそれで恐るべきメリハリをもった内容の濃い音楽になっている。 内容は、精緻な構築美と官能的なグルーヴの理想的なバランス/融合そのものだ。 GENTLE GIANTYESGENESIS のメロディ・センスとフュージョン・タッチを加味して、華やかにしたようなサウンドといえばいいかもしれない。 最終曲は、宮沢賢治の「よだかの星」では? プロデュースはケン・スコット。ARISTA レーベル。

  「Service With Smile」(2:45)クラヴィネットが刻む 16 分の 6+5 拍子のリフの上でギター、ムーグがしなやかにせめぎあう華麗なるインストゥルメンタル。 流れるようにレガートなテーマとリズミカルなバックが生む深遠なるファンタジーの世界である。 夢見るようなサウンドによる重厚でダイナミックなタッチが新鮮だ。 最高のアルバム・オープナー。 ところで、マクドナルドの店員用マニュアルのようなタイトルは何?

  「Morning Sun」(4:05) 前作をほうふつさせるデリケートなシンフォニック・チューン。 優美な序奏、そしてあまりにも繊細でまろやかなムーグのテーマが否応なく耳を釘付けにする。 オルゴールを思わせる伴奏は、ギター、ハープシコードとピアノ、ヴァイブだろうか。 軽いステップをそっと止めるムーグを受けるのは、悩ましげなアコースティック・ギター。 せせらぎのようなキーボードも美しい。 ドラムの参加とともにストリングスも深々と高まり、再びテーマが華やかに盛り上がる。 名残惜しげなエンディング。 優雅な三拍子のワルツである。

  「Ibby It Is」(7:53) ドリーミーなサウンドによるソフトな GENTLE GIANT 調のトリッキーな作品。 2 拍子と 3 拍子の交錯、 クラヴィネット、ギターらによる跳ねるようなアンサンブルとメロディアスなソロ、ストリングスのコントラストが冴える。

  「Streaming Pipe」(5:25)
  「Wind Up Doll Day Wind」(7:08) 得意のツーノート半音下降フレーズを軸にコミカルな音を散りばめた歌もの。
  「Open Book」(4:54) 素朴なフルートの調べが意外な感じ。
  「I Forgot To Push It」(3:08)16 分の 3+5+5 と 3+5+4 のリフが交錯するトリッキーな快速チューン。
  「The Moon, I Sing(Nossuri)」(6:18)5 拍子のゆるやかなアルペジオに支えられたゆったりとした作品。

(AB 4191 / ERC-32006)


 Third: Better Late

 
Kit Watkins Keyboards, Flute
Frank Wyatt Electric Piano, Alto Sax, Flute
Stanley Whitaker Electric & Acoustic Guitars, Vocals
Rick Kennell Bass
Coco Roussel Drums, Percussion

  83 年発表の第三作「Third: Better Late」。 ドラマーが元 HELDON のココ・ラッセルに交代。 本作は、79 年に録音が済んでいたにもかかわらず、諸般の事情で 83 年まで発表が遅れた。 CD 化は 90 年。ジャケット写真はこの CD のもの。
  前作のメイン・ストリームへの接近は一段落、本作では、フュージョン風のグルーヴやテクニカルなプレイも取り入れつつも、よりドリーミーで描写的なアンサンブル指向のサウンドへとゆり戻している。 キーボードやギターがリードするメロディアスなアンサンブルは、安定したテクニックとともに、上品なポップ感覚をもち、安心して身をゆだねることができる。 たたみかけるような展開やテクニカルな変拍子など、大向こう受けするような場面よりも、デリケートな音を巧みに散りばめた、バランスのいい演奏を楽しむべきだろう。 正直にいって、サウンドに関しては、機材に恵まれなかったせいか、前作までほどの華やかさはないように思う。 製作未了のように聴こえるところすらもある。 それでも、ややリラックスした感もあるワトキンスのプレイは、多くのキーボーディストが落ち込んだニューエイジの陥穽の崖っぷちで踏みとどまっており、ロマンティックでスリリングなプログレ心を忘れていない。 他に演奏で目を惹くのは、こなれたインタープレイ、多彩な表情を見せるヴォーカル、そして反応よく叩きまくるドラムスなど。 今更ながら、スタンリー・ウィテカーの歌唱法が、イアン・アンダーソン影響下にあるように思う。 大作「Labyrinth」では、カラフルな音色と流れるような展開に加えて、ユーモアを感じさせる余裕の演奏。 独特のよじれてゆくような調子もある佳作だ。 また 1 曲目「Eye Of The Storm」は、後にワトキンスが加入した CAMEL の作品にも収録されている。 フルートとサックスによる美しくファンタジックなテーマは、CAMEL を意識したものとしか思えないできばえであり、「Rain Dances」に収録されていても全く違和感はないだろう。 円熟の境地を堪能できる名盤。 本作を最後にグループは解散。

  「Eye Of The Storm」(3:58)名曲。
  「The Falcon」(6:09)
  「At The Edge Of This Thought」(5:16)
  「While Chrome Yellow Shine」(6:10)
  「Who's In Charge Here ?」(5:39)
  「Shadow Shaping」(4:25)
  「Run Into The Ground」(5:02)パワフルな演奏なのだが吹っ切れたように普通のアメリカンなフュージョン。 あまりに緻密な演奏ばかりだったのでストレス解消のためだろうか、伸び伸びしている。
  「Footwork」(4:19)
  「Labyrinth」(7:29)挑戦的な変拍子アンサンブルをユーモラスかつファンタジックなテーマでドライヴするプログレ傑作。
  「Such A Warm Breeze」(5:08)

(AZ-1003 / CUNEIFORM RECORDS 55001)

 Beginnings

 
Mike Beck drums, percussion
Cliff Fortney lead vocals, flute, Rhodes, on 2-5
Rick Kennell bass
Kit Watkins multi-keyboards, vocals
Stanley Whitaker guitars, vocals
Frank Wyatt keyboards, alto sax, flute, vocals

  90 年発表の作品「Beginnings」。 グループ結成以降、1974 年から 1975 年にわたる初期二年の軌跡を記録した編集盤。 珠玉の未発表曲が主。 ワトキンスのキーボードを中心としたファンタジックなタッチはすでに完成しており、そのまま第一作へと引き継がれている。 サウンドはクラシックとジャズ、ポップスの不可思議なブレンドであり、繊細な美感と気品にあふれ、幻想的かつロマンティック、そして、やや偏執気味のリズム・マニアであることも隠していない。 優美でファンタジックだが、ベタつく感じがまったくないところがユニークである。 やはり、このグループは、ワイアット、ウィテカーの作曲力とワトキンスのサウンド・メイキングのセンスがキーである。 いわば、YESGENESIS 流のプログレに、ブライアン・ウィルソンやトッド・ラングレンのポップ・テイストをソフトに、デリケートに加味したような作風である。 リード・ヴォーカリストの歌唱法もドリーミーなサウンドによくマッチしている。 2/4 トラックのテープから起こした内容のため、音の広がりや立体感は決していいとはいえないが、ファンならばぜひ聴いてほしい。 この時期の CUNEIFORM レーベルの活動には、感謝の言葉もない。

  「Leave That Kitten Alone, Armone」(9:16)第一作の作風そのままな、そこはかないユーモア漂うファンタジック・チューン。75 年、2 トラック・テープでのスタジオ・ライヴ録音。89 年ワトキンスによって DAT 移行時に追加処理がなされている。そういえば「Leave my kitten alone」という R&B のスタンダード・ナンバーがありますな。ワイアット作。

  「Passion's Passing」(8:40)74 年、4 トラック・テープでの放送用音源。89 年ワトキンスによってリミックスされている。サックスを始め、ゆったりメロディアスなソロが美しい。ワイアット作。

  「Don't Look To The Running Sun」(9:52)74 年、4 トラック・テープでの放送用音源。89 年ワトキンスによってリミックスされている。 HTM らしい愛らしくもルーニーで圧迫感のあるアンサンブル(序盤は合わせるのが難しそうな微妙なスロー・テンポ、中盤は得意の目まぐるしいアンサンブルへ)から、一気に、弾けるブライアン・ウィルソン風のサビへ。ヴォーカルはなんとなくピーター・ガブリエル風。フォートニイ作。

  「Gretchen's Garden」(11:04)いわゆるプログレらしさを発揮して目まぐるしく展開する力作。 オルガンやエレピの音が新鮮。 終盤、スリリングな変拍子で勢いよくたたみかける。 74 年、2 トラック・テープでのスタジオ・ライヴ録音。90 年ワトキンスによって DAT 移行時に追加処理がなされている。ワイアット、ケン、ウィテカー作。

  「Party The State」(9:20)GENESIS の影響が露な作品。 いかにも「アメリカ・プログレの発掘もの」風である。 74 年、2 トラック・テープでのスタジオ・ライヴ録音。90 年ワトキンスによって DAT 移行時に追加処理がなされている。フォートニイ作。

  「Broken Waves」(5:49)メロディアスなシンセサイザー、サックスによるフュージョン・タッチの作品。 75 年、2 トラック・テープでのスタジオ・ライヴ録音。89 年ワトキンスによって DAT 移行時に追加処理がなされている。ワトキンス作。

  「Portrait Of A Waterfall」(6:45)タイトルのイメージそのままの、ニューエイジ風味のある作品。 サックスのプレイは不思議なほどモダン・ジャズっぽくならない。 75 年、2 トラック・テープでのスタジオ・ライヴ録音。89 年ワトキンスによって DAT 移行時に追加処理がなされている。ウィテカー作。

  
(Cuneiform 55003)

 Deaths Crown

 
Mike Beck percussion
Dan Owen vocals, classical guitar, additional bass on 2
Rick Kennell bass
Kit Watkins organ, moog, string ensemble, clavinet, flute, recorder, sound effect
Stanley Whitaker guitars, recorder
Frank Wyatt electric piano, vocals

  99 年発表の作品「Deaths Crown」。 未発表曲アーカイヴ第二弾。 クリフ・フォートニィの脱退後、新ヴォーカリスト、ダン・オーウェンを迎えて録音された作品集である。

  「Deaths Crown」(38:00)74 年録音。
  「New York Dreams Suite」(8:45)第一作収録作品。74 年録音。
  「Merlin On The Hight Places」(7:10)76 年録音。インストゥルメンタル。

(CUNEIFORM 55015)


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