ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「HOELDERLIN(HÖLDERLIN)」。 たおやかなフォークのデビュー作から、メンバー・チェンジを経て、第二作以降シンフォニック・ロック路線をゆく。 スタイルは変化するが、独特のロマンチシズムは堅持する。 リリカルなヴィオラと固めのリズムが特徴。
| Nanny | vocals (from WASSENAAR) |
| Nops Noppeney | violin, viola, piano, flute |
| Peter Kassim | bass, acoustinc guitar, vocals |
| Michael Bruchmann | drums, percussion, |
| Jochen Grumbkow | cello, flute, acoustic guitar, piano, organ, mellotron |
| Christian Grumbkow | guitar |
| guest: | |
|---|---|
| Peter Bursch | sitar on 3 |
| Mike Hellbach | tablas on 3 |
| Walter Westrupp | recorder on 5 |
72 年のデビュー作「HÖLDERLIN's Traum(ヘルダーリンの夢)」。
女性ヴォーカルをフィーチュアしたフォーク・ロック。
フルート、弦楽器、ギターらアコースティック楽器に加えて、オルガン、メロトロンも用いており、素朴にしてマジカルなサウンドにシンフォニックな広がりがある。
つぶやくようなモノローグと平板なメロディ、意外にけたたましいパーカッションなど、ドイツものらしいエキゾチズム/呪術性もあり。
けだるくも切実、冷ややかに醒めているようで奇妙な熱気もある。
不器用なイメージなのだが、その実、意外に演奏はしっかりしている。
作曲はクリスチャン・グラムコウ。
ヴォーカルはドイツ語。PILZ レーベル。
1曲目「Waren Wir(我々は商品か)」(4:53)
前半は、ロマンチックなアコースティック・サウンド。
後半は、躍動するパーカッションによるタイトなリズムにキーボードとフルートが鳴り響くエレクトリック・サウンドに変化する。
ベースは、サイケ調エレクトリック・フォーク。
TRADER HORNE を思わせる田園幻想と、極彩色の幻想夢が交差する不思議の世界である。
タイトルからして、かなりアジーテションというか学生運動入ってます。
佳作。
2曲目「Peter(ペーター)」(2:52)
哀愁のフォーク小品。
イントロとエンディングのアコースティック・ギターが切ない。
女性ヴォーカルによるメイン・パートが、いかにも田舎、田園調である。
イタリアン・ロックのアルバム・プレース・ホルダーとして、散見されるタイプの作品だ。
3曲目「Strohhalm(藁)」(2:20)
エキゾティックな東洋志向が顕著な小品。
60 年代へのオマージュというには、時代が近すぎる。
THE BEATLES 以降云々というよりも、彼等自身が素直に東洋への憧れを現したものと考えた方が正しいだろう。
BROSELMASCHINE のメンバー、ペーター・ブルシュとマイク・ヘルバッハが、それぞれシタールとタブラでゲスト参加。
4曲目「Requiem Fur Einen Wicht(ある小人へのレクイエム)」(6:32)
五部構成によるドラマチックな大作。
フルートのリードによるスリリングなイントロから、一気に惹き込まれる名曲である。
呪術的なヴォーカルと波打つようなギターのアルペジオを、巧みな弦楽奏が取り巻いて、さまざまな曲想を描いてゆく。
奇想曲風の気まぐれな展開ながら、細部にきちんとしたアンサンブルがあり、おかげで聴き応えがある。
印象的なメロディがないのが残念だが、本格プログレ・バンドも驚きの構成力である。
ストリングスを使い捲くるので、ニュアンスはオーケストラに近くなっている。
レクイエム調ながらも、悲哀だけではなく、しなやかな躍動感ときっぱりとした力強さも感じさせる内容だ。
弦楽器の力は偉大である。
5曲目「Erwachen(覚醒)」(4:20)
愛らしいリコーダーが導く、トラッド調の哀歌。
導入部に続くアンサンブルは、アコースティック・ギターが長調の響きを巧みにおりまぜるも、基調は憂鬱である。
哀しげに舞うワルツであり、燃え上がった恋の気だるい名残をイメージさせる。
ドラムレス。
6曲目「Wetterberricht(気象通報)」(6:34)
再び哀愁あふれるトラッド・フォーク。
今度は、アコースティック・ギターがフィーチュアされている。
全体のイメージは、弱々しくデリケートな PENTANGLE。
トラッド調の哀感に、技巧的な二つのギターのプレイが華を添える。
タイトルナンバー「Traum(夢)」(7:20)
弦楽器をフィーチュアした、ストレートで力強いインストゥルメンタル。
パーカッションを効かせた、引き締ったリズムに支えられ、フルート、ヴィオラが自由に舞い踊る。
躍動感にあふれる演奏だ。
(20 21314-5 / KICP 2730)
| Joachim Grumbkow | keyboards, flute, vocals |
| Christoph Noppeney | viola, acoustic guitar, vocals |
| Peter Kaseberg | bass |
| Christian Grumbkow | acoustic & electric guitars |
| Michael Bruchmann | drums, percussion |
| Joachim Kaseberg | guitar, stagesound |
| guest: | |
|---|---|
| Zeus (BIRTHCONTROL) | alt sax on 2 |
| Norbert Jacobson(RELEASE MUSIC ORCHESTRA) | clarinet on 3 |
| Conny Planck | voice, synthesizer on 5 |
75 年発表の第二作「Hoelderlin」。
英語読みができるようにグループ名からウムラウトを外す。
このグループ名変更に象徴されるように、サウンドにはかなりの変化が起きる。
空ろな幻想性を荷った女性ヴォーカルの脱退とともに、トラッド・フォーク・タッチは大幅に減退、代わってドライヴ感あるロックとしての面が拡張される。
しっとりしたテーマやヴィオラ、アコースティック・ギターなどにフォーク・タッチが漂うも、ビートの強い技巧的かつ攻撃的な演奏も多い。
ストリングス系の音を用いた、緊張感ある、いわば KING CRIMSON を模するようなシンフォニックな音づくりもある。
英語ヴォーカルやキーボード、サックスなどを用いたアレンジのおかげで、アコースティックな弾き語りにおいても、英米ポップス風のアクセスしやすさがある。
この新たなサウンド作りのために、ゲスト陣も充実。
前作のようなドイツものらしい空疎でアシッドなフォークを期待すると、外すかもしれない。
むしろ、シンフォニック・ロックのファンへお薦めすべき内容である。
オープニング「Schwebebahn(空中道路)」(7:12)
長いクレシェンドと反復が強烈な緊張感を生むシンフォニック・インストゥルメンタル大作。
ストリングス・シンセサイザーとメロトロンが重苦しい音の幕を張り巡らし、ドラム/パーカッションのビートがそれを波打たせる。
ロングトーンで真っ直ぐに飛翔するのは、ヴィオラとファズ・ギター。
ヴィオラによる深刻なリフレイン、ギターのフレーズ、メロトロンは、初期 KING CRIMSON の影響下といっていいだろう。
もっとも、KING CRIMSON ほど暗くも強圧的でもなく、どこかチマチマした愛らしさがある。
これは、1 つにはパーカッションの音色のせいだろう。
イントロや場面転換で用いられるピアノも効果的だ。
重なり合いながらレガートなテーマを奏でるキーボードとヴィオラ、ギターのアンサンブルは「Sailor's Tale」、反復とともに渦を巻くような流れができてゆくところは、「Talking Drum」に酷似。
2曲目「I Love My Dog」(5:38)
カントリー・フレイヴァーのある AOR 風フォーク・ロック。
さえずるようなフルートとアコースティック・ギターによるパストラルなフォーク・タッチに、エレクトリック・ピアノがほんのりシティ・ポップス調のソフトな手触りを加える。
ヴォーカルの印象も、素朴なフォークとポップスの中間くらいである。
間奏のフルートとエレピだけ聴くと、クロス・オーヴァー系の作品と思えてしまう。
終盤、サックスのソロもフィーチュアされ、ジャジーなグルーヴも強まる。
しかし、全体をお決まりの音に収めないのが、ファズ・ギターの存在。
要所で強烈なパワー・コードを轟かせて、目を覚まさせる。
フォーク・グループでファズ・ギターを用いることはままあるが、ここでの使い方はメロディアスな流れを意図的にぶった切るような、勢いある使い方である。
ヴォーカルはなめらかな声質だが、ドイツ訛りと思われる癖がある。
アーバンとルーラルの不思議なブレンドだ。
3曲目「Honeypot」(8:48)
メランコリックなフォーク調のオープニングから、みるみるうちに 1 曲目同様緊張感のあるインストゥルメンタルへと発展してゆく大作。
序盤は、さざめくフルートとアコースティック・ギター、切々たるヴォーカルの表情、おちついたピアノの調べが GENESIS を思わせる物語世界を描く。
ヘヴィに歪んだギターをきっかけに、張り詰めたビートが刻まれてヴィオラが走り出すと、緊張は一気に高まる。
ピアノの演奏に序盤の空気を残しつつも、繰り返しごとに、演奏はダイナミックに力強くうねり始める。
ギターかキーボードか判然としないが、バックに轟音が炸裂すると、再び「Sailor's Tale」を思わせる、煮えたぎるような演奏へ。
ここでは、クラリネットのソロが披露される。
メロトロンやシンセサイザー、ヴィオラ、ヘヴィなギターによる壮絶な演奏を経て、終盤はややクラシカルな調子へと変化する。
ピアノとヴィオラによるアンサンブルから、リズムを得て軽やかな演奏が続く。
序盤のヴォーカル・パートを陽気にしたような演奏だ。
GENESIS 風のテーマと KING CRIMSON 風の即興器楽を合わせたような作風である。
4曲目「Nürmberg」(3:00)
BARCLAY JAMES HARVEST を思わせるソフトなピアノ弾き語り。
ヴォーカリストが交代している。
おそらくキーボーディストだろう。
ピアノの演奏には、優しげながらも説得力がある。
エレピによるうっすらとしたアクセントもいい。
暖かくドリーミーである。
5曲目の大作「Death-Watch-Beetle」(17:32)
いくつかの場面に分かれた作品であり、基本的には、それぞれの場面で即興風の演奏が繰り広げられる。
オープニングはアコースティックな演奏だが、決めのアクセントの強さとヘヴィなオープニングがただならぬ展開を予期させて緊張は高まる。
中盤のヴィオラとピアノのアンサンブルは変幻自在、目一杯楽しませてくれるが、5 拍子のアンサンブルが始まって混沌とする辺りから、どんどん分けがわからなくなる。
最後はもう、力いっぱいでストリングスとギター、ピアノ、ヴィオラ総動員で 5 拍子で突っ走り、押し引きを繰返して大団円を迎える。
一回聴いた程度では到底掴みきれない不思議な曲である。
ライヴにおけるアドリヴ大会のようなイメージもあり、だとすると、ゴチャゴチャいわず圧倒的なパフォーマンスを味わえばいいのだろう。
(WMMS 041)
| Jochen Grumbkow | keyboards, vocals, cello |
| Nops Noppeney | viola, vocals, acoustic guitar |
| Hans Baar | bass, guitar |
| Christian Grumbkow | guitar |
| Michael Bruchmann | drums, percussion, |
| Joachim Kaseberg | live sound |
| guest: | |
|---|---|
| Jorg-Peter Siebert | saxes, flute, percussion |
76 年発表の第三作「Clowns & Clouds(雲と道化師)」。
前作同様、エレクトリック・キーボード、ギターを用いたシンフォニックかつ軽快なサウンドのロックである。
ヴォーカルもたっぷりフィーチュアされ、AOR 風のメロディアスな場面も多い。
また、小刻みなビートが独特のせわしなさとコミカルな雰囲気を生む。
デビュー作のフォーク・テイストは、ヴィオラの響きにかすかに残る。
フルート、サックスなど管楽器も大貢献。
ヴォーカルは英語。
「Madhouse」(6:50)
クラヴィネットのリードによる、アップ・テンポのユーモラスなヴォーカル・ナンバー。
小刻みなクラヴィネットと絶叫するサックスによるぐるぐる回るような演奏が、コミカルでクレイジーなムードを生む。
ドラムの丹念なリズム・キープもすばらしい。
ヴォーカルは、不器用そうなのだが、前作よりもさらに芝居っ気のある表情を見せる。
全体に、あまりテクニックのない HAPPY THE MAN のようです。
アルバム発表はもちろんこちらが先ですが....
「Your Eyes」(6:06)
コミカルなせわしなさとソフトな暖かみが同居する、奇妙なラブソング。
ピチカートや高音の跳ねるようなフレーズなど、落ちつきなく動き回る演奏が、サビで一気にメロディアスにまとまる感じがおもしろい。
子供が突然大人びた表情を見せるようなイメージである。
不器用そうな英語の発音も、ここまでくれば特徴といえるだろう。
なかなか凝ったポップスです。
「Circus」(9:09)
ほのぼのとしたオープニングを経て一気呵成にハイテンションのアンサンブルが駆け抜けてゆく、GENESIS 風のシンフォニック組曲。
古今、サーカスというのはさまざまなイメージを豊かに喚起するらしく、音楽のモチーフになることが多いようだ。
ユーモラスに情景を描写するイントロから、香具師の口上そのもののヴォーカル、そのヴォーカルを盛り上げる巧みなバッキングまでカラフルなサウンドがいっぱいだ。
後半のオルガン、ギター、ヴィオラによるアンサンブルもスリリングかつドライヴ感満点。
後半は 7 分と 12 分のファンタジックな大作が並ぶ。
4曲目「Streaming」(7:07)。
幻想夢という表現の似合いそうな佳曲。
せせらぎのようなバックグラウンドのシンセサイザーとファンタジックなフルートから成る、初期 CRIMSON 風のアンサンブルに酔い、はたまた、タイトなリズムによってドライヴされるギター、サックスによる、CAMEL 風のスリリングなアンサンブルにスリルを味わう。
この後半のアンサンブルにおいても、突き進む中に透明感があり、揺れ動くエレクトリック・ピアノの音色のように、幻想的な雰囲気を保ち続ける。
突き抜けるようなサックスは、「Echoes」のメル・コリンズを思い出して正解。
色彩豊かな音色の美しさが際立ったシンフォニック・チューンの名曲。
初期 CRIMSON と同じドイツの EDEN を思い出した。
最後の曲「Phasing」(12:12)
ファンタジックにしてスリリングなインストゥルメンタル。
郷愁と幻想に満ちた導入部は、最初期のクロスオーヴァー・サウンドを思わせる、夢見るように美しい世界。
静々と立ち上がる、ヴィオラ、ギターのアルペジオ(フェイズ・シフタが懐かしい)、フルートによるアンサンブルも美しい。
丹念な 3 拍子のリズムが加わってからは、メロディアスなテーマから、フルート。ヴィオラらのリードでスリリングな演奏が続く。
やや即興風ではあるが、緊張感は、一貫して刻まれるビート、リフとストリングス系のバック・グラウンドがキープする。
じつは、この厳格なリズムに本曲の肝がありそうだ。
そして、エレガントというにはやや素朴なロマンチシズムも、常に保たれている。
エピローグの語り口もよく、いい感じの余韻が残る作品だ。
楽器の音色、響きの妙味を出し切ったアンサンブルによる佳作。
エレクトリックなサウンドとアコースティックな楽器、および、硬質でキンキンしたタッチとメロディアスな表現のブレンドが巧みであり、郷愁とともにえもいわれぬ暖かみを感じさせる。
後半の 3 曲はカラフルで幻想的、それでいて目まぐるしいドライヴ感のあるユニークな作品である。
メロディ一辺倒だとべったりしがちなところを、歯切れよいリズムでサウンドを整えてメリハリをつけており、優美な中に小気味よさがある。
エレピの音の響きなど、AOR 風のソフト・タッチもあるのだが、全体としては、躍動的なファンタジック・ロックというべき内容だろう。
ややクレイジーなテンションの高さには、エレクトリック・トラッドやフォーク・ロックというニュアンスの、舞曲のイメージがあり、清々しく、素朴である。
加えるに、華やか。
神々の美酒の金色の泡立ちのようなアンサンブルといったら大袈裟でしょうか。
(WMMS 043)
| Jochim Grumbkow | keyboards, vocals |
| Christoph Noppeney | viola, vocals |
| Pablo Weeber | guitar, vocals |
| Hans Baar | bass |
| Michael Bruchmann | drums, percussion |
| Christian Grumbkow | lyrics, supervision |
| guest: | |
|---|---|
| Manfred Von Bohr | drums on 5 |
77 年発表の第四作「Rare Birds(レアバード)」。
ヴィオラ、キーボード、ギターにフェイザー系のエフェクトを駆使した、ファンタジックなシンフォニック・ロック。
ほんのりエキゾチズムも漂う素朴な歌メロや、アンサンブルの切れに、アコースティックなフォーク・ロックの出自を垣間見せる。
ポップなメロディ・ラインや流行のサウンドもしっかりとおさえており、意外なほどキャッチーなところもある。
特徴は、エレクトリック・ヴィオラの存在だろう。
エネルギッシュに高まっているようで、どこか白けたようなクールさがあるところもおもしろい。
クレジットによれば、前作までギターを担当したクリスチャン・グラムコーが、専属の作詞家へと転身し、英詞を担当するのに加えてスーパー・ヴァイザーとして全体の監督も務めている。
1曲目「Haktik Intergalaktik(銀河の鉤)」(8:33)
GENESIS 風の変拍子を用いたリズミカルな演奏とメロディアスなヴィオラやストリングス系のシンセサイザー、エレピによるソフトなタッチを対比させたファンタジックな作品。
オープニングのリフからヴィオラのリードへの展開は、かなりプログレ一直線ではないだろうか。
素朴なヴォーカルにフォーク・バンドの素地がうかがわれるも、ここまで変化するとは驚きである。
全体は、おおむね以下の三つの展開からなる。
すなわち、フェイザーを用いたギター、ドラムス、クラヴィネットなどが一体となってガチャガチャするパート、エレピとギターのヴァイオリン奏法によるレガートなサビのパート、そして、ストリングス・シンセサイザーによるスペイシーな演出の成された間奏パート、である。
全パートを、誠実というよりはやや音程の危ういヴォーカルが、ポップな歌メロでリードする。
やや繰り返しが多いものの、細かな変化があり、8 分がさほど長くは感じられない。
リズム・パートも実直かつ丹念。
終盤のギターはなかなかの力演だ。
アコースティックとエレクトリックの中間ぐらいでフワフワしているような不思議な雰囲気もある。
2曲目「Sky-Lift」(4:17)
ややファンキーなギターやドラムス、エレクトリック・ピアノなど 70 年代後半の LA フュージョン、AOR 的なムードのある作品。
CAMEL を初め、多くのグループがこういう音を使った時期である。
ヴォーカルはあっけらかんとしているのだが、演奏との対比では、まだまだ奇妙な湿り気というか翳りがあり、独特の雰囲気を生んでいる。
さらに、テーマをリードするのがヴィオラであるところも、このグループならではだろう。
そして、そのヴィオラのリードする間奏ではダークで怪しげな表情が浮かび上がり、ポップ・チューンというにはあまりにねじれたイメージを与える。
3曲目「Before You Lay Down Rough And Thorny」(7:25)
アコースティックな音を活かしたフォーク・ロックに、ややヘヴィな味つけをした作品。
クールな弾き語り風のメイン・ヴォーカル・パートは、アコースティック・ギターのさざめくようなアルペジオとエレピが伴奏し、間奏は重く怪しげなヴィオラがリードする。
GENESIS 風のメイン・パートと CRIMSON 風のインスト・パートといってもいいかしれない。
奇妙なのは、なぜか 4:25 付近でフェード・アウトしてすぐにフェード・インするところ。(LP の A/B 面のつなぎにしてはタイムが合わない気もする)
ここからはインストゥルメンタルであり、リズムも細かく鋭いパターンへ変化し、GENESIS を思わせるようなスリリングなアンサンブルが続いてゆく。
終盤は、ストリングス・シンセの高まりとともにテンポもゆったりとして、シンフォニックな演奏へと流れ込む。
全編エレクトリックなエフェクトを効かせたヴィオラの存在感が強い。
4曲目「Rare Bird(レアバード)」(7:45)
ライナーノーツ通り、PINK FLOYD 的な密やかでナイーヴな幻想性にあふれるバラード。
サビのメロディ・ラインは、反復の生む魔術的な効果を優しげな風情が包み込む絶品。
伴奏は、ピアノ、バスドラの鼓動、シンセサイザーの密やかなリフレイン。
後半へ向けフェイズ・シフトしたキーボード、メロトロンが加わり、きわめて叙情的な世界へと進む。
低音を強調したキーボード・ストリングスが重厚なムードを強め、やがて、サックスが差し込む曙光のように朗々と響き渡る。
眠たげな幻想空間を切り裂くようなクライマックスの演出は、きわめて王道的である。(メル・コリンズか?)
さりげないメロトロン・フルートも美しい。
ドリーミーに渦巻く淡い靄のような作風ながらサイケデリックな酩酊感もある。
5曲目「Necronomicon」(6:15)
初期 KING CRIMSON に代表される英国怪奇ゴシック調インストゥルメンタル。
何かを待ち受けるように細かく刻まれるリズムと、いかにも怪奇映画の BGM 調のヴィオラから、たたみかけるような変拍子(6+5)アンサンブルへと突っ込むところがカッコいい。
叙情的でメロディアスな演奏で受けとめる展開もみごと。
ドイツ観念主義とはややニュアンスが異なる、むしろアメリカ風の演出だが、おどろおどろしい雰囲気はよく出ている。
ただし、フェイザーを用いた音作りに愛らしさが出てしまい、幻想怪奇ものにはやや不向きだったかもしれない。
インストゥルメンタル。
「ネクロノミコン」は、もちろん、アメリカの作家ラヴクラフトの創出した架空の書物の名。
6曲目「Sun Rays(太陽の光)」(8:55)
スリリングなテーマとは裏腹にメランコリックな調子で進むシンフォニック・チューン。
歌メロは、またもかなりポップ。
ミドル・テンポのたんたんとした曲調を支えるのは、俊敏にして安定したベース・ラインである。
エレピ、ギターがジャジーなポップス調でヴォーカルを支えるのに対し、ベースは積極的にヴォーカルと呼応しドラマチックな演出を試みる。
終盤のインストゥルメンタルもギターやストリングスが重なりあい、熱くなりそうなのだが意外になりきらない。
安定したアンサンブルを見せるがややドラマ不足か。
フェイザー系のエフェクトを多用したギター、ヴィオラ、キーボードらによるリズミカルなシンフォニック・ロック。
新ギタリストの好みが出ており、ジャズ・フュージョン風から重厚な英国風まで多彩である。
全編に共通するのはクールな小気味よさのある演奏/サウンドであり、荒々しさやベッタリしたところがないことだろう。
これは、やや拙い英語のヴォーカルやエフェクトの影響に加えて、出自たるアコースティックな感覚のおかげかもしれない。
サイケ・フォークの素朴でフワフワした味わいをベースに、カラフルなサウンドとジャジーなドライヴ感を盛り込んで独特の若々しくファンタジックな世界を見せている。
みなが NEUE DEUTSCHE WELLE なぞといっていた頃に、こんなすてきな音楽があったんですね。
(WMMS 045)