カナダのプログレッシヴ・ロック・グループ「GODSPEED YOU BLACK EMPEROR!」。93 年結成。98 年大ブレイク。2002 年活動休止。再結成を経て現在活動中。大編成によるきわめて個性的なポスト・ロック。
| a lot of musicians |
2000 年発表のアルバム「Lift Yr Skinny Fists Like Antennas To Heaven!」。CD 二枚組 4 曲構成の大作。
各曲は複数のパートから構成される。
サンプリングを散りばめた、緩やかなクレシェンドとともにノイズが渦巻いてゆく交響楽的へヴィ・インストゥルメンタルなのだが、前作よりも轟音ロック、インダストリアルなノイズ・ミュージック、ミニマル・ミュージックとしての性格が明らかになり、同時にドラマとしてのグレードが上がったと思う。
積み重なり共鳴する音はやがてすべてを奪い去る巨大な嵐と化す。
ギターは限りなく絶叫し、ドラムスは大地を波打たせ、何もかもが大渦巻きに呑みこまれてゆく。
そしてその嵐が凄まじければ凄まじいだけ、浄化も徹底的である。
ソロ・アコースティック・ピアノによるヘヴンリーで厳粛な表現や、サンプリング・ヴォイスによる痛切な訴えかけ、乾いた弦楽の調べは、刻印のようにはっきりと浮かび上がってくる。
ケイオティックなノイズが時をおいては吹き荒れるのだが、前作のような虚無の深淵に放り込まれる感じはせず、もっとエモーショナルなものが噴出しているように感じる。
弦楽の響きはアブストラクトながらも痛みを伴い、アンサンブルには荒涼たる冥府の闇を切り裂く天界の進軍ラッパのような荘厳な力もある。
ギターのささやきは弦楽の調べと地鳴りのようなドラム・ビートに追いすがられ、やがて運命的な悲劇を彩るような「歌」となってゆく。
精神の閉ざされた坩堝から解放され、虚無感と超越感を抱えたまま、現世の肉体を取り戻したのだろうか。
それはそれで別の辛さもあるとは思うが、救いの道もまた広がるような気がする。
無限の高揚感をかきたてるクライマックスには、どれだけ打ちのめされても立ち上がり、決して歩みを止めない魂の強さを感じる。
最終曲の中盤には、一番よかった頃の NEW ORDER のようなカッコいい演奏もある。
SIGUR ROS のファンやシンフォニックなプログレ・ファンには絶対お薦め。
「Storm」(22:32)
「Static」(22:36)
「Sleep」(23:18)
「Antennas to Heaven」(18:58)
(krank 043)
| a lot of musicians |
98 年発表のアルバム「f#a#∞」。
カセットオンリーの少数リリースであった第一作に続く二作目。
グループ編成は、複数のギターとドラムスなど通常のロック・バンドを、チェロやヴァイオリンなどの弦楽器やグロッケンシュピールなどの打楽器、管楽器、テープループで拡充した特殊なものである。
作風も変わっている。
あたかも大きく広く取った薄暗いスペースに音を一つづつ並べてゆき、それらをなすがままに放置したような感じである。
消えるものは消え、残るものは残る。
灰色の空間に音がぽつぽつと浮かび、長い長いクレシェンドとともに音とビートが増え、渦を巻き、吹き荒れ、目が覚めるとすべてが消えて薄暗い空間に戻っている。
おそらくこれは、すべてを俯瞰するヴィジョンとパーソナルな懊悩を矛盾なくおりあわせた、一種の鎮魂歌なのだ。
または、ループによる効果音をコラージュしたドローンと反復をふんだんに使ったドイツ・サイケ/クラウト・ロック風の演奏といってもいいし、カオスをかき回す真っ黒で巨大なオルゴールといってもいい。
凶暴な攻撃性、サイケデリックな効果、交響楽的な高揚、宗教音楽的な救済、トラッド風のペーソス、無垢なロマンチシズムもあるのだが、そういう場面が訪れるというよりは、静かな底知れぬ流れに時おり浮かび上がってくる、という趣である。
感覚的にいって、この音はロックというよりも映画音楽に近い。
(もっとも、映像を飲み込みやすくするために付属した音楽が映画音楽なら、こちらにも、音を飲み込みやすくするために映像を付けてもらいたい。おそらくライヴでは映像が流れるのだろう)
個人的には、ドイツのミュージシャンや PINK FLOYD 辺りとの接点を見るが、幼稚ながらもオプティミズムの極みだったコミューンから生れた音と異なるのは、こちらの音の基調には、現実に対する「絶望感」や精神の「虚無的な歪み」、その挙句の「超越感」が感じられることだ。
パンクの果てに、ニヒリズムや凶暴さを通り過ぎて、誰も知らない魂の辺土にたどりついたのだろうか。
天国だが地獄だか分からないそこで口ずさむのがこの歌なのだろうか。
なんとか抱きしめてあげられないかと考えるのは、決して恥ずかしいことではないだろう。
生真面目なモンキー・ビジネスの果て、地球が吹き飛んだ後に、この音が微かな余韻として宇宙に散らばって消えてゆく、そんなイメージも湧く。
「The Dead Flag Blues」(16:16)
「East Hastings」(17:49)
「Providence」(29:02)無音状態を経てエピローグ風の終末へと辿りつく。
(PCD - 23058)