ドイツのシンフォニック・ロック・グループ「GROBSCHNITT」。 ラテン、ブルーズロック・グループを母体に 70 年結成。 90 年解散。 ワイルドなハードロック調シンフォニック・ロックであり、初期はサイケデリック色も強い。 シアトリカルどころかヴォードヴィル、サーカスなみのド派手なステージ・アクトで有名だったそうだ。 骨太で濃厚、ユーモア精神も旺盛なジャーマン・シンフォニック・ロックの代名詞であり、ちょっと「B」な感じがまたよろしい。 近年復活し、ライヴを続けている模様。
| Joachim Ehrig | electric effects, drums, percussion |
| Axel Harlos | drums, percussion |
| Stefan Danielak | rhythm guitar, vocals |
| Bernhard Uhlemann | bass, flute, percussion |
| Gerd-Otto Kuhn | lead guitar |
| Hermann Quetting | organ, piano, spinet, percussion |
72 年発表の第一作「Grobschnitt」。
内容は、ブルージーなハードロックを基調に奇数拍子やキーボード、ストリングス・カルテットを盛り込んだドラマチックなもの。
アルバムは、ヘヴィな大作二つと小品から構成される。
けたたましいリフとコテコテのペンタトニックのギター、武骨なベース、オルガンそして男臭いヴォーカルなど、完全にハードロックの要素ばかりなのだが、無理矢理ともいえるテンポ・リズム・曲調・ダイナミクスの変化がまさにプログレである。
そして重量感たっぷりに突き進む演奏とピアノ、オルガンを用いた「泣きの」バラードのコントラストも劇的だ。
また元々ラテン・ロックを目指したためのツイン・ドラムの存在による強烈なグルーヴも、きわめてユニークである。
リズムが大波小波をつくりながら層を成して押し寄せる迫力は、本作の特徴といえるだろう。
さらにボーナス・トラックの 20 分余りの演奏では、エロックのドラムの威力を思い知らされる。
またエロックが操るエレクトリックなギミックは、ハードロック風の濃厚な曲調の背景に現れて不思議な非現実感を与えている。
全体にシンフォニックというにはあまりに荒っぽく垢抜けないし、焦点の定まらない大味さもあるのだが、何かとてつもないことをやりそうな不気味なパワーを感じさせる。
シンフォニック・ロック・ファンはもとより、ハードロック・ファン、アヴァンギャルドなものが好きな方にもお薦め。
英語によるヴォーカルは、イアン・アンダーソンに声質、抑揚が酷似。
「Symphony」(13:47)グループを代表する力作。
ハードでシンプルなギターのテーマから即興パートへと突っ込む。
終盤のキーボード中心の叙情的な演奏がみごと。
4 部構成。
「Travelling」(6:48)ラテン・ロック出身の片鱗を見せる SANTANA 風のパーカッシヴなナンバー。
「Wonderful Music 」(3:38)フルートをフィーチュアしたアコースティックなナンバー。
曲調はイージー・リスニング・ジャズからクラシックまで変化を見せる。
電気処理が奇妙。
「Sun Trip」(17:45)4 部から成る大作。
変拍子や効果音を交えた重厚な展開の中にラテン・フレイヴァーもほんのりあり。
「Symphony」(29:40)ボーナス・トラック。
71 年のライヴ録音。
(BRAIN 1008 / PMS 7093-WP)
| Stefan Danielak | lead vocals, guitar |
| Joachim H.Ehrig | drums, percussion, electronic, vocals on 1 |
| Gerd-Otto Kuhn | lead guitar |
| Bernhard Uhlemann | bass |
| Volker Kahrs | keyboards |
74 年発表の第二作「Ballermann」。
内容は、スピード感、ドライヴ感をぐっと増した重い切れ味のシンフォニック・ロック。
アルバム冒頭のけったいなナレーションにびっくりするが、そこを越えれば、泣きのハードロックをテクニカルに尖らせたようなプログレらしい演奏が繰り広げられる。
ドラマーが一人になったせいもあって、前作のような野蛮なムードは減退している。
ヴォーカルがワイルドかつネジの外れたスタイルであることと、ギターがブルージーなハードロック・スタイルであることを除けば、演奏は、サード・アルバム辺りの YES によく似ている。
特に、ギターとワイルドなオルガンが走り、ベースが鋭くオブリガートするトゥッティには、「Yours Is No Disgrace」そっくりなところがある。
濃いユーモアで強烈に迫るところがあるだけに、真面目なときのピアノやコーラス、アコースティック・ギターを用いた叙情的な調子がより一層いい味わいだ。
ラテン、ワールド指向もほんのりあり。
ヴォーカルは英語。プロデュースはフランク・マイル。
アナログ二枚組。
「Sahara」(5:33)ここで止めてはいけません。
「Nickel-Odeon」(9:14)
「Drummer's Dream」(6:11)リリカルな名作。
「Morning Song」(5:42)音はヘヴィだがなぜかポップなワルツ。
「Magic Train」(13:20)エレガントなピアノで、別人のように華やかに幕を開けるクラシカル・ロック大作。
メイン・ヴォーカルはエモーショナルに歌い込むが、器楽はクラシカルかつスリリングにたたみかけてゆく。
エロックのドラムスも手数全開。小難しくせずとも心躍らせるシンフォニック・ロックを描き出せる、その証拠の一つ。
「Solar-Music Part 1」(17:28)トラジックな重みと深い幻想性。GENESIS 風のオルガン。
「Solar-Music Part 2」(15:58)パート 1 から続く哀愁サイケ。
(BRAIN 2/1050 / 843076-2)
| Joachim H.Ehrig | drums, percussion, electric effects, silly voice |
| Gerd-Otto Kuhn | lead guitar |
| Volker Kahrs | organ, mellotron, piano, synthesizer |
| Wolfgang Jäger | bass |
| Stefan Danielak | lead vocals, chorus, rhythm guitar, acoustic guitar |
75 年発表の第三作「Jumbo」。
英語盤に続き、ドイツ語盤が 76 年に発表された。
本 CD は、英語盤とドイツ語盤のカップリング。
ジャケット写真は、英語盤 LP とおなじ。
内容は、YES をヘヴィにしたような、スピード感あるシンフォニック・ロック。
ギター(オーバーダビングによるハーモニーが素朴でいい)を中心に、親しみやすいフレーズを次々と繰り出して、ヴォーカル、キーボードと反応し合い、弾力に富むリズム・セクションが引っ張る。
その快調さは、2 曲目「The Clown」によく現れている。
若干骨っぽく角張った感じもあるのだが、アンサンブルはタイトで小気味がいい。
ユーモラスなフレーズ、効果音の散りばめ方も、過剰にならずいい感じだ。
ギターの音に象徴されるように、一作目で見られた荒々しさはほとんど現れず、メリハリある明快な演奏が主である。
したがって、全体に「ずいぶん洗練されたなあ」という印象を与える。
「Dream And Reality」のようなバラードでも、真っ向から堂々と歌い上げている。この曲は後半のシンセサイザーも強力。
また、
「Sunny Sunday's Sunset」は、メロディアスなラテン・イージー・リスニング風のパートと一直線に走るパートがコントラストする、第一作にもありそうな作品。
ここではドギつい感じがなく、ナチュラルな昂揚が心地よい。
全編エロックが、スピードと重量感を兼ね備えた上に微妙な表情もある、すばらしいドラミングを見せる。
とにかく聴きやすいアルバムです。
「Jupp / The Excursion Of Father Smith」(9:53)
「The Clown」(6:42)
「Dream And Reality」(5:26)
「Sunny Sunday's Sunset」(11:27)
「Auf Wiedersehen」(0:52)
(BRAIN 1081 / PMS 7094-WP)
| Joachim Ehrig | electric effects, drums, percussion |
| Axel Harlos | drums, percussion |
| Stefan Danielak | rhythm guitar, vocals |
| Bernhard Uhlemann | bass, flute, percussion |
| Gerd-Otto Kuhn | lead guitar |
| Hermann Quetting | organ, piano, spinet, percussion |
77 年発表の第四作「Rockpommel's Land」。
ジャケットのイラストから考えるに「ドラえもん」、「火の鳥」、もしくは「ピーターパン」風のストーリーをもつらしいファンタジックなコンセプト・アルバム。
内容は、ギター、ヴォーカル中心のきらびやかでカラフルなシンフォニック・ロックである。
YES、GENESIS のミドル・テンポの演奏だけ取り出したようなスタイルであり、ストーリーの語り部たるヴォーカル(ドイツのグループによくある現象だが、英語の声質、節回しが JETHRO TULL のイアン・アンダーソンに似ている)に重きがおかれている。
特に、ナチュラル・トーンのギター(海洋地形学辺りのスティーヴ・ハウや「Musical Box」のハケットを思い出す)がなかなかいい語り口をもち、ペンタトニックにクラシカルなフレージングも交えた暖かいソロや小粋なオブリガートで活躍している。
ツイン・リードやハモリ、ディレイの使い方が非常に効果的であり、演奏の要となっている。
アコースティック・ギターのきらめくようなプレイもいい。
一方、キーボードはさほど目立たないのだが、音質の変化と音の厚みに的確に貢献している。
オルガンの音がしっかりと舞台を作っている感じだ。
そして、抑えているのに桁外れなパワーがよく分かるドラムと、音数の多いスクワイア型ベースによる安定したリズム・セクションが、華やかな演奏をがっちりと支えている。
ヴォーカルの声質のせいで男臭くワイルドな印象があるが、じつは演奏は、明快なテーマと音量/音質の変化と練られたアンサンブルによる自然な抑揚をもち、丹念でデリケートである。
YES の大作をややおとなしくした、というイメージでいいと思う。
ジャケットは、ロジャー・ディーンというよりは、松本零士もしくは久松文雄もしくは小沢さとる。
音質はかなりいい。
おそらく、ライヴでは華やかな演劇的パフォーマンスが繰り広げられたのでしょう。
映像を観てみたいものです。
ヴォーカルは英語。
「Ernie's Reise」(11:01)スペイシーな演出の利いた明快極まるシンフォニック・ロック。
ギターなど YES 風の音使いで GENESIS 風の曲をやっている感じ。
根が豪快な芸風なのを抑えて演奏しているせいか、いかついおじさんたちが無理やりカワイ子ぶっている感じがなきにしもあらず。
歌とハーモニーとオブリガートで多彩な技を見せるギターが主役。
ドラムスは音数豊かな達人。
「Severity Town」(9:57)オルゴールのようなエレピ、ピアノに導かれるも、前曲の延長のような印象の作品。
ちょっとコワれる瞬間も。
「Anywhere」(4:17)感動の弾き語りバラード。
特にしかけはなくストレートに盛り上げる。
エレキギターの密やかなプレイがいい。
「Rockpommel's Land」(19:54)YES の「Your's Is No Disgrace」を思わせる、ハードにしてクランチなおかつトリッキーなオープニングがカッコいい超大作。
ギター、ヴォーカルをリードに、エレピによる暖かくジャジーな響きも使って進み、途中では得意のヴォードヴィル調のくだけた調子も盛り込んでゆく。
後半、落ちつきを取り戻すためか、静かで内省的なアンサンブルも交え、やがて意を決したかのように 1 曲目のテーマも回想し、メロディアスなギターとともにエンディングへと雪崩れ込む。
最後の長いクレシェンドは感動的だ。
よく考えられたフレーズと丹念なギター・プレイ、的確なキーボードにより音の厚み付けなど、かなり勉強になる内容です。
「Tontillon」(6:15)ボーナス・トラック。
叙情的で落ちつきのあるインストゥルメンタル。
曲調がアルバム中の作品と似ているために、あたかもエピローグのような位置付けとなり、ここに収録されても違和感なし。
(BRAIN 60041 / PMS 7095-WP)