イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「GREENSLADE」。 COLOSSEUM 解散後の 72 年、デイヴ・グリーンスレイド、トニー・リーヴスを中心に結成。 76 年の解散までに四枚のアルバムを残す。 2000 年再編、新作発表。 ロック・キーボードとして確固たるオリジナリティあるプレイを放つツイン・キーボードと、敏捷なリズム・セクションのチームワークが生む洗練されたブリティッシュ・ロック。 朝靄のように立ち昇るメロトロンがすばらしい。
| Dave Greenslade | keyboards |
| Dave Lawson | keyboards, vocals |
| Tony Reeves | bass |
| Andrew McCulloch | drums |
73 年発表のデビュー・アルバム「Greenslade」。
COLOSSEUM 出身のグリーンスレイド、リーヴスに加えて、KING CRIMSON でジャジーなドラムを叩いていたアンディ・マクローチ、SAMURAI のデイヴ・ローソンなど腕の覚えの猛者が集まり、ツイン・キーボードをフィーチュアしたユニークなサウンドを生み出した。
ハモンド・オルガン、ピアノ、エレピ、メロトロン等、多彩なキーボードを駆使するも、いわゆる弾き倒し型のキーボード・ロックとは異なり、サウンド全体にドリーミーな響きと暖かみがあるところが特徴だ。
業師たちの演奏は、きわめてスリリングながらもどこまでも優しくユーモラスであり、しっとりとしたクールネスをたたえた名曲達を、敬意を払ってこの世に送り出すことに注力している。
YES や GENESIS が、なんとかたどりついた場所へ、5 年も前に早々と到達していた人たちがいた、といってもいい。
音楽の味わいはポップにして軽やか、そして限りなく深い。
ロジャー・ディーンによるグリーンを基調とした幻想的イラストのジャケットは、彼の作品中でも屈指のでき映えだろう。
プロデュースはトニー・リーヴス、デイヴ・グリースレイド、スチュアート・テイラー。
「Feathered Friend」(6:46)まるでギターのようにブルージーなコール・レスポンス調のオルガン・リフによるオープニング。
ベースの動きも素早く、巧みなオブリガートを決めてゆく。
オルガンとエレピがリズミカルにコードを刻むロックンロール調から、次第にテンポは落ちてゆき、ブリティッシュ・ロック然としたバラードへと着地してゆく。
みごとな展開だ。
ソウルフルな歌唱、メロディにもかかわらず、個性的な声質が熱気をクール・ダウンしている。
なんともいい感じだ。
サビでは、粘っこく表情を変化させるヴォーカルを、巧みなバッキングが支える。
クラシカルなオルガンのオスティナートにも暖かみがある。
ここでもベースのオブリガートが、いいアクセントになっている。
ドラムスはきわめて間隔を空けた打撃で、ティンパニ的な役割を果たしている。
アンサンブル全体でのテンポのキープがみごと、ということにもなる。
次第にシンフォニックな広がりが生まれ、メロトロンが絶妙のタイミングで切り込んでくる。
朝もやの草原が広がり、緑の波涛に太陽がまぶしくきらめく、そんなイメージだ。
キーボードは、一方がオルガン、ピアノ、メロトロンと状況に応じて変化をつけ、もう一方はワイルドな音色のハモンドによる優しげなフレージングという巧みの技を見せる。
悠然とした高まりの果てに、静かな余韻が胸をうつ作品だ。
ノスタルジックなバラードへメロトロンを巻き込んで、シンフォニックな広がりをももたせた名曲。
軽快かつ粋なロックンロールのオープニングから、切なくもクラシカルなフィーリングあるヴォーカル・パート、そしてシンフォニックなインストへと、かなり大きな曲調の変化を見せつつも、流れはナチュラルである。
そして、ロウソンのヴォーカルには、頼りなげなのにしたたかという矛盾したような独特の味わいがある。
暖かくメロディアスなキーボードを支える切れ味/タイム感抜群のリズム・セクションにも注目。
グリースレイド作曲。
ロウソン作詞。
「An English Western」(3:27)
オープニングは、変拍子を用いたオルガン・デュオによる、せわしなくトリッキーなアンサンブル。
テーマは、オルガンとエレピによるクラシカルなユニゾンである。
テーマを引き継ぐように、クラシカルなアンサンブルが繰り返される。
続く第二テーマは、オルガンによるシンコペーションであり、奇妙なブレイクをはさみながらもメロディアスだ。
変則的なリズムにもかかわらず、リードするキーボードとドラム、ベースの連携は完璧である。
ピアノとベースはシャフル・ビートのホンキー・トンク調を保ち、一方オルガンは、カントリー・フレイヴァーあるテーマでリードする。
きりきり舞いするようなオルガンの 3 連下降フレーズを、アクセントに交えながら演奏は進む。
第二テーマに続き、切り返すように鮮やかに第一テーマが復活し、スリリングな演奏を繰り広げる。
次第に第一テーマは変容し、オルガンと全体がせめぎあううちに終盤へ。
リズムを強調したアンサンブルを経て、最後はテーマを交えたピアノがロマンティックにさざめき、吹き上がるようなメロトロンが締めくくる。
たたみかけるようなテーマを軸にした、リズミカルなクラシカル・ロック・インストゥルメンタル。
変拍子アンサンブルにつまづきつつも、3連やシャフル・ビートのおかげで全体としては軽やかに走るイメージがある。
と同時に、音色にはやはり暖かみとまろやかさがあり、夢見るようなタッチは決して失われない。
リズミカルなプレイと、メロディアスにふわりと浮かび上がるようなプレイのブレンド具合が絶妙だ。
キーボードは、クラシカルなフレージングを見せながらもあくまでテンポよく、ブルーズ・フィーリングを持ち続けている。
みごとなセンスだ。
ドラムスも小気味よいフィル、ロールを見せている。
短いが内容は濃い。
グリースレイド作。
「Drowing Man」(5:50)
唸るようなオルガンの低音によるリフレイン、そしてけだるい歌声による幕開け。
問いかけに応ずるのは、古の弦楽を思わせるメロトロン(やや THE BEATLES 風な気もする)。
やがて静かなオルガンの伴奏とともに、ヴォーカルは讃美歌調に変化してゆく。
この何気ない変転が、小面憎いまでに巧みなのだ。
ハモンド・オルガンとエレピによる柔らかなアンサンブル。
今度のサビは、オルガンの響きを背景にフォーク・タッチで迫る。
リズムがやや力強さを発揮しはじめると、メロトロンがこだまし、オルガンのリフとともになめらかにテンポ・アップ。
小気味いいリズムで快調なツイン・オルガンのアンサンブルが走る。
オルガン・ソロはどちらなのだろう。
エフェクトを効かせたユーモラスな 3 拍子の決めも交えつつ進む。
オルガンとエレピのコンビネーションへと変化し、オルガンのリフの伴奏でエレピ・ソロ。
ファンキーで愛らしい。
インスト部の最後は、深いドラム・ロールからメロトロンがゆったりと響き、テンポが落ちてゆく。
背景をオルガンが流れ、柔らかな音色のエレピが夢見るように歌ってゆく。
そして歌声が復活。
伴奏はレスリーを効かせつつも教会調のオルガン。
エレピが柔らかくスケールを駆け上がり、歌声とともにメロトロンが静かに幕を引く。
歌、演奏ともに、お伽噺のような語り口をもった作品。
おそらく「おぼれるものは藁をもつかむ」というお話なのだろう。
演奏は、オルガンとエレピによるクラシカルなアンサンブルを軸に、さまざまなテンポ/曲調へと変化する。
そして、全編ファンタジックなムードに貫かれている。
大まかな骨格は、教会風からフォーク調へと表情を変えるゆったりしたヴォーカル・パートと、クラシカルなプレイを基本にシャープなリズムで進む間奏部から成る。
特に間奏部では、リズミカルなオルガンのデュオ、攻め立てるようなユニゾン、エレピ・ソロ、ワサビの効いたバッキングなど、めくるめくキーボード・アンサンブルを堪能できる。
変則的なリズム処理を含め、緩急の変化がみごとである。
グリースレイド作。
「Temple Song」(3:34)
エレピによるリズミカルな中華風のテーマをヴァイブの響きが包み込む、ユーモラスなイントロダクション。
ヴァイブとユニゾンする歌メロも、すっかり東洋風である。
ヴォーカル・パートのリズムは 7 拍子。
繰り返しの途中からテンポが軽やかに変化し、間奏へと入ってゆく。
ファンタジックなヴァイブからエチュードのようなエレピのアドリヴへ。
ベース・ラインが非常におもしろい。
ヴァイブもずっとついてくる。
再びヴォーカル、そしてテーマと繰り返されて、密やかなスキャットとともに軽やかなエレピのソロへ。
ジャジーでリラックスした演奏だが、バックには何気なくメロトロン・フルートが流れてゆく。
またもテーマが現れて、少し謎めいた雰囲気を取り戻して終わり。
エレピによる中華風のテーマをマリンバで彩った小粋な小品。
オルガンではなく、減衰音系のキーボードを主に用いている。
芯の周りにゆらぎながらにじんでゆくマリンバの音による、イージーリスニングになりそうでならない微妙なニュアンスが、演奏全体に活かされている。
ベース、ドラムスのプレイもユーモラスで可愛らしい。
間奏部のエレピのソロには、ジャズともブルーズともつかぬ味わいあり。
エレクトリック・ピアノは、音質の異なる複数の種類の楽器が使われているようだ。
グリースレイド作曲。
ロウソン作詞。
「Melange」(7:29)
オープニングから、やや蓮っ葉な感じのオルガンのリフが、景気よくリードしてゆく。
ノリノリの演奏を受けるのは、ファズ・ベースのリードをメロトロンが支えるメランコリックなアンサンブル。
しかし、その演奏にも、オルガンと引きずるように伝法なスネア打ちがすばやく反応する。
繰り返しからベースのリードが明確になり、演奏の中心となってゆく。
一転、伴奏は R&B 調のエレピのコード弾きとなり、ベースが大胆にソロを取ってゆく。
ベースはソロとベース・ラインの二重録音のようだ。
軽やかなライド・シンバルの連打、そしてクール・ダウンさせるようなファルセットのスキャット。
エレピの和音の余韻を引きずるベースのアドリヴから、2 つのベースがリードする小洒落たポップス調へ。
ベースは、フランジャー系のエフェクトで音をにじませている。
淡々としたピアノのビートがいい感じだ。
ティンパニのようなドラム・ロールを経て、オルガン伴奏が復活するもメロトロンも湧きあがり、ベースのリードを支えてゆく。
ビートをキープしていたピアノはオルガンに役回りを譲り、今度はベースが、ワウを使ったトーンでリードしてゆく。
メロトロン・ストリングスが高鳴り、ドラムスが劇的にフィルをかますのだが、ベースのソロはマイペースで進んでゆく。
ベースを大きくフィーチュアした即興色の強いインストゥルメンタル・チューン。
ベースがリードを取る場面が多く、キーボードは要所で小気味いいフレーズを決めるも、基本はバッキングに徹する。
快調なオープニングから静かな中間部を経て、ややブルージーな調子へと変化し、すかさずメロトロンが寄り添ってくる。
このタイミングがいい。
全体に、ブルージーな中にクールなポップ・テイストを盛り込む、お得意の曲調といえるだろう。
ベースは、歯切れのいいナチュラル・トーンから、さまざまなエフェクトを効かせたトーンまで音色を使い分けている。
Melange とは「ごた混ぜ」という意味らしい。
リーヴス/グリーンスレイド/ロウソン作曲。
「What Are You Doin' To Me ?」(4:44)
3 連 2 拍の力強いオルガンのリフがリードするハードなオープニング。
ドラムスもフロア・タムを打ち鳴らし、ヘヴィなリズムを轟かせる。
ヴォーカルはワイルドに迫り、バッキングではメロトロン・ストリングスが思い切り轟く。
JONESY のような大胆なメロトロンだ。
一転、なめらかにジャジーな 8 ビートへとリズムが変化し、ロウソンもソウルフルなシャウトへと切りかえる。
スネアを軽やかに転がすドラムスがみごと。
このパターンが繰り返され、最後にはダメを押すようにミステリアスなメロトロン・ストリングスが高まり、ベースが派手な動きでついてゆく。
エピローグは、高めのトーンを用いたハモンド・オルガンとエレピが愛らしいデュオを聴かせる。
ロウソンらしい R&B 調のヴォーカルが冴えるファンキー・チューン。
こういう作品を、オルガンとメロトロンにどっぷり浸してしまうところが驚きである。
切れのあるオルガンのプレイ(特にオブリガート)は、キース・エマーソン風に聴こえるところもある。
3 連の 8 分の 6 拍子から 8 ビートへと変化するリズムの小細工とともに、オルガンの直線的なリフにメロトロンが翳りをつけるヘヴィ・ロック調と、グルーヴィな R&B 風のサビとの落差が、たまらなくカッコいい。
あまりにパターンがカチッと決まってしまってるため、やや単純な感じもするのだが、3 連で攻めるハードなオルガンや古式ゆかしいメロトロン、エレピを用いたエンディングの味付けなど、キーボード・ファンをくすぐるような音の面白さは十分あり。
ロウソン作詞/作曲。
「Sundance」(8:44)哀愁漂うアコースティック・ピアノ・ソロに点描風のエレピが重なってゆく、美しいイントロダクション。
明確な音色によるジャジーなピアノ演奏が続き、控えめなエレピとともに、次第に夢見るような雰囲気を作ってゆく。
一気に高まるは、ディストーション・オルガンが刻むヘヴィなリフと、エレピのコード弾きによるアンサンブル。
リズムも加わって、ややメランコリックなテーマを乗せ、ワイルドながらも、クラシカルな演奏が走り出す。
透明な音色のロングトーンを響かせるオルガンを支えるのは、ねじれるように歪んだハモンド・オルガンの和音とメロトロンの響き。
シンフォニックな力強さとともに繊細さもある演奏だ。
待ったをかけるような和音の連打に呼び出されるのは、ジャジーなエレピ・ソロ。
ここはロウソンだろうか。
ベースがリフを刻み、奔放なようで緻密なドラミングが、巧みにアクセントをつけている。
自由気ままなエレピを盛り上げて、リズム・セクションが冴える。
いつの間にか、ソロは先ほどのエレピとよく似た音色のオルガンへと変わっているようだ。
ブルーズ・テイストあふれるソロが続く。
オルガンの余韻をメロトロンがすくい上げ、変調したノイズが渦巻くうちに、リズムは消えゆったりとたゆとううちに、ソロの前のリフがこっそり復活する。
リフに重なってゆくのは、ハモンド・オルガン・ソロ。
ここはグリーンスレイドだろう。
あれよあれよという間に快調にテンポを上げてゆき、熱っぽい疾走がスタートする。
ドラムスは鮮やかな 8 ビートを刻む。
火を噴くようなオルガン・ソロが続く。
前半の全体演奏が復活しクライマックス、そしてオルガンとメロトロンが重なりあうと、静かに音は消えてゆく。
吸い込まれるように静けさが戻り、冒頭のピアノ・ソロが再現する。
震えるような音はエフェクトされたベースだろうか。
静かにハバネラのリズムを刻むピアノ、そしてメロトロンが静かに幕を引く。
ロマンティックな物語を感じさせるインストゥルメンタル大作。
気品と幻想美にあふれるアコースティック・ピアノ・ソロ(7th 独特のポップな美しさとロマン派風の味わいが交じっている)で幕を開け、熱っぽくスリリングなアンサンブルとソロを繰り広げ、最後は再びすべては一時の夢であったといわんばかりの、美しいピアノとメロトロンで幕を引く。
中間部では、オルガン、エレピ、ベース、ドラムと全てがハイ・テンションであり、ドライヴ感あふれるリフの上で目くるめく展開を見せ、火花が散るようなソロを交えて進んでゆく。
ソロは前半がロウソン、後半がグリーンスレイドだろう。
疾走するオルガンがカッコいい。
締まったリフとコード弾きによるバッキングをさまざまに重ねたヘヴィにしてリズミカルな演奏が、このグループ独特の味わいを強烈にアピールしている。
グリーンスレイド作曲。
プログレ・キーボードといえば、ジャズ、クラシックの素養を全面に出して弾き倒す、これが典型であった。
しかし本作は違う。
オルガン中心のキーボード・アンサンブルは、ジャズでもクラシックでもないのである。
強いていうなら、ハードな場面はややブルースがかり、ソフトなところはジャズロック風の夢見るような音だ。
これこそがロック・キーボードなのだろう。
オルガンのプレイはかなりギターを意識しているようだが、ギターほどは泥臭くならず洒脱でありながらきちんと整った印象を与える。
この辺も興味深い。
おそらく本作が、60 年代後半から現れたオルガン・ロックの究極形なのだろう。
レスリーを通したオルガンとメロトロンという古びてささくれだった音と、エレピやヴォーカルのポップ・フィーリングが絶妙の配合を見せている。
ブルージーでポップそしてほんのり物悲しい音は、1975 年頃のうららかな日曜日の昼下がりを思わせるのだ。
個人的にはブリティッシュ・ロックで五指に入る傑作と思ってます。
(WPCR-1450)
| Dave Greenslade | keyboards |
| Dave Lawson | keyboards, vocals |
| Tony Reeves | bass |
| Andrew McCulloch | drums |
74 年発表の第二作「Bedside Manners Are Extra」。
ブリティッシュ・テイストあふれる、クールでファンタジックなサウンドが冴え渡る名品である。
おそらく、グループとしての最高傑作といえるだろう。
メロトロン、ピアノ、エレピ、オルガンにムーグも取り入れたサウンドが、メランコリックにしてユーモラスな曲想をカラフルに描き、心地よい幻想の世界へと誘うのだ。
6 曲中 3 曲のインストゥルメンタルでは、緻密に絡むキーボードのテクニックもさることながら、どこか心温まるフレーズが印象的。
なぜか、子供の頃の日曜日の午後を思い出す。
プロデュースはグループ。
「Bedside Manner Is Extra」(6:24)ベースとピアノが刻むハバネラのリズムは、まるでベッドに射し込む朝の物憂い光の様に、ぼんやりと沈みこんでいる。
ヴォカリーズが加わって、ますます美しいイントロだ。
密やかに入るローソンのなまめかしきヴォーカル。
ヴォーカルにぴったりと寄りそうピアノ伴奏もいい。
間奏は、夢見るようなムーグ。
再びヴォーカルから一瞬の伴奏のピアノが、ジャズっぽい敏捷な動きをほのめかす。
そして、メロトロンの幻想的な響き。
それに応えるような切ないヴォーカル・リフレイン。
毛羽立つように歪みながらも、まろやかな音をもつエレピ・ソロ。
ピアノのリードするビートはジャズ風である。
再び、メロトロンとピアノのシンフォニックな演奏から、「Please write to me」と囁くヴォーカル・リフレインへ。
そして、リズムがまたもジャズっぽくなると、ユーモラスな「Have A Holiday」というコーラスだ。
ピッチベンドを巧みに使ったムーグのオブリガートが絡む。
再び、メロトロンとピアノが響き、ピアノの演奏がいつのまにかオープニングのハバネラをゆっくりと奏でると、メロトロンとともに吸い込まれるように消えてゆく。
ひんやりとした手ざわりをもつドーリミーなバラード。
午睡から目覚めたけだるさと、夢うつつの心地よさ。
なんとデリケートな音だろう。
マイナーとメジャーを微妙に行き交うコード進行による不思議な味わいと、多彩な音色を用いながらも、しっとりと落ちついたキーボードが堪能できる。
そして、切ない恋を歌うヴォーカルに漂うペーソスと仄かなユーモア。
さりげなく立ち上がり、軽やかに動き出すキーボード・ソロもみごと。
前作 1 曲目同様、このグループの特徴が現われた出色のオープニング・ナンバーである。
「Bedside manners are extra」は、医者の患者に対する思いやりある態度というのが原意だが、ここでは別れを告げる相手を思いやる姿勢に比喩的に使われているのだろう。
また、歌詞の冒頭後半「...I'm not kind to be kind to be cruel.」も、be cruel to be kind(相手を思って苦言を呈す)という慣用表現をひっくり返したおもしろい表現である。「僕は意地悪くあえてやさしく振舞うようなタイプじゃない」といった感じか。
ローソンとグリーンスレイドの作品。
「Pilgrims Progress」(7:05)
古式ゆかしいフルート・メロトロンがベースとともに静々と進む、神秘のイントロダクション。
3 度目の繰り返しからストリングス・メロトロンも重なる。
幻想的だ。
そして静寂を破り、一気に走り出す勇ましいツイン・オルガンのテーマ。
リズムは軽快なシャフル・ビート。
メロトロンとオルガンがリードする。
オルガンとエレピはツイン・ギターのような歪んだ音色で絡んでゆく。
再びテーマ。
フルートのようなメロトロンも健在だ。
再び、歪んだオルガンとエレピのデュオ。
テーマに戻ると、今度は、リズムが潮を引くように消え去り、メロトロンのおだやかなメロディが残る。
ストリングス・メロトロンの伴奏でユーモラスなオルガンなソロ、続いて、ややエフェクトでふくらんだエレピ。
オルガンも絡み、ストリングス・メロトロンが高鳴るトリオ・ソナタである。
リズムが復活すると、テーマが再現。
心地よいベース下降。
エンディングは、バロック風のキュートなオルガン・デュオがリズミカルに続き、やがてブルージーなインタープレイへと鮮やかな変化を見せる。
神秘的なイントロからシャープなロックンロールへの変化が絶妙なインストゥルメンタル。
シンプルだがグルーヴィなシャフルをリズム・セクションとともに、小気味いいキーボード・アンサンブルが次々と現れる。
勇ましく飛び出すテーマもカッコいい。
ほのかにブルージーながらも軽快で洒脱な感じは、「Valentine Suite」のモダンなアップデートをイメージさせる。
中間部では、オルガンとメロトロンによる美しいクラシカル・アンサンブルも楽しめる。
繰り返し主体のきっちりした展開が、エンディングで弾けるようにジャム風に盛り上がるのも面白いアイデアだ。
簡にして密、そしてキュートなキーボード・ロックの大傑作。
インストゥルメンタル。
グリーンスレイドの作品。
「Time To Dream」(4:51)
イントロは小気味いいファズ・ベースによるメランコリックなリフ。
低音のシンセサイザーが重なり、オルガンが鋭く煽ると意味深な雰囲気になる。
そしてスピーディなピアノのトリルが導き出すのは、ローソンのヴォーカル。
軽快なロックンロールなのだが、ヴォーカルは斜に構えた独特の癖がある。
歌謡曲っぽいイージーさとカッコよさの微妙なポイントといえばいいだろうか。
B メロはオルガンとベースがユニゾンで攻め、伝法な歌が走る。
間奏はエレキギターのようなエレピ。
バックは、メロトロンが広々とした音で支える。
ベースのつくるテンポが気持ちいい。
続いて、けたたましい音色のムーグによるブルージーなソロ。
今度はバックはピアノが支える。
ドラムのフィルが巧みに絡んでくる。
そして再びヴォーカル・パートへ。
ブレイク。
ひねたヴォーカル・メロディ。
いいテンポだ。
最後は重厚な決めの連続とオルガンのカデンツァ。
ちょいとひねったヴォーカルをフィーチュアした、アップテンポのロックンロール。
イントロからベースが機敏に動き、軽快でグルーヴのある曲調を支えている。
ポップな軽やかさが、よれて捻じれたヴォーカルのおかげで独特の雰囲気をもつようになる。
ムーグ、オルガン、ピアノはシンフォニックなバッキングやクラシカルなオブリガートを的確に見せるかと思えば、手癖風のペンタトニックのソロを小粋に決めるなど大活躍。
シンプルなポップ・ソングと大仰でクラシカルなプレイがバランスした佳作である。
ローソンとグリーンスレイドの作品。
「Drum Folk」(8:53)雷鳴のようなティンパニのロールとイコライジングされて平板なノイズのようになったオルガン。
テープ操作だろうか。
フェイズ・シフタのかかったオルガンも聴こえてくる。
銅鑼の音。
一転して、せわしないスネア・ドラムの連打が始まる。
そしてエレピのテーマへ。
スピーディだがどこかユーモラス。
せわしないスネアは EL&P 風。
リズムがおちつくと、メロトロン伴奏でエレピが走る。
そして始まるドラム・ソロ。
スネアのロール中心だが、タムやバスドラを細かく入れアフロな強烈さも出している。
カール・パーマーに重みをつけたような、僕の大好きなタイプのドラムである。
続いてメロトロン・フルートが静かに響き、ロマンチックなオルガンがフェード・イン。
ベースがよく歌う。
この静かな演奏は初期 CRIMSON 風。
しかしブルージーなオルガン・ソロが始まる。
これはグリースレイドか。
「Valentine Suite」を思い出す。
バッキングは教会風のオルガン。
次第にリズムが戻るも、オルガン・ソロは続く。
クラシカルかつブルーズ・フィーリングもたっぷりの、グリーンスレイド得意のスタイルだ。
再び激しいドラムのピック・アップから、一気に猛烈な手数のソロへと進み、重厚な演奏にピリオドを打つ。
スネアの小気味いい連打がオルガンのテーマを呼び出すと終わり。
ドラム・ソロ、オルガン・ソロをフィーチュアした即興風のインストゥルメンタル。
ドラム・ソロに対するリズムレスの幻想的なアンサンブルが美しい。
テーマ部のエレピ、メロトロンのコンビネーションや、中間部のメロトロン、オルガンの静かなアンサンブルに対して、後半はブルージーでクラシカルな圧巻のオルガン・ソロが続く。
もっともこのオルガンのプレイは、現代の感覚からするとやや古めかしいかもしれない。
グリーンスレイドとマカロクの作品。
「Sunkissed You're Not」(6:36)
間奏はジャジーなエレピのバッキングでやはりややジャジーなオルガン・ソロ。
ムーグとエレピによるユニゾンが華やかだ。
続くエレピのデュオは、RTF などクロスオーヴァー系のサウンドに近く、グルーヴィである。
再びオルガンとエレピに戻ってリズムを得るとヴォーカルが帰ってくる。
本作のなかでは比較的明快なポップ・テイストをもった歌ものナンバー。
歌メロはかなり手が込んでいるのだが、自然なジャズ・フィーリングがあることと、他の曲があまりに尋常でない分、普通に聴こえるようだ。
それでも いかにも 70 年代風の洒落ッ気を感じさせるサビの沈み具合など、センスのよさは随所に現れる。
ジャジーな AOR タッチは他の作品と比べるとやや異色だが、このグループのもつデリケートなセンスを活かすには格好のステージだろう。
微妙な表情を操るヴォーカルもよし。
抜群のポップ・センスである。
ローソンの作品。
「Chalkhill」(5:27)
ベースとムーグによる低音のリフがずっしりと繰り返されるイントロ。
8 分の 8+6 拍子。
メロトロン・ストリングスがうっすらと伴奏する。
どことなくストイックなリズム・セクションの上で、ムーグのテーマがややうつむき加減で流れてゆく。
オブリガートは小気味いいエレピ。
サビはメロトロン、エレピがリズムを刻み、ムーグが可愛らしくも勇ましいテーマを高らかに歌いあげる。
ムーグの終りをエレピが軽やかに吸い取ると、ドラムスとの鋭いやりとりをきっかけに一気にテンポ・アップ。
二つのエレピが交錯するスリリングにしてファンキーな演奏が始まる。
短いエレピのソロからエレピとムーグの 3 連、3 連を 2 拍に切りかえるオルガン・ソロとエレピへとコンビネーションを素早く変化させつつ、シャフル・ビートのノリノリの演奏が走る。
そしてムーグのソロ。
ベンディングも用いてファンキーに跳ねるプレイだ。
3 連でたたみかける伴奏も重なってラウドに盛り上がるが、再び一瞬にしてヴォリュームが落ちるとピアノがロマンティックにささやき始める。
リタルダンドするジャズ・ピアノを受けて最後はこもったような低音が轟く。
ロマンティックにしてファンキーなノリもあるインストゥルメンタル。
さほど派手ではないが、変拍子や素早く切りかわるアンサンブルなど、見せ場はしっかりと用意されている。
全体にジャジー。
リーヴスとローソンの作品。
各曲の性格がはっきりしており聴きやすい作品。
次々に繰り出されるキーボード・アンサンブルの色彩と、胸のすくようなフレーズに耳を奪われ、思わずため息が出てしまう。
はっきりとジャズ、クラシックとわかる場面も増えた反面、疾走する場面でのフレーズの切れ味やゆったりと歌う場面でのたおやかな表現などには、やはり一概に何風といえない個性がある。
そしてさらに魅力的なのが、ブリティッシュ風味ふんぷんのひねくれた歌メロと、しなやかで緻密なリズム・セクション。
リズム・キープのみならずドラム、ベースそれぞれにしっかりとフィーチュアされて、魅力をふりまいている。
機敏で緊密なキーボード・プレイに加えて、ほんわかとねじれたポップ・フィーリングにも満ちた傑作といえるだろう。
(WPCP-4795)
| Dave Greenslade | keyboards |
| Dave Lawson | keyboards, vocals |
| Tony Reeves | bass |
| Andrew McCulloch | drums |
99 年発表のライヴ・アルバム「Live」。
活動絶頂期 73 年と 75 年のライヴを収めた奇跡的な発掘作品。
大げさな迫力とか超絶技巧とは無縁の、ドリーミーでキレのいいロックのライヴを堪能できる。
チームワークと小気味よさが印象的だ。
特に、キーボードの多重録音部分を補うベースの活躍がみごと。
ファズを巧みに使用して音色にも気を配る。
また、緻密にして音の明快なドラムスのプレイは、今日の加工され切った音の水準からすると驚異といえないだろうか。
オルガン、メロトロンはスタジオ盤そのままの味わいある音。
音質は上質の海賊盤並。
「Sundance」(8:10)
「Drowning Man」(5:50)
「Feathered Friend」(6:15)
「Melange」(7:35)
「Joi De Vivre」(8:55)
「Bedside Manners Are Extra」(5:10)
「Sundance」(13:15)
「Red Light」(2:40)
「Spirit Of The Dance」(3:05)
(MYS CD 136)
| Dave Greenslade | keyboards |
| Dave Lawson | keyboards, vocals |
| Tony Reeves | bass, leslied bass |
| Andrew McCulloch | drums, percussion |
| guest: | |
|---|---|
| Clem Clempson | guitar |
| Andy Roberts | acoustic guitar |
| Graham Smith | violin |
74 年発表の第三作「Spyglass Guest」。
新境地を拓くためか、ギター、ヴァイオリンなどのゲストを迎えている。
そしてローソン、グリーンスレイドそれぞれが主張を強めたらしく、一部で互いに相手の作品の演奏に加わらないという状況にもなっている。
おおまかにいって、グリーンスレイドがクラシカルな音を用いた牧歌的な楽曲を指向するのに対し、ローソンの作品はジャジーで独特のポップ・センスあふれるもの。
全体に、演奏は「含み」よりも明快な性格づけを優先したメロディアスなスタイルが主であり、聴きやすい。
その一方で、一種謎めいたような妖しい魅力や白熱するアンサンブルの妙味は、やや後退したかもしれない。
7 曲目がかなりいい線をいっているだけに、逆にこれ一曲だけというイメージが強まる。
また、2 曲目の目の醒めるようなギター・ソロ、4 曲目のチェンバロを思わせるクラシカルなアコースティック・ギター、5 曲目の朗々と歌うヴァイオリンら、ゲスト・プレイヤーの起用法は、脈絡、効果ともに抜群。
8 曲目は COLOSSEUM も取り上げたジャック・ブルース/ピート・ブラウンの名作。
ややアルバムを通して散漫な印象はあるものの、サウンド的にはキーボードがさらに多彩に使われており、キーボード・ファンには一、二作目に続きお薦めできる。
プロデュースはグループとジェレミー・アンソール。
「Spirit Of The Dance」クラシカルで愛らしいインストゥルメンタル。グリーンスレイド作。
「Little Red Fry-Up」ローソン作。
「Rainbow」ローソン作。
「Siam Seesaw」典雅にして暖かい、このグループらしい名曲。
アコースティック・ギターの透明な音とエレクトリック・キーボードのまろみのある音のコントラストを活かしている。
弾けるクレムソンのギターをメロトロンで受け止め、ゆったりと帰ってゆく流れのみごとなこと。
リーヴス作。
「Joie De Vivre」得意の 3 連パターンやドリーミーなサウンドと愛らしくもドライなテーマなど、典型的な作品。
名曲。
ヴァイオリンのグレアム・スミスをフィーチュア。
グリーンスレイド作。
「Red Light」ローソン作。
「Melancholic Race」グリーンスレイド作。
「Theme For An Imaginary Western」あのピート・ブラウン、ジャック・ブルースによる名曲。
(WB 7599-26867-2)
| Dave Greenslade | keyboards |
| John Young | keyboards, vocals |
| Tony Reeves | bass |
| Chris Cozens | drums |
2000 年発表の第五作「Large Afternoon」。
まさかの復活作。オリジナル・メンバーはグリーンスレイドとベーシストのリーヴスのみ。
デジタル・キーボードの音色こそ若干の違和感を誘うが、独特の優しさ、暖かみ、ユーモアはそのままに GREENSLADE 節が冴え渡る佳作である。
奥行きのある圧力の強い音を重ねたアンサンブルに映像音楽作家としてのキャリアを感じさせるが、メロディのセンスはまったく変わっていない。
1 曲目「Cakewalk」も、中盤を過ぎた辺りのリリカルなメロディはまさにあの第一作の世界のままである。
改めて、リリシズムと緊張感の絶妙のバランスに構築された音楽世界を味わうことができた幸せをかみ締めた。
ジョン・ヤングも健闘。
5 曲目「Anthems」は再結成にあたってのファンへのプレゼント。
プロデュースはデイヴ・グリーンスレイド。
(MYS CD 142)
このグループのサウンドが、他のキーボードをフィーチュアしたグループと大きく異なるのは、ロックにクラシックやジャズといった要素を取り入れた後のサウンドのこなれ具合が、遥かに進んでいるということだろう。 ニューロック、アートロックといわれた時代の音に比べると、接ぎ木のような不自然さや観念先行の晦渋さは微塵も見られず、革新性あるユニークなロックというポジションをしっかりと確立している。 グリーンスレイド、ローソン、ともに以前所属したグループでジャズ、ブルース、クラシックとロックの混合といったプログレッシヴなアプローチを十分に経験済みであり、このグループでは、いわば次の段階のプレイ・音楽を目指した、ということなのだろう。 ロックの同義語ですらあるギター・サウンドから脱却しながらも、いわゆるプログレ的なキーボード・プレイによる自己主張のみには頼らず、時にはギターを模するようなプレイすら見せながら、あくまで切れをもつアンサンブルとクールなファンタジーの余韻を重視したスタイルを貫いている。 アルバム全体に漂うどこか世離れした不思議なトーンは、ハードロックや重厚長大型のプログレとは異なる、独特のポップ感覚 を示している。 暖かく小粋なサウンドは、世代を越え、永遠の魅力を放ち続けるに違いない。