GOBLIN

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「GOBLIN」。 74 年前身グループ「CHERRY FIVE」を結成。 翌年、ETNA よりドラムのアゴスティノ・マランゴロが加入、同年アルバム・デビュー。 以後オリジナル・アルバムに加え、ホラー映画のサウンド・トラックを多く手がける。 90 年代もプロジェクト形態で OST 専門に活動が続いている。
  職人芸的テクニカル・プログレッシヴ・ロックの代表格。 サウンド・トラックを手懸けるという方法で嵐のようなイタリアン・ロック隆盛期を乗り切った、誇り高き職人にして才覚あるプロフェッショナルたち。 特に、クラウディオ・シモネッティは超一流のキーボード・プレイヤーと思います。

 Dario Argento Tributo

 
Federico Amorosi bass
Claudio Simonetti keyboards
Nicola Di Staso guitars
Titta Tani drums

  2000 年発表のアルバム「Dario Argento Tributo」。 クラウディオ・シモネッティの新ユニットDAEMONIAによるデビュー作。 タイトル通り、GOBLIN を世に出した映画監督ダリオ・アルジェントの名作のサウンド・トラックを再レコーディング。 GOBLIN のみならず、キース・エマーソンやエンリオ・モリコーネのナンバーを取り上げている。 現代的なサウンドで甦った名曲は、あくまでコワく、すさまじくカッコいい。 元曲のイメージを損なうリメイクの多いなか、新たな魅力まで引き出してしまうとは、やはりシモネッティ氏はただものではない。 「Suspiria」は圧巻。 当然管絃合唱を従えた作品もあり。 クラシカル・ロックのファンにはお薦めです。 ギタリスト、ニコラ・ディスタソは、GOBLIN とメンバーが重なるグループ LIBRA の元メンバー。

(4961702)

 Cherry Five

 
Carlo Bordini percusion, durms
Fabio Pignatelli bass
Massimo Morante guitars
Claudio Simonetti keyboards
Tony Tartarini vocals

  74 年発表のアルバム「Cherry Five」。 前身グループ「CHERRY FIVE」の唯一作。 渡英の経験を活かし、曲タイトルから歌詞まですべて英語である。 作曲は、クラウディオ・シモネッティとマッシモ・モランテ。 作詞は、ジャンカルロ・ソルベロ。 ドラムスには、あの「Opera Prima」のカルロ・ボルディーニが参加している。さらに、ヴォーカリストは、変名で L'UOVO DI COLOMBO のリード・ヴォーカリストを務めていた。
  ロマンチックなグループ名とは裏腹に、アルバムの内容は 「Relayer」期 YESGENTLE GIANT の強い影響が感じられるきわめてテクニカルなものだ。 GOBLIN の「精密な演奏を繰り広げる技巧集団」というイメージはこの段階ですでに確立されており、メロディアスな曲づくりにもセンスを十分に発揮している。 英国プログレ王道に初期クロス・オーヴァーを加味した、といえばいいだろう。
   音楽的なアプローチは、YES によるロックンロールの複雑/高度化と類似しており、ロックンロールのシンプルな躍動感をキープしたまま、スコアを複雑化したものである。 演奏は、音数多いリズム・セクションが引っ張り、複雑なリズムやアンサンブルのまま直線的に疾走する。 そこへ、YESEL&P 調のクラシカルで攻撃的なキーボードとギターが乗っかり、快速ユニゾン、ハーモニーとともに、さまざまに変化する。 ソウルフルなヴォーカルとアコースティック・ギターは、メロディを強調して叙景的な演出を施し、ひた走るアンサンブルに弾力あるメリハリをつける。 英語のヴォーカルの響きなど、若干ユーモラスで垢抜けない感じがあるところも、演奏の切れが凄いだけに特徴的だ。 したがって、馬鹿テクながらもテクニック一辺倒なイメージは少なく、音楽的な懐の深さを感じさせる。 それにしても、ドラムス、ギターらの器楽演奏のテクニックは、本当にすさまじい。 演奏力という点で ATOLL に近い感じだ。 また、キーボーディストは、クラシカルな演奏を中心に、ジャズ風、ジャズロック風とさまざまなスタイルを多彩なサウンドとともに弾き分けている。 リック・ウェイクマンと同じく見せ場を心得たプレイヤーのようであり、なおかつテクニックも相当なものである。 ハモンド・オルガンとムーグ・シンセサイザーの快調な引き倒しが飛び出すと、やはりプログレッシヴ・ロック以外の何ものでもないスリリングな世界が現出するのだ。 ほとばしるメロトロンも、もちろんあり。
   全体に曲調の変化はかなり唐突だが、ありあまるテクニックが極端に折れ曲がる展開をカバーしている。 また、プレイの俊敏さが、各人のソロのみならずアンサンブルやインタープレイにもはっきりと感じられるところがすごい。 他の楽器への反応がすばらしくいいのだ。 ハイテク・ユニゾンの決めばかりか、かけあいやハーモニーまでもがきわめてスリリングな対話になっている。
  テクニカルでスピード感溢れるプログレッシヴ・ロック。 3 曲目のような英国ポップ調が前面に出るところでは、なぜかヴォーカルが FRUUPP に似る。 各曲も鑑賞予定。

  「Country Grave-Yard(田舎の墓地にて)」(8:18)
  「The Picture Of Dorian Gray(ドリアン・グレイの肖像)」(8:28)
  「The Swan Is A Murderer Part 1(白鳥の殺意パート 1)」(3:53)
  「The Swan Is A Murderer Part 2(白鳥の殺意パート 2)」(5:07)
  「Oliver(オリヴァー)」(9:30)
  「My Little Cloud Land(雲の王国)」(7:46)英国プログレ直系の傑作。

(KICP 2709)

 Profondo Rosso

 
Walter Martino durms
Fabio Pignatelli bass
Massimo Morante electric & acoustic guitar
Claudio Simonetti keyboards

  75 年発表のアルバム「Profondo Rosso」。 GOBLIN として初めての作品は、ダリオ・アルジェントの同名映画のサウンド・トラック・アルバムである。 前身グループを思わせるテクニカルなジャズロックから、「Exocist」影響下の TUBULAR BELLS 風ナンバー、オーケストラを用いた叙景的作品まで、サントラ本来の多彩な音楽的バリエーションを活かしつつも、アルバムとしてのまとまりもいい充実した内容である。 2001 年現在、映画版/リミックス版などを含んだコンプリート・エディション(CD MDF 301)が入手可能。 当然 BGM 的な小品が多いのだが、管絃を交えた小品(ジョルジオ・ガスリーニ作編曲)を散りばめることで全体を通した起伏ができ、ロック的なインストゥルメンタルとの共存が不思議なコントラストを成す、未発表ヴァージョンのアレンジ違いがおもしろいなど、なかなかの聴き応えあり。 ここのジャケットは KING レコードからの CD。

  「Profondo Rosso」(3:45)チェレスタによる TUBULAR BELLS 風のリフレインとクラシカルなオルガンを組み合わせた、重厚なるメイン・テーマ。名曲。

  「Death Dies」(4:38)ビートを強調した緊迫感あるジャズロック。 わりとアコースティックなサウンド。 このグループらしく、主役はリズム・セクション。 本曲のドラムスは、前任のカルロ・ボルディーニが演奏しているらしい。

  「Mad Puppet」(6:30)再び、あまりに TUBULAR BELLS(第二テーマ)な反復を使った作品。

  「Wild Session」(5:04+1:51)同様なピアノのオステイナートを導入にした鋭角的なジャズロック。 ムーグ・シンセサイザーのサウンドが新鮮。 ベース、ドラムスの存在感も圧倒的。 特にベースはほとんどギター並のプレイ。 珍しく、わりとベタにジャズなサックスを使っている。

  「Deep Shadows」(5:45) シンセサイザーが冴えわたる現代音楽風のジャズロック。 これだけうねってもファンキーにならないというのも天晴れである。 MAHAVISHNU ORCHESTRAFERMATA 流の快作。 ジョルジオ・ガスリーニ作曲。

  「School At Night」(2:05) 管弦楽による演奏。 ジョルジオ・ガスリーニ作曲。

  「Gianna」(1:47)フルート、ピアノによる演奏。ジョルジオ・ガスリーニ作曲。GOBLIN の演奏は、おそらくシモネッティ氏のピアノのみでしょう。

(KICP 2862)

 Roller

 
Agostino Marangolo percusion, durms
Fabio Pignatelli electric & ripper bass
Massimo Morante electric & acoustic guitar
Claudio Simonetti clavinet, organ, piano, minimoog, logan string machine
Maurizio Guarini Fender rhodes piano, Honer pianet, moog, clarinet, piano

  76 年発表の第二作「Roller」。 GOBLIN として初めての、サウンド・トラックでないオリジナル・アルバム。 内容は、安定したリズム・セクションと華麗なるシンセサイザー、メロディアスにしてヘヴィなギターとすべてがハイ・クオリティのテクニカル・ロックである。 ツイン・キーボードを活かたシンフォニックな音づくりとジャジーで流麗な演奏がマッチ、すばらしい音楽になっている。 これだけ演奏がうまいと超絶テクニックのオン・パレードになりがちだが、そこは OST で鍛えたセンス、ストーリー/情景をいかに聴かせるかに注意が払われており、あくまでドラマチックで想像力を刺激するアルバムになっている。 前身グループの作品で顕著だったで「いかにも英国プログレのコピー」風なプレイはすでに卒業済であり、ジャズロックのイディオムを用いつつも、スペイシーな音響とエモーショナルなメロディ、ファンキーなプレイがバランスよく配された独特の作風が感じられる。 演奏力に余裕があるだけに、ハードな場面もリリカルな場面の描き分けも自由自在。 すべてが一体となって疾走し始める、あの息を呑むような瞬間も幾度も訪れる。 イタリアン・ロックがすでにプログレ全盛期を過ぎていたにもかかわらず、全く独自の路線でテクニカル・プログレッシヴ・ロックを極めた、例外的作品といえるだろう。 5 曲目「Goblin」は、ハイテクのなかに音楽的成長を誇示するサスペンスフルで一編のドラマを見るような名曲。 3 曲目は、小品ながらクラヴィネットとギターが小気味よくリズムを刻み、ムーグ、エレピが駆け巡るジャズロック。 ドラムにも注目。 全曲インストゥルメンタル。

  「Roller」(4:38)シンプルながらもスリリングなテーマを、ジャジーなギターとクラシカルなキーボードで描き分ける。 ダイナミックかつ無駄なく引き締まった名曲。 けれん味あふれるリズム・セクションにも注目。

  「Aquaman」(5:22)アコースティック・ギターとシンセサイザー、エフェクトされたベースが織り成すファンタジックな作品。 ファンタジックといっても、次第に悪夢であることが分かってくる。 このややミニマルな曲調は、やはり EXORCIST=OLDFIELD の影響だろう。 前半は、ギターのアルペジオがリズムをキープし、リズム・セクションは自由な表現を見せる。 中盤からは、前曲同様ジャズロック的なリズムでギターがしなやかに歌う。 終盤は夢想的な演奏へ回帰。

  「Snip-Snap」(3:37)クラヴィネットが小気味よいファンキーなジャズロック。 リズム・セクションも跳ねる。 テーマはシンセサイザー。 ソロはエレピ。

  「Il Risveglio Del Serperte」(3:27)ピアノ、アコースティック・ギターによるロマンティックにしてクラシカルな気品のある作品。 ここでもドラムスが、パーカッション的な小技を見せる。 中盤にクラリネットのメロディが入る。

  「Goblin」(11:10)疾走と停滞の機微を心得たドラマある佳曲。 幻想美をたたえるメロディアスなシンセサイザーと弾け粘るドラムがすばらしい。 意外にポップ。

  「Dr Frankestein」(6:00)ギターとエレピのユニゾン/ハーモニーが波乱を予感させ、仕切り直しの後、キーボードのリードでテクニカルでスリリングなクライマックスを迎える。

(CD MDF 307)

 Suspiria

 
Claudio Simonetti Mellotron, organ, string machine, celesta, electric & acoustic piano, Minimoog, Moog system 55
Massimo Morante electric & acoustic guitar, buzuki, voices
Fabio Pignatelli bass, tabla, acoustic guitar, voices
Agostino Marangolo drums, percussion, voices

  77 年発表のサード・アルバム「Suspiria」。 ダリオ・アルジェント監督による同名映画のサウンド・トラックである。 内容は、キーボードを中心にしたテクニカルなジャズロックであり、ホラー作品らしい冷気の迸る禍禍しさとクールな技巧が絶妙の取り合わせになっている。 劇伴という性格上、効果音的な作品もあるのだが、全体としては、音楽だけ取り出しても立派にプログレッシヴ・ロックといえる内容になっている。 また、パーカッシヴな反復を用いて独特の怖気のたつような効果を上げることにも成功している。 タイトル・ナンバーは、またもや TUBULAR BELLS 風ではあるのだが、童謡のようなテーマと不気味な咆哮の如きヴォカリーズが遠い記憶の彼方にある悪夢を甦らせ血を凍らせる名曲。 タブラやブズーギなど、エキゾチックな音も巧みに使われている。 中盤の迸るような演奏は、テクニカルなシンフォニック・ロックのお手本である。 前作に参加したキーボーディスト、マウリツィオ・グアリニが本作にも参加しているが、クレジットからもれたという顛末もあるそうだ。

  「Suspiria」(5:57)GOBLIN の代表作。 童謡のようなテーマが致死の劇薬へと変転する、ゴシック・ホラー調の冷気漂う名曲。

  「Witch」(3:10)地獄の釜が煮えるようなパーカッション、ティンパニをよぎって不気味なメロトロン・コーラスがうなりシンセサイザーが軋む。

  「Opening To The Sighs」(0:32)フェード・インから一気にクレシェンドする前曲のリプライズ。

  「Sighs」(5:15)冷気を迸らせる叫喚とタブラ、ブズーキ、チェレステらが交錯し邪悪なエネルギーで膨れ上がる名曲。 エキゾチズムはやがてカタコンベの重い扉を押し開く。

  「Markos」(4:03)駆け巡るシンセサイザー・シーケンスとドラム、エフェクト・ベースによる即興風の演奏。 眩暈と衝撃。 メロトロンが間隙を縫いカタストロフィックかつノイジー。

  「Black Forest」(6:06)ギター、ベース、シンセサイザーらによるおだやかなテーマを経て中盤からスリリングな演奏が続くシンフォニック・ジャズロック名品。 際立つサックスはゲストだろうか。

  「Blind Concert」(6:11)冒頭「Suspiria」がリプライズするもすぐさま BRAND X 風のヘヴィでファンキーなジャズロックへと突入する。 うねるリズムを横切ってシンセサイザーによるさまざまな電子音やパーカッションが飛び去る。

  「Death Valzer」(1:51)古いヨーロッパ映画で見られるカーニバルのカルーセルを思わせるピアノのワルツ。

(KICP 2721)

 Il Fantastico Viaggio Del Bagarozzo Mark

 
Agostino Marangolo percusion, durms
Fabio Pignatelli bass
Massimo Morante guitar, vocals
Claudio Simonetti keyboards
guest:
Antonio Marangolo sax

  78 年発表の第四作「Il Fantastico Viaggio Del Bagarozzo Mark(マークの幻想の旅)」。 ヴォーカル(イタリア語)を初めて取り入れた、ファンタジックなイメージのコンセプト・アルバムである。 副主人公が主人公の「僕」を誘って旅に出るという「藤子不二夫的」シチュエーションは、GOBLIN というハイテク職人バンドのイメージとは全然重ならないが、そこがまたおもしろい。 重厚かつ華麗な演奏はここでも冴え渡り、ヴォーカルがやや垢抜けないことをさえ除けば、内容は、ほぼ完璧なテクニカル・シンフォニック・ロックである。 ジャズロック的な切れ味のあるリズム・セクション、あまりに多彩なシンセサイザー、抜群の表現力をもつギターまで、演奏は一流である。 ややメタリックな音色や後半のシンセサイザー・ビートなど、時代の音にも敏感であり、70 年代後半のメイン・ストリームと田園風のイタリアン・プログレのブレンドという捉え方もできる。 スリラー映画の OST らしいミステリアスな反復もあるのだが、それ以上に、溌剌とした、シンフォニックで華のある演奏である。 他の OST を押しのけて、「Roller」に並ぶ出来映えといえるだろう。

  「Mark Il Bagarozzo(マークの幻想の旅)」(5:00) インド風のエキゾチックなイントロに驚くが、そこを越えれば、いかにも GOBLIN らしいテクニカルで重量感のある演奏が続く。 キーボード、ギター中心のダイナミックな間奏は、テクニカル・ロックの名に相応しいものだ。 ベース、ドラムによるグルーヴィなリズム、レスリーの効いたキース・エマーソンばりのハモンド・オルガン・ソロ、メロディアスにしてドライヴ感たっぷりのギターらが、きっちりとまとまり、さほど大作でもないのにドラマができている。 特に、ギターのプレイは、いわゆるイタリアン・ロックのジミヘン亜流ではなく、ATOLL を思わせる格調がある。 また、ヘタウマ風のヴォーカルは、意外性を放つ新機軸である。 華やかです。

  「Le Cascate Di Viridiana(ヴィリディアナの滝)」(5:45) フュージョン風のサウンド・メイキングで、緩やかにクレシェンドして雄大な高まりを生み出す SEBASTIAN HARDIE ばりのシンフォニック・チューン。 前半は、シンセサイザーが巧みなピッチ・ベンドさばきで光沢を放ち、フレットレス・ベースが緩やかに響き、ギターがキラキラとアルペジオを刻むファンタジーにあふれる演奏。 アンサンブルは、呼吸よく、ていねいにフレーズをつないでゆく。 細かな塵が渦巻きながら、次第に規則的なパターンを作り上げてゆくようなイメージだ。 ストリングスが夢を吹き上げ、サックスがメローに歌い、やがて、シンバルのざわめきが波乱を予感させる。 高まりを抑え切れないように、ロマンティックなピアノが歌い出し、リズム・セクションに追い立てられるように、メロトロン・ストリングスが高鳴るシンフォニックなクライマックスへと登りつめてゆく。 繰り返しごとに、優雅に泰然と舞い上がってゆく。 そして満を持してギターが登場、エモーショナルかつ緊張感のあるすばらしいプレイで、力強くカラフルな流れを成してアンサンブルへ歌を刻み込む。 入念な音作りが胸のすくような感動を呼ぶ作品だ。 インストゥルメンタル。

  「Terra Di Goblin(ゴブリンの世界)」(4:35) ブルージーな哀感とミステリアスで官能的なタッチが混じりあった歌もの。 ヴォーカルの声質が曲の雰囲気と合わないような気もするが、キーボードを中心とした演奏から、やや感傷的で悲劇的なムードは伝わる。 キーボードは、シンセサイザー、ストリングス、チェンバロなどがヴォーカルを取り巻き、ソロではシンセサイザーが哀愁の旋律を朗々と歌う。 パーカッションによる細かな音も散りばめられている。 後半、泣きのギター・ソロの説得力もみごと。 マーチング・スネア、シンセサイザーのファンファーレは、あたかも葬送の曲のようだ。 ミドル・テンポのアンサンブルが、これだけタイトに締まっているというのも大したものである。

  「Un Ragazzo D'Argento(ダルジェントの息子)」(4:43) この時代らしいシンプルなビートとシンセサイザー・シーケンスをフィーチュアしたリズミカルなポップ・チューン。 ややチープな感じはぬぐえないが、ディスコ調の単調なシーケンスを駆動力にしながらも、音数多くたたみ込むドラムスやかなり超絶なマイクオールド・フィールド風のアコースティック・ギター、ELO ばりのオブリガートなど、聴きどころは多い。 エンディングには、カントリー調のフィドルも聴こえる。

  「La Danza(舞踏)」(5:17) キーボードをフィーチュアしたファンタジックかつスリリングな作品。 序盤は、TANGERINE DREAM を思わせるシンセサイザー・ビートが刻まれ、そしてリズム・セクションが加わると、一気に演奏はダイナミックに変貌する。 シンセ・ビートとタイトなバンド・アンサンブルが丁々発止を繰り広げ、やがて鮮やかなムーグ・シンセサイザーとギターのバトルへと引き継がれてゆく。 後半は、ひたすらタイトな演奏が続く。

  「Opera Magnifica(華麗なオペラ)」(3:55) シンフォニックかつ華美なポップ・ナンバー。 エレクトリック・ピアノが刻む和音がきらびやかだ。 初めはピアノ伴奏のヴォーカルに野暮ったさがあるが、伸びやかなサビとシンセサイザーの伴奏を得てからは一気に洗練される。 楽器はすべてバッキング徹している。 「Selling England By The PoundGENESIS に通じるものもあり。

  「Notte(夜)」(2:45) サティ風のゆがんだピアノが印象的ないかにもホラー映画の OST 風のナンバー。 あいかわらずエレクトリック・ピアノのリフレインが TUBELAR BELLS である。 不気味なモノローグ、ストリングスがエキセントリックなムードを盛り上げる。

  「...E Suono Rock(そしてロック)」(4:33) スピード感と強烈なビートに追い立てられっ放しの痛快なインスト・ナンバー。 オープニングのシンセサイザーの縦揺れビートが布石になりその後の疾走感が余計に強調される。 なかなか計算されている。 剛球一直線。 しかしエンディング・ナンバーにしてはストレートに終ってしまい物足りなさも少しある。


(KICP 2836)


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