GALAAD

  スイスのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「GALAAD」。 88 年結成。 97 年解散。 作品は三枚。 フレンチ・ヴォイスと華麗な器楽による ANGE 直系、やや MARILLION 入りのシアトリカルなシンフォニック・ロック。 この作風はポーランドの ABRAXAS へと引き継がれている。

 Premier Fevrier

 
Pierre-Yves Theurillat vocals
Gianni Giardiello synthesizer, piano
Sebastien Froidevaux electric & acoustic guitars
Gerard Zuber bass
Laurent Petermann drums, percussion

  92 年発表のアルバム「Premier Fevrier」。 クリスチャン・デキャン直系のアクの強いヴォーカルをフィーチュアしたトータル・アルバム。 完全に ANGE、初期 GENESIS と同系の演劇路線である。 テーマは「The Earth On Shoulder」なる掌編らしいのだが、フランス語に明るくないため、内容は分からない。 ギター、キーボード、リズム・セクションらのプレイとアンサンブルの作りこみは、20 代前半の若者とは思えぬ高い完成度を誇る。 流麗にしてミステリアスなハケット/ロザリー流のギター・プレイと、アナログと思われる多彩なシンセサイザーは、ポンプ系ではずば抜けている。 ピアノ、ギターなどアコースティックな音もうまく取り入れている。 ヴォーカルは、パワフルな歌唱力をもっているだけに、お芝居系の表情付けも堂に入っている。 VERSAILLES ほど極端な屈折した指向ではなく、ANGEGENESIS、さらには英国ポンプの影響をすなおに出しながら、70 年代の音も意識して物語性のある曲想を描いている。 小道具の用い方もうまく、頻繁な調子の変化もじつになめらかである。 ハイレベルの演奏という印象を支えるのは、主として安定したリズム・セクションとヴォーカルの存在感だろう。 特に、ドラムのリードによる多彩かつ俊敏なリズム・チェンジは、ダラダラしがちなこの手の音に、くっきりとメリハリをつけている。 例えポンプ・スタイルの演奏であっても、切れ味があり HM 的なクリシェに落ち込まないと、こんなにカッコいいと再認識。 PENDRAGONMARILLION らのオープニング・アクトもつとめたそうだが、この出来だとはっきりいって本編を食っていたでしょう。
  耽美なメロディとともに、ロック本来の凶暴性や小気味よい運動性、シンプルさも忘れないフレンチ・ロックの逸品。 ネオ・プログレと冠する作品のうちでは屈指のものでしょう。 5 曲目は 11 分を目まぐるしい展開で描く文字通りドラマチックな作品。 6 曲目はロマンティックなピアノ・ソロから幕を開け、フルート、ストリングスが美しい御伽噺。 最終曲はもろ MARILLION なナンバー。 おそらく初期の習作でしょう。 個人的には、フランス語特有の厚ぼったく得意な響きがあるために、FISH のパフォーマンスほどはクサさが目立たないというおもしろい発見もあった。 まあ ANGE のイメージが強いため、こちら側に準備ができている、ということだろう。

  「Janus」(8:53)
  「Le Mendiant」(6:59)
  「Petite」(5:02)
  「Blasphemes」(6:01)
  「Votre Mere」(11:28)
  「Sabliere」(11:56)
  「C'est De L'or」(4:47)
  
(MUSEA FGBG 4070-AR)

 Vae Victis

 
Pierre-Yves Theurillat vocals
Gianni Giardiello keyboards, chorus
Sebastien Froidevaux guitars, chorus
Vincent Berberat bass, chorus
Laurent Petermann drums, percussion, chorus

  96 年発表のアルバム「Vae Victis」。 よりコンテンポラリーなサウンドによる、メインストリーム・ロックへの接近を見せる第二作。 U2MARILLION などと同じく、現代を生きるロックという姿勢が感じられる。 それでいてサウンドは、MARILLION よりもフレッシュかつオリジナルなものだ。 芳醇なるヴィンテージ・サウンドにこだわった前作とは異なり、本作では若々しい貪欲さとストレートな表現衝動がある。 グランジ系の毛羽立つようにザラついた音に嘘がない。 カリスマ・ヴォーカルは、怒りに燃えながらも FISH ばりのエキセントリックな表情を見せ、ギターは多彩な技で吼え、シンセサイザーは、抜群の反応性を見せる。 全てが、テクニカルにしてアヴァンギャルドだ。 シュアーでタイトなビートが、とにかくカッコいい。 今回は、ベーシストもかなりの腕前のようだ。 プログレなツボの押さえ方の焦点もボケていない。 ジャズ/フュージョン、HR/HM 的な保守路線とは完全無縁のモダン・ロックであり、ネオプログレの頂点といえる作風である。 ベタなコラージュがこれだけ決まるのも、センスのよさでしょう。 本当はイギリスからこういう音が出てくるべき、と思うのは私だけでしょうか。 KULA SHAKER よりカッコいいし、ARENA なんかはこういうバンドも聴くべきでしょう。
(6422 ARC 328)


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