FORMULA TRE

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「FORMULA TRE」。 68 年結成。 69 年発表のシングルの成功を経て、70 年アルバム・デビュー。 サウンドは初期のサイケ、ニュー・ロック路線から作品を重ねる毎にオリジナルなものへと深化してゆく。 四作目を最後に 73 年解散。 90 年に再結成、アルバム発表。

 Dies Irae

 
Tony Cicco Drums, Percussion, Voice
Gabriele Lorenzi Keyborads, Bass, Voice
Alberto Radius Guitars, Bass, Voice

  70 年発表の第一作「Dies Irae」。 バティスティ-モゴールによる曲とカヴァー曲から構成される。 内容は、万華鏡のようなジャケットから推察される通りのヘヴィーなサイケデリック・ロック。 轟々たるギターとハモンド・オルガンがリードする、アシッドかつワイルドな演奏である。 注目すべき点は、ヘヴィ・サイケ調の曲においても豊かな歌心とメロディがしっかり浮かび上がってくるところだろう。 ロマンティックな表情をもつヴォーカル、コーラスには、いかにもイタリアらしいポップ・センスが感じられる。 ギターやオルガンの音色を調節したり、アンサンブルの静と動のコントラストを活かすなど、インストゥルメンタル・パートでも工夫が凝らされている。 決してダラダラ垂れ流すような弛緩型の演奏ではなく、濃厚かつ伝統的なロマンチシズムを流行のサイケ風味で表現した内容である。
  1 曲目ではいきなりヘヴィーなリズムが暴れ、ファズ・ギターとオルガンが唸りを上げる。 ギター、オルガンともにリフで攻めフリー・フォームのソロで暴れる、パワー全開のパフォーマンスである。 有名な「Dies Irae(怒りの日)」の厳かな主題を轟々たるエレクトリック・サウンドが取り巻く。 3 曲目「Perche...Perche Ti Amo」のように、ヴォーカル・パートは情感に満ちたメロディを歌い上げ、迫力のギター・ソロで盛り上げるというバランスの取れた作品もある。 パンチの効いたハイ・トーン・ヴォイスはチッコだろうか。 6 曲目「Walk Away Renee」は、英語のヴォーカルから判断して英米圏の曲のカヴァーと思われるが、テーマに対する激しいインストゥルメンタルの彩りが迫力満点。 一方 7 曲目「Se Non E Amore Cos'e」は、堂々たるミドル・テンポのイントロと演奏がカッコいい、LED ZEPPELIN のような英国 HR 本道を思わせる佳作。 もっとも、英国モノにはない優しげなヴォーカル表現がいい感じだ。 8 曲目「Sole Giallo, Sole Nero」は、ジャジーなハモンド・オルガンとシンプルでポップな歌メロによる爽やかなナンバー。 後半にゆくに連れインストゥルメンタルが激しさを増し、ドラム・ソロまであってお腹いっぱいの 7 分間である。 ヴォーカルは、だみ声がラディウス、甘目の声がチッコだと思われる。


  キャッチーな歌物+ヘヴィーなギター/オルガンというスタイルは、おそらく英米のニュー・ロックを出発点としてイタリアン・ポップスの伝統を活かした結果なのだろう。 サイケデリックなサウンドと「泣き」のメロディによる理想的なコンビネーションだ。 ヘヴィなトーンで筋を通してニヒルに迫り、焦らしに焦らして決めのメロディを叩きつけるコテコテな作風なのだが、若々しさも感じられてイヤミはない。 歌ものサイケの傑作。

(NUMERO UNO ND 74271)

 Formula Tre

 
Tony Cicco Drums, Percussion, Voice
Gabriele Lorenzi Keyborads, Bass, Voice
Alberto Radius Guitars, Bass, Voice

  71 年発表の第二作「Formula Tre」。 第一作の路線継承であり、完全に歌もの。 ラディウスのだみ声ヴォーカルがいい味わいだ。 サウンドは、粗削りでサイケデリックなのだが、演奏そのものは安定している。 スウィートなメロディとヘヴィーなギター、オルガンが大活躍するインストゥルメンタルのコンビネーションには、今でも色褪せない魅力がある。 作曲は、全てプロデューサーのルチオ・バティスティ。 ニューロック調の曲は、どこかで聴いたようなものも多く懐かしく微笑ましい。

  びっくりするようなパワフルなドラムの連打から幕を開けるオープニング「Nessuno Nessuno」(11:00)。 ヴォーカルは、イタリアらしい濃厚なエモーションを孕んだもの。 チッコの声質の甘さが、このメロディと丁度いいバランスだ。 アコースティック・ギターとコーラスの入るサビでは、いつのまにか演奏に透明感が現れる。 歪んだギターが導く後半は、お得意のヘヴィなインストゥルメンタル。 ドラムがまたパワフルなロールを聴かせる。 タムを叩く音がやたらと大きい。 ギターがミュートしながら少しづつヘヴィーなフレーズを弾き始めると、ハモンド・オルガンもそれに応えるように暴れ出す。 フォーク・タッチの歌メロ・テーマと長大な間奏部によるアートロック巨編。 ヘヴィなリズム、甘美なメロディ、ワイルドなギターとオルガンの応酬など、おなかいっぱいです。

  「Tu Sei Bianca, Seri Rosa, Mi Perderò」(4:12)ヘヴィなギター、ベースのリフで走るロックンロール。 スウィートで小粋な歌メロとハスキーなファルセット・ヴォイスに惚れる。

  「Vendo Casa」(2:47)ラディウスが歌う切ないバラード。 ファルセット・コーラスとアコースティック・ギターのリズミカルな伴奏。 静かなオルガンのリフレイン。 懐かしく切ない。

  「Eppur Mi Son Scordato Di Te」(3:35)CREAM、ジミヘン直系のギターがリードするヘヴィ・ロック。 チッコのヴォーカルが切なくいい感じだ。 ファルセットのコーラスも美しい。 オルガンのシンフォニックな伴奏も効いている。 歌メロや曲調が、VANILLA FUDGE のアレンジした「She's Not There」を思わせる。 THE DOORS 辺りの影響もあるのだろう。 名曲。

  「Un Papavero」(3:57)切れ味よいギター・リフがリードする軽快なポップ・ロック。 ラディウスのどうしようもないダミ声とファルセット・コーラスが呼びかけあうユーモラスな曲。

  「Il Vento」(4:44)シタール風のギターとオルガンが電気にまみれて絡むミステリアスなナンバー。 これはロレンツィのヴォーカルか? ヴォーカルの繰り返しが次第にエキサイトし、サビでは思いの丈が噴き出す。 歌メロはひたすらキャッチーで切ない。

  「Mi Chiamo Antonio...」(5:50)エフェクトでうっすらと広がるギターのストローク。 ヴォーカルはラディウス。 次第にエキサイトするヴォーカル。 サビでは、イタリアらしいユーモラスで情熱的なメロディをラディウスが叩きつける。 一転、ギター・ソロからはブルージーな曲調へ変化。 再び、サビから雄大な演奏が続いてゆく。 濃厚な情感を持つカンツォーネ風バラード。

  どの曲もヴォーカル・メロディがとてもいい。 そのヴォーカルにヘヴィな器楽が絡むというパターンが、とてもうまく機能している。 1 曲目のような長大なインストゥルメンタルもあるのだが、やはり歌に惹かれる作品だ。

(NUMERO UNO ND 74272)

 Sognando E Risognando

 
Tony Cicco Drums, Percussion, Voice
Gabriele Lorenzi Hammond Organ, Piano, Minimoog, Electronics, Bass, Voice
Alberto Radius Electric & Acoustic Guitars, Bass, Voice

  72 年発表の第三作「Sognando E Risognando(夢のまた夢)」。 コンパクトな楽章から成る組曲を、研ぎ澄まされた音で奏でるイタリアン・プログレッシヴ・ロックの名作。 作曲の半分をグループで手がけ、バティスティ/モゴールからの一人立ちを目指しているようだ。 前二作がサイケデリックでヘヴィな音であったのに対し、本作ではキャッチーなテーマを用いつつ、丹念なタッチで美的な世界が作られている。 オーヴァー・ダビングも用いながらも、トリオとしての音の配置の妙も発揮されている。 ダイナミックかつほどよく抑制された演奏はポップスとしても高度なものであり、IL VOLO へとつながるところも見える。

  タイトル組曲「Sognando E Risognand(夢のまた夢)」 「Fermo al Semaforo」(2:53)は、メロトロンと歪んだオルガン、ムーグが鳴り響きけたたましいギターが絡みくうちに、いつのまにか力強く歩み始める勇壮なる序曲。 キーボードを積み重ねたシンフォニックかつ神秘的なイントロダクションである。 「Sognando」(2:15)は、おどろおどろしいムーグ、パーカッシヴなハモンド・オルガンによるリフをうねるようなギターが追いかける、ヘヴィなアンサンブルで始まる。 音は荒々しくヘヴィだが、キャッチーで小気味いいリフ。 この辺がキャリアの成せる技だろう。 雄々しきヴォカリーズやアシッドなギター・アドリヴとともにヘヴィにしてグルーヴィな演奏が続いてゆく。 スリリングな第二テーマが一体となって提示され、繰返されつつフェード・アウト。 緊張感の続く、ヘヴィ・ロックだ。 3 曲目「La stella con i buoi」(4:10)は、一転してアコースティックな音空間である。 オープニング、アコースティック・ギターのアルペジオとまろやかなオルガンが深いエコーでたゆとう中、ヴォーカルは前曲のテーマを発展させたメロディを歌う。 一転、荒々しいギター・リフがアクセントをつけ、リズムが加わる。 するとヴォーカルも力強く高まり、朗々と歌い上げる。 轟くオルガン、ヘヴィなギターそしてハイトーンのハーモニー。 華麗なヴォーカル・ハーモニーによるサビから、一転してミステリアスな序盤のアカペラへと戻るも、打撃音とともに凶暴な電子音が渦を巻き始める。 トムトムのようなドラム・ビート、そしてエンディングは、ギター・ソロが華麗にリードするタイトなアンサンブルである。 このギターとオルガンはかなりカッコいい。 凶暴で重々しい雰囲気と幻想空間をゆき交う、ロマンティックな演奏だ。 4 曲目「Risognando」(1:19)は、鳴き声のようなギターの囁きとシンバルの響きだけで始まり終わってゆく不思議な終曲。
  静と動、緩と急、自在に繰り広げる大作である。 タイトル通り幻想的で不思議な後味を残す。 軽やかなヴォーカル・コーラスとヘヴィーな演奏が巧みにブレンドされており、まさにキャリアを活かした独創的な内容といえるだろう。 ビート・グループから脱皮しアヴァンギャルドな方向を目指す、そういう意図が見える。 バティスティ/モゴールの作品。

  組曲「L'ultima Foglia(朽ちゆく、一片の葉)」は三部構成。 第一章「L'albero」(5:15)は、ドラムスとオルガンが反応しあう即興演奏から始まる。 サイケデリックな浮遊感。 ギターがシャープなメロディでオルガンと絡むと、リズムも整い演奏に形ができてくる。 サイケなギターの下降音形にオルガンがふつふつと反応し始める。 メロディアスなギターとストリングス系のシンセサイザーによるクラシカルなアンサンブルでふわりと着地すると、一転してワイルドなオルガンのアドリヴへ。 オルガンのロングトーンをギターが受け止め、アドリヴへ。 ドラム・ビートが力強い。 ギターは思いのほかクラシカルであり、やがて、オルガンとギターがリズミカルなリフの応酬を始める。 ヘヴィな低音を響かせるギター、ハモンド・オルガンはエマーソンばりの小気味いいフレーズで突き抜け、静々と響き消えてゆく。 再び、オーボエを思わせる旋律とともにストリングスが静かに湧きあがる。
  フリー・インプロヴィゼーションに近い演奏だ。 シンプルなフレーズを積み重ねて、雰囲気ある演奏に仕上げている。 インストゥルメンタル。
  第二章「Non militrovo」(4:21) ロールに続いてドラムスがタイトにリズムを刻むオープニング。 ベースとギターが静かに呼応し始める。 オルガンの和音が高鳴り、ギターもヴォリュームを上げて演奏は熱気を帯び始める。 前曲同様のギターとオルガンのバトルが始まる。 ノイジーなギター・リフと湧き上がるようなハモンド・オルガンのリフの応酬。 鋭くテンポ・アップ。 我慢し切れなくなったようにオルガンのアドリヴが炸裂する。 グリッサンドを駆使したワイルドなプレイだ。 続いて、己の存在を確かめるように音を刻みつけるギター・ソロに交代。 しなやかでリズミカルなプレイだ。 再びアドリヴ的な演奏。 オルガンとギターは絡みつつも、直線的に攻め込むような姿勢である。 最後のギター・ソロは音も演奏も文句なし。 カッコいいギターの典型といえるプレイです。 ジャジーなハードロック・インストゥルメンタルである。
  終章「Finale」(2:12)前曲を断ち切るかのように、重厚なピアノの和音が轟く。 ベートーベンを思わせる厳格な演奏だ。 ピアノに重なるように、ストリングスが雄大な裾野を広げてゆく。 オーヴァーラップするのは、透明感あるアコースティック・ギター。 エモーショナルなプレイが轟々たるキーボードの嵐を貫く。 きらめくようなギターの音色は、分厚く高鳴るキーボードの背景の中でひときわ映える。 重厚なオルガン、ストリングスそしてムーグによるファンファーレ。 キーボード群はいよいよ大音量で響き渡る。 すっと音が引きムーグのファンファーレが流れる。 これは第一曲のギターによる下降音形のテーマだ。 ストリングスの優美な響き。 ギターとともに高く高くのぼりつめてゆく。 ティンパニの雷鳴。 壮大なエンディングである。
  キーボード・オーケストレーションを活かした雄大な終章。 アコースティック・ギターがアクセントとしてうまく使われている。
  即興性の高い幻想的かつサイケデリックな作品。 一楽章、二楽章はフリーなプレイが続くが全体に緊張感が漲っている。 攻めを忘れないインタープレイの密度も高い。 前作までのパワフルな演奏力をぎゅっと濃縮して、若干抑制も試みた優れた演奏だ。 終章の盛り上がりは、この時代のお約束のキーボードによるシンフォニックなものだが、ストレートかつコンパクトな流れで一気に聴かせる。 出色のインストゥルメンタル・ナンバーでしょう。 さまざまなキーボードの音は、メロトロンではなくオルガンを巧みに変調して音色を変えているようにも思える。 グループのオリジナル曲。

  「Storia Di Un UomoE Di Una Donna(男と女のお話)」(4:57) 柔らかなピアノのひらめき、生々しくもロマンティックなアコースティック・ギターの調べ。 男性的ながらも密やかな弾き語りが始まる。 イタリアン・ロックならではの音、展開である。 おだやかなオルガンの響き、素朴にして熱い歌。 高まるサビ、寄り添うファルセットのハーモニー。 フォーク・タッチと R&B が矛盾なくとけあう不可思議。 スキャットと鳴き声ギター。 ピアノが散りばめられて、歌はいよいよ胸かきむしる響きを帯びる。 再び沈み込むようなメイン・パートから、ゆったりと伸びをするようなサビそしてファルセット・コーラスとの対話へと進む。 シンプルかつ完成された展開だ。 隙のない流れである。 ギターとコーラスが絡みながらフェード・アウト。
  ラディウスのヴォーカルが冴え渡る、センチメンタルな歌ものの傑作。 あえていうなら THE BAND 風バラードなのだが、もっと素朴で熱い。 第一作、第二作に直結する、彼らの得意技だ。 インスト色を高めオリジナリティを求めたこのアルバム中では異色だが、圧倒的な説得力をもつ名曲には違いない。 特にサビの部分の説得力、間奏のタイミングが見事。 ファルセットのコーラス、ラディウスのギターは実にきっちり仕事をしている。 バティスティ/モゴールの作品。

  組曲「Aeternum(永遠)」は四部構成。 スリリングにしてキャッチーなテーマが冴えるドラマチックな大作。 「Tema(テーマ)」(2:32) リズミカルなテーマをどーんと投げつけるオープニング。 一体感あふれるヘヴィな演奏がカッコいい。 ドライヴ感たっぷりの耳に残るリフである。 激しいトゥッティでテーマを繰り返し、ワイルドなオルガンのオブリガートがかみつく。
   ブレイク。 アコースティック・ギターの調べとともにヴォーカルが密やかに歌い出す。 ここはチッコか。 2 コーラス目からピアノとオルガンが加わり、音は厚みを増す。 切ない歌と重厚な演奏の組み合わせだ。
  ハモンド・オルガンの不協和音の轟きは、再びテーマを呼び覚ます。 カッコいいテーマを突きつける序曲。 このテーマと情感溢れるセンチメンタルなヴォーカルとの落差も効果的。 「Caccia(狩り)」(1:42) 狩の開始を告げるトランペットのようなムーグ・シンセサイザーのファンファーレ。 オルガンとストリングスが伴い、勇ましいリズムが打ち鳴らされる。 雄大な演奏だ。 キーボード・オーケレストレーションとドラムスをフィーチュアしたインストゥルメンタル小品。 多彩な音色と緊密に反応しあうドラム、キーボードに注目。 「Interlude(間奏曲)」(5:56) きらめく宝石のようなピアノ・ソロ。 すべり降りるような下降スケールを経て、モダン・クラシック調のアグレッシヴなソロへと続いてゆく。 きらびやかな高音の舞いと重厚な低音が印象的。 ジャジーな表情もまじえるキース・エマーソンばりのフリーで技巧的な演奏であり、ロレンツィの技量が本格的あることが分かる。
  ハイハットの静かな連打、ピアノも柔らかく表情を変化させる。 ポップな曲調だ。 そしてギターによる一人かけあい。 シンプルな上昇音形のフレーズがびっくりするくらい効果的だ。 ノイジーなムーグも加わって混沌とした EL&P 風の演奏になってゆく。
   そして、テーマの再現。 鮮やかなトゥッティ。 オブリガートを経て、フリーな演奏へ。 ドラムの不規則な連打。 轟くノイジーなキーボードそしてヘヴィなギターによるクラシカルなアンサンブルだ。 次第にリズムは整い、変調されたサウンドのまま轟々とアンサンブルは高鳴ってゆく。
   余韻。 そして重々しいピアノの一閃。 圧巻のピアノ・ソロから流れるような展開で進むクラシカル・チューン。 テーマを回顧する辺りは、自由な発想の間奏曲らしい見事な演出。 ピアノが重厚な表情からややポップス調に変化する辺りもすばらしい。 中盤のヘヴィな演奏は、さまざまなスタイルを叩き込みサイケデリックな混沌も意識した野心的な演奏だ。 決して野放図ではなく計算された演奏になっているている。 ピアノ、ギター、ドラムそれぞれに見せ場がある。 「Finale(終章)」(1:18)フェード・インするストリングス、オルガンとともに長いクレシェンドを駆け抜ける。 荘厳かつ厳粛な大団円。 足早に去る音。
  さまざまな音楽性をつぎ込んだドラマチックな傑作。 サイケなフリー・フォーマットの演奏やキャッチーなメロディ、クラシカルなアンサンブルなど、持ち札をすべて投入した作品だ。 テーマのよさとオルガン、シンセサイザー、ピアノと幅広いキーボードの活躍が目立つ。 シンフォニックな曲調は、彼らの一つの到達点だろう。 グループのオリジナル曲。


  インスト指向の高まりとオリジナリティの発揮が目指された傑作。 組曲を 3 つ並べ、大作の構成力を誇示するかのような自信に満ちている。 組曲は、各曲の性格が明確でストーリーもはっきりしており、長さのわりには聴きやすい。 ビートポップ出身なだけに、ピリっとコンパクトな曲で惹きつけるのはお手のものだろう。 ポップス出身のプログレッシヴ・ロックの成功例といっていい。 全体にレベルは高く、特に「L'ultima Foglia(朽ちゆく、一片の葉)」と「Aeternum(永遠)」は、巧みな展開を持ちながらも一貫してハードなドライブ感を持ち続ける名曲。 また「Aeternum(永遠)」は、テーマが出色。 もちろんヴォーカル・ナンバーもすてきだ。 得意の鳴き声ギターもあり。 英国プログレの影響はあるのでしょうが、英国では聴くことのできない音です。

(KICP 2705)

 La Grande Casa

 
Tony Cicco Drums, Percussion, Voice
Gabriele Lorenzi Keyboards, Bass, Voice
Alberto Radius Guitars, Bass, Voice

  74 年発表の第四作にしてラスト・アルバム「La Grande Casa(神秘なる館)」。 作風は一変し、ラディウスの力強いアコースティック・ギターが全編を貫くヴォーカル・アルバムになった。 前作でもバランスのとれたサウンドでドラマティックに物語を描いたが、本作では、さらに華美な部分をそぎ落とした音でロマンティックな世界を生み出している。 楽曲は、メロディアスでリラックスしているようで、かなり細かいアレンジにも腕をふるった印象を与える。 弾き語りの魅力とシャープなアンサンブルの魅力が、ともに十分に発揮された屈指の名盤。 ブリティッシュ・ロックにうるさい方にはお薦め。

  オープニング「Rapsodia Di Radius(ラディウスのラプソディ)」(5:21)は、華麗なアコースティック・ギター・ワークと彼のヴォーカルを堪能できるナンバー。 伴奏としてのインストが、以前よりもずっと洗練されてきた。 鮮やかなアコースティック・ギターのかき鳴らしからカッティングへ、そしてソフトにメロディを刻み、再びエネルギッシュなカッティングへと変幻自在のギターにアングリしていると、一気にバンド・アンサンブルがシンセサイザーのリードで走り出す。 このオープニングのカッコよさは、イタリアン・ロック全体を見渡しても一、二を争うのではないだろうか。 そしてヴォーカルの入りで再びグッと退いて、アコースティック・ギターを渋く響かせる。 泣き過ぎずクール過ぎずの微妙なバランスがすばらしい。 ギターのメロディが哀愁を込め、アコースティック・ギターがかぶさりメロトロンとギターのフィルでスキャットが入るところでは、たまらないくらい切なさがこみ上げてしまう。 部厚いバンド演奏全体でこのメロディで押しておいてスッと退き、アコースティック・ギターのカッティングへ戻ると、再び力強いバンド演奏がギターのリードで走る。
  オープニングの語りかけるようなアコースティック・ギターのすばらしさ、そして躍動感に満ちたカッティングからハードなアンサンブルへ雪崩れ込む瞬間の息を呑むカッコよさ。 拍手喝采。 ヴォーカルは、渋く抑えることによって一層存在感をアピールしている。 インストをくっきりと際立たせるのも、このヴォーカルの存在だ。 メロディアスな演奏からハードな演奏への変化も巧みである。 アコースティック・ギターが随所で引き締めるが、全体的にはシンフォニックなサウンドだと思う。 拍手喝采。

  2 曲目「La Ciliegia Non E Di Plast(人工自然)」(4:33)も、アコースティック・ギターによるパーカッシヴなミュート・カッティングがみごとな歌もの。 サビで入るピアノのバッキングも軽やかだ。 リード・ヴォーカルは、ドラムのチッチョ。 サビのコーラスの後の不気味な低音ヴォイスはラディウスか。 ギターの伴奏がなめらかで美しい。 そして再びバッキングのギターは、きしむような音を立ててハスキーなヴォーカルを守り立てる。 ホンキートンク風のピアノ。 そしてサビのコーラスはまさしく華麗。 呟くような低音のヴォーカルがピアノ、ギターとともに続き、ギターが鮮やかにリードして演奏は走る。
  メロディ・ラインもインストの味つけも、飛びぬけた味わいのヴォーカル・ナンバー。 色っぽくって切なくってブルージーだけどどこかお気楽なのは、まさしくイタリア風。 大のお気に入りです。 あえていうなら、イタリアの「カントリー」なのだろうか。 奇妙なタイトルは何を意味するのでしょう。

  3 曲目「Liberta Per Quest'uomo(男の自由)」(5:33)は、アコースティック・ギターのアルペジオが次第にギターやシンセサイザーを呼び覚まし、全体が幻想的な色合いを帯びてくるオープニング。 メロトロンの響きが満ちギターが泣くと、オルガンにリードされて雄大なメロディが高まる。 クライマックスから、一瞬のブレイクを経て再びアコースティック・ギターのアルペジオからギター、ピアノが静かに呼び覚まされる。 幻想的な世界が再現する。 厳かなコーラスからドラマチックに轟くティンパニ、そして「Liberta...」を繰り返すコーラス。 コーラスは見る間に明るさを帯び高らかに響く。 ギターも鮮やかなメロディで追いかける。 コーラスとギターが消えてゆく。
  完成度の高いシンフォニックな作品。 ギターの音もかなり洗練されており、次第に盛り上がってゆく曲展開には、自然ななめらかさがある。 こうなるとちょっと昔の荒っぽさが懐かしくもなる。 コーラス以外はインストゥルメンタル。

  タイトル・ナンバー「La Grande Casa(神秘なる館)」(5:27)は、鳥が鳴きせせらぎの音から始まる。 石を敷き詰めた庭に入ってくる車。 SE を経てアコースティック・ギターがさざめき、ヴォーカルが呟くように入ってくる。 フォーク風のアンサンブル。 シンセサイザーがゆらめくような旋律を響かせ、ギターのシャープなオブリガートが入る。 次第にリズムがはっきりし、ギターの耳障りなパワー・コードが響く。 アンサンブルは一気に加熱、ヴォーカルは力強いコーラスのリフレインに煽り立てられる。 再び音が退き今度はピアノの静かな伴奏でヴォーカルが囁き始める。 そしてシンセサイザーのメロディからギター、ドラムと続き演奏は走り出す。 ヴォーカル・リフレインに応えるコーラス。 力強く執拗に「No! No! No! No!」を繰返す。 間奏は、ギターがリードするエネルギッシュな演奏からオルガンの荒々しいメロディへ。 コーラスが響く。 唐突な終り。
  憂鬱な囁きからアグレッシヴなコーラスへと直線的に盛り上るヴォーカル・ナンバー。 囁きにシンセサイザーが絡み、エレキギター、ドラムと次第にビートが形作られ、コーラスが入ってクライマックスに達する、という明快な道筋だ。 シュプレヒコールのように高揚するコーラスと囁きの落差の演出にもダイナミックな効果がある。 ここでのアンサンブルは、久々にストレートな力強さを感じさせる。 シンプルだが、楽器の積み重ねの生むドライヴ感の痛快なハードロックである。

  5 曲目「Cara Giovanna(いとしのジョアンナ)」(4:58)は、ロマンチックなピアノ・ソロによるオープニング。 アコースティック・ギターとピアノをバックにヴォーカルが切々と歌う。 ヴォーカルは時に高揚し高らかに歌い上げ、そして優しく愛撫するようにささやく。 アコースティック・ギターが美しい。 リズムが加わってからの間奏は、アコースティック・ギターが奔放なソロを奏で、シンセサイザーが包み込むように暖かい旋律で支えてゆく。 再びアコースティク・ギター弾き語りによる、表情豊かな歌へ。 ピアノ、ベースによる巧みなオブリガートから、再びギターのアドリヴとキーボードの旋律がオーヴァーラップする終章へ。 キーボードはオルガンだろうか、それともシンセサイザーなのだろうか。
  メランコリックなメロディが美しいフォーク風のヴォーカル・ナンバー。 きらきらと弾けるアコースティック・ギターの音色と豊かで暖かみのあるキーボードの音色の対比があざやかだ。 ヴォーカルの端々にラテンの熱っぽさが感じられるものの、曲調に、ブリティッシュ・ロックに通じる抑制とクールさも感じられる。

  6 曲目「Bambina Sbagliata(非常識な女)」(4:44)では、エレキギターによるテーマを久々に聴くことができる。 オープニングでは、オールディーズ風のエコーが切ないギターのリフレインにアコースティック・ギターのきらめくようなカッティングが重なる。 ノスタルジックな響きのある演奏だ。 そして、ラディウス独特の鳴くようなギターが切ないテーマを歌い上げる。 すっとブレイク。 おだやかなアコースティック・ギター伴奏でヴォーカルが始まる。 暖かく色気のあるヴォイスと、ロマンティックなメロディ・ラインのフォークソングである。 アコースティック・ギターのデュオが美しい。 ブレイクをきっかけにサビへ。 熱いリズムとともに演奏は高まり、ヴォーカルを受けてファルセットのコーラスが華やかに響く。 セカンド・ヴァースは、ストリングスが静かに歌とギターを支えている。 呟くようなヴォーカルの余韻そして再び力強いサビへ。 コーラスを追いかけるのは、愛らしいシンセサイザーのメロディ。 やがて、ストリングス・シンセサイザーが湧き上がり、ベースがみごとなリフを提示する。 スリリングに高まる演奏。 ストリングスが次第にうねり始める。 ワウを効かせたベースとドラムががっちり組んで走る。 ドラムが左右に散る。 強烈にグルーヴィな演奏が消えてゆく。
  あふれる切なさを胸にたたみ込む大人のロック。 ブレイクをはさんで、これでもかと盛り上げる語り口ながらも、音そのものはストイックである。 そして圧巻は、オープニングからのギター・オーケストレーションともいうべきアコースティック・ギター、エレキギターのアレンジと後半のほどよく抑えられたキーボード。 エンディングのベースを中心にした演奏は、まるで IL VOLO へ続くという表明にすら聴こえる。 熱いばかりが能じゃないとばかりに小粋なくせに、立ち去る背中は抱きしめたくなるような哀しさでいっぱいなのだ。 バイバイ 70'。


  ジャンル分けや歌物、インストという区別が空しくなる唯一無二の傑作。 洗練を極めて枯れる寸前で輝くような音楽性は、もはやポップスとして完成されてしまっているイメージである。 熱っぽくもクールで、力強くて繊細で、ロマンティックでアカデミックなのだ。 いわゆるプログレッシヴ・ロックかといわれると実に微妙なところであるのだが、3 曲目のシンフォニックな展開や 4 曲目のハードな曲調には、単なるポップスといい切れない広がりと光沢がある。 前作のようなインストゥルメンタルや曲展開を期待すると裏切られるが、メロディのいい個性的な歌ものロックという点では出色だ。 これこそ本当のプログレである云々云々などと、些事にかかずらっている場合ではない。 ここには、「永遠に変わらない」と思わせる何かがあるような気がする。 それは、音楽と人との関わりを通して、自分や世界をしっかり見つめるための縁となるものだ。 1 曲目のギターを聴いて痺れない人はいないでしょう。

(KICP 2818)



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