スウェーデンの生んだシンフォニック・ロックの雄「THE FLOWER KINGS」。 94 年、元 KAIPA のギタリスト、ロイネ・ストルトは、シンフォニック・ロックの復権を誓い活動再開、ソロ名義で発表された「The Flower King」を皮切りにアルバム名から取ったグループを結成、現在に至る。 現代プログレッシヴ・ロックの最重要グループの一つ。2012 年 6 月いよいよ新譜発表か?
| Roine Stolt | guitars, vocals |
| Tomas Bodin | keyboards |
| Hans Fröberg | vocals, guitars |
| Jonas Reingold | basses |
| Marcus Liliequist | drumkit |
| Hasse Bruniusson | orchestral percussion |
2006 年発表の「Paradox Hotel」。
二枚組 CD。
ドラマーは、2005 年インストゥメンタル・ツアーよりマーカス・リリクィストに交代、ダニエル・ギルデンロウも 2005 年半ばに個人的な事由からグループを脱退。
本作の内容は、初期作品にきわめて近いニュアンスをもつ、ハートウォーミングで自然なブルーズ・テイストあふれるシンフォニック・ロックである。
暴れ馬のように圧倒的な演奏力を優れた作曲編曲で的確に乗りこなし、真摯な、ときとして絶望的なメッセージをそれとはあまりに裏腹な暖かい調べとともに胸に送り込んでくるアルバムである。
豊かな音色の楽器が鳴り響き慈愛の歌とともに奔流をなせば、霧に閉ざされていた桃源郷への道のりがはっきりと眼前に浮かび上がる。
ロイネ・ストルトは、メロディ・メーカーとしても冴えわたっており、多彩きわまる楽曲すべてに印象的なテーマを刻み込んでいる。
そして、どうしても一言付け加えたいのは、トーマス・ボディーンによるヴィンテージ・キーボード捌きのみごとなこと。
ピアノ、メロトロン、オルガン、シンセサイザーなど個々の器楽はいうに及ばず、さまざまな効果音が楽曲のポイントで絶妙の呼吸で決まっている。
まさに TFK のドラマティックな演出に欠かせないファクターであり、得意のジャム・バンドっぽい逞しい演奏力も、こういう演出が手綱を締めてこそ活きると思う。
卓越したプロローグを添えてくれたことも含め、彼には是非とも「現代キーボードの魔術師」の称号を捧げたい。
2 曲目「Monster & Men」は CD 一枚目の中心となるシンフォニック大作。
幕開けのはずなのに、まるで悠然たる大団円のような風格とヒューマンな響き、そして無常感。
5 曲目「Pioneers Of Aviation」は、U.K. ばりのすさまじくカッコいいインストゥルメンタル。
9 曲目「Mommy Leave The Light On」は、愛らしくも意味深長な歌詞と PINK FLOYD 的な表現が印象的な小品。
10 曲目「End On A High Note」は、アメリカンなレイドバック感がしみじみとしみる佳作。
CD 二枚目、YES 全開の 1 曲目「Minor Giant Steps」は、メッセージを中心としたバンドの一体感がいい傑作。歌と器楽の呼吸のいいやりとり、軽やかな変転、そして、プログレらしい音も満載。
続く作品では、70 年代風に留まらない現代的な音も取り入れられている。
2 曲目「Touch My Heaven」は、PINK FLOYD 風のポスト・ロック。
3 曲目「The Unorthodox Dancinglesson」は、"TFK のジェイミー・ミューア" ことハッセ・ブルニッソンをフィーチュアしたユーモラスかつデンジャラスなインストゥルメンタル。
「Eyes of the world」を思い出させる相変わらずの名調子。
30 年ほど前、「いつでもチェック・アウトできるけれども決して去ることのできないホテル」の伝説を耳にした憶えがあります。
さて、こちらのホテルはどうだろうと覗いてみれば、どうやら同じように "Harsh Reality" あふれる、修羅の巷のようです。
それでも、如何様に高尚に嘆けどもせんなかるまい、というわけで、ユーモアとオプティミズムに日々を託して送ろうとする、そのスタンスが僕は断然好きです。
(SPV 48872 DCD)
| Roine Stolt | Guitars, Lead vocal |
| Hans Fröberg | Vocals |
| Ulf Wallander | Soprano saxophne |
| Dexter Franf.Jr | Keyboards/Electronics |
| Don Azzaro | Bass & MoogTaurus |
| Hasse Bruniusson | Drums, Percussion |
| Jaime Salazar | Drums, Percussion |
94 年発表のロイネ・ストルトのソロ作品「The Flower King」。
グループの実質的な第一作である。
内容は、明快にして濃密な本格シンフォニック・ロック。
その中核は、ストルトによるひたすらオプティミティックでエモーショナルなギター・プレイである。
何よりまず、このめくるめくギターの音色に酔いしれるしかないだろう。
そして、ふと我に返ると、ようやく全ての楽曲がドラマチックな展開をもつことに気がつく。
コーラス、ハモンド・オルガン、ギターのフレーズの隅々にまでゆきわたるシンフォニック・ロック指向の音作りは、現代のグループとしてはきわめてユニークだ。
ストルト自身が勇躍した 70 年代のプログレッシヴ・ロックにおける語法を、しっかりと熟成させて、現代的なサウンドで再構築しているといえるだろう。
彼らの作曲は、特徴的かつ非常に巧妙である。
ドライブ感に満ちた「動」とスペーシーな「静」、また、なめらかに流れる部分と様々な効果音にブレイクし澱む部分、ギターとキーボードは、これらを巧みに対比させつつ、スピード感も失わないように丹念に組み上げてゆく。
そして、思わず口ずさんでしまう親しみやすいメロディを散りばめ、繰返して、演奏をどんどん盛り上げてゆく。
明快なメロディ、劇的な演出、カラフルな音色など全てを盛り込んで、それらの集合以上の効果を生み出すことに成功しているのだ。
ギターは、決してオーバー・スピードの速弾きはせず、豊かな音色でメロウなフレーズを丁寧に繰り出すタイプ。
ヴァイオリン奏法でキーボードのような広がりを生んだり、ワウでドライブ感を出すといった手練の技も駆使している。
スティーヴ・ハウやアンディ・ラティマーといった往年の名手のよいところ取りのようにも思える。
ある意味、クラシックなロック・ギターのスタイルだ。
アコースティック・ギターは、ふくよかなコードの響きを活かしたサイド・ギターを中心に、主に鮮やかな音によるアクセントとして用いられている。
特に、このギターのクリーンなロングトーンが冴え渡るのは、インストゥルメンタル・ナンバーだろう。
よく歌うギターにキーボードが絡む展開には、ジャズ/フュージョン調のグルーヴすら感じられるのだが、
きっちりと刻むようなフレージングは、いわゆるフュージョンとは感触が異なる。
やはり、素朴で深みある歌心を強く感じさせるプレイなのだ。
また、キーボードはシンセサイザーよりもハモンド・オルガンとメロトロンを多く用いる。
泣かせるではないか。
オーソドックスなプレイにも関わらず、暖色系のはつらつとした音色は、アンサンブル全体の色調を決めるくらい存在感がある。
またサックスがタイミングよく切り込んでは、鮮やかなメロディを歌い、流れるようなドラマのみごとなアクセントとなっている。
やや問題があるとすれば、破天荒なフレーズやテンポの変化がないために、さらっと聴いただけでは印象が薄いこと。
そして、ストルトの歌唱法に独特の癖があること。
声質はバリトン系の太目であり歌唱そのものは本格的だが、表情が不自然に思えるところがある。
母国語でない英語で歌っているハンデもかなり大きいのだろう。(このヴォーカルについては本人も満足いっていなかったようで、後のベストアルバムで収録し直されている)
ブルーズ・フィーリングに根ざしながらもファンタジックな空気をもつところは、CAMEL に通じるように思う。
キュートなユーモアのセンスは、スウェーデンの風土に根ざすのかもしれない。
その生み出す明るさと素朴なオプティミズムは、とても新鮮だ。
なににせよ、シンフォニック・ロックとして恐ろしく水準の高い作品である。
ロイネ・ストルトには世界が注目しているはずだ。
1曲目「The Flower King」(10:28)。
KAIPA を思い出させる艶のあるギターによる優しげなテーマをもち、これまた優しくほんのりユーモラスなヴォーカルがエモーショナルに歌い上げ、サビではアメリカン・ロック調の爽やかさで盛り上るシンフォニック・チューン。
ストルトによるメイン・コーラスにポップな親しみやすさがある一方で、フレベリとのコーラスによるサビのメロディ・ラインは、思わず涙がこぼれそうになるほどピュアでオプティミスティック。
間奏は、一転してかなりメタリックなギターのコード・ワークからソロへと進む。
ギターはハードロックとジャズ・フュージョンの両面をもつスタイルである。
ギターを受けるは、いかにも 70 年代風の音色をもつシンセサイザー・ソロ。
バックではメロトロンが鳴り響く。
演奏はふと立ち止まるも、リズムが細かく変化するとともに、再びギターを中心に軽やかに走り出す。
歯切れよいギターのメロディに、ホィッスル系のシンセサイザーとオルガンが絡み、軽快なリズムで走り続ける。
やや即興風のアンサンブルだ。
ドラムが退くと、柔らかなシンセサイザーとヴォカリーズがゆったりと広がる。
雄大でファンタジックな虹色の夕空が目に浮かぶ。
エレピのリフレインとドラマチックなドラムの乱れ打ちが力を蓄えて、再びギターへとストーリーが渡ってゆく。
パワー・コードを響かせ、アルペジオがざわめき、サビのメロディを先行するとフレベリのヴォーカルが甦り、サビを繰り返し。
サビのコーラスを歯切れよいギターのオブリガートが追いかける。
ギター、ピアノの響きが一体となって熱いエモーションを解き放ち、美しい余韻を残してアンサンブルは去ってゆく。
フォーク・タッチの優しげなテーマが印象的なシンフォニック・ポップ・チューン。
この親しみやすさとピュアな感動は現代ロックでは珍しいだろう。
ギターは、さまざまな音色をていねいに用い、ソロにバッキングにと縦横無尽に活躍、圧倒的な存在感をアピールする。
快活に走るところとゆったりとたゆとうところを巧みに用いた語り口は、曲の長さを意識させない。
自然な展開のおかげで、一回目からしっとりと耳にやさしく聴き重ねるごとになじんでゆく。
YES や GENESIS、CAMEL の作品を、さらにファンタジックにやわらかくほぐしたような作品だ。
それにしてもこのサビとギターがあれば、これくらいの曲は楽勝かも。
名曲です。
2曲目「Dissonata」(9:57)。
湧き上がるストリングス・メロトロン、そしてヴァイオリン奏法ギターがうっすらと響き、空ろなシンセサイザーのリフレインが重なるオープニング。
激しいドラム・ロールから強いアクセントのあるリズムへと流れ込み、荒々しいヴォーカルがリードする演奏が始まる。
ヴォーカルの表情のつけ方には、ややポンプ・ロック調なところもある。
伴奏はロングトーン・ギターが響きわたる。
サビの前半は、アジテーションのようなリフレイン。
ギターとキーボードが激しい演奏を続け、後半へ。
そして、間奏は、アグレッシヴなギター・ソロから始まる。
追いかけるようなハモンド・オルガン。
たたみかけるようなギター・リフとドラム。
瞬時にドラムは止み、シンセサイザーが空ろなリフレイン。
テンポ・ヴォリュームとともに落ちつきを取り戻すと、ギターがしなやかにメイン・コーラスのメロディをなぞって変奏する。
シンセサイザーとギターが活発なハーモニーを見せる。
明るさと躍動感のある演奏だ。
続いて、ワウを用いたギター・ソロ。
テンポをぐっと抑えフリーなギターのプレイが続く。
リズムもフリーだ。
澱むような幻想空間。
ギターは、それでも高まる気持ちを抑えきれないように、鳴り続ける。
一転、ヘヴィなパワー・コードとアジテーションのような凶暴なヴォーカル・リフレイン。
しかし、再びシンセサイザーとギターの明るいハーモニーが復活。
オルガン、メロトロンの愛らしいアンサンブルから、ヴォーカル・パートへと戻る。
そして、サビ前半の繰り返し。
過ちを求めて走り続けて、どうするというのだ。
ギター・ソロがしなやかに続いてゆく。
サビ後半のヴォーカルへギターとオルガン、シンセサイザーが絡みつく。
再びギターとシンセサイザーのユニゾンが高らかに鳴り響き、ドラマチックなドラミングとともに感動的な大団円。
緩急の変化が巧みな躍動感あふれるナンバー。
ワイルドな表情のヴォーカル・パートが、メッセージ色の強いアジテーションを経て、メロディアスなサビへと流れ込む。
そして、中間部は、巨大なインストゥルメンタル。
インスト・パートでは、ギターとキーボードのコンビネーションがすばらしい。
硬派ながらも、中間部やエンディングへの道のりに優しさが見え隠れするあたりもニクい。
ギターは、音色とタッチに工夫を凝らして、さまざまなプレイを見せる。
ワウを使ったハードかつファンキーなプレイや、ホールズワースばりのヘヴィ・ディストーションとアーミングによるアウト・スケール風のソロなど多彩である。
シャープなギターとメロトロン、シンセサイザー、オルガンのまろやかな音の相性もいい。
8:00 付近のヘヴィなギター・リフをユーモラスなアンサンブルで受ける演奏に、センスを感じる。
とにかく、キーボードとギターがみごとな絡みを見せます。
3曲目「The Magic Circus Of Zeb」(7:02)。
電子音が流れ、ストリングス・シンセサイザー、ギターがゆったりと響くファンタジックなオープニング。
ヴァンゲリス風である。
リズムとともに、ワウ・ギターがユーモラスなテーマを提示する。
2 拍子に 3 連を交えたリズミカルな演奏だ。
繰り返しは、ハモンド・オルガンとギターのハモり。
パーカッションが小気味よく鳴る。
続いて、ギターによるメロディアスな第二テーマ。
シンセサイザーが反応する。
再びワウ・ギターのテーマ。
今度は、金管シンセサイザーとハモンド・オルガンの短くも鮮やかなソロが応える。
リズムが 2 拍子へと変化すると、ギターのトリルとオルガンのオスティナートがアクセントをつける。
今度はギターとシンセサイザーによる第二テーマ。
テンポが落ち、金管シンセサイザーが第一テーマの変奏をゆっくりと奏でる。
そして、始まるは、ヘヴィなギター・ソロ。
ワウを効かせたオーヴァードライヴ・トーン。
ゆったりしたテンポでジャジーなソロが続く。
チョーキング・ヴィブラートの「もち」がすばらしい。
ストリングス・シンセサイザーとアルペジオ伴奏がしっかりと寄り添う。
泣き叫ぶギター。
メロトロン・コーラスの厳かな響きは、やがてひそやかな余韻となりピアノ、オルガンの残光がきらめく。
ジャジーなギター・ソロが圧巻のインストゥルメンタル・ナンバー。
リズミカルかつユーモラスなテーマとメロディアスなテーマの対比と、二つのテーマに絡むキーボード・アレンジの細やかさがみごと。
ハモンド・オルガンのソロなど、細かい部分でも見せ場満載。
シンセサイザーも丸みを帯びたいい音だ。
第一テーマの素朴な味わいがなんともいい。
そして、決め手は中盤からのギター・ソロ。
4 分近くをエモーショナルなフレージングでグイグイとひっぱってゆく。
ほのかなフュージョン・テイストを感じさせるファンタジック・ナンバーという意味では、近年の CAMEL にも通じる。
4曲目「Close Your Eyes」(3:10)。
クリスマス・ソングのように優しげなバラード。
アコースティック・ギター伴奏による密やかなヴォーカル。
まろやかなシンセサイザーが遠くこだまし、ロングトーン・ギターが悩ましげにささやく。
メロトロンがしっかりヴォーカルを支えている。
次第にリズムが明確になり、コーラスが加わると、ヴォーカルとギターがともに高まってゆく。
再びすぅっと密やかな表情へと戻り、シンセサイザーが消えてゆく。
暖かく密やかなバラード。
こういう歌の方が、ストルトの声質、歌唱法が活きるように思う。
5曲目「The Pilgrims Inn」(9:11)ギターの奏でるアルペジオに支えられて、メロトロン・フルートが静かに歌い、サックスが鮮やかに応じるイントロ。
KAIPA を思い出さずにいられない。
ベースのリードでリズムが入ると、ギターとサックスによるユニゾンのテーマが朗々と歌われる。
メロトロン・フルートとサックスが、イントロのメロディでオブリガートする。
今度は、ギターがやや強めにリードするテーマ。
サックスの軽やかなオブリガートが、やがて美しい全体演奏へ。
一瞬リズムが退き、ギター、メロトロン、サックス、ベース全てがたゆとい、楽園のような幻想的なムードになる。
すぐにリズムは戻り、ギターとオルガン、そしてサックスがオブリガートするシュアーなアンサンブルが続く。
豊かな音色の演奏だ。
再びリズムが退くと、今度はアコースティック・ギターの問いかけにベース/ドラムが呼応する対話が始まる。
それも束の間、ギターのパワー・コードが轟き、メロトロンがうっすらと響き渡る。
ここも KAIPA を思わせる演奏だ。
再びギターは、ロングトーンをヴィブラートさせつつテーマを歌い上げる。
今度はアコースティック・ギターが伴奏だ。
堅実なリズム・セクション。
ギターはエモーショナルな「泣き」に加えて、謎めいた含みも感じさせるプレイを続ける。
ギターとともに演奏は次第に高潮し、ピアノがざわめき、サックスが遠く透き通るようにオブリガートし、やがてユニゾンで歌い出す。
クライマックスを経てサックス、ギター、メロトロンのトリルらが揺らぐように消えてゆく。(7:05)
長いブレイクを経て始まるのは、アコースティック・ギターによる和音を用いた素朴なテーマ。
なんとこれは KAIPA の二作目のテーマだ。
メロトロン・フルートがそっと寄り添い、エレキギターが軽やかなオブリガートを添える。
フォーク・タッチの素朴なアンサンブルだ。
きらきらしたアコースティック・ギターと舞い踊るようなメロトロンによる、愛らしい演奏が続く。
そして、神秘的なハープに導かれて終章へ。
スネアのロールとともに大きくリタルダンド、そして再び熱きギターが目覚める。
力強いリズムとメロトロン・コーラスとともに、どこまでも高く昇りつめてゆくギター。
色とりどりの、あくまでもオプティミスティックな余韻。
メロトロン・フルートによる哀しげなテーマとギター、サックスによるややブルージーなテーマ、この二つのメロディを中心に展開してゆく、リリカルなインストゥルメンタル。
メロトロン・フルート、ギターの両方に絡むサックスの光沢ある音がすばらしい。
クラシカルなアンサンブルやジャジーなプレイも交えつつ進み、中盤のギター・ソロでクライマックス。
後半のメロトロン・フルートとアコースティック・ギターによるアンサンブルも愛らしい。
そして、決め手は、やはりエレキギターの奏でるテーマとエンディングを導く感動的なプレイ。
KAIPA を回顧しつつも、前進する力とハートウォーミングな表情がみごとな大傑作です。
さて感動盛り上がり大会なアルバムにおいて、ほぼ唯一の典型的なプログレ・ナンバーがハモンド・オルガンをフィーチュアした6曲目「The Sound Of Violence」(5:38)。
クロスオーヴァー調のファンタジックなエレピがたゆとうイントロは、一転してハモンド・オルガンによるクラシカルかつアグレッシヴな演奏へと変化してゆく。
挑戦的な第一テーマが繰り返される。
変調し、ねじれるオルガン。
勇壮な第二テーマをオルガンとギターがユニゾンで叩きつける。
再び、クラシカルな第一テーマのオルガン。
そして、ギターのオブリガートから、ユニゾンによる第二テーマへ。
続くのは、高らかなギター・ソロ、そしてシンセサイザーとオルガンが追いかける。
バスドラの連打もすごい。
今度は、オルガン伴奏でシンセサイザー・ソロ。
ストリングス・シンセサイザーが華麗に響く。
ギター・ソロをはさんで、再びクラシカルな第一テーマからオルガンのソロを経て、攻めこむ第二テーマへ。
ギター、ピアノ、オルガンが激しくぶつかるハードなアンサンブル。
一転、リズムレスの静かな演奏へ。
ベースとアコースティック・ギターの伴奏で、ギターがつぶやくように歌う。
ブルージーだ。
ハモンド・オルガンが湧き上がるも、ギターは沈痛なまま消えてゆく。
クラシカルなオルガンによる挑戦的なテーマが、いかにもプログレらしいハード・インストゥルメンタル。
ストラヴィンスキー、バルトークなどモダン・クラシック影響下の音楽を甦らせた、いわば EL&P 直系の作品だ。
今回はキーボードが大活躍。
力強いユニゾンやベースによる鋭いビート、さらにはけたたましいシンセサイザーやエッジの効いたギター・リフなど、攻めに徹している。
しかし、最後のまとめは、メロウなギターがリードする。
オルガンに主導権を渡しているようで、全編流れるのはやはりギターであり、全体のトーンを決めている。
バスドラのロールにも注目。
7曲目の超大作「Humanizzimo」(20:55)。
驟雨を思わせる音のにじんだシンセサイザーがバロック風のカノンを奏で、ふと立ちどまりメロトロンの響きに消えてゆく。
ものさびしいイントロダクションだ。
メロトロン・フルートの哀しげな旋律にアコースティック・ギターのアルペジオが重なる。
いつの間にか、ホイッスル・シンセサイザーとメロトロン・フルートがユニゾンし、哀しげなテーマを綴ってゆく。
「Twilight Flower」。
メロトロン・フルートとギターのアンサンブルをソプラノ・サックスが受け止める。
続いてギターがテーマを受け継いで自由な変奏を見せる。
ヴォーカルはドラムレスで始まる。
伴奏は湧き上がる泉のようなピアノ。
メロトロン、ベース、アコースティック・ギターなどさまざまなオブリガート。
ストリングス・メロトロンがいい味わいだ。
リム・ショットとともに、ヴォーカルは落ちついたテンポで進んでゆく。
メランコリックなテーマから、すっと長調への転調をはさむなど、アレンジは木目細かい。
再びサックスが哀愁のテーマを提示、シンセサイザーが引き継ぐと、ハードなギターのパワー・コードが轟き場面展開を促す。
「The Messenger」。
ワルぶるような怪しげな表情のヴォーカルがアップテンポで走る、ロカビリー・タッチのナンバーだ。
乾いたスネアの音とヘヴィなギター。
オブリガートのオルガン、ギターもクレイジーだ。
間奏は、金管楽器系シンセサイザーがスピーディに駆け回る。
しかし、テンポ・ダウンとともにヴァイオリン奏法のギターがゆったりと響いて、空気を和らげ落ちつかせる。
すぐにシュアーなリズムが戻り、ギターが力強くリードし始める。
再びメロディアスな演奏を暗示する。
アコースティック・ギターをかき鳴らしながらヴォーカルが入ると、「The Nail」だ。
ストリングス系シンセサイザーとロングトーン・ギターの伴奏で、ヴォーカルは力強く歌い込む。
伴奏のギターはヴァイオリン奏法で美しくサスティンを効かせたり、ハードに低音を刻んだり忙しい。
歌を刻み込むヴォーカルと着実な歩みを見せる演奏。
巻き舌ヴォーカルが象徴する土臭ささは、スワンプ・ロック風でもある。
間奏は、一転して、アコースティック・ギターとサックスによるデリケートな演奏。
モールス信号のように小刻みにトレモロするオルガン。
そして、やさしげなアコースティック・ギター・ソロ。
バックのドラム・パターンがおもしろい。
ジャジーなサックスとエレピの呼応から、ストリングス・メロトロンが高鳴る。
そして、快調なリズムが復活し、ギターのリードで演奏はメロディアスに盛り上がる。
ここでもシンセサイザー、メロトロンなどオブリガートが多彩だ。
続いてピアノ・ソロ。
オブリガートはメロトロン。
まったく多彩な演奏だ。
再びギターが高く舞い上がる。
変化に富みながらもナチュラルなフレージングと、活気ある楽器の呼応がすばらしい。
シンセサイザーのフレーズにギターが応えると、アコースティック・ギターがきらめきギターが熱っぽく歌う。
そして、メロトロン・フルートから「Only Human」へ。
アコースティック・ギターとメロトロンの伴奏でヴォーカルが歌いだす。
息継ぐ間もなく演奏が続く。
テーマは「The Flower King」に似ており、いまにもサビへ飛び込みそうだ。
リラックスしたのどかな空気が漂う。
ヴォーカルは転調にしたがいどんどん歌い込む。
伴奏はギター、メロトロン、オルガン。
しかし、ここの主役はヴォーカルだろう。
そして、やや険しい表情も見えるギター・ソロへ。
ギターにヴィヴィッドに反応するベースもカッコいい。
ギター、メロトロン、ベースのリードする演奏は、次第にダークな表情を見せ始め「This is The Night」へと進む。
ハモンド・オルガンのクラシカルなオブリガートが、テンポをぐっと抑え、ギターが轟く。
ブレイク。
シンセサイザーが静かに奏でるのは、本曲の冒頭の旋律である。
そして、荒々しいスネアのロールが重々しいヴォーカルを導く。
再び静寂。
チャーチ・オルガンが厳かに鳴り響く。
クリアーなサックスのソロに、きまぐれなギターが絡む。
ギターとシンセサイザーがオリエンタルなテーマを静かに提示、ベースが反応する。
シンセサイザーとサックスもユニゾンで追いかける。
フリーな演奏空間に音が満ち始める。
チャーチ・オルガンの重厚な響きが高まると、サックスが朗々と歌いだす。
クラシカルなサックスに導かれるように、不気味なヴォーカルが湧き上がる。
「The River Of Love」だ。
オブリガートのサックスは鳴声のようだ。
エレピによるクラシカルな演奏から、一気にリズムが戻り、ヴォーカルは力強く歌い上げる。
祈りのように繰り返すコーラス、そしてギターが追いかける。
繰り返しから堰を切ったように訴えかけるヴォーカル・ハーモニー。
壮絶なシャウト、そして激しいドラミングとともに、ギターも絶叫する。
ドラム・ロールから全てが轟々と高まり、メロトロン・コーラスが重苦しく響く。
残響。
ギター、メロトロン、シンセサイザーが、静かに渦を巻きながら消えてゆく。
6 部から構成されるオムニバス大作。
各パートは、存在感のあるヴォーカルを軸に逞しい演奏を見せる佳曲であり、即興風のプレイも交えて、濃密に世界を描いている。
あたかも一枚のアルバムへつぎ込むアイデア/演奏を、一曲にまとめたかのような充実した内容だ。
似たメロディやアンサンブルが多いため、集中力を欠くとやや辛いが、のめりこむと非常に楽しい。
陳腐な例えではありますが、GENESIS でいえば「Supper's Ready」でしょう。
8曲目はエピローグ「Scanning The Greenhouse」(3:32)。
目の醒めるようなポップで華やかなシンセサイザー、ギターが勇壮高鳴るオープニングからメロトロンに導かれてギター・ソロへ。
ベースもいい音で響いている。
アグレッシヴに弾き捲くるギターのフレーズは「Retropolis」ではシンセサイザーのフレーズとしても応用される。
そして、カーテン・コールを思わせるメッセージ色豊かなヴォーカル。
フレベリのハイトーン・ヴォイスが重なる。
オブリガートのギターも強烈だ。
シンセサイザーは、対照的に、ソフトでマイルドなプレイである。
そして、ふと気づけば「The Flower King」のサビが復活だ。
フレベリのノーブルなヴォーカルが、長いドラマを回想する。
高鳴るベースとともにリタルダンド、シンセサイザーとメロトロンがテーマを歌い上げる。
どこまでも広がる色とりどりの夕空を思わせる余韻。
胸弾む感動のドラマに静かに幕が降りる。
カラフルでハートウォーミングなシンフォニック・ロックの傑作。
ギターとキーボードを駆使した分厚くも明快なサウンドは、80 年代以降のハード・ポップ、産業ロック系のものにも近いのだが、親しみの湧くメロディを中心に、さまざまなアイデアとプレイを惜しげなく盛り込んでドラマチックに迫る作風は、明らかにプログレッシヴ・ロックのものである。
はちきれんばかりの歌心と夢見るような色彩を活かした広がりのある曲調は、70 年代の遺産の 1 つだろう。
ヴィンテージ・プログレ志向(ストルト氏にはスタイルではなくごく自然なことなのに違いない)はオルガンやメロトロンの多用、古典的なロックギターのテクニックと演奏スタイル、ジャジーな管楽器、そしてあくまでドラマチックな展開、易きに流れぬストーリー構成になどに明らかだ。
しかしながら、一番の魅力は、親しみやすいメロディとくちずさめるフレーズがたくさんあることだろう。
変拍子や複雑なインタープレイ以前に、このキュートなメロディがまず耳をとらえるのだ。
この誰もが耳を傾けるメロディが随所に現れて、曲に生き生きとした表情と瑞々しい生命感を与えている。
あえて難をいうならば、あまりにもギターで曲のメリハリ/展開をコントロールしようとして、ややワンパターンに陥っているかもしれない。
もっとも、そんな疵をものともせず情感とヴァイブレーションたっぷりのギターで、クラシカルにファンタジックにそして、時にメロウに時にスリリングに独自の世界を切り開いているロイネ・ストルトこそ、新世紀へプログレッシヴ・ロックを誘う最重要人物の一人だろう。
アルバムを聴き終えた今、かつての CAMEL と同様アルバム毎に多彩な音楽を見せてくれることを期待してやまない。
(FOX CD 011)
| Roine Stolt | Guitars, Lead vocal, keyboards |
| Tomas Bodin | Keyboards, flute |
| Michael Stolt | Bass, vocal |
| Hasse Bruniusson | Percussion |
| Jaime Salazar | Drums |
| guest: | |
|---|---|
| Ulf Wallander | Soprano saxophne |
95 年発表の第二作「Back In The World Of Adventure」。
ソロ名義からグループへと進化し、活動はいよいよ本格化する。
ファースト・アルバム以後、新たにストルトの弟マイケル・ストルトがベース、トマス・ボディーンがキーボードで参加している。
94 年のデビュー・ギグでの成功をさらなる弾みとして、94 年 12 月に本作録音。
特に、ヴィンテージ・キーボードを操るボディーンの加入によって、このグループ独特の色彩あふれるアンサンブルがさらに充実した。
(追記。
どうやら第一作でもボディーンはデクスタ・フランク・ジュニアなる変名で参加していたようだ。
)
基本的には、前作の延長にあるサウンドだが、キーボード・サウンドの充実とともに、魅力的なフレーズをつぎ込みあらゆる隙間に贅沢に音を鳴らすというスタイルもさらに進展、曲の密度は一層上がり、よりシンフォニックでファンタジー指向の楽曲になっている。
ギターとキーボードのメロディのバランス、コンビネーションも、はるかに向上した。
そして、ギターは存在感あるメロディ演奏に加え、新たにメタリックといってもいいほどハードなコード・ワークを見せている。
これによって、一つの曲の中でギター・ワークの「剛」とキーボードの「柔」との劇的なバランスが生まれているようだ。
さらに、ギターは、堂々たるソロはもちろんアコースティック・ギター・ソロなど新境地も見せている。
貪欲に芸域を広めるべく努めているようだ。
また、キャッチーなテーマをもつナンバーと沈み込むような内省的なナンバーを交互に配置し、アルバムを通したドラマ性にも気を配っているのがわかる。
この工夫のおかげで、あたかもアルバムを通して一日の流れがあるように感じられる。
そして、ヴォーカル。
前作と比べるとバリトン・ヴォイスをナチュラルに活かしたおかげで、男性的な力強さと安定感が現れ、飛躍的に魅力が増した。
テーマは、冒険の世界へと戻った THE FLOWER KING への礼賛の形を取ったシンフォニック・ロックへのオマージュ、さらには愛と平和への賛歌。
陰と陽、剛と柔をうまく組み合わせて、マジェスティックで力強く、ヒューマンな作品になっている。
誇り高く高尚なスタンスをとりながらも、音楽は、あくまで親しみやすさと優しさにあふれている。
90 年代シンフォニック・ロックの最先端。
1曲目「World Of Adventure」(13:37)
色彩にあふれたスケールの大きなシンフォニック・ナンバーだが、意外なほどギターがメタリックで荒々しい。
しかし、このハードなギターを受け止めて、巧みにアンサンブル全体の音質のバランスを取っているのが、キーボードのフレージングである。
メタリックで強烈なギターの後には、必ずソフトな音色やキュートなメロディのキーボードが配置されて受けに回り、時にはユニゾンも取って、ギターの作る尖った荒々しさに丸みを帯びさせている。
また、アンサンブルの隙間を埋め尽くさんばかりに贅沢に音を使ったプロデュースも特徴だろう。
曲全体のイメージは、とにかくカラフルにして豊麗。
すばらしくキャッチーで親しみやすいメロディ・ライン、そして、ギターとキーボードのフレーズも特筆に価する。
ロイネ・ストルトの男性的かつ力強いヴォーカル表現は、前作を格段に上回る魅力を発揮し、オプティミスティックでヒューマンな歌詞ともマッチしている。
おそらくギター以上に頑張ったんじゃないんだろうか。
ギターについて一ついうならば、バッキングにおいてもアイデアはきわめて豊富である。
アコースティックからエレクトリックまでエフェクトを駆使して様々な音色を使い分けている。
長い間奏ともいえる中間部のインストには、聴き所が満載だ。
先にも述べたギターとキーボードのコンビネーションによるパワフルかつシンフォニックなアンサンブルに加えて、ホィッスル系のチャーミングなキーボードとアコースティック・ギターのアンサンブルや、ユニゾンでスリリングにたたみかける 7 拍子のリフレインなど、ワクワクするような演奏が続くのである。
繰り返すが、なんといっても主役はギター。
メタリックでハードなコードワークのみならず、随所で抜群の説得力でメロディを紡ぎ出している。
キャッチーにしてパワフルそして、シンフォニックなすばらしいオープニング・ナンバーだ。
2曲目「Atomic Prince / Kaleidoscope」(7:50)
前半のマーチにおける存在感たっぷりの「泣き」のギターは、さすが堂に入っている。
明るくフレンドリーなシンセサイザーのメロディ・ラインもすてきだ。
さらに、後半のドリーミーなアコースティック・ギターに意表を突かれる。
ラテン・フュージョン系のプレイも全く問題なさそうだなあ。
これだけ歌心を感じさせるアコースティック・ギター・プレイは、なかなかない。
ストルトの芸域の広さには驚かされる。
前後半 2 部構成でギターが満喫できる小品である。
3曲目「Go West Judas」(7:40)
再び、ハードなギターと力強いヴォーカルの魅力たっぷりのハード・シンフォニック・チューン。
裏切りへの怒りに燃えるヴォーカル・パートにおける激しい伴奏と中間部におけるソリッドで縦横無尽なソロ、両場面でギターの存在感は圧倒的である。
また、ヴォーカル・パート、中間部ともに、オルガンやメロトロンが重々しさ、シリアスさの演出に一役買っている。
最後に現れるシンセサイザーの愛らしいメロディが、怒りをなだめるようで面白い。
全編通して、シンセサイザーはコミカルといってもいいフレーズで楽しませてくれる。
全体の印象は、怒りを象徴したハードでストレートでパワフルな作品だ。
4曲目「Train To Nowhere」(3:45)
非常にストレートなバラード。
「You still think a miracle will happen, when you face the gun」という厳しい問いかけと、ならば静かな最後を迎えなさい、という諦観したアドヴァイスが胸に痛い。
暗い現実を少しでも和らげようとする空しい努力が歌に込められているが、いつか必ず愚行は改まらん、という力強い決意も読み取れるナンバーだ。
音楽的には、ヴォーカル・メインで聴かせるという、今までにない作風である。
5曲目「Oblivion Road」(3:45)
緩徐楽章のようなフリー・ジャズ空間。
暗闇の中に様々な色彩が飛び交い、幻惑的な雰囲気を創る。
インダストリアル・ミュージック調である。
6曲目「Theme For A Hero」(8:27)
力強くオプティミスティックな内容は、あたかもオープニング・ナンバーのインスト版。
ギターのリフとピアノのヘヴィなストロークで「Back In The world Of Adventure」の和声を再現しているところもある。
優しくも力強いテーマを繰り返しては、アンサンブルを盛り上げ、神秘的な雰囲気やコミカルな動きも交えつつ、ドラマを綴っている。
ギターとキーボードは交互にテーマを奏で、変奏し、互いに高め合うような、抜群のバランスとコンビネーションをもつ。
高潔にして親しみやすく、勇壮にして幻想美もあふれるシンフォニック・インストゥルメンタル。
ライナーでも述べられている通り、代表作であり KAIPA の姿も重なる名作といえるでしょう。
雄渾なる代表曲。
7曲目「Temple Of The Snake」(1:38)これも間奏曲であり、次曲へのイントロの役割も果たしている。
シンセサイザーの様々な音色、サンプリングが実験のように散りばめられている。
8曲目「My Cosmic Lover」(6:40)
東洋風のエキゾチックなアレンジと得意のハードなリフが冴える THE BEATLES タッチのヴォーカル・ナンバー。
明快なメロディ、ストレートなサビに、コクのあるヴォーカル・コーラスがよく活かされており、セクシーだ。
シンプルなエスニック・ロックにもかかわらず、メイン・テーマへ絡んでゆく楽器の種類/順序に工夫を凝らし、結果として、豊かな色彩をもつ作品になっている。
フランク・ザッパを思わせる何気ないマリンバなど、きめ細かいアレンジの賜物なのだろう。
きらめくようなサックスも印象的だ。
そして、改めていうまでもないが、歌メロこそがシンプルにしてゴージャスな優れものであり、本作のグルーヴの源泉といえる。
9曲目「The Wonder Wheel」(4:12)
ミュージック・コンクレート風のダークなインストゥルメンタル。
シンセサイザー、メロトロン、ギターを主役とする陰鬱な世界である。
丹念な音響効果の組み上げとともに、雰囲気ものにとどまらないアンサンブルの精妙さも見せている。
神秘的にして救いのないイメージのある作品だ。
10曲目「Big Puzzle」(13:35)
メランコリーに満ちながらも高揚感あるシンフォニック・ロック。
どちらかといえば、バラードだろう。
ユーモラスなフレーズやリズミカルなシンセサイザーが、沈み込みそうになるアンサンブルを救うのだが、ギターの奏でる歌には憂鬱な響きがある。
タイトルが暗示するように、解決のつかない謎、問題を抱えたまま生きてゆくことの難しさを反映した、切実な響きがあるといってもいいだろう。
オプティミスティックであるべきだとわかっていても憂鬱さにとらわれてしまう、そういった僕らの気持ちを見事にとらえている。
音楽としては確かに大団円なのだが、痛快さを強調するよりも、単なる余韻ではない問題意識をも残してゆく。
そういう厳かな情感を味わいたい。
おそらく、これがブルーズ・フィーリングというものなのだろう。
オープニング・ナンバーにおける祝祭的かつオプティミスティックなムードが全編をおおうかと思ったが、意外にも、陰と陽を交互に繰り返しつつ、最後まで謎を抱えたままメランコリックな大団円へと突入する。
特に後半は、オープニング・ナンバーやそれに続く 2 曲目そして、 6 曲目の力強さ、明るさ、ファンタジックな優しさを、もう少しで打ち消してしまうほどの、暗さや怒りを孕んだ内容になっている。
前作そして本作品と聴いて感じるのは、このグループの基本的な作風は、明快で親しみやすいテーマを軸にしたストレートで躍動的なものだ。
そして、特に本作では、そのテーマとなる旋律を、伴奏のコード、オブリガート、さまざまな他の楽器とのユニゾン、ハーモニーなどで飾り付け、おおい尽くし、やがて極楽浄土的な色合いで染め上げてゆく手法を貫いている。
隙間がないほど音が詰まっているといってもいい。
にもかかわらず、テーマのよさ、軽快さ、味なユーモアのおかげで、重苦しさはみじんもなく、ゴージャスにして涼やかな爽快感がある。
特に 6 曲目のインストゥルメンタル作品にそれが顕著だ。
この、きらびやかで爽やかというタッチは、暗く神秘の底へと沈むような作品との対比という意味でも、アルバムに一層のトルク、ダイナミックスを生む効果を持っている。
しかし、それでも、その心地よい音の中に、怒りに近い厳粛なメッセージが強く感じられる。
この作品のキーワードとして適切なのは、桃源郷的サウンドとは裏腹な「ダーク & ヘヴィ」かもしれない。
(FOX CD 015)
| Roine Stolt | Guitars, Lead vocal, keyboards |
| Hans Fröberg | Voices |
| Tomas Bodin | Keyboards |
| Michael Stolt | Bass & MoogTaurus |
| Jaime Salazar | Drums, Percussion |
| Hasse Bruniusson | Percussion, Drums |
| guest: | |
|---|---|
| Ulf Wallander | Soprano sax |
96 年発表の「Retropolis」。
第三作は、時間と空間を超えた愛と平和の都市レトロポリスをテーマに繰り広げられるドラマを通じて、希望と哀しみそして、未来への憧れを描いた作品。
冒頭「Rhythm Of Life」の快調な卓球のラリーが破綻するオープニングから、波乱を含んだ展開が予想される。
本作からハッセ・フレベリが参加、ツイン・ヴォーカル体制となる。
サウンドは、70 年代プログレシッヴ・ロックのもっていた攻撃性を巧みに取り込んだモダン・ロック・インストゥルメンタルの「Retropolis」を筆頭に、中盤のメロディアスで叙情的な大作「There Is More To This World」、ロックンロール調の「Slient Sorrow」風、そしてエンディングのバラードの名曲「The Road Back Home」まで前作の延長上にありながらさらにロマンとスリルそして、色彩とドラマに満ちあふれている。
ワウやハモンド・オルガンなど伝統的ともいえるイディオムの完璧な消化は、もはやいうまでもないだろう。
とりわけ、オープニングを飾る「Retropolis」は、変拍子のテーマを核にギターとハモンド・オルガンがアグレッシヴなアンサンブルから神秘的な場面まで、縦横無尽に暴れまわるプログレッシヴ・ロックの醍醐味あふれる傑作。
ストルトのギター・プレイの魅力がぎっしり詰まった作品ともいえる。
豊かな情感と安定した技巧に加え、センス抜群のアイデアがここでもふんだんに盛り込まれている。
ハードネスとファンタジックな優しさがせめぎあいつつエネルギッシュな演奏が展開されるスタイルは、本作でピークを迎えているようだ。
内ジャケに書かれた、ストルトによる奇妙にして微笑ましいお話には、後に TRANSATLANTIC でも取り上げる「In Held(Twas) In I」も現れる。
個人的にはもっとも好きな作品。
「Rhythm Of Life」(0.32)「...Rhythm Of Life」と得意げなモノローグから始まるピンポンのラリー。
繰り返されるモノローグそして、軽快なラリーが続く。
突如叫び声が上がってガラスの割れる音。
いや事態はもっと深刻だ。
ユーモラスな空気から一気にシリアスなムードに転回し、リスナーを釘付けにするオープニング・シーケンス。
愛すべきイントロダクションなのだが、秩序を象徴する規則的なラリーが破綻したとき何が起こるのか。
レトロポリスでは誰にも予期できない。
「Retropolis」(11:10)
変拍子のユニゾン・テーマが印象的なハード・インストゥルメンタル。
荒々しくも強烈なイメージをよびさますテーマを軸に、EL&P や YES にも通じる変化に富んだ演奏が繰り広げられる傑作だ。
得意の色彩美とともに、ミステリアスな面も強調しながら、グイグイと引っ張ってゆく。
阿と問いかければ吽と応じるような、フレーズの呼応がすばらしい。
スピーディにスリリングに展開するも、エンディングでは、表情を一転させて、リリカルなアコースティック・ギターが美しくさざめく。
ジャジーなフィーリングを活かしたなめらかな演奏もいい。
長大なインストゥルメンタルをオープニングに持ってくる辺り、メッセージを音に託す手腕に相当の自信をもっているに違いない。
「Rhythm Of The Sea」(6:12)
アコースティック・ギターがコードをかき鳴らし、憂鬱に始まるスロー・バラード。
メロトロンのチェロの音が使われている。
ヴォーカルも苦悩に満ちる。
ファンファーレ風のシンセサイザー。
ロングトーンのギター。
潮騒を現すさまざまな楽器の音。
叙景的。
「There Is More To This World」(10:15)ストルト、フレベリのツイン・ヴォーカル。
空高く飛翔してゆくような胸踊るテーマに代表されるように、シンフォニックな高揚とヘヴィネス、そして、あふれるロマンチシズムという得意のソング・スタイルによる大傑作である。
キーボードは、冒頭のシンセサイザーからハモンドまで実に多彩。
ユーモラスなフレーズを経て曲調をチェンジし、ポエティックにして敬虔な祈りのようなヴォーカルへと交代する絶妙のアレンジ。
幻想的なエンディングもすばらしい。
フレベリの美声が活きる名曲だ。
「Romancing The City」(0:57)
ロマン派風のピアノ・ソロ。
典雅な仕草に秘められた情熱をイメージさせる音である。
トマス・ボディーンが、マーティン・オフォードとともに、センス、技量ともに傑出したキーボード・プレイヤーであることがわかる。
「The Melting Pot」(5:45)
前曲をイントロとするようにピアノが始まり、ウォランダーのサックスによるテーマが奏でられる。
ややトラッド調なのだろうか、素朴な情感をもつメロディアスなプレイである。
ティンパニの轟く重厚なリフレインそして、不気味な声。
サックスは、アジア風のモーダルなメロディですべるように流れてゆく
。
シンセサイザー、ワウ・ギターが交互にソロをフィーチュアして、語り合うように進んでゆく。
サックスのテーマが繰返され、やがて、チャーチ・オルガンが重厚に受け止め変奏する。
歌い上げるギター。
そして、みたびテーマのトゥッティへ。
坩堝のようにたぎりながらも、熱っぽく問いかけあうミステリアスなアンサンブルを、明確にしてエキゾチズムをたたえたサックスのテーマが貫いてゆくインストゥルメンタル。
テーマが印象的だ。
「Silent Sorrow」(7:42)変調されたエレピの伴奏が珍しいロカビリー調のナンバー。
ヴォーカルは、イコライジングの効果で、いわばピカレスク風。
対照的にシンセサイザーのテーマは、シンフォニックな豊かさをもつ。
ギターとハモンドのコンビネーションは、ここでも見事だ。
間奏は鋭い 7 拍子に変化し、ギターが歯切れいいプレイを連発。
快調なテンポに乗った中盤のオルガンのリフ(「The Flower King」の終曲でギターが用いたフレーズである)も面白い。
ユーモラスなヴァイブ、パーカッションが入るが、これはブルニュッセンだろう。
8 分の 6 拍子へと、ごく自然に変化し、勇壮なシンセサイザーにリードされて、次第に演奏はシンフォニックに盛り上がるが、一旦アカペラで落とす絶妙の引きを見せて、再び 8 ビートでサビを繰り返し、盛り上げてゆく。
エンディングは「A Day In The Life」調に決まる。
ユーモアと強いビートによるノリのいいロックンロール。
次作の 1 曲目同様、このグループの得意の曲調だ。
シンプルなロックンロールに多彩な曲想とアイデアを盛り込んだ傑作だろう。
中期 GENESIS に近いセンスを感じる。
「The Judas Kiss」(7:43)
教会の鐘の音、そして、チャーチ・オルガンの壮麗な響きは、シンフォニックなギターのテーマにおおいつくされる。
再び、ダークでヘヴィなヴォーカル・ナンバーである。
ストリングスなど種々の効果音、そしてメロトロンの不安げな響き。
サビの力強い歌メロは、きわめてドラマチック。
ベスト・メロディの一つではないか。
中盤では、ベース、シンセサイザーの低音リフと 8 分の 7 拍子のハモンドのフレーズが荒々しくかけあう。
やや曲調は沈み込み、アコースティック・ギターとアヴァンギャルドなピアノのコンビネーション。
ベースが巧みに流れをリードする。
そして、ワウ・ギターとけたたましいシンセサイザーの呼応。
メロトロンが忍び寄る。
シンセサイザーは、クラシカルなフレーズを提示する。
そして、苦悩しながらも高らかに歌い上げるギター。
やがて、全ては重厚な決めの連続へとなだれ込む。
昂揚し飛翔するアンサンブル。
そして、ギターのテーマが再現する。
ストリングスとギターが絡み合う重厚なクライマックスだ。
エンディングの余韻は、密やかな会話と(「Dark Side Of The Moon」?)グレゴリアン・シャントである。
力強いヴォーカルを中心に重々しい伴奏で繰り広げられるシンフォニックなナンバー。
躍動するインスト・パートもすばらしいが、それ以上に、悲壮感の漂うヴォーカル・パートが強烈。
このアルバムに通低するトーンがある。
「Retropolis By Night」(3:18)ねじくれる低音シンセサイザー・シーケンス。
そして、その上を流れるのはフルートのようなメロトロンとストリングス・シンセサイザー。
イコライズされたヴォイスやノイズなど、さまざまな SE が飛び交い通り過ぎる。
この効果音、PINK FLOYD 的というよりは、インダストリアル・テクノ的というべきか。
「Flora Majora」(6:50)
ギターのパワー・コードが炸裂し、ハモンドの伴奏とともにシンセサイザーが鮮やかなテーマを奏でるオープニング。
追いかけるギター。
8 分の 5 拍子で走る軽快なアンサンブルはまるで CAMEL である。
小気味よいオブリガート。
そして、爽快なギター。
ややフュージョン調なのも CAMEL に通じるかもしれない。
テーマは、ハモンドへと移り、ギターもユニゾンする。
一瞬曲調は沈み込むが、すぐにギターが高らかに鳴り響き、再びエキサイトさせる。
その後も、メロトロンが響くミステリアスなシーンを鮮烈なギターでつないでは、ハモンド・オルガンとともにテーマを歌う。
奇数拍子のドラムのアクセントは、みごとなまでにアンディ・ウォード風。
8 ビートに変化した後は、ハモンドとギターがジャジーなグルーヴと安定感抜群のプレイで走ってゆく。
ややヒップホップ風のドラミングがおもしろい。
ギターの紡ぎ出すフレーズがとてもすてきだ。
そして、転調。
ギター、メロトロン、シンセサイザーが虹色の尾をひきながら飛び去ってゆく。
そして、またもサイケデリックで幻想的な得意のエンディング。
メロディアスなギターがフィーチュアされた、爽快なインストゥルメンタル。
浮沈を繰り返しながら巧みに盛り上げてゆく。
ジャジーな面が強く現れているようだ。
珍しくハイメ・サラザーがシンバル、ハイハットを多用したプレイを見せる。
「The Road Back Home」(8:55)アコースティック・ギターの穏やかなストロークとヴォーカル。
フルートのようなアナログ・シンセサイザーのメロディが郷愁を誘う。
カントリー/フォーク・タッチのオープニングだ。
問いかけ応えるヴォーカル。
メロトロンの暖かな音。
ギターはおだやかな表情でヴォーカルを支える。
シンセサイザーが幻想の世界へと誘い、サックスは広々とした夕空に響き渡る。
胸を熱くさせる音色だ。
ブルージーなギターとヴォーカル・リフレインが絡みあう。
再びサックス、そしてシンセサイザーによるリック・ウェイクマン風リフレインが高まってゆく。
今度はブラス系のシンセサイザーがリードする。
メロトロンのコーラス。
そして、高まりの頂点で、キーボードはヴォーカルを呼び覚まし、バトンを渡す。
ヴォーカルは、静かに導き諭すように言葉を刻んでゆく。
静かなギターのオブリガート、そしてシンセサイザーのリードにギターがユニゾンして、夢見るように高みへと登りつめてゆく。
シンフォニックかつ慈愛にあふれたバラード。
サックスと全編を彩る優しさあふれるシンセサイザーの音色が印象的だ。
フォーク・タッチのヴォーカルに、すばらしい包容力がある。
ユートピア志向を謳うも、オープニングのインストゥルメンタルでの、プログレッシヴ・ロックの代名詞のような攻撃性や、ヴォーカル・ナンバーの底辺にある重苦しさなどに、前作に続くヘヴィなコンセプトが見え隠れる。
渾身のプログレ大作であるタイトル曲など、キーボードがフィーチュアされた演奏は、今まで通り色彩と躍動感にあふれるのだが、ハードなプレイにもメロディアスな演奏にも、主題の重さが感じられる。
たとえば、「The Judas Kiss」は、重厚さと変化に富んだ展開が魅力的なシンフォニック・ロックだが、暗く深刻なイメージを正面切って打ち出しているところが、いっそう印象を強めている。
また、「The Melting Pot」も朗々たるサックスのテーマにも哀愁が漂う。
エンディング・ナンバーも、狂気を孕んだ「Retropolis」=「都会」に疲れ、本来自らの属する場所へ帰ろうというメッセージのように思える。
しかしそんな中で、「There Is More To This World」だけは、オプティミスティックな希望が見えるテーマと繊細で純粋な情感がストレートに伝わってくる。
そして、今回も、シンセサイザー、ギターらによるテーマ、リフの親しみやすさは抜群、ヘヴィな楽曲を耳になじませるのにとても効果的だ。
「Flora Majora」での変拍子アンサンブルにおける風を浴びて疾走するような爽快感も、このキャッチーなメロディ・ラインがあってこそだろう。
全体としては、悪夢のような状況でもなんとか乗り越えて進んでゆこうというオプティミスティックな気概が活写されているのだろう。
そして、このグループのもつハートフルな世界観は、諦念が希望へと変化する最終曲の救済の響きにこだましている。
70 年代ロックを現代に甦らせた作品という観点でも、きわめて優れた作品である。
オールド・プログレ・ファンにはまず本作品を薦めます。
(FOX CD 016)
| Tomas Bodin | Hammond C3, Piano, Rhodes piano, Mellotron, Synthesizer, Odd voices |
| Hasse Bruniusson | Percussion, Bicycle wheel, Voice |
| Roine Stolt | Electric & Acoustic guitars, Bass(3,7) |
| Owe Eriksson | Fender & Warwick basses(5,6,8,10) |
| Michael Stolt | Fender jazz bass(2) |
| Jaime Salazar | Drumkit |
96 年発表の「An Ordinary Night In My Ordinary Life」。
キーボーディスト、トマス・ボディーンのファースト・ソロ作品。
THE FLOWER KINGS の面々がバックアップに集まっている。
サウンドは、ギターを抑えてキーボードの音がより多彩になるも、まさに歌のない THE FLOWER KINGS、いや 2 曲目のメロトロンからテーマそして、ギターが重なる辺りは、ほとんど KAIPA である。
ほんのりジャズ・フュージョン・タッチやエレクトロニック/ニューエイジ路線も見せつつも、ファタジックでハートフルな「あの」シンフォニック・ロックなのだ。
ロマンを湛える素朴なメロディとハーモニーがとても大事にされているのだ。
メロトロン、シンセサイザー、オルガンなど、音色はきわめて多彩だが、とりわけ美しいのが近代クラシック調のピアノ・ソロ。
楽曲には、知的なユーモアと暖かさそして、思索的な面持ちもある。
つまり「ハハ、冗談さ」と屈託なく笑いながらも、ふと黙り込む表情がたまらなくセクシーってことです。
キーボーディストのソロ作としては、アンダース・ヘルメルソンやマーティン・オーフォードの近作に匹敵する豊かな内容であり、アクロバティックに弾き捲くることに終始し、プロレスや巨人野球に近くなっているメタル上がりのキーボーディストには爪の垢を煎じて飲ませたい。
もっともプログレ好きは隠せぬようで、最終曲だけは、タイトルからしてエマーソンに肉薄せんと企てているような力作。
珍しく過激なハモンド・オルガン・ソロから、ギターも加えた熱くロマンティックなクライマックスを経て、シンセサイザーのリードするボレロへと進む。
個人的には、このキーボードのおかげで THE FLOWER KINGS が好きになったのかもしれない、と気づかせてくれた逸品でありフェイバリットの一つです。
パル・リンダー氏もこのくらいだと聴きやすいのですが。
「Entering The Spacebike」神秘的にして暗示的なノイズによる小序曲。
「Into The Dreamscape」優しげなテーマが胸を打つ名曲。KAIPA。
「The Ballerina From Far Beyond」ギターが大きくフィーチュアされる THE FLOWER KINGS 風のシンフォニック・インストゥルメンタル。もちろん弦楽奏(ほんもの?)からホイッスル風のシンセサイザー、メロトロンまでキーボードも盛りだくさん。ほんのりニューエイジ・タッチを漂わせるシンセサイザーのリードに、えもいわれぬ歌心を感じる。
「Daddy In The Clouds」チャーチ・オルガン・ソロにメロトロンを交えた作品。厳かにしてヒューマンな暖かみを湛える。
「Speed Wizard」テンポのいいフュージョン/ジャズロック風のナンバー。軽やかなシンセサイザーのリードに要所でメロトロンをはさむ。リズム・セクションもきっちり主張があり、冴えたドラムといかにものフレットレス・ベースがカッコいい。終盤ハウス風のブレイクビーツで迫る。
「An Ordinary Nightmare In Poor Mr. Hope's Ordinary Life」サウンド・チェックのようなモノローグが導くコラージュの世界。ベース・ソロや前作最終部のブレークビーツさらにはアラレモナイ喘ぎ声から弦楽奏、インド音楽までを駆け足で巡ってゆく。ジョン・レノンや PINK FLOYD のファンなのかもしれません。
「In The Land Of Pumpkins」ジャジーななめらかさと優しい暖かみそして、逞しい演奏力を見せつけるシンフォニック・チューン。美しくも純朴なピアノ・ソロからしなやかなテーマそして、中盤のかなり尖がったジャムなど多彩な音楽センスを次々と打ち出す傑作だ。近年の THE FLOWER KINGS の作風に近い。
「The Magic Rollercoaster」ドラムン・ベース+ジャズ・エレピによるモダン・ミュージック。人力ブレイクビーツの上で PINK FLOYD 直系の SE とヴォーコーダが渦を巻く。
「The Gathering」メロトロンと弦楽奏をフィーチュアした重厚なエレジー。メロトロンは管楽器、弦楽器、コーラスと多彩。
「Three Stories」3 部からなるプログレ・オマージュ大作。ハープとメロトロンのアンサンブルがファンタジックな世界へと誘い波乱に飛んだ展開を繰り広げる第一章「Samuel - The Knight 」、EL&P 調のヘヴィなオルガンが印象的だ。続いてロマンティックにしてメランコリーに沈み込むような表情を見せる第二章「Adam - The Prophet」。ピアノが美しい。圧巻のロイネのギター・ソロから、ファンファーレ調のシンセサイザーによる第三章「Miranda - The Queen」のボレロへと雪崩れ込む。キーボード含めかなりエマーソンを意識しているようです。
(FOX CD 017)
| Roine Stolt | Guitars, Lead vocal, keyboards |
| Hans Fröberg | Voices |
| Tomas Bodin | Keyboards |
| Michael Stolt | Bass & MoogTaurus |
| Jaime Salazar | Drums, Percussion |
| Hasse Bruniusson | Percussion |
| guest: | |
|---|---|
| Ulf Wallander | Soprano sax |
| Hakan Almkvist | Sitar, Tabla |
97 年発表の「Stardust We Are」。
前作で完成したサウンドを質/量ともにスケール・アップ、極彩色の構築美を感じさせる CD 二枚組の超大作となった。
ドラマチックで豊かな THE FLOWER KINGS の世界を、約二時間にわたって楽しむことができる。
本作でも、親しみやすいメロディ、神秘的にして豊麗な音色をもつアンサンブルは全く健在だ。
トマス・ボディーンは、進境著しく作曲にも携わっている。
ゲストのハカン・アルムヴィストは、チェンバー・ロック・グループ ENSEMBLE NIMBUS のリーダー。
ハッセ・ブルニュッセンを通じてのゲスト参加だろう。
オープニングを飾る豪快かつパーカッシヴなロカビリー・ナンバー「In The Eye Of The World」から、コーラス・ワークも巧みな雄大なバラード「Church Of Your Heart」、さらにはファンタジックでドラマチックなインスト大作「Circus Brimstone」など、従来の作風をさらに洗練し、キャッチーに進化させた作品から始まって、エンディングを飾る感動のシンフォニック超大作「Stardust We Are」まで、360 度にわたって THE FLOWER KINGS の魅力を振りまいた上に、さらに余裕を感じさせるところがすごい。
文字通り底知れぬ力量である。
音を詰め込むばかりではなく、ヒューマンな暖かみや知的なユーモアを織り込んで、ゆったりと語ることを忘れない作風も魅力だろう。
シンフォニック、メロディアス、時に重厚な聴き応えすらもったナンバーの揃った CD 一枚目に続き、二枚目ではディラン風フォーク・ナンバー「Different People」から、レゲエのリズムが印象的なマッカートニー風トラッド・ソング「Ghost Of The Red Cloud」まで、明確な性格をもった作品が並ぶ。
幅広い音楽性に驚かされる作りである。
そして、二枚目の冒頭から幾度となくさまざまな形で現れたメロディが、実は巨大なエンディング・ナンバーのテーマであることに気づくとき、心を揺さぶる大きな感動が待っている。
ここでのハッセ・フレベリのヴォーカルには、厚い雲のヴェールの間から、鮮やかに地上に差し込む曙光のように神々しい感動がある。
これだけ心地よい余韻にひたることのできる曲は稀ではないだろうか。
もちろんギターは、思わず体を揺らしてしまうキャッチーなリフから口ずさめるようなフレーズまで、今回も演奏の中心で大活躍だ。
さらに、多彩な音色をもちタイミングいい切り込みを誇るキーボードが加わったアンサンブルは、音の稠密さにもかかわらず、躍動するような溌剌さとエモーショナルな「歌」に満ちあふれている。
カラフルな一大パノラマが目の前に広がる、そんな表現力を全開にした作風であり、「心地よく圧倒される」内容である。
ついに頂点を極めた大傑作といえるだろう。
各曲も鑑賞予定。
「In The Eye Of The World」(10:38)ロカビリー風のビートが快調な名曲。自嘲というにはあまりにカッコいい。
「A Room With A View」(1:26)
「Just This Once」(7:53)
「Church Of Your Heart」(9:10) ポジティヴにして切なく、懐かしくも力強いシンフォニック・チューン。
代表作の一つ。
「Poor Mr.Rain's Ordinary Guitar」(2:43)切ないエレアコ・ソロ。
「The Man Who Walked With Kings」(4:59)アコースティック・ギターとサックス、キーボードが北欧らしいメロディで寄り添い、対話するバラードの名品。ロマンティシズムに漂う独特のユーモアとペーソスがいい。
「Circus Brimstone」(12:03)変拍子テーマを巡るスリリングな演奏と優しげなテーマによるアンサンブルが絶妙の配分を見せる、劇的なインスト大作。名作。
「Crying Clown」(0:57)
「Compassion」(4:45)
「Pipes Of Peace」(1:19)チャーチ・オルガン・ソロによる序曲。
「The End Of Innocence」(8:28)ヘヴィなトーンが貫くもクラシカルなキーボードが KAIPA を思わせるバラード。
THE FLOWER KINGS らしさでいっぱいの名品。
「The Merrygoround」(8:17)得意の変拍子テーマによる快速ナンバー。
切れのいいドラムと独特のユーモラスな旋律がリズミカルな曲調を支える。
中盤からのノスタルジックなスロー・パートもいい。
「Don Of The Universe」(7:02)アコースティック・ギター、シタール、サックスらによるアンサンブルが奏でるのは最終曲のテーマである。
ほのかにエキゾチックなインストゥルメンタル。
「A Day At The Mall」(0:45)
「Different People」(6:19)
「Kingdom Of Lies」(5:48)
「If 28」(2:15)CD 2 で繰り返し現れるテーマ再び、そして後半には最終曲のイントロがはや現れる。
タイトル曲の予兆である。
「Ghost Of The Red Cloud」(4:37)
「Hotel Nirvana」(1:49)
「Stardust We Are」(25:02)
(FOX CD 018)
| Roine Stolt | Guitars, Lead vocal, keyboards |
| Hans Fröberg | Voices |
| Tomas Bodin | Keyboards |
| Michael Stolt | Bass |
| Jaime Salazar | Drums, Percussion |
| Hasse Bruniusson | Percussion |
98 年発表の「Edition Limitee Quebec 1998」。
ケベックのファン向けの限定ミニ・アルバムが、日本でも入手可能となった。
未発表曲と既発曲の再録、そしてライヴでのインプロヴィゼーション、さらに、次の作品に含まれるナンバーのプレビューから成る、充実した内容だ。
未発表曲「Kite」と「Buffalo Man」は「Retropolis」セッションでの作品。
前者は、メロディや歌詞など「There Is More To This World」の原型にも思える。
収録時間の関係上のみの理由でアルバムから洩れたナンバーだけあって、オクラ入りするにはあまりに勿体ない出来である。
いづれかのアルバムに収まっても全く問題ないレベルであり、ここで日の目を見てほんとうによかった。
96 年ウプサラでのライヴ録音によるインプロヴィゼーション「Piece of Nizzimo」(「Humannizzimo」の断片からの発展形)と「Duke Of Nuke」は、ブルニュッセンのパーカッションの活躍と 007 のテーマや CREAM など、様々な作品の断片がユーモラスに取り込まれているのが聴きどころ。
ライヴ・バンドとしてのすばらしいセンスがよく分かる。
また、「The Flower King」の再録は、円熟味を増したヴォーカルと色彩感にあふれながら切れ味のいい演奏が、元曲を充分凌いでいると思うがどうだろう。
そして、次作に収められる予定の「Garden Of Dreams, part I」は、エモーショナルなヴォーカルと多彩なキーボードがリードするスリリングなインストとがガッチリ手を組み、ハードながらもポジティブな明るさにあふれる傑作だ。
選曲のバランスがよく、個性的なナンバーが並んだ好アルバムである。
コンピレーションにしてこの気合の入り方。
さすがである。
(IF-9802)
| Roine Stolt | Guitars, Lead vocal, keyboards |
| Hans Fröberg | Voices |
| Tomas Bodin | Keyboards |
| Michael Stolt | Bass & MoogTaurus |
| Jaime Salazar | Drums, Percussion |
| Hasse Bruniusson | Percussion |
98 年発表の「flowerpower」。
なんと、前作に続き CD 二枚組のヴォリュームにまず愕然。
そして、これだけの時間 THE FLOWER KINGS の世界に浸りきれる幸せを噛み締める。
二枚組を堪能して気付くのは、このグループの驚くべき意図だ。
前作がありあまるアイデアを注ぎ込んだ結果、自然に二枚組のヴォリュームに達したのに対して、本作では明確な意図の下に二枚組にしたと思えるのだ。
そして、その二枚の内容は、一つは明かに「超大作」という大胆な実験であり、もう一つは従来型の曲構成の作品に新境地を織り込んだ、やはり一つの実験なのである。
いってみれば二重の実験なのだ。
CD 一枚目の一時間にわたる目くるめく超大作は、小曲を積み重ねる手法にもかかわらず、印象的なテーマと自然な流れのおかげで一気に聴き通すことができる。
演奏が、時を追うごとに磨きがかかり充実してゆくからすごい。
随所に散りばめられたメロディやリフが、最後まで耳に残るあたりがさすがである。
もっとも全体の印象はとしては、緻密な筋はこびというよりは即興、セッションに近いニュアンスである。
別のいい方をすれば、素材をざっくりと切って並べてあるような新鮮な「生の」感覚。
スタジオ製作にライヴなニュアンスを持ち込んだといってもいいかもしれない。
よどみなく自然な抑揚で流れてゆくのも、深く手を加えないことで、かえって情報量や重み/粘りが軽減されたおかげではないだろうか。
そして、これだけのスペースを使いながら、素材をざっくり切って並べただけで曲に仕立てるというアプローチ自体が、きわめて実験的、挑戦的である。
その上、これだけの聴き応えを残すのだから、もはや本当に優れた才能の発現としかいいようがない。
そして、 CD 二枚目は、これだけでもアルバムとして独立できそうな曲構成だが、ここでも従来にはあまり感じられなかった要素がある。
それはストルトの「怒り」を露にした楽曲である。
ストルトの心情は特に前半の歌詞にはっきりと現れており、今までのオプティミスティックなスタンスとはやや異なる様子が窺える。
(もっとも今までのユートピア的なストーリーには、常に表裏一体の暗黒が存在していたのも確かだが)
演奏も魅力的なフレーズとカラフルな音色をふんだんに使った、正に THE FLOWER KINGS のものであり、概ね今までの作品と同様に楽しめる。
しかし、ヴォーカルに時おり緊迫した表情が見えるところや、破壊的といっていいほどハードな演奏が飛び込む辺りに、ストルトの心理が反映している様に思えてならない。
この怒りの原因は何なのかはファンとしては興味深いところだ。
(2004 年の今となって考えると、安定してきた作風をあえて覆そうとするアーティスティックな試みであったことが了解できる。
「Stupid Girl」のようなヘヴィなジャム・スタイルは、最新作にまで響き渡っているではないか。)
ボディーン、フレベリの曲(「Magic Pie」は、この場所に配置されたことで、とてもすてきな響きをもってくる)の穏やかさと、幾度となく繰り返される「Life Was Simple」のメロディが、この怒りを静めるための祈りの言葉のように思えてしまう。
怒りを孕んだ過激なサウンドを強調したが、他にも THE BEATLES 風インド・サウンドや軽妙なヴォーカル処理などの新たな挑戦もある。
円熟した演奏は、プログレッシヴ・ロックという範疇を越えて「ポップ」に接近しつつあるのかもしれない。
作品として見た場合、今まで以上に様々な意見を生むのは間違いない問題作だが、路線継承をよしとしないアグレッシヴなスタンスはすばらしい。
各曲も鑑賞予定。
「Garden Of Dreams」(59:57)
「Captain Capstan」(0:55)
「IKEA By Night」(0:05)
「Astral Dog」(8:00)
「Deaf, Numb & Blind」(11:09)
「Stupid Girl」(6:49)
「Corruption」(5:55)
「Power Of Kindness」(4:25)
「Psycedelic Postcard」(9:50)
「Hudson River Sirens Call 1998」(4:20)
「Magic Pie」(8:19)
「Painter」(6:45)
「Calling Home」(11:00)
「Afterlife」(4:34)
(FOX CD 020)
| Roine Stolt | Guitars, Bass, Leyboards, Percussion |
| Jaime Salazar | Drumkit, Percussion |
| Ulf Wallander | Soprano Sax |
99 年発表の「Hydrophonia」は「The Flower King」に続くロイネ・ストルトのソロ作品。
「海」のイメージからインスパイアされたと思われるフル・インストゥルメンタル・アルバムである。
親しみやすいメロディ・フレーズ、メロディアスながらも小気味よい演奏、ハートフルにして涼感もあるサウンドなどリラックスした雰囲気のなかにもしっかりと音楽的なメッセージを感じさせる内容である。
一人 THE FLOWER KINGS であるのは間違いないのだが、バンドの作品と比べると濃密に練り上げたのではなくラフ・スケッチから始めてさらっと決めた感じである。
そして、当たり前のことなのだが THE FLOWER KINGS における KAIPA 的なものを担っているのはやはりこの人なのだと気づかされる。
個人的には非常に好きな作品です。
FLOWER KINGS ではなかなか見られなくなった北欧ロックらしいペーソスのあるフォークロア・タッチもあります。
「Cosmic Lodge」()
「Shipbuilding」()
「Little Cottage By The Sea」()
「Wreck Of HMS Nemesis」()
「Bizarre Seahorse Sex Attack」()
「Oceanna Baby Dolphin」()
「Nuclear Nemo」()
「Hydrophonia」()
「Lobsterland Groove」()
「Seafood Kitchen Thing」()
(IOMCD 047)
| Roine Stolt | Guitars, Lead vocal, keyboards |
| Hans Fröberg | Voices |
| Tomas Bodin | Keyboards on disc2 |
| Robert Engstrand | Keyboards on disc1 |
| Michael Stolt | Bass & MoogTaurus |
| Jaime Salazar | Drums, Percussion |
| Hasse Bruniusson | Percussion |
2000 年発表の初のライヴ・アルバム「Alive On Planet Earth」。
1998/9 年のワールド・ツアーから北米と日本での公演を録音した二枚組。
ライヴでの楽曲の完璧な再現に加えて、観客の熱気とあふれるエネルギーが作品をさらに高いステージへと持ち上げている。
ジャケット通りに雄大なパノラマが目の前に広がる圧巻のパフォーマンス。
ライヴ・アルバムとしては出色だろう。
なお、一枚目のアメリカ公演の収録では、キーボーディストがトマス・ボディーンに代わってロバート・イングストランドである。
また同じく一枚目のカナダでの収録のエンジニアに VISIBLE WIND のステファン・ジェイセンスがクレジットされている。
「There Is More To This World」(11:31)。
「Retropolis」より。
オープニングからまさに圧倒的なプレゼンス。
とにかくカッコいいし抜群にうまい。
はや絶句。
「Church Of Your Heart」(9:41)。
「Stardust We Are」より。
時折挿入されるムーグとエレピは、ハッとするほど新鮮。
「The Judas Kiss」(15:43)。
「Retropolis」より。
スタジオ盤の倍近くに伸ばされている。
ここでの聴きものは、インプロヴィゼーションに尽きる。
ノスタルジックなエレピ、メロトロンが神秘的な響きをもたらすキーボード・ソロから、次第にラテン風の盛り上がりを見せるギターとベースのソロ、そしてハモンド・オルガンが轟くハードなアンサンブルへと突っ込んでゆく。
観客としてはよりビート感のある演奏を好むのか、静かなシーンで手拍子が入るのが面白い。
ギターはただもうすばらしいとしかいえない。
「Nothing New Under The Sun」(4:13)。
懐かしき KAIPA のセカンド・アルバム「Inget Nytt Under Solen」よりタイトル・ナンバー。
ハモンドとギターの最高のコンビネーション。
「The Lamb Lies Down On Broadway」(9:17)。
GENESIS の同名アルバムよりタイトル曲のカヴァー。
THE FLOWER KINGS 流のハード&エモーショナル・テイストが、元曲を生まれ変わらせる。
ちょっとピーター・ゲイブリエル風のデフォルメを見せるストルトがお茶目。
エンディング・ナンバーのせいか、とにかく観客全員合唱で凄い盛り上がり。
「See you next year!」なんていわれちゃうと涙出ちゃうなあ。
この後のアンコールはなんだったんだろう?
後半二枚目は、拍手こそまばらながらも、ギター、キーボードを軸にスタジオ盤をはるかに上回る感動のパフォーマンス。
ストルトのブルーズ・フィーリングあふれるギターに胸が熱くなる。
フレベリの透き通るようなヴォーカルも冴えている。
エンディングの「In The Eye Of The World」からアンコール・メドレーの「The Flower King」、「Stardust We Are/part three」までの展開は、ひょっとすると本グループ一番の演奏では。
「Big Puzzle」(18:29)。
「Back In The World Of Adventures」より。
「Sound Of Violence」(6:37)。
「The Flower Kings」より。
「Three Stories」(6:04)。
トマス・ボディーンのソロ作品「An Ordinary Night...」より。
「In The Eye Of The World」(12:14)。
「Stardust We Are」より。
「The Flower King」(11:27)。
「The Flower Kings」より。
「Stardust We Are/part three」(10:00)。
「Stardust We Are」より。
(IOMACD 2007)
| Roine Stolt | Lead & Backing voices, Guitars, Bass |
| Tomas Bodin | Piano, Organ, Synthesizer, Mellotrons |
| Hans Fröberg | Lead & Backing voices, Acoustic guitar |
| Jonas Reingold | Fender Precision & Fretless basses |
| Hasse Bruniusson | Percussion, Mallets, Chains, Voices |
| Ulf Wallander | Soprano saxophone |
| Jaime Salazar | Batteries |
2000 年発表のオリジナル・スタジオ録音第六作「Space Revolver」。
新ベーシストとして、ヨナス・ラインゴールドが参加、サウンド面でも新たな世界を切り開く作品。
まず驚かされるのは、今までの作品の音との感触の違いである。
これまで顕著だった、カラフルだが混沌とした音のイメージから、今回は、霧が晴れたように各パートの音が明確に聴こえるようになっている。
ストリングスが現われて意表を突かれる瞬間も確かにあるが、何もかも詰め込むといった前作までとは、明らかに異なるアプローチがあるようだ。
同時に、はちきれんばかりのエモーションを真っ直ぐ突きつけてきたヴォーカルとギターにも、やや方向性の変化が現れた。
ヴォーカルはストレートさよりも技巧が感じられ、ギターはブルージーなソロを切りつめたように思う。
かといって、インストゥルメンタルが抑えられているわけではない。
むしろ、逞しい演奏力が、奔放なまでに詰め込まれている。
このアプローチは、演奏を拡充し、ヴォーカル表現を重視し、多様な音楽性を分かりやすく提示し、その上で明快にコンパクトにまとめ上げるという試みととらえていいだろう。
優れた技巧によってシンプルな構造の楽曲の表現にふくらみと深みをもたせて完成度を引き上げるという、いわば、ゴージャスなポピュラー音楽にも似たアプローチなのだろう。
TRANSATLANTIC (SPOCK'S BEARD か?)ばりの、明快なリフを軸にさまざまな枝葉を巡らしつつグイグイと突き進むスタイルが、自信をもって貫かれている感じ、といってもいい。
また、より広い範囲の音楽ファンがアクセスしやすい音を目指したのも確かだろう。
反面、何が起こるか分からないスリリングな曲の演出は、抑えられているようだ。
さらには、往年のプログレッシヴ・ロックへのオマージュとストルトのジャズ/フュージョンのセンス、そして(おそらくは)スウェーデンのトラッド・ミュージックが渾然となった、あの親しみやすく独特のリフやフレーズも見当たらない。
全てにおいてバランスが取れ、作品ごとの正確は明確である。
同時に、八方破りで無邪気な姿勢は、技巧と演出のおかげで見えにくくなっている。
音楽家としての進歩がもたらした均衡の取れたサウンドということなら、歓迎せねばなるまい。
しかし、自分を含め KAIPA の影を求めてきたリスナーが戸惑うことも否めない。
(ベースとバスドラ連打がうるさすぎるというのは、意見ではなくいちゃもんか?)
もっとも、過剰な心配は無用だ。
徹底してカラフルでファンタジック、ノスタルジックだったサウンドが、幾分シンプルなトーンへ変化し、軽快さとよりコンテンポラリーでリアルな感触を得ただけだ。
よりフレッシュな音を希求しているということだ。
アルバム・オープニングとエンディングに分けられた大曲「I Am The Sun」は、ジャジーで爆発的な演奏力を生かした目くるめくドラマが詰まった傑作。
明快でキャッチーなサビが、濃密な音世界にくっきりと輪郭を引く。
ASIA を思い浮かべるのも、むべなるかなである。
また、ボディーン作曲のインストゥルメンタル「Rumble Fish Twist」は、興味深いことに、従来のサウンドに近い作品。
そして、「Monster Within」に代表されるように、巧みな SE がそこここで使われているのも、本作の特徴だろう。
短めでシンプルなポップ・ナンバーを経て、「Slave To Money」と「A King's Payer」では、変わらぬストルトのヒューマンなユートピア志向が歌詞に見られることにほっとする。
旅の終りで再び「I Am The Sun」に邂逅するとき、描写があからさまでなくなっただけで、彼らの音楽の持つ力は変っていないということをきっと確信できるだろう。
音楽が大人になったと感じた第一印象は、フィードバックを意識し、抑制することを試みたせいなのかもしれない。
海外盤は、通常仕様とブックレット付きデジパックのスペシャル・エディション、さらに日本盤はオルタネート収録の CD 二枚組が用意された。
各曲も鑑賞予定。
「I Am The Sun/ Part.1」(15:03)オプティミスティックな響きが一貫するモダン・シンフォニック・チューンの傑作。
フォーク・タッチ、ジャジーなヒネリ、クラシカルな味つけなども怠りない。
明快で素朴さのあるフレージング、ユーモアあるアレンジ、奥行きの広い音響処理があまりにフラキンらしい。
「Dream On Dreamer」(2:43)子守唄のようなバラード。サックスがなまめかしい。
「Rumble Fish Twist」(8:06)
ラインゴールド氏参加をお披露目するようなテクニカル・チューン。
正直にいって、バスドラ連打とベースが、音楽的緊張感とは無縁の部分で意味もなくうるさい。
後半はうってかわってスペイシーでロマンティックな内容。
インストゥルメンタル。
「Moster Within」(12:55)
リミックス・ヴァージョンのような作品。
キーボードの存在感に胸打たれる。
「Chicken Farmer Song」(5:09)
ツイン・ヴォーカルが楽しいポップ・ソング。
ポール・マッカートニーやアンディ・パートリッジ(XTC)の世界。
「Underdog」(5:29)
インドな音やバロック・トランペット風のシンセサイザーなど、思い切り THE BEATLES な作品。
前曲と同じく、英国ロックの血筋です
。
本曲だけではなく、随所に SE が挿入されるが、表現としてはかつての PINK FLOYD から一歩も進んでいない気がする。
「You Don't Know What You've Got」(2:39)
カントリー・フレヴァーあるハッセ・フレベリの小品。
「Slave To Money」(7:30)
「A Kings Prayer」(6:02)
男らしい力強いメッセージ・ソング
後半、ワウ・ギターを支えるストリングスの盛り上がりがいい。
「I Am The Sun/ Part.2」(10:48)
軽やかでオプティミスティックな余韻のある終曲。
(MICP-90004)
| Jaime Salazar | any bland drums, yell, translating & liptwisting |
| Jonas Reingold | fender bass, fretless bass, istanbul lectures |
| Hans Fröberg | vocals, vocoder |
| Roine Stolt | vocals, guitars all sorts, keyboards, percussives handy |
| Tomas Bodin | keys, wagnerism & theatrical first aid |
| Hasse Bruniusson | percussive sculptures, chains, but less yell than usual |
| Ulf Wallander | guesting as always on soprano saxophone |
2001 年発表のオリジナル・スタジオ録音第七作「The Rainmaker」。
吹っ切れたようにポップで明快なメロディの歌を、カラフルな配色のサウンドと重厚かつダイナミックな演奏で支える「帰ってきた」傑作。
インストゥルメンタルが少なくなったのではと思えるくらい、歌のよさが前面に出ており、その歌の流れが全編を貫いている。
キャッチーなテーマとストレートな爆発力をもつ演奏は、込み入ったアレンジを意識させずに、あたかもパノラマのような音の奔流を楽しませてくれる。
今回は、60 年代後半以降の全てのジェネレーションにとって、必ずどこかでしっくりとくる汎ノスタルジック・サウンドがいよいよ冴え捲くり、発表された瞬間からすでに歴史的名盤の風格をもっている。
少なくともそう思わせる力がある。
ポップスの王道をゆくようなメロディ(どこかで耳にしたことがある、とはっきりいおう)の巧みな配置に加えて、前作では抑えられた、あの親しみやすいフレーズも随所に復活している。
驚くべきことに、天井知らずのセンスによって自らの音楽の枠組みをさらに解体し、再構築して、結果的にはさらに前進しているのである。
どこか安住の地を見つけて音を封じ込めるのではなく、旅そのものとその道連れの歌が、彼らの音なのだ。
「歌もの化」というよりは、さらに「いい音楽」を目指しているということなのだと思う。
ストルト氏にとって、TRANSATLANTIC での創作活動もいい刺激になったようだ。
堂々たるツイン・ヴォーカルとヘヴィなギターの存在感はいうまでもなく、特に今回は、キーボードの音がいい。
キーボード・ワークは今までも定評があったわけだが、今回のような明快なソロを聴くと、改めてボディーンのセンスのよさを感じる。
全体に、もはやプログレ、シンフォニック・ロックというよりは、さまざまなスタイルを取り入れた王道的なコンテンポラリー・ロックというべきだろう。
アルバム一枚がそのまま宇宙になったようなトータルな聴き心地があり、80 分近いオデッセイの終わりには、暖かいメッセージが余韻として残るのだ。
SPOCK'S BEARD も真っ青、ほとんど U2 に迫るロックの道である。
新時代のシンフォニック・ロックの定番となるでしょう。
ドラムスのハイメ・サラザーは本作を最後に脱退したが、力の入ったいい仕事を残してくれた。
タイトルや歌詞には、ユートピア志向とそのユートピアへの道のりを阻むものへの警句が満ちているようだ。
しかし、ユートピアが「どこにもないところ」ということはちゃんと分かっている。
歩み続けることが肝心なのである。
当たり前だが、いいメッセージだと思う。
通常仕様とブックレット付きデジパックの CD 二枚組スペシャル・エディションが用意された。
各曲も鑑賞予定。
(IOMLTDCD 085)
| Tomas Bodin | Nord Electro, Nord Lead 3, Nord Modular, AKAIs-5000, Emagic ES2 synth |
| EXS24 sampler, EVP 88 Rhodes, Novation Supernova, Korg Prophecy, Roland VK7, MC505 | |
| Jonas Reingold | Warmoth/Bartolini custom bass, Yamaha bass, EBS Professional bass system |
| Zoltan Csorsz | Precision drums New York |
2002 年発表の「Pinup Guru」。
キーボーディスト、トマス・ボディーンのソロ第二作。
リズム・セクションに現 THE FLOWER KINGS の二人を招いた、キーボード・トリオ編成による作品である。
親しみやすいテーマ、フレーズを軸に、クラシックを基礎とする幅広い音楽性(ワールド・ミュージック調、素朴なフォーク・タッチなど)と屈託ないユーモア・センスを散りばめて、タイトなパフォーマンスにまとめており、きわめて聴きやすい。
ボディーンは、クラシカルで正統的な演奏を見せ、機材や音色、決めどころのプレイなどは、70 年代プログレへの思い入れたっぷり。
アナログ・シンセサイザー(ノード・モジュラーを駆使)、メロトロン、ハモンド・オルガンが、全編大活躍している。
それでもプログレ・クリシェ、ノスタルジーにとどまらず、ポジティヴに突き進むパワーを感じさせるのは、明快かつ説得力のある曲展開のおかげだろう。
古今の音楽が身についており、作曲/演奏ともに、表現のイディオムがしっかりしているのだろう。
いわば、安心して読める小説である。
また、リズム・セクションはきわめてテクニシャンであり、奔放なプレイもお手のもののはずだが、本作に限っては、ジャムっぽく暴れすぎなかったのが、全体のバランスとしていい効果を生んでいるようだ。
楽曲に音楽的に新奇なものは、あまり感じられない。
しかし、彼の音色とセンスが THE FLOWER KINGS の作品のハートウォーミングな部分を実現し、支えているのが、よく分かる内容である。
包み込むような暖かさをもつオープニング・テーマのみごとなこと!
そして、ノリノリの 4 曲目の痛快なこと!
ふと気がつけば口ずさんでしまい、愛聴盤になっている、というニクい存在であることは間違いない。
個人的には、不思議なほどこの方の作品、演奏が気に入っています。
きっと、HR/HM やフュージョン聴くくらいなら映画音楽や昔のスウィング・ジャズを聴く、という人に違いありません。
パル・リンダー氏と話は合うのでしょうか。
作曲は全てボディーン。全曲インストゥルメンタル。
(INSIDEOUT 6 93723 65382 2)
| Roine Stolt | guitars, vocals, keyboards |
| Tomas Bodin | keyboards, grand piano |
| Hans Fröberg | vocals |
| Daniel Gildenlow | vocals |
| Jonas Reingold | bass |
| Zoltan Csorsz | drums |
| Hasse Bruniusson | orchestral percussion |
| Ulf Wallander | soprano saxophne |
| Anders Bergcrantz | trumpet |
2002 年発表の「Unflod The Future」。
ドラムスに新メンバー、ゾルタン・ショーズ、3 人目のヴォーカリストに「PAIN OF SALVATION」のダニエル・ギルデンロウを迎えた。
内容は、ほんのりエキゾチックな主題がリズミカルに全編を駆け巡る、テクニカルにしてファンタジーでいっぱいのシンフォニック・ロック。
SPOCK'S BEARD を意識したのか、「Stardust We Are」復活か、久々の本編 CD 二枚組による完全無欠の超大作である。
モダン・シンフォニック・ロックの代名詞といっていい多彩にして悠然たるシンフォニック・チューンは、さらにスケールとダイナミズムを高め、変幻自在の演奏でリスナーを新しい桃源郷へといざなう。
冒頭の往年の YES の情報量を倍にしたような「The Truth Will Set You Free」(30:40) と、大団円の「Devil's Playground」(24:30) の二つの大作だけでもお腹いっぱいだが、間を埋める作品も傑作だらけである。
特に、超絶的な演奏力を活かした即興曲(4 曲目「Christianopel」)、即興パートがすごい。
初期 KING CRIMSON から GONG、下手をするとマイルス・デイヴィスやフランク・ザッパまで想像は広がる。
中でもリズム・セクションの暴れ方はかなりのものである。
もう一つ、ねじれたようなユーモアをもつポップ・チューンも魅力。
もともとユーモラスなフレージングはお得意だったわけだが、そのセンスをさらに拡大した感じだ。
このポップ・チューンのおかげで、プログレにつきまとう古臭さが払底されているように思う。
ハチャメチャなスケール感という意味では、ダントツの内容であり、持ち手をすべてぶちまけて、暴れ馬をねじ伏せたような痛快さがある。
だからといって、内容が気まぐれでバラバラなわけがなく、むしろ冷静な目で見極めて、しっかりとしたアレンジで織り上げてある。
その冷静さときたら、これは THE FLOWER KINGS を素材にしたサンプリング、リミックスものか?と思わせるほどである。
この内容を散漫と思うか、自己満足には付き合えないと思うか、それともいっしょに踊るか、は純然と好みの問題だ。
というか、あらゆる人にどこか一箇所ものすごいお気に入りのシーンが見つかる可能性のある作品といった方がいいだろう。
そして、気がつけばやはりストルト氏のギターと声が節目節目で響いてくる。
この時のツアーは見ておきたかった。
限定版は CD 二枚目の最後にボーナス・トラック「Too Late For Tomatos」付き。
「The Truth Will Set You Free」(30:40)
「Monkey Business」(4:20)
「Black And White」(7:40)
「Christianopel」(8:30)「Moonchild」を髣髴させる即興曲。
「Silenct Inferno」(14:25)
目まぐるしく変化する技巧的な作品。
終盤のテクニカル・フュージョン風の演奏にびっくり。
「The Navigator」(3:15)子守唄のように響く諭しの歌。
「Vox Humana」(4:30)フレベリによるバラード。
以下 CD ニ枚目。
「Genie In A Bottle」(8:10)
「Fast Lane」(6:35)
「Grand Old World」(5:10)
「Soul Vortex」(6:00)
「Rollin' The Dice」(4:15)
「The Devil's Dancescholl」(3:45)
「Man Overboard」(3:40)
「Solitary Shell」(3:10)
「Devil's Playground」(24:30)
「Too Late For Tomato's」(7:02)
(INSIDEOUT 6 93723 00222 4)
| Tomas Bodin | keyboards, bass vocals |
| Anders Jansson | lead vocals, chorus |
| Jocke JJ Marsh | guitars, vocals |
| Jonas Reingold | bass |
| Zoltan Csorsz | drums |
| Hasse Bruniusson | percussion |
| Ulf Wallander | soprano saxophne |
| Jonas Knutsson | soprano saxophne |
| Roine Stolt | guitars |
| N'nogo Bjurhall | African scat |
2003 年発表の「Sonic Boulevard」。
キーボーディスト、トマス・ボディーンのソロ第三作。
内容は、現在の THE FLOWER KINGS をややメローにしたような、シンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。
さまざま色彩とともにゆったりと広がるファンタジーの世界に、厳かなアコースティック・ピアノと哀愁のメロトロンが浮かび上がる。
ブルージーなギターがむせび泣き、オルガンが湧き上がると、深く蓄えていた思いが堰を切って迸る。
そして、ふと気がつけば、THE FLOWER KINGS の偉大なるレパートリーが、モチーフとして現れる。
今回のゲストは、ファミリー勢ぞろいといった感じなのだが、その中で特に光るのが、グレン・ヒューズ・バンドのギタリスト、ヨッケ・マーシュ。
センスのいいギター・プレイは、時に、ストルト氏に迫る。
作曲はボディーン。
スキャット以外は、全曲インストゥルメンタル。
THE FLOWER KINGS ファンには無条件でお薦め。
(INSIDEOUT 6 93723 65972 5)
| Roine Stolt | guitars, vocals |
| Tomas Bodin | keyboards |
| Hans Fröberg | vocals |
| Daniel Gildenlow | vocals |
| Jonas Reingold | basses |
| Zoltan Csorsz | drumkit |
| Hasse Bruniusson | orchestral percussion |
2004 年発表の「Adam & Eve」。
ジョニ・ミッチェルの作品に向けた謝辞のある本作は、ハッセ・フレベリの熱唱によるオープニングの大作に象徴される歌心と、ギルデンロウのエキセントリックな歌唱に現れる熱狂が、劇的な対比/調和を見せる傑作である。
個人的には、「歌」が前面に出ているということで「The Rain Maker」につながるイメージがある。
バロックといっていいほど巨大な前作と比べると、演奏のスケール感ではかなわないのだが、歌そのものの良さと高密度のアンサンブルの運動性は、前作を凌ぐかもしれない。
ジャジーなトーンにもかかわらず宗教的なメタファーを感じさせる大曲「Love Supreme」の他にも、佳曲が揃う。
フレベリがささやくように歌う「Cosmic Circus」、このグループに相応しい穏やかな叙情性が集約されたトーマス・ボディーンの小曲「Babylon」、ピーター・ハミルばりの怪奇な歌詞とギルデンロウによる演劇調の歌唱が印象的な「A Vampire's View」(終盤のピアノ、オルガン、ギターによるアンサンブルも VdGG を髣髴させる密度の高いもの)、ボディーンによる印象派風のピアノによるささやかなブリッジ「Days Gone By」、ヘヴィかつスーパー・テクニカルなタイトル・チューン「Adam & Eve」(エンディングに笑い声があると、どうしても「Speed King」や「Happy Family」を思い出してしまう)、ストルトのバリトンとフレベリのファルセットが息の合ったコンビネーションを見せ、ギターとキーボードもよく反応し合う「Startlight Man」(Bowie のようなタイトル)、KING CRIMSON のような暴力的、挑発的なアレンジにブルーズ・フィーリングがあふれ出る「Timelines」、前作の高い即興性をサイケデリックなファンタジーに封じ込めた堂々のシンフォニック・チューン「Drivers Seat」(トリプル・ヴォーカルをフィーチュア)、トラジックにして荘厳なインストゥルメンタルとともに序曲を回顧する終曲「The Blade Of Cain」まで、テンション高くアルバムは流れてゆく。
また、ライヴでの再現性を重視しているのか、全体にオーバーダビングは控えめで、プレイヤーの力量がよく分かるアレンジになっている。
当初、大昔のハヤカワ文庫のヒロイック・ファンタジーの口絵のようなジャケットには、正直ギョッとしましたが、今思うと見なれていなかっただけだと思います。
通常盤に加えてニ枚組スペシャル・エディションが用意された。(二枚目のボーナス CD の内容は、「The Rainmaker」のボーナス CD プラス 99 年来日時のキャンペーン用ミニ CD)
(MICP 90017)
| Anders Jansson | lead vocals, choirs |
| Helene Schönning | vocals on "The Angel Of Dream" |
| Pernilla Bodin | vocals on "The Mother/Angel Of Reverse" |
| Jocke JJ Marsh | guitars, riffmaster |
| Jonas Reingold | bass |
| Marcus Liliequist | drums |
| Tomas Bodin | keyboards |
2005 年発表の「I Am」。
SWEDISH FAMILY に続くトーマス・ボディンのソロ五作目。
インストゥルメンタル・アルバムとして製作が進んだが、ヴォーカルも大きく取り入れた(というかドラマの主役にすえた)往年の「ロック・オペラ」的内容のトータル・アルバムとなる。
クレジットによれば、作詞もボディン氏による。
アルバム構成も内容にふさわしく、20 分前後の大作を三本。
全体の印象は、キーボーディストのソロ作品というよりは、パーマネントなバンドによる超大作である。
ハートフルにして堂々たるテーマを提示し、キーとなるパートで印象的過ぎるフレーズを放つなど、キーボードが主役であるのは間違いないが、力強いヴォーカルがリードする演奏は、何年も活動を続けたバンドの放った大作というイメージも与える。
それほどに、目くるめくドラマがあり、グルーヴがある。
PINK FLOYD を思わせる懊悩と沈痛、そして解放、また、ジャジーな展開もうれしい。
キーボード・プログレへのオマージュは幅広く、ヨッケ・マーシュがリッチー・ブラックモアばりのリフを放つと、キーボードもジョン・ロードと化すなどハードロック・テイストも盛り込んでいる。
エピゴーネン然としないのは、スウェディッシュ・ロック特有の素朴さと愛くるしさをさらにボディン氏の豊かな感性で包んだ味わいのおかげだろう。
男女混声のヴォーカルが入るためか、現在の KAIPA に近い癒しテイストもあり。
また、「The Truth Will Set You Free」のリプライズなど TFK ファンへのサービスもある。
ロック・キーボード好きには無条件でお奨め、また、穏やかにして芯のあるドラマに酔いたい向きにもお奨めの傑作。
(SPV 085 48342 CD)
| Roine Stolt | guitars |
| Tomas Bodin | keyboards |
| Jonas Reingold | basses |
| Marcus Liliequist | drums |
2005 年発表の「Brimstoned In Europe」。
2005 年初頭のインストゥルメンタル・ツアー(新加入のマーカス・リリクィストのお披露目公演でもある)中のライヴ録音。
本ツアーは全員参加ではないため、CIRCUS BRIMSTONE(「Stardust We Are」中の名作品のタイトルである) なるユニット名義になっている。
内容は、旧作からの名曲セレクションであり、その名曲たちを鮮やかにライヴでよみがえらせている。
切ないまでにロマンティックなメイン・テーマでハートをつかみ、ジャジーで奔放なインプロでスリリングに迫るという、ライヴならではアレンジが冴える。
流れのなかに KAIPA らしいところや、FLOWER KINGS らしいところがはっきり浮かび上がってくるところも楽しい。
全編ロイネ・ストルトのギターが冴え渡り、キーボードもいい音を出している。
この端正なグルーヴと安定感のある演奏、とてもライヴとは思えない。
個人的には、表題作と「The Man Who Walked With Kings」、「Retropolis」の収録がうれしい。
「Cosmic Lodge」(5:57)ロイネ・ストルトのソロ作「Hydrophonia」より。
「Astral Dog/Hellhound」(13:11)「Flowerpower」より。後半は邪悪でへヴィなアドリヴ大会。
「Circus Brimstone」(15:11)「Stardust We Are」より。不思議なことにちゃんと歌が聞こえてくる名曲。アドリヴ合戦もあり。トマスがにやにやし楽しげにキーボードを操る姿が目に浮かぶ。
「The Man Who Walked With Kings」(5:16)「Stardust We Are」より。
「Magic Circus Of Zeb」(7:47)「The Flower King」より。
「Speed Wizard/Drumsolo」(6:43)トーマス・ボディーンのソロ作「An Ordinary Night In My Ordinary Life」より。
「Retropolis」(6:02)「Retropolis」より。
(FOXCD 026)