チリのジャズロック・グループ「FULANO」。 84 年結成。87 年アルバム・デビュー。2002 年発展的解散。音楽は、LA MEDIA BANDA に引き継がれる。 アヴァンギャルドなラテン・ジャズロック。
| Arlette Jequier | vocals, clarinette |
| Jorge Campos | bass, contrabass, electric contrabass, guitar |
| Cristián Crisosto | soprano & baritone sax, recorder, piccolo, vocals |
| Jaime Vivanco | synthesizer, Fender Rhodes, acoustic piano |
| Guillermo "Willy" Valenzuela | drums |
| Jaime Vásquez | recorder, alto sax, chorus |
87 年発表のアルバム「Fulano」。
内容は、美貌の早口女傑ヴォーカルと「たち」の悪い管楽器をフィーチュアした快速暴発ジャズロック。
ジャズを基本に、いわゆるジャズロック、フュージョン的なエレクトリックなサウンドも盛り込み、テクニカルでダイナミックなおかつユーモラスな演奏で迫る。
演奏は、きわめて技巧的。
変則的なリズムによる込み入ったアンサンブルとパワフルなソロが、一糸乱れぬまま突き進んでゆく
。
難しいことをしながら、高度な作曲/構築性を全否定するような、管楽器独特の下品で破壊的なパワーもしっかり活かしている。
そして、最大の特徴は、素っ頓狂でネジが外れた感じだろう。
あえて特異なメロディ・ラインや和声を多用しているのだろうが、この独特のコワレ方が生む脱線気味のタッチは、技巧バリバリの演奏への点睛となっている。
全体に、わりと薄めで細身の音であり、力強さよりは、しなやかで饒舌そしてしたたかなイメージがある。
個人技という点では、まずは、卓越したセンスの女性ヴォーカリスト。
ジャズ・ヴォーカリストとしても、第一線で活躍しているに違いない。
次に、挑発的なアドリヴをかますベーシスト。
ベーシストがセンスを発揮しているグループというのは、「当り」が多いような気がする。
確かにアヴァンギャルドといっていい表現が多いのだが、フランク・ザッパ や HENRY COW に端を発する前衛ジャズロックと対比させると、安定感や柔軟性という点でぐっとメインストリーム・ジャズ寄りといえるだろう。
また、チリのグループの作品だが、南米特有の明るさと卓抜した運動能力はともかく、いわゆる「アンデス」な、エキゾチズムはほとんど感じさせない。
巻き舌女性スキャットによる反復パターンなど、MAGMA に直結する場面も多い。(リズムがそこまでは重たくないが)
アジテーションが始まると、アヒーゴ・ベルナベー の作風、4 曲目のような即興になると、強烈なヴォーカルの存在もあって、ほとんど AREA である。終盤では、ギターがマルク・デュクレばりの壮絶なアドリヴを繰り広げる。
5 曲目は、初期 RETURN TO FOREVER 的な美感を示す、本アルバムでは異色作。
6 曲目は、小曲ながら X-LEGGEDSALLY 並のポテンシャルを見せつける快速ジャズ・ファンク。シンセサイザーによるリフが不気味だ。
7 曲目は、MAGMA 調の変拍子快速オスティナートで走り、BRAND X ばりの幻想空間を敷き詰め、AREA のような声色パフォーマンスを見せ、カンタベリー風の変拍子パターンで眩暈を起こさせる力作。キーワードは変拍子である。終盤、プログレど真ん中なオルガンも出現してエクスタシー。
(ALERCE CDAE 0199)
| Arlette Jequier | vocals |
| Jorge Campos | guitar, bass, contrabass, MIDI, chorus |
| Cristián Crisosto | soprano & alto & baritone sax, piccolo, flute, clarinet, bass clarinet, synthesizer, chorus |
| Jaime Vivanco | keyboards, acoustic & electric piano, synthesizer, tapes, vocals, chorus |
| Guilleamo Valenzuela | drums, guitar, |
| Jaime Vásquez | recorder, tenor & alto sax, chorus |
89 年発表のアルバム「En El Bunker」。
内容は、再びパワフルな巻き舌女性ヴォーカルと弾ける悪辣管楽器をフィーチュアしたアヴァンギャルドでアッパーなジャズロック。デメトリオ・ストラトスばりのスキャット、シアトリカルなヴォイス、偏執的変拍子アンサンブル、扇動する管楽器セクション、小気味いいリズム・セクションが華麗な走りとスウィングを見せる。
怪しいエキゾチズムも 1 曲目から全開である。
モダン・ジャズそのもののような演奏もあるのだが、「ここからコワれてゆきます」という基準点の提示のように思えてならない。
全体に、テクニカルな攻め一辺倒ではなく、もっと巧妙で企みに満ち、謎めいたタッチであり、緊張と弛緩のバランスがいい。
派手さが分かりにくいので、一作目、三作目と比べると一見地味だが、中毒性は高い。
痛快なる Rap もあり。
1 曲目は強圧的な変態イケイケ・チューン。
8 曲目は悠然たるニューエイジ風シンフォニック・チューン。この振れ幅が尋常ではない。
9 曲目はオペラ?演奏は前半オーケストラで、後半変拍子ヘビメタが混じる。
10 曲目はヒトラーの演説がくっついた超速バカ・ファンク・チューン。笑っちゃうくらいすごい。
(ALERCE CDAL 200)
| Arlette Jequier | vocals, alto sax |
| Jorge Campos | guitar, bass, contrabass, MIDI, chorus |
| Cristián Crisosto | soprano & alto & baritone sax, piccolo, flute, clarinet, bass clarinet, synthesizer, chorus |
| Jaime Vivanco | keyboards, acoustic & electric piano, synthesizer, tapes, vocals, chorus |
| Willy Valenzuela | drums, guitar, object |
| Jaime Vásquez | recorder, tenor & alto sax, chorus |
93 年発表のアルバム「El Infierno Del Los Payasos」。
内容は、強靭なリズムに支えられた器楽的技巧を前面に出したジャズロック。
パワフルな二管、三管をフィーチュアし、ファンク・テイストも大きく打ち出している。
リズム・セクションも充実しており、特にベーシストはいつになくスラッピングを多用し、ギターでもヘヴィ・メタリックな表現をしている。
ゴージャスなビッグ・バンドに凶暴なヴォーカルが噛み付くと、X-LEGGED SALLY に女性ヴォーカルが加入したような感じにもなる。
全体に、衝撃度もスタミナもあるという、ラテン世界らしい作風といえるだろう。
一方、キーボードのエレクトリック・サウンドを使ったサイケデリック、NEW AGE な即興パートもある。
管楽器は、ワイルドなブローのみならず、メランコリックな心象風景を繊細なタッチで描くこともできる。
さらに、リード、サイドの各ヴォーカルとコーラスを組み合わせた「歌」の充実も特徴だろう。
主役の女性のみならず、男声ヴォーカルも多く取り入れられている。
エキゾチズムは、主として女性ヴォーカルの表情に浮かび上がってくるようだ。
本アルバムのパフォーマンスは、意外性やユーモアでかわさない、自信にあふれた真っ向勝負である。
5 曲目の「Islands 」KING CRIMSON あるいは 最初期 WEATHER REPORT/RETURN TO FOREVER 風の思弁的即興大作が軸か。
8 曲目は、錯綜/絶叫する男声ヴォイス、べらんめえで唸る女性ヴォーカル、強力なビッグ・バンド、凶暴なギターが詰め込まれたスリリングなファンク・チューン。
10 曲目は、キーボードをフィーチュアしたスペイシーかつスリリングなジャズロック作品。
最終曲は、フルート、サックスと女性ヴォイスによるジャジーでメロディアスな歌もの。穏かな夕暮れを思わせるいいエピローグだ。
(CDAL 0172)