FRENCH TV

  アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「FRENCH TV」。 84 年ケンタッキーにて結成。 作品発表は不定期であり、2006 年現在で九枚。 要は自主制作でガンバる、プログレ好きの変なオジさんたちである。 戦費削減を謳うなどマインドはオルタナティヴ。 サウンドは、インスト主体ややロック寄りのジャズロックであり、プログレ・クリシェに精通し、笑いもあるケッサクな作風である。グループ名は、フランス製のテレビの如く次々と色彩が変化するサウンド、という意味らしい。(壊れてるって)
  2007 年以降バンドは解体気味のようだが、サポート・メンバーを得てツアーを行い、2010 年には新ユニット DISTINGUISHED PANEL OF EXPERTS による作品「Trans-Indulgent」と 3 年越しの新譜「I Forgive You For All My Unhappiness(もはや悟りの境地ですな...)」を発表している。彼らの言葉を借りれば「Stay tuned!」とのこと。

 Pardon Our French!

 
Mike Sary bass, keyboards Warren Dale keyboards, sax, clarinet, melodica, toys, accordion, flute,
recorder, bass harmonica, percussion, saxello, celesta, marimba, vibes
Jeff Gard drums, percussion Chris Smith guitars, electric violin, viola, percussion, banjo, mandolin, cello
guest:
Steven Dale trumpet, flugelhorn Richard Adrian Steiger table, dymbek, riq, percussion
Natalie Nichole Gilbert lead vocals Denise Gilbert spoken vocals
Howie Gano piano, string synth Stephanie Dale piccolo
Will Stewart trumpet Pam Thompsom tuba, euphonium, trombone

  2004 年発表の第八作「Pardon Our French!」。 内容は、管楽器、弦楽器、打楽器などなど多彩な音色をふんだんに使った、ややレコメン色もあるジャズロック。 安定した演奏力のある、真面目なコミック・バンドであり、たとえるならば律儀な SAMLA である。 シニカルでユーモラスなのに、まろやかではにかむようなデリカシーの感じられる、すてきな音楽だ。 アナログ・シンセサイザーの音があたかもプログレ王道を訴えるかのごとく効果的に散りばめられている。 圧巻は、3 曲目「The "Pardon Our French!" Medley」、フランス・プログレ・バンド総覧メドレーである。 いきなり ANGE で、PULSAR やら ATOLL も出てきます。 普通のアメリカ人はフランスのことなどほとんど知らないですが(Looney Tune のペペルピュをご覧なさい)プログレ好きは音楽を通して他の国のカルチャーを、きわめて限定的ではあるものの、正しく理解できるのである。 カレージ風の録音ももはや立派な特徴である。
  
   1 曲目「Everything Works In Mexico」は、シンセサイザーとアコースティック・ギターのシリアスなラテン(チカーノ?)・タッチが印象的な作品。

   2 曲目「Sekala Dan Niskala」は、マリンバやらギターやらが変拍子テーマを織り成すチェンバーロック風の作品だが、旋律がアラビア風なためあまり聴いたことのない雰囲気の作品になっている。

   3 曲目「The "Pardon Our French!" Medley」。
      ANGELa bataille du sucre」(「Au-dela du delire」収録)、
      PULSARTired Answers」(「Halloween」収録)、
      SHYLOCKLaokcsetal」(「Ile De Fievre」収録)、
      CARPE DIEMPubliphobie」(「En Regardant Passer Le Temps」収録)、
      SHYLOCKLaokcsetal」(「Ile De Fievre」収録)、
      ATOLLTunnel Pt. 2」(「Tertio」収録)、
      CARPE DIEMPubliphobie」(「En Regardant Passer Le Temps」収録)、
      ETRON FOU LELOUBLANYvette's Blouse」(「Batelages」収録)(バンド名も曲名もジャケットの綴りが間違ってるぞ)のメドレー。

   4 曲目「Tears Of A Velvel Clown」は、サーカスをイメージしたようなトイ・ミュージック風のサウンドを使った作品。愛らしい音を使いながらけっこうシリアスな展開を繰り広げる。特に後半はなんだか思いつめた果てに転落していくような、カタストロフィックなイメージである。 オールドフィールドもあると思う。ウォーレン・デイルという人とは趣味が合いそうです。

   5 曲目「When The Ruff Tuff Crempuffs Take Over」は、イメージ通りのバカ・レコメン・ジャズロック。クラシカルなキーボードが昔のプログレ風でいい。

(PDR CD007)

 After A Lenghthy Silence

 
Mike Sary bass Fenner Castner drums
Artie Bratton guitar Tom Browing guitar solo on 2,3,4,5
Mark Miceli little bent harmonized note on 2 Bill Fowler keyboards on 3, piano on 5,6
Bob Ramsey keyboards on 4 Paul Nevitt keyboards on 6
Clancy Dixon sax on 1,2,3,4,5, clarinet on 5 Bruce Krohmer 1st sax solo on 5, bass clarinet on 5
Rick Debow flute on 5 Bob Douglas vocals on 7

  87 年発表の第二作「After A Lenghthy Silence」。 内容は、ユーモラスでメロディアスなテーマに変拍子を交えたインストゥルメンタル・ロック。 毒気もテクニックもさほどすごくはないが、軽やかで小粋なところとユーモアと生真面目さの巧みな使い分けが特徴だろう。 技巧の切れそのものよりも、明快にしてヒネリのあるテーマを巡ってさまざまなフレーズやアンサンブルを積み上げてゆくスタイルであり、いわゆるジャズロックというよりは 70 年代のプログレッシヴ・ロックのインスト・パートに近いように思う。 もっとも、重厚なテーマ性よりもユーモア優先であり、超絶テクニックお披露目にもさほど興味なしということで、往年の観念肥大型プログレや体育会系フュージョン/ジャズロックのどちらからも、かなり距離があるようだ。 前半はギター、サックス中心のタイトなロック寄りジャズロックであり、キーボードが加わった後半はそこへミステリアスな展開やシンフォニックな展開を交えている。 さすがに現代のグループらしく、70 年代プログレに憧れつつも、それ以降のさまざまな音楽のバック・グラウンドを作曲・演奏に活かしてはいるようだ。 しかし、なによりアカデミックな小難しさやマス・プロ的な冷ややかさよりも、ロッカーとして反骨精神がちゃんと見えるところがカッコいいのである。 結局、現代においてプログレ的イディオムを用いてオルタナティヴなマインドを貫き、なおかつ手強いアマチュアとしてのスタンスを維持する、ユニークなグループなのだろう。 テクニックそのものを意識させずにユーモアたっぷりの表現でメロディアスに聴かせるところは SAMLA MAMMAZ MANNA 、一転してシリアスなシンフォニック調は、サックスの存在のせいもあって歌のない VAN DER GRAAF GENERATOR といった趣だ。 細身ながらもつややかな音と敏捷な動きを見せるサックス、ソロを担当するギターはなかなかの腕前だ。 問題はこういう「狭間」の音は、フュージョン・ファンには「いま一つ」、シンフォニック・ロック愛好家には「変」、シリアスなニュー・ミュージック派には「新しくない」と評価され、メジャーなファン層からは見放されがちということ。 ジャンルにとらわれない貴方のような優れた耳の持ち主への贈り物とお考えください。 最終曲は、CD のみのボーナス・トラックであり NEKTAR の大作「A Tab In The Ocean」のカヴァー。 やや低音部が弱い録音やチープなキーボードの音など、自主制作特有のノリも含めてその根性を堪能すべし。

  「One Of The Jones Boys」(3:14)
  「You Fool! You Broke The Yolks!」(4:23)
  「Friendly Enzymes」(6:22)
  「...And The Dead Dog Leaped Up And Flew Around The Room」(6:58)
  「Go Like This」(12:53)終盤の熱い混沌が VdGG を思わせる。傑作。
  「Vacilando」(9:27)
  「A Tab In The Ocean」(15:09)ドイツのハードロック・グループ NEKTAR ののカヴァー。

(MMP307)

 Virtue In Futility

 
Mike Sary bass, bass pedal, tapes Ferner Castner drums
Paul Nevitt, Bob Lamsey keyboards Dean Zigoris, Artie Bratton guitars
Reid Jabn WX7 wind synth, sax Gretchen Wilcox violin
Jon Encifer piano Bruce Krobmer sax, clarinet
Richard Brooner trumpet Howie Gano scream, spastic keyboard solo

  94 年発表の第三作「Virtue In Futility」。 内容は、YESGENTLE GIANT を思わせる 70 年代プログレ王道的な演奏に、ジャズ/フュージョン・タッチやユーモラスでアヴァンギャルドな展開を盛り込んだ、技巧的なシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 通常の 4 ピースにサックスやヴァイオリンのゲストを迎えた編成は、ほぼ前作と同じだが、クラシカルなアンサンブルや攻め立てるようなハモンド・オルガンなどが現れて、英国大物バンドの名作そのもののような世界を作り上げている。 「その筋」には大いに受けそうなサウンドだ。 演奏は、ギターを中心になかなかテクニカルなのだが、親しみやすいテーマを巡ってユニークなアンサンブルが繰り広げられる展開が主であり、やはり個人プレイ主導型ではない。 メカニックよりも、しっかりとした曲想とロックの基本であるシンプルなカッコよさに重心があるところも、前作と同じであり、こういうスタンスも往年の英国本流に通じている。 リリカルな場面の語り口の自然さに、特にそのうまみが現れている。 単に技巧的なだけなら、リラックスした YES や、今風の音を使った GENTLE GIANT といったイメージは浮かんでこないはずだ。これにドギツク土臭いユーモアが加わると SAMLA であり、さらに演奏に切れが増せばフランク・ザッパのジャズロック作品にも迫る。 一方 4 曲目のようなインプロヴィゼーションでは、ジャズ的な逞しさと俊敏さもしっかりと見せている。 ライナーノーツや曲のタイトルのくだけ方とは完全に裏腹な、高品位の音楽に思わずニヤリだ。 SE 風のヴォイス以外は、インストゥルメンタル。 サウンド・プロダクションこそさほどお金はかかってなさそうだが、楽曲/演奏には風格すら感じさせる。 特にギタリストは相当な腕前。 最高傑作でしょう。

  「Hey! Real Executives Jump From The 50th Floor!」(6:00) 凶暴な KING CRIMSON 風のギターで幕を開けるも、途中から一気に YES 風の懐かしくもカッコいいシンフォニック・ロックへ。 特にギターの手癖、クラシカルなピアノを披露するキーボードはかなり意図的。 テクニカルなギターのリードするジャズロックと YES がこんがらがる様子が面白い。 ニュー・エイジ・テイストまで見せるなど、パロディ精神旺盛。 CRIMSONYESEL&P までサービスする傑作である。

  「Clanghonktweet」(6:39) 8 分の 6 拍子によるクラシカルな第一テーマと 4 分の 4 拍子による第二テーマをめまぐるしく駆け巡るフォーク・ダンス調のクラシカル・ロック。 ヴァイオリン、シンセ管楽器が使われる。 おもちゃみたいなピアノとヴァイオリンのピチカートなどユーモラスな表情がある。 緩やかなテンポでゆったりと歌うパートが美しい。

  「The Family That Oonts Together, Groonts Together」(7:41) マリンバのようなキーボードとつまづきそうな変則リズムが特徴的な作品。 凶暴なギターはザッパを真似るホールズワース。 ここでもトランペットをフィーチュアしたスロー・パートが活かされている。 どことなくヒゲダンスに似てます。

  「I'm Whining For That Funky Baby Of Mine」(6:20) IN CAHOOTS などカンタベリーの現在形に近いジャズロック。 即興演奏でありサックスの存在感大。

  「Empate」(7:48)モダン CRIMSON 的なギターと場末エロティック系トランペット(ニニ・ロッソか?)というミスマッチが冴えるテクニカル・ナンバー。 ギターのアーミングによる奥行きあるバッキングがいい感じだ。 中盤からはまずギター・ソロで見せ、後半は分厚いシンセサイザーが高鳴る。

  「Friends In High Places」(8:00) ニュースや演説、爆音などを SE として散りばめ、パーカッションがアクセントをつけるミュージック・コンクレート作品。 政治色濃いプロテスト調のコラージュとともに打撃音を多用したサウンドも衝撃的。

  「Slowly I Turn...Step By Step...Inch By Inch」(12:15) シリアスで強圧的な大作。 ヘヴィな展開にもかかわらず、サウンドにドリーミーなフュージョン・タッチがあるところが HAPPY THE MAN を思わせる。 終了後ポーズを経てドラムンベースとオッサンたちが胴間声を張り上げるコーラスによる演奏が現れる。 なんじゃこりゃ。

(PDR CD001)

 Violence Of Amateurs

 
Mike Sary bass, percussion Dean Zigoris guitars, keyboards, percussion, g-synth, Ye-olde synth, noise, vocals
Bob Douglas drums Brian Donohoe drums, organic noise on 6
Jon Encifer keyboards John Robinson keyboards, 1/4 Jack noise
Eugene Chadbourne banjo on 1 Greg Acker flute, sax, The Hawaiian nose flute, percussion
Steve Good sax, clarinets Steve Aevil tenor sax solo on 2
Cathy Moeller violin on 4 Chris Vincent drums, vocals, percussion, popsicles
Kirk Davis vocals, percussion, unbridled ehthusiasm

  99 年発表の第六作「Violence Of Amateurs」。 録音/サウンドがぐっとグレード・アップした作品。 いわゆるシンフォニック色は少なく、緩急硬軟激変する込み入ったアンサンブルで元気にたたみかける陽性シリアス・ロックである。 変拍子で強圧的に攻めるパートとすっと抜くパートの呼吸が絶妙。 全体に管楽器の存在感が大きい。 4 曲目「Mail Order Quarks」は名作。 5 曲目「Tiger Tea」もユーモラスなフレーズと疾走感、そしてくるくると変わる曲調がたまらない。 オモチャ箱をひっくり返したような演奏と思ったら、最終曲はなんと SAMLA の大作「The Fate」のカヴァー。 今回も戦費削減を謳っております。

  「The Kokonino Stomp」(4:42)
  「The Secret Life Of Walter Riddle」(8:14)
  「The Odessa Steps Sequence」(8:42)
  「Mail Order Quarks」(10:27)
  「Tiger Tea」(12:13)
  「Joosan Lost/The Fate」(21:40)

(PDR CD004)

 The Case Against Art

 
Mike Sary bass, percussion Warren Dale keyboards, woodwinds, sax, recorder, clarinet
Chris Vincent drums Chris Smith guitar, violin, banjo, mandolin
Greg Acker flute, sax Dean Zigoris guitars
Cathy Moeller violin Cliff Fortney vocals, flute, recorder
Shawn Persinger acoustic guitar Kirk Davis percussion
Karen Hyer soprano Steven Dale trumpet, euphonium
Pam Thompson tuba

  2001 年発表の第七作「The Case Against Art」。 内容は、相変わらずの自由闊達なジャズ・ロック・インストゥルメンタル。 オムニバス調の作風を活かした、ユーモラスで変幻自在、余裕シャクシャクの演奏である。 変拍子脱力ジャズロックから、奇天烈ハードロック、フルートとなめらかなシンセサイザーを活かした HAPPY THE MAN 風のファンタジック・フュージョン、YES を思わせる爽快にして込み入ったシンフォニック・ロックなど、全体にプログレ度はかなりアップ。 おもちゃ箱をひっくり返したような、という表現はよく目にするが、この作風は、ひっくり返ったおもちゃ箱から飛び出したおもちゃがそのままサルサを踊っているような感じである。 そして、フランク・ザッパのようにファンキーに盛り上がるバックでメロトロンが高鳴るなど、予想を覆す展開も多い。 また、今回は、透き通るような叙情性をもつ演奏での表現力にも驚かされる。 シリアスさとユーモアを矛盾なく併せ持つ稀有のグループなだけに、末永く活躍していただきたい。 一つ興味深いのは、ジャズやクラシックといった主流の音楽そのものへの直接的な依拠性があまり感じられないことだ。 アメリカのグループは、スウィング・ジャズ、ゴスペル、R&B、ファンク、モダン・クラシック、ブルーズ、フォーク、ブルーグラスといったルーツを感じさせることが多いのだが、このグループの作品にはそういう「体臭」がない。 ジャズロックというレッテルは、それが一番無難な範疇分けという程度のものに過ぎない。 間違いないのは、プログレ・ファンである、ということぐらいだ。("File under progressive rock!" というやつですな) この点でも、HAPPY THE MAN と類似した音楽的体質をもっていると思う。
   メンバーは、元 INFINITY のキーボーディストや 元 BOUD DEUN のギタリスト、そして HAPPY THE MAN のオリジナル・ヴォーカリストなど、さながら北米プログレ同窓会の趣が。 最終曲も、HTM のパロディのようでいて、濃い目のアンサンブルをくるくる変転する曲調で仕上げた傑作。 そして、毎度楽しみなスリーヴの内容ですが、今回も期待を裏切らずおバカさんです。
  
  「That Thing On The Wall」テクニカルかつユーモアあふれる変拍子シンフォニック・フュージョン・チューン。 風格を感じさせるオープニング、そしてスタジオ・ライヴ風の録音。

  「Visible Tissue Matter」フルートを使った叙情的なアンサンブルとヘヴィ・ジャズロックが一つになった大作。

  「Partly The StateHTM の初期作品(Cuneiform レーベルからの発掘作「Beginnings」に収録)。ヴォーカル入り。GENTLE GIANT の影響大。 プログレ者のツボのど真ん中を射抜く。

  「One Humiliating Incident After Another」 管絃楽器を交えた現代音楽風味、SAMLA 的な骨折ジャズロック、フォーク・テイストが入り混じる、オムニバス風の作品。 1 曲目をさらに豊かに緩やかにした感じ。

  「Under The Big 'W'

(PDR CD006)


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