フランスのマルチ・インストゥルメンタリスト「Patrick Forgas」。 SOFT MACHINE にインスパイアされて活動を始め、77 年デビュー。 80 年代は沈黙し 90 年代に MUSEA の配給で復活。 サウンドは、カンタベリー・ジャズロックを基本にフランス人らしい本格的なジャズやポップ・ミュージックを交えた個性的なもの。 「フランスのロバート・ワイアット」。
| Patrick Forgas | drums, vocals, percussion, guitars, orgue d'enfant, boite a musique, bass, synthesizer |
| Jean-Pierre Fouquey | keyboards |
| Laurent Roubach | electric guitar on 1-4,6-8,10 |
| Gerard Prevot | bass on 1-8,10 |
| Patrick Tilleman | violin on 1,2,10,12 |
| Patrick Lemercier | violin on 1,3,4,6,21 |
| Francois Debricon | sax & flute on 2,3,7,9,18 |
| Bruce Grant | sax on 10 |
| Dominique Godin | keyboards & sax on 11 |
| Didier Thibault | bass on 11 |
77 年の第一作「Cocktail」。
初の作品にして代表作。
MAGMA 人脈含めフレンチ・ジャズロックの大御所を交え、独特のオプティミズムとポップ・テイストを発揮したカンタベリー風の傑作である。
旧 A 面は軽妙洒脱な小品集であり、旧 B 面は Forgas 氏の名刺代わりの代表曲「My Trip」である。この大作は、スペイシーな音響とアグレッシヴな変拍子ビートが目くるめく展開を繰り広げるカンタベリー・ジャズロックの大傑作である。
ボーナス・トラックは 11 曲目以降。
ジャケットは再発 LP のもの。
(MUSEA FGBG 4758)
| Patrick Forgas | synthesizers, vocals, rhythm programming |
| Patrick Tilleman | electric violin |
| Didier Malherbe | Wind Synth |
| Jean-Pierre Fouquey | keyboards |
| Laurent Roubach | electric guitar |
90 年の第二作「L'Oeil!」。
内容は、デジタルなサウンドを駆使したサイケデリックなジャズロック。
テクノなダンス・ビートとキーボード、ヴァイオリンらのけばけばしいエレクトリック・サウンドをイコライジングしたニューウェーヴ風ヴォーカルが貫く、クールで洒脱な音楽である。
カンタベリーを故郷としつつも、時代の音にも目配り怠りない。
いわゆる「フュージョン」といっていい面もあるのだが、決定的に異なるのは、過剰に華美なサウンドとそこから立ち上る猥雑で耽美なタッチ、さらに変拍子反復ビートによる酩酊効果である。
シンセサイザーは、ドラムスとともにデジタル・サウンド特有のチープさを加味しつつも華やかでグラマラスなシーケンス、ループを構成し、エレクトリック・ヴァイオリンは、スピード感と流れるようななめらかさを演出、ギターは、ロックギターらしいオーソドックスなプレイで全体に浮つき気味の音の芯になっている。
このギターの存在は、本作品がプログレ、ジャズロックというくくりにあるための重要なファクターである。
もちろんシンセサイザーもバッキングだけではなくソロ・パートでも活躍している。
選任キーボーディストによるソロはかなりカッコいい。
また、ドラムスは本人のプレイだと思うが、打ち込みも併用しており、強靭なデジタル・ビートが基本である。
ファルセットを使うヴォーカル・スタイルは、間違いなくワイアットを意識している。
眩暈のしそうな色彩感あるサウンドやオーソドックスながらも安定した技巧のあるギターなど、GONG に通じる面もある、と思っていたらデディエ・マレルブがしっかり MIDI Wind で参加して、エキゾティックなアクセントを付けている。
他のメンバーが 10 年以上前の「Cocktail」のときと大きくは変わらないところからして、Forgas 氏の音楽性に大きなブレはないようだ。世が彼のセンスに追いついたというべきか。
エレ・ポップ風ジャズロックというユニークな境地を開発した佳作である。
アルバム・タイトルは、ジャケット通り、「目」。
また、本アルバムは、ロバート・ワイアットに捧げられている。
プロデュースは、アラン・ジュリアックと本人。
「Secrets Du Tzar」(4:37)
「Machine A Bruit」(5:12)テクノなエレポップ風の秀作。後半ギターが独走する。
「Jazz A La Tronconneuse」(4:55)ジャジーなエレアコギター、ヴァイオリンが見せ場をつくる。
「Bouffe Industrielle Comedie」(6:08)
「Travlo Bird」(4:57)
「Magic Decadence」(5:08)
「Paris Circus Band」(4:54)
「Electro-Shirt」(4:37)
「Regard Interieur」(5:23)
「My Trip」(6:28)ボーナス・トラック。FORGAS のトレードマークとなる初期作品。
「ZE(Medley)」(9:45)ボーナス・トラック。
(MUSEA FGBG4016.AR)
| Patrick Forgas | synthesizers, vocals, rhythm programming, drums |
| Jean-Pierre Thirault | saxes on 1,2,3,4,5,6 and clarinet on 4 |
| Jean-Pierre Fouquey | piano on 2 |
| Jean-Claude Onesta | trombone on 3,5 |
| Francis Debricon | flute on 5 |
| Lionel Duran | acoustic guitar on 6 |
| Ron Meza | trumpet on 8 |
| Roger Deroeux | synthesizers on 9 |
93 年の第三作「Art D'Echo」。
内容は、ジャジーな管楽器をフィーチュアしたダンサブルなエレクトリック変拍子ジャズロック。
テクノ・ポップ、サイケ・タッチをふんだんに取り込んだ、スタイリッシュでけばけばしい音である。
タイトル通り、ゴージャスさの中に、独特の、キッチュで退廃したムードもある。
本人は、今回も人力/打ち込み両ドラムスと派手なキーボード、ヴォーカルを担当、ドラムスが本職なだけに変拍子や機敏なリズム・チェンジも積極的かつ、楽曲にフィットする形で自然に取り込んでいる。
クールな 7 拍子のボサノヴァなんてなかなかない。
前作では、ギターとエレクトリック・ヴァイオリンがフィーチュアされていたが、今回はゲストによる種々の管楽器の存在が音楽的なキーとなっている。
ゴージャスでグラマラス、なおかつキレもあるエレクトリック・シーケンスをバックに、アナログな息遣いのある管楽器が、時になめらかに、時にパワフルに、また時に切々と歌心を発揮している。
サックスのジャジーなソロとデジタリーなシーケンスという組み合わせはかなり珍しく、けたたましくメカニカルなループと管楽器によるレガートでメロディアスな表現のコントラストは、本作品の鑑賞のポイントとなるだろう。
本作品は、アンドレ・ブルトンに捧げられている。傑作。
「Revolte」(4:28)テナー・サックスをフィーチュア。
「1920-1930」(4:36)前半はキーボード・アンサンブルによるややシリアスなインストゥルメンタル。中盤からはスペイシーなソプラノ・サックスをフィーチュアした変拍子ジャズロックとなる。
「Fakir」(4:40)ファンタジックなシンセサイザー・アンサンブルとデカダンなヴォイス。
デディエ・マレルブを思い出させるメランコリックなソプラノ・サックス・ソロ、トロンボーンをフィーチュア。
エンディングのリズムレス・パートは、すわメロトロン?と思わせる展開。
「Plus Fragile Qu'une Poubelle」(6:06)5 拍子、3 拍子のリフで攻めるパワー・チューン。基本は 5 拍子。
爆発的なサックス、クラリネットをフィーチュア。フリージャズ的高揚をクラシカルなアンサンブルで受けとめる、リズムレス・パートの暗鬱なロマンチシズムなど、プログレ的興奮度は高い。
ヴォーカルはワイアットによく似ている。
「Cache Ta Peine」(5:00)レコメン系カンタベリーの佳作。クールなフルートが活躍。後半は、スキャット、フリーキーなソプラノ・サックス、トロンボーンをフィーチュアし、けだるく迫る。5 拍子。
「Bossa Bergolia」(4:45)4+3 拍子のボサノヴァ調ジャズロック。序盤でアコースティック・ギターをフィーチュア。明快なテーマが心地よい。後半は、テナー・サックス・ソロをフィーチュア。全編通じてシンセサイザー・ベースが適切な絡みを見せる。
「Metapsychique」(4:04)大胆なブレイク、ストップを多用した、ポップな 7 拍子ジャズロック。
ギターも使用している模様。
明るい HELDON。
「Passe A Ton Vision」(8:26)マイルス風のトランペットを大きくフィーチュア。
挑発的なトランペットをキッチュなデジタル・シーケンスが取り巻く、スペイシーかつスリリングな「デジタル・クロスオーヴァー」。
悠然と広がる終盤の展開がプログレ的。
「Poltergeist」(5:25)ドラム・ソロ+シンセサイザー。
録音クレジットがここまでの作品と異なるので、ボーナス・トラックか。
ボーナス・トラック「My Trip」(19:20)
77 年録音の第一作「Coctail」より。
(MUSEA FGBG4074.AR)
| Patrick Forgas | drums |
| Mathias Desmier | guitar |
| Juan-Sebasitien Jimenez | bass |
| Gilles Pausanias | keyboards |
| Denis Guivarc'h | sax |
99 年の作品「Extra-Lucide」。
FORGAS BAND PHENOMENA 名義の第二作。
内容は、NATIONAL HEALTH を祖に Hugh Hopper や Pip Pyle、INCAHOOTS、EARTHWORKS など近年におけるカンタベリー系作品の一脈につながるジャズロック。
70 年代のカンタベリーのスタイルを継承しつつ、すべてのパートにおいて演奏技術をアップグレードしたようなパフォーマンスである。
明快なテーマを時にさりげなく時に果断に変拍子で支える作風を基本に、いわゆるジャズ、ジャズロック的な音だけではなく、ハードロックやシンフォニックなプログレに迫るような表現も盛り込まれている。
サックスは、女性的というか独特の細身の音ではあるがフレーズを歌える名手であり、機敏にアンサンブルの前面を守る。
フリー・ジャズ的な表現よりも、モダン・ジャズ系、それもメローな表現が主である。
ただし、音色のせいかプレイがやや一本調子に感じられる。
ギタリストは現代的な超技巧の持ち主であり、アラン・ホールズワースを思わせるへヴィ・ディストーションによるレガートな速弾きからフィル・ミラー風の毛羽立ったプレイまでを適宜放ってくる。
HM 風のパワーコードやファズをかけたアルペジオなど、最初は意外に聴こえるところも、すぐに往年のカンタベリーのモダンなデフォルメと分かる。
キーボーディストは基本的に裏方に回っているが、出るところでは出てしっかりと目立っている。
キレのいいオルガンがうれしい。
音色がチープなのは何かを狙ってのことかそれとも経済的事由か。
何にせよ叙情的でシンフォニックなテイストは、このキーボードのプレイが担っている。
主役のドラマーは、オーソドックスにしてアンサンブルをゆったり支える名手。
全体に新奇な感じはないが、がっちりした運動性と意外な小技が利いていて、楽しく聞ける作品である。
なお、Forgas 氏は 20 世紀の初頭のパリに強く惹かれていて、本作品も、パリにある巨大観覧車(前作や三作目のカヴァーに使われている)の下で行われるお祭り(縁日?)からインスパイアされているそうだ。
「Extra-Lucide」(7:05)5 拍子や 7 拍子で力強く進むアッパーなジャズロック。
変拍子リフに加えて、適度にキャッチーなテーマや歪んだギターなどカンタベリー丸出し。
ジャンルにこだわらずさまざまな種類の音を放り込むところが、プログレッシヴであり、フュージョンである。
スキャットがあってもよかった。
「Rebirth」(5:24)メローなサックスを 6+3 拍子のリフで支える。歪んだような優美さ。
「Pievre A La Pluie」(19:24)スペイシーなキーボードとギター、溌剌と躍動する表現とへヴィな音、メランコリックな表現を目まぐるしくゆきかう、ある意味サイケデリックなソロ合戦大作。メローなサックス(中盤のソロではなぜかコルトレーンと化すが)のベールを取ると、往年のプログレがそのまま現れる。時おり現れる幾何学的なパターンを描くようなアンサンブルが、いかにもカンタベリーの子孫らしい。
「Annie Reglisse」(8:35)メロトロン風ストリングス・シンセサイザーが耳を惹きつけるシンフォニックなジャズロック。得意のなじみやすい変拍子テーマ。全体にシンセサイザーの音がいい感じだ。芸風は異なるが、MINIMUM VITAL と同じく「憧れ」の音を追いかけている。
名曲。
「Villa Carmen」(4:58)ピアノ、サックスによる格調高いクラシカルなデュオ。
Forgas 氏によるこういうチェンバー風の作品ももっと聴いてみたい。
(CMPL 002)
| Patrick Forgas | drums |
| Sylvain Ducloux | guitar |
| Igor Brover | keyboards |
| Kengo Mochizuki | bass |
| Frederic Norel | violin |
| Stanislas De Nussac | tenor & soprano sax |
| Denis Guivarc'h | alto sax |
| Sylvain Gontard | trumpet, flugelhorn |
2005 年の作品「Soleil 12」。
FORGAS BAND PHENOMENA 名義の第三作。
内容は、ヴァイオリン、サックスによるふくよかでメロディアスなテーマを中心にしたジャズロック・インストゥルメンタルであり、ライヴ録音のようだ。
華やかな音色のヴァイオリンや管楽器が前面でアンサンブルをリードする。
ただし、テンポ、リズムを変化させた多彩なアンサンブル構成や反復パターンが交錯するようなミニマルっぽい展開もあり、フュージョンではなくプログレ、というスタンスの片鱗を随所に見せている。
管楽器もヴァイオリンも、ソロを振られたところでは、思い切り自由な発想で溌剌と音を放っている。
トランペットが高鳴って、ギターとベースが唸りをあげると、空気が 70 年代初期の英国ジャズロックと同じ色になってくる。
他にも、ナチュラル・ディストーションでレガートに高速プレイを決めるギタリスト、オルガン、エレピを軽やかに操るキーボーディストなど、テクニシャン達が短くもピリッとしたプレイを散りばめてくる。
全体に演奏には余裕がある。
中心になる 34 分の超大作では、その技巧を活かした躍動感あるアンサンブルを披露するが、いわゆるジャズのアドリヴ合戦ではないストーリー性が強く感じられる。
カンタベリーのエッセンスをつかんだ Forgas 氏の作曲力に敬服だ。
イージー・リスニングのように明快なテーマながらも、知的でどこか捩れたセンスを感じさせるところは、EARTHWORKS に近いと思います。
(RUNE 218)