オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「FINCH」。 74 年ハーグにて結成。 75 年から 77 年に三枚のアルバムを残す。 サウンドは、パワフルなギターがグイグイと引っぱる明朗なシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。 ブルース・ロックやクラシックを基にした明快なメロディ・ラインが特徴。 99 年発掘音源が発表された。 グループ名は、くちばしが食い違っている鳥、イスカのこと。 時代と自らの音楽を鑑みた冷静な自己分析でしょうか。
| Joop Van Nimwegen | guitars |
| Peter Vink | bass |
| Beer Klaasse | drums |
| Cleem Determeijer | keyboards |
75 年発表の第一作「Glory Of The Inner Force」。
10 分あまりのインストゥルメンタル大作四つから構成される。
芯の太い明確な音色のギターとカラフルなキーボード、そしてタイトなリズム・セクションによる、情熱あふれる演奏である。
いわゆるプログレ的な緻密さや構成美よりも、いくつかのテーマを用意して勢いで押し切ってゆくタイプの演奏だ。
随所に現れる親しみやすいギターのフレーズのおかげで、曲が明快で聴きやすいものになっている。
ときに歌謡曲や演歌を思わせるような、ストレートな泣きのフレーズが飛び出してくる辺りは、いかにもオランダ風といえるだろう。
この人懐こいフレーズと各パートの呼吸のよさが、彼らの音楽の肝である。
一見ラフに思える演奏は、スタジオ・ライヴのニュアンスに近く、荒っぽいというよりはライヴな力強さとノリのよさを感じさせる。
豪快な演奏のようでいて、ハードロックのようなストレートな押し切りやベタな泣きメロよりも、ジャジーなニュアンスが強いところが面白い。
圧倒的な存在感をもつギターに加え、オルガン、メロトロン、エレピなど多彩なキーボードとせわしなく走り回っては変拍子も難なくこなすリズム・セクションは、明かにプログレッシヴ・ロックのフィールドのものである。
同じようなタイプのグループはすぐには思い当たらないが、強いていうならばギターのブルース・フィーリング、ギターとキーボードの応酬など、初期の YES と CAMEL の中間くらいをイメージすると近いかもしれない。
ギターとキーボードがユニゾンやハーモニーで一体となって駆け出してゆくところが、この作品の見せ場といえるだろう。
またギターはアタック強くバリバリ弾きまくる(写真を見るとピックではなく指弾きのようだ)いわば「饒舌」スタイルであり、暖かみのある太い音色も合わせて考えると同国の FOCUS のヤン・アッカーマンが思い当たる。
アッカーマン同様ヴァイオリン奏法やアコースティック・ギターもこなすニムヴェーヘンのセンスたるや、なかなかのものである。
またギター並に弾きまくるベースと破天荒なオルガンはクリス・スクワイアとトニー・ケイを思わせる。
思わず口ずさんでしまうメロディで小気味よく押し捲る、その痛快さこそ本作最大の魅力だろう。
明るく楽しくちょっぴり泣かせる理想的なエンタテインメントである。
作曲は全てギターのニムヴェーヘン。
プロデュースはロイ・ベルトマン。
ボーナス・トラックは同年のシングル盤。
各曲も鑑賞予定。
「Register Magister」(9:22)
「Paradoxical Moods」(10:43)
「Pisces」(9:29)
「A Bridge To Alice」(13:13)
「Colossus Part1」(3:28)ボーナス・トラック。
アルバムとともに出されたシングル盤より。
このグループらしさを前面に出した傑作。
エゲツナイまでにクサいプレイで押し捲りますが、なかなかカッコいい。
「Colossus Part2」(3:36)ボーナス・トラック。
前曲の B 面。
軽快なリズムの上でギターとオルガンがやんちゃなバトルを見せる。
それでも全体にクラシカルでなめらかな聴き心地あり。
最後は A 面の主題へと回帰。
(PSEUDONYM CDP-1011)
| Cleem Determeijer | organ(Hammond L100), Mellotron, grand piano(Steinway) |
| electric piano(Wurlitzer), synthesizer(ARP Axxe), Solina string-ensemble | |
| Beer Klaasse | drums(Gretch) |
| Joop Van Nimwegen | guitars(Gibson Les Paul-custom), acoustic guitar(Martin D35) |
| Peter Vink | bass(Rickenbacker), bass pedal(Moog Taurus) |
76 年発表の第二作「Beyond Expression」。
大作指向は極まり、遂にアルバムは全三曲のみの構成となる。
再び全曲インストゥルメンタルであり、20 分を超える超大作も現われる。
この大作は、前作で提示された押し捲りのプレイ・スタイルに加えて「引き」のパートも充実した、非常に映像的なドラマをもつ内容になっている。
ギター・プレイの「泣き」と小気味良さはそのままに、リズムレスの「静」の部分を用いてコントラストを強めて構成の妙を発揮している。
ギターは、ややジャジーでメローなプレイも加えて表現に幅をつけている。
またキーボードは、ストリング・アンサンブルとシンセサイザーの音が新鮮だ。
軽快なテーマを奏でるアンサンブルは、華やかでスピード感あふれる演出をさりげない変拍子でこなしている。
今聴くとかなりジャジーなのだが、この後流行する「フュージョン」ほどはダラダラ感がなく、タイトで小気味がいい。
この流れの作品がもっともっと発掘されてほしいと思う。
2 曲目は、ヘヴィなギター・リフによるロックンロール調のサウンドにシンセサイザーがアクセントをつける作品。
ここでもアルペジオとエレピを巧みに用いた、ジャジーな静寂の場面の存在がドラマ性を高めている。
3 曲目はヤン・アッカーマン風のメロディアスなプレイによるロマンチックな作品。
アコースティック・ギターや ARP シンセサイザーの音が新鮮だ。
そして息を呑むピアノ・ソロの美しさ。
音的には最もこなれた曲である。
「Relayer」期の YES を髣髴させるスピーディなアンサンブルにジャジーなテイストを盛り込んだ演奏は、70 年代中盤のプログレッシヴ・ロックの典型の一つといえるだろう。
作曲はニムヴェーヘン。
プロデュースはロイ・ベルトマン。
CAMEL のファンにはお薦め。
「A Passion Condensed」(20:05)
「Scar On The Ego」(8:51)
「Beyond The Bizarre」(14:24)
(PSEUDONYM CDP-1015-DD)
| Joop Van Nimwegen | guitars, cabasa |
| Peter Vink | bass, cow-bell |
| Hans Bosboom | drums, percussion |
| Ad Wammes | keyboards, flute |
77 年発表の第三作にしてラスト・アルバム「Galleons Of Passion」。
キーボードとドラムスがメンバー交代。
心地よいナチュラル・ディストーション・トーンによるメロディアスかつハードなアッカーマン・スタイルのギター・プレイは健在なるも、テクニカルなキーボーディストの嗜好かプロデューサーの作戦か、全体にややジャズ/フュージョン色が強まる。
ソフトでメローな印象は、一つには、オルガンからストリングス・シンセサイザーへの音質の変化にもよるのだろう。(CAMEL でいえば「Moonmadness」を初めて聴いたときの印象に近い)
1 曲目のオープニングのムーグや続くメローなギター・ソロは新境地、というかこの時代の先鋭的なミュージシャンによく見られるスタイルの変化である。
それは、コンセプト中心の「固い」演奏や情熱のほとばしるままの弾き捲くりジャムから、ふっ切れたようなリラックスした音への変化だ。
いわゆるクロスオーヴァー的な音は、その出発点で 60 年代中盤のフリー・ジャズの袋小路からシーンを解き放ったばかりでなく、70 年代中盤には硬直化したプログレをも救ったことになる。
やはり、ジャズ・フュージョンこそ究極の音楽なのだろうか。(余談)
ジャジーにしてファンタジーの色濃いキーボード・プレイとしなやかに歌うギターによるロマンティックなサウンドは、FOCUS と同系統ながらも、亜流などとは決していえない堂々たるものだ。
メローな感触もフュージョン期の CAMEL と同等であり、「濃さ」という点ではそれ以上だろう。
さらに、構成面での気配りもかなりのものだ。
テクニカルに攻めたてる部分と、ミドル・テンポで歌い上げるような部分のメリハリは、非常に明解である。
後半の複数部構成からなる組曲では、勢いまかせの今までのプレイを集大成し、まとめ直したような高度な構築性も感じさせる。
それでも、一番の魅力は、朗々たる歌のようなギターのパッセージが、そこかしこにあふれていることだろう。
特に 3 曲目のギターの表現力は今までで一番ではないだろうか。
4 曲目の組曲でも、中盤のギター・ソロに魅せられる。
完成度では一番の作品だろう。
プロデュースはサンディ・ロバートソン。全曲インストゥルメンタル。
「Unspoken Is The Word」(7:52)キーボード、ギターのソロが続く叙情的な大傑作。
SEBASTIAN HARDIE にも通じるロマンティシズムと暖かみがあり、広い地平線の夕暮れをイメージさせるような、大いなる包容力を感じる作品である。
朗々と歌い上げるギターがすばらしい。
ニムヴェーヘン作。
「Remebering The Future」(4:22)フェイズ・シフタを用いたギターによるミステリアスな演奏が次第に躍動感を得てゆく。
後半のリズミカルな演奏ではベースをフィーチュアしてファンキーに跳ねる。
ニムヴェーヘン/ヴィンク共作。
「As One」(4:44)CAMEL 調のエモーショナルなギターとドリーミーなシンセサイザーが切々と語りかける名品。
ワムス作。
「With Love As The Motive」(9:15)オムニバス風の大作。
80 年代を予感させるややキャッチーなリフと泣きのギターが巧みに交差する。
終盤はシンセサイザーが美しい極上のファンタジック・サウンド。
ニムヴェーヘン作。
「a.Impulse」
「b.Reaching」
「c.Sinful Delight?」
「Reconciling」(8:29)フュージョン・ポップ風の軽快なナンバー。
ギターもリラックスして得意のハードロック調で突っ走る。
キーボードも全開。
イージー・リスニング風のストリングス・シンセサイザーやいかにも「それ風」のクラヴィネット、エレピ、オルガン、ムーグがいい。
華やかな作品だ。
個人的にも懐かしい音です。
ニムヴェーヘン作。
(PSEUDONYM CDP-1019 DD)
| Joop Van Nimwegen | guitars, cabasa |
| Peter Vink | bass, cow-bell |
| Beer Klaasse | drums, percussion |
| Hans Bosboom | drums, percussion |
| Ad Wammes | keyboards, flute |
99 年発表のアルバム「Stage '76 Making Of...Galleons Of Passion」。
「Galleons Of Passion」製作時のデモ録音と 76 年のライヴ音源からなる CD 二枚組編集盤。
未発表曲や初出のライヴなどきわめて貴重な内容である。
「Galleons Of Passion」のアウト・テイクは、それまでの路線からの微妙な揺れを明確に示しており、興味深い。
ライヴでのファン・ニムヴェーヘンのプレイの熱気、安定感もすばらしい。
バンドのヒストリーを詳細に紹介したブックレットも充実。
(PSEUDONYM CDP-1066 DD)