スロヴァキアのジャズロック・グループ「FERMATA」。 70 年代前半結成、現役で活動を続ける、ギターとキーボードの双頭グループ。 初期のサウンドはロック寄りのクロスオーヴァー。 ギターとシンセサイザーがせめぎあうハードな演奏が得意なようだ。 2009 年リマスター再発。
| Frantisek Griglak | guitar |
| Tomas Berka | electric piano, synthesizer, organ |
| Anton Jaro | bass, percussion |
| Peter Szapu | drums, percussion |
75 年発表のデビュー・アルバム「Fermata」。
内容は、キーボードとギターがせめぎあうハードな変拍子ジャズロック。
太く熱いユニゾンによるテーマから、リフ、ソロ、コール・レスポンスまで、キーボードとギターが対等に渡り合い、弾き捲くりのままどこまでも突き進むスタイルである。
ハードロックの勢いをもったままジャズの技巧的な即興性を備えているという意味で、ジェフ・ベックや MAHAVISHNU ORCHESTRA と同系統の姿である。
演奏は、挑みかかるような高速変拍子のリフで駆動し、テーマやフレーズの随所にはクラシカルな旋律やハーモニーが現れる。
また、熱気迸る攻撃的な一体演奏とディープでスペイシーな即興が強烈にコントラストする。
キーボードは、オルガン、エレピ、シンセサイザーらを使用し、いわゆるクロスオーヴァー/ジャズロック的な技巧を誇る。
ギターはナチュラル・ディストーション・トーンで、サイケデリック・ロックからハードロックまで、幅広い技巧のスペクトル一杯に無茶に暴れる。
ジェフ・ベックとジョン・マクラフリンからの影響は間違いないだろう。
リズム・セクションも強靭であり、特にジャズ寄りかつストロング・スタイルのドラムスによる音数勝負が圧巻である。
強烈なバスドラ連打も得意なようで、ビリー・コブハム直系といえるだろう。
このリズムとともに、多彩な音色のキーボードとワイルドなギターが、変拍子を振りほどくように真っ直ぐに突っ込んでゆく、その痛快さが、本作品の魅力である。
そして、変拍子のリフを軸にどこまで無茶ができるかというアプローチなので、あたかも次の曲を待ちきれないかのように、1 曲の中でどんどん演奏が変化し、雰囲気も容赦なく変転している。
エレクトリックなギミックやサイケがかったエフェクトなど確かにやや古めかしいところはあるのだが、ハードロックのパワーをそのまま呑み込んだ本格ジャズロック、というユニークなスタイルは提示できている。
全曲インストゥルメンタル。
ギタリストのグリグラクは、COLLEGIUM MUSICUM 出身。
BONTON の 2in1CD では「Perpetuum III」が割愛されていますのでご注意ください。
「Rumunska Rapsodia」(5:52)オルガンとギターのユニゾンによるテーマで押し捲るハードロック・インストゥルメンタル。
テーマはせわしないのだが、練習曲を思わせるクラシカル・テイストあり。
リフに続く展開も、どこかクラシカル。
けたたましいギミックも用いたテクニカルな演奏は、もうちょっと過激に弾ければ AREA に迫ったろう。
後半は攻めてたてるようなユニゾンが痛快。
最後はアンデスの呼び声?を経て、再びエレクトリックなノイズから、元気いっぱいオープニング・テーマが復活する。
一貫して激しくせわしないが、クラシカルなテーマのおかげでキュートな仕上がりである。
「Perpetuum II」(10:27)
鉛筆削りのような SE (テープ逆回転処理と思われる)で始まるサイケデリックな即興風大作。
全般にダウナー、沈滞気味である。
しかし、沈滞し弛緩した即興からギター・リフ、スティール・ドラムのようなエレピが抜け出して、連鎖反応的に突進が始まる。
思わず肩に力の入ってしまうドラム・ソロからシンセサイザーがリードする逸脱調のロックンロールへと凄まじい展開を見せる。
EL&P を思わせるところもある。
ワウを用いた扇情的なリフやマクラフリン手癖風の乱調ギター・ソロ、オルガン、アッパーなリズムなど、すっかりサイケなヘヴィ・ロックである。
エンディングのユニゾンが強烈だ。
「Postavim Si Vodu Na Caj」(4:20)
小気味のいいリズムとともにギターがジェフ・ベック調で扇動するも、エレピはあたかも異次元空間に漂う竪琴のように無関心にさえずり続ける。
ジャジーなギター・アドリヴも加わって、エレピとギターによるファンタジックな演奏が続く。
ドラムスが小気味のいいビートを刻むと、ギター・ソロへ。
やっぱりベックですね。
ようやく最後のトゥッティでシンセサイザーとオルガン、そしてギターとエレピが反応しつつ疾走し、カッコいいユニゾンを決める。
深いリヴァーヴとコンプレスによる幻想的な演出を加えた、シャープながらもリラックスしたギター・ジャズロック作品。
キーボードは終始ハープのような音をたてている。ファンキーになりそうでなり切らないところがいい。
「Valcik Pre Krstnu Mamu」(7:03)
教会風のオルガン独奏による神秘的なオープニングから、一転して歯切れのいいファンキー・ワウ・ギターが飛び込む。
「Led Boots」や「Blue Wind」を思わせる内容だ。
珍妙な音でかけあうアナログ・シンセサイザーがユーモラスだ。
ギターは変拍子リフでつっかかり、ワイルドなギター・ソロ、再びヘヴィなリフからソロと独壇場である。
中盤、リズムレスでエレピが舞うシーンがあるが、一瞬にしてギター、オルガンのデュオが軽やかなラテン風のグルーヴを生み出してゆく。
ザヴィヌル、ヴィトウスと同じく、東欧には独特の「南」への憧れがあるのかもしれない。
このオルガンとギターのコンビネーションは、リズム・セクションこそ重いが、かなりラウンジ風である。
やがてギター、オルガンはヘヴィな調子を取り戻し、ファンキーに跳ねながらも噛みつくようにワイルドな調子のユニゾンで攻めてたる。
饒舌にして凶暴な演奏だ。
ギクシャクとした変拍子リフを逆手に取ってグルーヴィに走るジャズロック。ファンタジックなキーボードがアンサンブルを巧みに変転させて多彩な雰囲気を盛り込んでいる。
「Perpetuum III」(11:43)
波の音とオーヴァーラップしながら、ギターとキーボードによるスペイシーなアドリヴが渦を巻く。
シャープなリズムが走り出し、シンセサイザーの調べを位相系エフェクトで揺らぐギターのアルペジオが支える。
いつしか波の音は去り、深くエコーするシンセサイザーとギターによる逞しいユニゾンになる。
前半は、16 分の 11+13 拍子。
一転、ジャジーな演奏に変化、ギターとエレピの洒脱なデュオが続く。
このパートは 16 分の 8+7 拍子。
今度は、ギターがハードロック調に変化、一気に盛り上がる。
シンセサイザーも加わり、16 分の 11+13 拍子でアッパーなノリでひた走る。
すさまじい変拍子パターンをハイテンションで貫く痛快なジャズロックである。
(BONTON 71 0623-2, OPUS 91 2808-2)
| Frantisek Griglak | guitar, Fender electric piano, synthesizer on 5, vocals |
| Tomas Berka | Fender electric piano, synthesizer, percussion |
| Anton Jaro | bass |
| Cyril Zelenak | drums, percussion |
| Milan Tedla | viola |
76 年発表の作品「Piesen Z Hol」。
RETURN TO FOREVER、BRAND X、MAHAVISHNU ORCHESTRA 化はさらに進展し、スピード/威圧感ともにたっぷりのヘヴィなジャズロックとなる。
ドラムスのメンバー交代も、さほどサウンドに影響は及ぼしていない。
また、ベースのプレイが前作よりも明確であり、存在感が強まっていることにも注目しよう。
がっちりしたベースのリフにドライヴされて、ギターとエレピ、シンセサイザーがシャープなプレイを連発する第一曲は 70’クロスオーヴァー/ジャズロックの典型といえる名品。
BRAND X の第一作の「Nuclear Burn」がさらに強力になったといえば分かるでしょう。
活きのよさでは前作だが、ジャズロック的なグルーヴでは本作だろう。
キース・エマーソン調のムーグのプレイもあり。
CD は第一作、第二作の 2in1。
「Piesen Z Hol」(11:07)
「Svadba Na Medvedej Luke」(4:15)
「Posledny Jarmok V Radvani」(4:31)
「Priadky」(7:37)
「Dolu Vahom」(2:20)
「Vo Zvolene Zvony Zvonia」(10:10)
(BONTON 71 0623-2, OPUS 91 2808-2)
| Tomas Berka | piano, electric piano, synth, strings ensemble |
| Frantisek Griglak | guitar, piano, synth, strings ensemble |
| Ladislav Lucenic | bass |
| Karol Olah | drums, percussion |
| Peter Olah | vocals |
| Dezider Pito | cello |
77 年発表の傑作「Huascaran」。
アンデス山脈最高峰「Huascaran」にチャレンジするも登頂途中の事故で全滅した、チェコ登山隊の悲劇を描いたトータル・アルバム。
演奏は、ダイナミックなリズム・セクションとシンセサイザーがリードする技巧的ジャズロックである。
コラール以外は全編ほぼインストゥルメンタルだが、重厚なテーマをきっちり描いており、アドリヴやインタープレイにもストーリーを感じさせる演奏になっている。
全体に、ソロよりもアンサンブル指向でありシンフォニックな味わいもある。
また、アコースティックな楽器を多く使うことから、正統的なクラシックの重厚荘厳な雰囲気が醸し出されている。
いわゆるファンキー・ジャズロックとは、かなりニュアンスの異なる音楽になっているといっていい。
アナログ・シンセサイザー含め、多彩なキーボードの音も本作品の特徴だろう。
「Huascaran I」(13:42)前半は冷ややかで美しいストリングス、ARP などキーボードがフィーチュアされたジャズロック。
エレピに呼び覚まされるように、アンサンブルが立ち上がる。
ギターはワウを使ったバッキングとオブリガートに徹している。
シンセサイザーのリードはかなりファンキーな動きを見せるが、背景にはストリングスが熱気を冷ますように響き渡る。
クラヴィネットとギターのインタープレイから、再びシンセサイザーのアンサンブルへと移り、雄大な響きで盛り上る。
エレクトリックな余韻を残してリズムが去ると、中間部。
アコースティック・ピアノの伴奏で、チェロが物悲しく歌う。
映画音楽のように奥深い情感をかき立てる。
ピアノは重厚な和音の響きとともに高揚し、チェロの旋律も感極まってゆく。
そして、ピアノのスケール下降とともに、吸い込まれるように音が消えてゆく。
後半は、透き通るようなシンセサイザーを背景にした幻想的なヴォカリーズから始まる。
旋律には、哀愁とともに祈りの暖かみがある。
ギター・ソロはヴォカリーズをなぞるストレートな泣きのプレイだが、端正にして堂々たるプレイである。
見せ場の一つだろう。
シンセサイザーと絡みながら、次第に躍動し始める。
ミドル・テンポを丁寧に刻むリズム・セクションにも重みがある。
シンセサイザーの余韻が消えると、ベースはゆっくりとミステリアスな音を並べ、シンセサイザーの眩惑的なリフレインがざわめき始める。
エンディングは、再び躍動感あふれるジャズロック。
しなやかなアンサンブルがギターとキーボード主導でファンキーに走り、ソロをフィーチュアしながらエネルギッシュな演奏が繰り広げられる。
ジャズロック的な演奏を使ってロマンのあるストーリーを描いた作品。
テクニカルに走る場面とリリカルに歌う場面の配置がよく、ドラマチックな流れができている。
シンセサイザーやアコースティック・アンサンブルの音の美しさも際立っている。
弾力あるリズム・セクションとしなやかにサステインするメロディ・パートのコンビネーションもすばらしい。
サウンドはアメリカのジャズロック・グループに近いが、録音のせいか、くつろぎやグルーヴといった感覚とは正反対の硬さや冷ややかさが感じられる。
また、シンセサイザーを組み合わせたオーケストラルな演奏は、ジャズロックというよりはプログレッシヴ・ロック的である。
さらに、中間部のシンフォニックな盛り上がりと哀感あるメロディ・ラインもこの作品をユニークにしている重要なファクターだろう。
この 1 曲でアルバムの評価を決めているといっていい、美しくスリリングなシンフォニック・ジャズロックの傑作。
グリグラックの作品。
「80000」(7:30)
オリエンタルな響きでつぶやくエレピ。
シンバルが静かに響き、シンセサイザーの低音がオーケストラのように重々しく雄大に轟く。
神秘的なシンセサイザーのメロディ。
転がるようにきらめくエレピ。
幻想的なイントロだ。
重厚な余韻を受けドラムが動き出す。
ヘヴィなギター・リフのリードでアンサンブルが目覚め、せわしなく動き始める。
加速するハードロック風のギター・リフ、我関せずとフュージョン風の演奏を続けるエレピ。
奇妙なコンビネーションだ。
烈しいドラム・ソロを受けてテンポが上がると、いかにもジャズロック風の粘りのある全体演奏。
リフは 10 拍子。
次第に緊張が高まる。
エレピのリフをバッキングにギター・ソロが始まる。ワウを使った荒々しいソロだ。
ギターのリフレインを合図に、ベースが高音へ上り詰めると、メタリックなシンセサイザーとギターによるグルーヴィなユニゾン。
ギターのオブリガートをエレピが追いかけ、エレピとハードロック・ギターのデュオが始まる。
デュオはユニゾンへ収束し、三度、エレピとハードロック・ギターのインタープレイ。
10 拍子リフが再現。
うねる演奏、そして再びギターのリフレインによるブリッジ。
一転して決めの連発とミュートしたギターのリフから、テンポは快速 8 ビートにアップ、スピーディなギター・ソロが駆け抜ける。
ハードロック風ながらもスピード感のあるソロだ。
続いて、シンセサイザー・ソロ。
ARP シンセサイザーのビョンビョンという音が懐かしい。
最後は、ギターのブリッジで終り。
1 曲目に比べると非常にストレートな展開のジャズロック。
オープニングは神秘的な広がりを感じさせるが、いったんギターが走り出すと、ほとんど最後までノンストップでアンサンブルが疾走する作品だ。第一作から変わらぬスタイルである。
リフで助走をつけ一気にインタープレイに突っ込む痛快さは抜群である。
この、キーボードとギターがせめぎあってはリフに収束し、再びソロで挑発し合うという、つかず離れずの対話性あるスタイルは、やはりジャズのものだろう。
イントロをもっと活かした展開もあるかもしれないが、これはこれですばらしいノリのあるジャズロックである。
ベルカの作品。
「Solidarity」(6:35)8 分の 12 の軽快なエレピのリフレイン。
そしてギターが自由なオブリガートで絡む。
タイトなリズムが始まる。
そしてユニゾンへ。
キーボードがエレピからシンセサイザーへ切り替り、ユニゾンが進む。
エレピのスペイシーなリフに乗ってギター・ソロ。
伴奏にはギターのコード・ストロークがオーヴァー・ダブされている。
やはりジェフ・ベック風の鋭く太い音のソロだ。
二つのギターが呼応し始めると、次はシンセサイザーのソロへ。
アタックのない笛のような音色でピッチ・ベンドを駆使する演奏であり、スピード感にあふれる。
バックはエレピとギターのカッティング。
ギターがシャープなメロディで飛び出して、エレピ、シンセサイザー、ギターが緊密にかみ合ったスリリングなアンサンブルとなる。
シンセサイザーとギターがユニゾンすると、もう一つのギターが積極的にオブリガートを始める。
ドラムスのフィルは、どこまでも的確かつシャープ。
そしてユニゾン・リフが急停止する。
一瞬にしてリズムが止み、アコースティック・ピアノのソロが始まる。
オープニングからのエレピのテーマ・リフを発展させてゆく神秘的な演奏だ。
シンセサイザーがフェード・イン、高らかに響き渡る。
明るくファンキーなリフで幕を開け、正確無比な 8 分の 6 のリズムの上でギターとシンセサイザーが軽やかに舞うジャズロック。
リフ & ソロという古典的な形式だが、それぞれバッキングをオーバー・ダブしており、おかげでポリフォニックな感じになっていて面白い。
前曲はオープニングのみ雰囲気が違ったが、この曲ではエンディングで大きく変化する。
突然ピアノがぐっとテンポを落として華麗に再現され、雄大なシンセサイザーとともに次の曲へと進んでゆく。
2 曲目に続いてストレートなジャズロック。
ベルカの作品。
「Huascaran II」(11:11)前曲のシンセサイザーの響きを受け、ベースが強烈なリフで口火を切る。
すぐにしなやかなギターが登場、変拍子リフを打ち出して演奏をリードする。
ベースもユニゾンし、シンセサイザーが分厚い音でオブリガートする。
さらにオブリガートするギター。
GENTLE GIANT のようなファンキーな演奏である。
やがてシンセサイザーもユニゾンする。
ギター・ソロは、なめらかにスケールを駆け巡るオーソドックスなスタイル。
ベースのうねりが凄い。
クラヴィネットの和音が気持ちいい。
シンセサイザー・ソロは、ベンディングを使ったスリリングなもの。
高音を華麗に響かせ、スピーディなフレーズで駆け抜けてゆく。
シンセサイザー特有のなめらかな演奏だ。
ようやくギターとシンセサイザーがユニゾンし、リフを打ち出す。
一転、演奏は緩やかに響くエレピとベースの荒々しい連打のみとなる。
エレピに応えるようなギター。
アタックを消した広がりのある音だ。
1 曲目を思い出させる、幻想的な場面である。
タムの連打をきっかけにリズムが復活、シンセサイザーとギターの穏やかなインタープレイ、ユニゾンが始まる。
ギターのヘヴィな演奏から、ようやくオープニングのギター・リフが再現、演奏がグルーヴを取り戻す。
前半と同様にファンキーな演奏が続き、祝祭的なムードは最高潮に達する。
演奏が終わると、鳥のさえずりのような音が舞い、心臓の鼓動が響く。
「平和」と「生存」の象徴だろうか。
ここまでで最もファンキーなジャズロック。
登頂の成功を祝うお祭り的なムードでいっぱいなのだろう。
演奏はギターのリードで進むが、リズム・セクションも強烈にアピールをしている。
互いに音質の異なるシンセサイザーとギターのやり取りが見せ場である。
そして、前曲と同じく、ソロを支える迫力あるバッキングにも注目したい。
シンセサイザーのソロは、ギターのように伸びやかなフレーズと細かく音を刻み込むプレイが組み合わされたイメージ豊かな演奏である。
今までのベスト・プレイかもしれない。
中間部に美しいエレピを配置するアレンジは当りである。
グリグラックの作品。
以下、ボーナス・トラック。
ストレートにファンキーな曲調が顕になっている。
「"15"」(4:00)
「Valparaiso」(6:06)
「Perpetuum 1.」(2:17)
シンフォニックなジャズロックという点では、1 曲目が演奏、アレンジで抜きんでている。
さまざまな表情で曲の雰囲気を決定するシンセサイザーを駆使したジャズロックは、いわゆる欧米のものとは質が異なる。
ギターのプレイが技巧的ながらもストレートなため、緻密さを持つキーボードの存在が、一層際立っている。
このグループの特徴は、このギターとキーボードの双頭体制である。
クールなストリングス、メタリックな ARP シンセサイザーは、ノリ一辺倒になりがちなジャズロックの演奏に、冷静で精緻なイメージを加える。そして、それがそのままプログレッシヴ・ロックらしさにつながっている。
同じジャズロック、フュージョンという区分けながらも、この硬質な感触の音が、いわゆるラテン的なフージョンとは完全に異なる。
(BONTON 71 0317-2)
| Tomas Berka | synthesizer, keyboards, vocals |
| Frantisek Griglak | guitar, keyboards, synthesizer, vocals |
| Fedor Freso | bass, vocals |
| Karol Olah | drums, percussion |
80 年発表の作品「Dunajska Legenda」。
ベーシストが COLLEGIUM MUSICUM、M-EFEKT のフェド・フレソに交代、前作ではゲストのようだったメンバーも抜けて、四人編成となった。
サウンドは、シンセサイザーを多用したテクニカルなジャズロック。
厳かで気品ある作風にもかかわらず、シンセサイザーとギターによるえげつないバトルが繰り広げられるところが特徴である。
前作までのシンフォニックなトーンにファンク/ラテン的な色合いを加え、ややメローなフュージョン・タッチも現れている。
キーボードは今回も冴えており、ギターとせめぎあう場面からクラシカルな場面までプレイ/音色ともに多彩。
やはりこのキーボードが、サウンドの要といえるだろう。
また、ファンキーな曲調においてすら、ずしっとドスを効かせているリズム・セクションもすばらしい。
凝ったアクセントをもつ変拍子リフやねじふせるようなアンサンブルは、いかにも硬派のイメージである。
テナー・ヴォイスによるヴォカリーズも、なかなかいい感じだ。
ファンキーさと冷ややかな翳りのある超絶技巧が共存する(やはり初中期の RETURN TO FOREVER のラテン色を抑えたイメージだろう)ため、シンフォニック・ロック・ファンでも十分対応可能と思われる。
変拍子のリフをボトムに、テーマではテクニカルなユニゾンを駆使し、ソロをつないでゆく。
典型的なスタイルのなかに、アコースティック・アンサブルや引きの空間的な音響、厳かなストリングスなど、通常のフュージョンには珍しいクラシカルな感覚を感じさせる。
シンセサイザーを用いたシンフォニックな雰囲気作りも巧みである。
前作に比べるとトータル性という制約がないせいか、リラックスした純ジャズ的な奔放さが前面に出ているようだ。
それでも、リラックスしたグルーヴに頼りっぱなしのメインストリーム・フュージョンとは一味違う芯がある。
オープニング・ナンバーのリフがサウンドの方向性の変化を象徴するが、2 曲目の叙情的、劇的な展開で一安心できる。
タイトルは「ドナウの伝説」か?
「Wlkina」(4:04)ファンキーでアッパーなリフ、ユニゾンで迫るグルーヴィなナンバー。ギターとシンセサイザーのハードなやり取りが特徴的。ファンキーだが軽くない。
「Chotermir」(6:08)アコースティック・ギターに導かれるメランコリックなシンフォニック・チューン。
弦楽奏もフィーチュアし、ギターとシンセサイザーはトラジックなテーマを歌い上げる。
しかし 4:30 辺りからは、もろに RETURN TO FOREVER と化す。
「Witemir」(3:12)スキャットをフィーチュアしたメロディアスなバラード。
エレクトリック・ピアノが美しい。
「Unzat」(5:43)ドスの効いたベース・リフ主導の変拍子ハード・チューン。
ハードなリフを軽妙に切り返すアンサンブル、ギターのようなサスティンで迫るシンセサイザー、猛烈なロールで油を注ぐドラムス。
ここでもアナログ・シンセサイザーの音色がいい。
「Trebiz」(6:09)風格のキーボード・ロック。
目のさめるようなピアノのリフレイン、そして重厚なシンセサイザーが迫るインパクトあるオープニング。
変拍子の反復を基調に、多彩なキーボードが舞い踊る。
フュージョン・タッチのシンセサイザーによるシンフォニック・プログレといえばいいだろう。
「Zilic」(3:26)スキャットをフィーチュアしたクールでリズミカルな作品。
バウンスするのだが裏のアクセントのせいで独特のノリとなる。
「Zuemin」(4:47)ギターが主役に回ったファンキー・チューン。
ミドル・テンポで、抑制されながらもバネの効いた演奏を繰り広げる。
「Kocel」(5:19)丹念なドラミングとともに、ギターとシンセサイザーが執拗に螺旋を描き、それでも全体としてはまっすぐ着実に進んでゆくパワー・チューン。
深宇宙的なサウンドでグルーヴィなプレイを打ち出してゆく、このグループらしいフュージョン・ナンバーである。
息詰まるユニゾンと開放、降りしきるストリングス、感動的なエンディングだ。
高度な演奏技術に裏打ちされたシンフォニック・フュージョン・インストゥルメンタル。
ARTI E MESTIERI ですら顔色が悪くなるようなハイ・センスである。
スピード感こそさほどでないが、決めのユニゾンや変拍子を刻みつつもグルーヴ感を生み出してしまうところがすごい。
そして、ステーヴィー・ワンダー並みのキャッチーなメロディという点では、並のフュージョン・グループをとっくに追い越している。
また、シンセサイザーを積極的かつ効果的に盛り込んだジャズロックという点でもユニークだ。
シンフォニックな高揚感と同時に悠然としたおちつきがあるのもこのキーボード・ワークに負うところが大きい。
奇数拍子は元来中央東ヨーロッパのダンスでは普通というから、素地が違うということなのかもしれない。
メインストリーム・フュージョンにシンフォニックな趣を加えた佳作である。
(OPEN MUSIC OP0048 2 311)
| Frantisek Griglak | guitars |
| Tomas Berka | keyboards |
| Fedor Freso | bass, mandolin |
| Karol Olah | drums, percussion |
80 年発表の作品「Biela Planeta」。
内容は、ほぼ前作路線を踏襲した重量感あるジャズロック。
リフを軸とする跳ねるようなうねりのある演奏なのだが、いわゆるファンク風、「ファンキー」という感じではない。
スペイシーなアナログ・シンセサイザーとハードロック調のパワフルなギターを主役にした演奏は、豪快にして濃厚で、極太のナタを叩きつけるような迫力がある。
ロックンロールにしても、独特の重さがある。
この重量感が一番の特徴だろう。
また、シンフォニックにキーボードが高まる瞬間も多い。
(OPEN MUSIC OP 0046 2 311)