|
イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「FANTASY」。 70 年結成。 73 年 POLYDOR よりアルバム・デビュー。 74 年第二作を録音するも未発表のまま解散。 76 年に再編した際の録音も「Vivariatum」として CD 化(AACD 004)された。 夢見るようにリリカルなフォーク・ロックにシンフォニックな余韻を与えた純英国風のサウンドである。 FANTASY |
|
||||||||||
|
|
73 年発表のアルバム「Paint A Picture」。 内容は、ソフトで優しげな音を基本にシンフォニックなアレンジを施したフォーク・ロック。 オルガン、メロトロンに彩られた、適度にセンチメンタルで、適度にほのぼの、そして適度にドラマチックな楽曲が並ぶ。 全体にしっとりとした聴き心地が特徴だろう。 なかなか派手なプレイを見せるギターやオルガン、ビートポップ風のメロディ・ラインはなど BARCLAY JAMES HARVEST に近い世界のように思う。 ギターもオルガンもかなり明確なソロを取るし、ベースも機敏に動いてアンサンブルをリードするのだが、和やかな歌メロと 60 年代風のコーラスがすべてをオブラートに包んだように優しく、はかなく見せているようだ。 間断なくかき鳴らされるアコースティック・ギターも眠気を誘う原因の一つかもしれない。 よく聴くとギターもオルガンも場面毎、曲毎に巧みに音色を変化させて単調にならないように配慮している。 やや平板な録音のせいだけともいえない、このボンヤリとした雰囲気をもたらしている一番の理由は、明快なフレーズや運動性の高いアンサンブルはあるものの曲のストーリー展開に大仰な振幅がないため。 本作の味わいは、やさしさに見え隠れするはかなく悲しげな風情なのだろう。 そしてメロトロンの魅力で生き残った作品ともいえる。 メロディアスなヴォーカル・ハーモニーにオルガンとメロトロンで厚みをつけ、ギターをアクセントとして配したポップス調のサウンド。夢の国へと誘う小鳥の羽根のように、柔らかく優しさに満ちた世界である。 ブリティッシュ・ロックの懐の広さを感じさせる。 2001 年リリースのポリドールの紙ジャケット・シリーズでは従来の CD とはずいぶんとイメージの異なる明快な音になっている。 「Paint A Picture 」(5:24)幻想的な雰囲気の中にもメランコリックなメロディが映える佳作。 美しいコーラス、メロトロンで盛り上がるサビ、ジョン・リーズ風のギターなど。 中盤のオルガン・ソロもグッド。 「Circus」(6:18)ビートポップ風のヴォーカル・ナンバー。 中盤の多彩なインストゥルメンタルがすばらしい。 ギターとオルガンがソロを取り合って熱いインタープレイを見せる。 ヴァイオリン奏法のギターとオルガンのやり取りは微笑ましい。 ギター・リフが始まると歓声のSEが入るのも面白い。 後半はオルガンとギターのドライヴ感のあるインタープレイが続く。 終盤のトラッド調のリズミカルな演奏がおもしろい。 ハードなインストを強調したライヴ風のアレンジである。 「The Award」(4:52) メランコリックなギターで始まるメロディアスなフォーク・ソング。 メランコリックな歌メロを意外なほどタイトな演奏で支えており、優しげで穏やかな曲調になっている。 ギター、ベースのオブリガートが巧みにリード・ヴォーカルを彩る。 コーラスはヴォカリーズのみ。 ギターが音色や演奏をさまざまに工夫している。 ヴォーカルをなぞるファズ・ギターなどかなり荒々しいが、ハーモニウムのようなオルガンとヴォーカルが空気を和らげている。 「Politely Insane」(3:27) ブラス・アンサンブルが加わった、西部劇のサウンド・トラックのように勇ましいナンバー。 馬を駆るようにアコースティック・ギターとワウ・ギターがストロークで煽る。 ヴォーカルは勇ましく歌い上げるが、やはり甘目。 ドラマチックなテーマとサビの繰り返しのみで、特に展開らしい展開はない。 フェード・アウト。 「Widow」(2:12)チェロ、ピアノが美しい室内楽風のフォーク・ソング。 ヴォーカルはロビン・ウィリアムソン調。 アコースティック・ギターの密やかなアルペジオが流れ続ける。 憂鬱な空気の中に、時おり儚い喜びがきらめく。 小品だが心に残る作品。 「Icy River」(5:53) 一転ギターとオルガンが高鳴る目のさめるような派手なオープニング。 すぐに曲調は沈み込みオルガンが遠く鳴り響く。 ヴォーカル・ハーモニーが美しい幻想的なバラードである。 はかないヴォーカルを支えるのは、アコースティック・ギターのアルペジオ、そして巧みに曲を運ぶベース・ラインである。 ここでもギターがヴァイオリン奏法を見せる。 前半ドラムレスで流れ、次第にテンポができてゆくとともにヴォーカルも高まりを見せ、曲調が高揚してゆく。 一旦演奏が遠ざかり、風が吹き抜ける音とともに戻ってくるアレンジがおもしろい。 クラシカルなオルガンとメランコリックなギターのアンサンブルもいい。 終盤のインストに凝るのが得意なようだ。 1曲目、3曲目と同様のスタイル。 ぼんやりと澱むような夢から溌剌とした目覚めへと変化するような期待感と暖かみのある作品だ。 「Thank Christ」(4:06) アコースティック・ギターのストロークとオルガン、メロトロンが響き渡る静かなオープニング。 ゆっくりとなだらかな斜面を登ってくるようなイメージだ。 ベースの連打に支えられた幻想的なヴォカリーズから孤高のヴォーカルへ。 エレキギターのオブリガートは、さりげないがいいセンスだ。 ギターはサビに入っても、ヴォーカルにぴったり寄り添っている。 決然とした表情に寂しさがまざるように曲調が変化する。 サビではヴォカリーズ、オルガンが高鳴る。 マイナーの歌メロのまま盛り上がるところなど、全体に BJH 風のシンフォニックなナンバー。 「Young Man's Fortune」(3:41) オルガン、ギター主導で突き進むハードなナンバー。 イントロこそビート・グループ風の泣きのギターとオルガンだが、すぐに力強くヘヴィな曲調へ飛び込む。 攻撃的なオルガン、粘り強いギター、躍動感のあるドラムは他の曲とはやや表情を異にする。 オブリガートと間奏の泣きのギターが印象的。 攻めたてるようにリズムを刻む堂々たる演奏に対し、ファルセットのヴォーカル・コーラスが凛と美しく対峙する。 ギターとオルガンが互いに高めてゆきクライマックスを越えると、意外にもブルージーなギター・ソロである。 ワウ・ギターのフェード・アウトが惜しい。 重みのあるビート感が新鮮だ。 「Gnome Song」(4:19)ギターとピアノによるアコースティックなフォーク・ロック。 再びメランコリックで幻想的な雰囲気である。 12 弦ギターのアルペジオによるアンサンブルは典雅にしてフォーキーな美しさもあり。 ピアノの響きもクラシカル。 ピアノとアコースティック・ギターのアンサンブルの質感は、初期のGENESISのようだ。 セカンド・ヴァースからリズムが入ると、おなじみのゆっくり上りつめてゆくスタイル。 歌メロの口当たりのよさが、またも BJH を思わせる。 軽快な演奏やギター・アンサンブルを交えながら進み、ギター・ソロからコーラスが高まって終わる。 前半はフォーク・ソングで後半はアップ・テンポのフォーク・ロック、そしてクライマックスはシンフォニックに盛り上がる。 なかなかドラマチックではないか。 「Silent Mine」(4:39)オルガンとストリングスが響き渡る荘厳なムードのヴォーカル・ナンバー。 ティンパニが遠く轟きマーチング・スネアが応える。 あたかも1曲目のリプライズの如き、霧に霞んだような雰囲気の曲だ。 歌メロはまたもマイナー・ポップス調。 オルガンの彼方にメロトロンが響き、ヴォーカル・コーラスが静かに上向きはじめる。 たなびくようなオルガンとともにコーラスが進み、メロトロンが応える。 ストリングスが静かに湧き上がり、神々しいヴォカリーズとともに消えてゆく。 祝福された昇天の光景が目に浮かぶ。 ギターはなし。 優美で幻想的なフォーク・タッチのシンフォニック・ロック。 ビートポップ出身らしい甘さのあるシンプルなサウンドと、キーボード、ギターによるシンフォニックなアレンジのコンビネーションの妙である。 ジャズ/ブルーズ色もソフトなポップさの中にとけ込んでおり、表面に現われるのはひたすら優しく穏やかなメロディとハーモニーである。 ギターはかなり多彩なプレイを見せるし、キーボードもしっかりと音を満たしているのだが、全体の印象は不思議なくらいアコースティックだ。 余韻としてこだまする幻想性は、落ちついたテンポとハーモニーそしてメランコリックかつ優美なメロディなど全てが総合した産物だろう。 一聴全く印象に残らない可能性もあるが、少し耳をそばだたせれば全てのパーツが純英国性であることに気づき、味わいも格別となるだろう。 (UICY-9050) FANTASY |
|
||||||||||||||||
|
|
99 年発表のアルバム「Beyond The Beyond plus...」74 年に録音された未発表作品。 92 年に一旦 CD 化されるが、99 年トラックを追加して再発された。 半分眠っていたような第一作とは異なり、全てにメリハリがつき、エネルギッシュでタイトなロックへと変貌している。 ギターのリードとオルガンが全篇をしっかりと支えて、演奏全体が明快である。 甘めの歌とメロトロンも活かしつつ、より表現の幅を広げている。 素朴な歌メロには、ややアメリカ風の土臭さやポップさも現れているが、全体として元の味わいは損なわれていない。 何よりシンフォニックな盛り上がりやドライヴ感がぐっと増し、メリハリが出たのがうれしい。 ビートの効いたサウンドが充実したおかげで、アコースティックなバラードもより繊細で美しくなった。 ドラマチックなできばえである。 これをおクラ入りする心境はちょっと理解できない。 (Audio Archive AACD 034) FANTASY |