イギリスのサックス奏者「Elton Dean」。 45 年生まれ。 68 年、Keith Tippett Group 結成を経て、69 年 SOFT MACHINE 加入。 72 年までに三枚のアルバムに参加して脱退、ソロ活動に専念。 75 年に NINESENSE 結成。 2006 年逝去。 「Agharth」のソニー・フォーチュンのプレイがエルトン・ディーンによく似ていると思います。
| Elton Dean | sax, electric piano |
| Marc Charig | cornet on 1,2,3,4,5,7 |
| Neville Whitehead | bass on 1,2,3,4,5,7 |
| Phil Howard | drums on 1,2,3,4,5,6 |
| Mike Ratledge | organ, electric piano on 3,4 |
| Roy Babbington | bass on 3,4 |
| Nick Evans | trombone on 6,7 |
| Jeff Green | 6 string bass on 6, guitar on 7 |
| Louis Moholo | drums on 7 |
SOFT MACHINE 在籍中の 71 年に作成されたソロ第一作「Just Us」(71 年 LP 発表時のタイトルは「Elton Dean」)。
内容は、エネルギッシュなフリージャズ系ジャズロック。
「Fourth 」から「Fifth」に向かわず、より即興演奏を強めた SOFT MACHINE といった感じである。
マイク・ラトリッジが一部でゲスト参加。
CD 化に際して二曲、さらに日本盤のみ一曲追加で、計三曲のボーナス・トラック(ライヴ収録)あり。
作曲、プロデュースはエルトン・ディーン。
全編インストゥルメンタル。
オープニング「Ooglenovastrome」(意味不明、秋波爆発渦巻??)(15:22)
サックスとドラムの会話からスタート、ベースが加わり、やがてサックスが絶叫し始める。
コルネットの参加とともに、演奏は次第に緊張と混乱に湧き立ち、朝焼けの広がる空のようなコルネットとベースによる神々しい演奏が放たれる。
地を這うように渦巻くサックス、もどかしげに身をよじるドラムス、ベース。
小爆発を繰り返しつつ、演奏は力をみなぎらせてゆく。
ドラムスとベースが次第に一つのリズムへと収斂するかと思うまもなく、ディーンのエレピの和音が一気に秩序をもたらす。
熱っぽく湧き立つコンボをしたがえて、コルネットが力強く、奔放に舞う。
エレピの登場からはきわめてSOFT MACHINE 的な演奏といえるだろう。
4 ピースによる上質のスリルをはらんだ即興アンサンブルである。
スネア・ロールをきっかけにパワフルなジャズ・ドラム・ソロへと移行、サックス、コルネットの絶叫の一閃をはさみつつ、荒々しい打撃戦が繰り広げられる。
ドラムスとベースが再び秩序を促し始めるも、二管は断続音による挑発を繰り返し、再びリズム・セクションも加わって文字通り音の渦巻のような混沌のうちに終わる。
パワフルにしてストーリーもあるフリー・ジャズ作品。4 パートをそれぞれが充実したプレイを放ち、インタープレイも冴えている。
2曲目「Something Passed By Me」(5:37)
コルネットとサックスが互いをけん制するように不気味なハーモニーを成し、つかず離れずながらもぬかりなく、熱気迸る演奏が続く。
前曲と同様な音構成ながらも、緊張感が強い。
二管の呼応は次第に高まり、絶叫へ。
ベースのシングル・ノート連打も不気味さをあおっている。
ドラムスはひたすら乱れ打ち。
全体に乱調ながらも、息遣いのある管楽器と無表情なリズム・セクションに対比の妙がある。
長いクレシェンドとともに緊張が高まってゆくさまは、手に汗握るという表現が相応しい。
おそらく完全な即興なのだろう。ストレートな高揚目がけてぐわっと膨れ上がるような演奏だ。
3、4 曲目は盟友マイク・ラトリッジが参加、SOFT MACHINE ファンとしては聴き逃せない。
3曲目「Blind Badger」(6:46)
ファズ・ベース、エレクトリック・ピアノ、ダブル・ベースによる怪しく謎めいたオープニング。
トリルで波打つ木管風の音はオルガンだろうか。
コルネットとサックスはすでに動き始めている。
エレピとベースが支えて、二管が明快なユニゾン・テーマを放つ。
クールなブロウがビッグ・バンド調である。
ダブル・ベース、シンバル主体のドラミングなど、モダン・ジャズそのものな面もあるのだが、つややかで攻撃的なサックスとエレクトリック・ピアノには若々しくキナ臭い主張があり、あくまでスリリング。
チャリグ、ディーン(まさに細身のコルトレーン)とソロが渡り、シャープなユニゾン・テーマへ戻る。
エンディングへ向かうエレピと二管のやり取りもカッコいい。
本アルバム中、最も明快な構成を持つジャズ作品だろう。若々しい演奏だ。
冒頭の編集からスタジオ・セッションを切り取ったことが分かるが、そこに独特の生々しさが感じられる。
4曲目「Neo-Caliban Grides」(6:58)
けだるく、さえないながらも奇妙に印象的なブラスのテーマから幕を開ける。
そして、すぐさまラトリッジとディーンのエキサイティングなインタープレイへ。
オルガン、サックス、ドラムス全てが絶叫し、爆発的な即興演奏を見せる。
続いて、バビントンとホワイトヘッドが、不気味なグリッサンド対速弾きというベース合戦を披露。
ラトリッジがエレピで参戦するのをきっかけに、管楽器、ドラムスも戻ってくる。
サックス、コルネット、二つのベース、エレピ、ドラムスによる壮絶な集団即興。
すべては、混沌の坩堝へとなだれ込む。
やがて、サックスはテーマを再提示。
沸立つような即興の名残を引きずりつつ終わる。
テーマ以外はフリーなソロ、インタープレイをフィーチュアした作品だ。
この 3、4 曲目は実際に SOFT MACHINE のライヴでも演奏されている。
(3 曲目は「BBC Radio 1 Live In Concert」、4 曲目は「Virtually」などに収録)
5 曲目「Part:The Last」(5:53)
電化マイルスの抑制されたプレイ・スタイルを継承しており、爆発的にエネルギーが発散される演奏が続く中において、秩序と統制を意識させ、一際光る。
端正なリフを刻むベース(音色にもう少し配慮があるとよかったが)とディーンによるエレピ演奏は、SOFT MACHINE と区別はつかない。
クールなコルネットも詩的に響く。
見事に計算された締めくくりである。
僕はこれが一番好きだ。
6曲目「Banking On Bishopsgate」(20:33)ボーナス・トラック。
72 年ラジオ・ブレーメンの収録。
前半は、トロンボーン、エレピ、リズム・セクションによるかなりヘヴィな即興風ジャズロック。
ジェフ・グリーンによる KING CRIMSON のジョン・ウェットンを思わせるワウ・エレクトリック・ベースが新鮮。
エレピはディーン。
もう一つの SOFT MACHINE といっていいカッコいい演奏です。
後半は、ディーンがサックスへ持ちかえ、一気に痛快なるフリー大会へ。
すさまじい体力です。
7曲目「Fun Cap」(4:36)ボーナス・トラック。
71 年ロンドンでのライヴ収録。
NUCLEUS 的なファンク・チューン。
ニック・エヴァンスの超速吹き、チャリグ、エヴァンスの絡みもセクシー。
ジェフ・グリーンのギターのコード・ストロークは、レイ・ラッセルやクリス・スペディングを思わせる。
ディーンはエレピ。
フェード・アウトが残念だ。
8曲目「A.N.1.」(5:02)日本盤のみのボーナス・トラック。
72 年ラジオ・ブレーメンの収録。
(CUNEIFORM RUNE 103)
| Elton Dean | alt sax, saxello |
| Mongezi Feza | pocket trumpet |
| Marc Charig | cornet, tenor horn |
| Radu Malfatti | trombone |
| Paul Nieman | trombone |
| Alan Skidmore | tenor sax |
| Keith Tippett | piano, celeste |
| Harry Miller | bass |
| Louis Moholo | drums |
| Harry Beckett | trumpet |
| Nick Evans | trombone |
2003 年発表の「Live At The BBC」。
NINESENSE による 1975 年と 1978 年の BBC ライヴ録音の発掘である。
内容は、モダン・ジャズを変形、誇張したフリージャズ。
前半は、大規模編成だがいわゆる集団即興ではなく、テーマとソロの枠組み内で自由度を高めたり、挑発的なテーマ・アンサンブルを繰り広げるアプローチである。
妙な言い方だが、クラシックなフリージャズである。
後半、78 年録音では、キース・ティペットの大編成ものに近い爆発的なパワーで重厚に迫る。
最も特徴的な音は、ティペットのピアノ。
「Dancin'」
「Soothing」
「Sweet Francesca」
「Bidet Bebop」
「Nicra」
「Seven For Me」
(HUX 046)
| Elton Dean | alt sax, saxello |
| Alan Skidmore | tenor sax, soprano sax |
| Chris Laurence | acoustic bass |
| John Marshall | drums |
77 年発表の「El Skid」。
フロント二管は "オーソドックスな" フリー・ジャズ、そしてリズム・セクションがほとんど "ロック" している痛快作。
高速ランニング・ベースと容赦なくロールするドラムスがカッコいい。
フロントもそれを認めたのか、最終曲の終盤は "リズム隊ソロ" になる。
ディーンとスキッドモアは、重奏によるモダン・ジャズのパロディのようなテーマ以外は交互にソロを取る。
しかし「絡み」は見せない。ジャズの演奏上の作法にあまり詳しくないのだが、そういうものなのだろうか。
突発的に相手に攻撃をしかけてもおもしろいと思うのだが。
むしろ、ローレンスのベースがよくサックスに応じているように聞こえる。
モダン・ジャズ調のテーマを交えたりユーモアを漂わせるなど、NINESENSE よりもリラックスしたイメージのある、聴きやすい作品である。
「Dr.Les Mosses」(8:23)まずは、リズム・セクションの元気に驚かされる。
「First In The Attic」(12:37)ノスタルジックな二管のテーマがいい。ディーン、スキッドモアのソロもブルージーでリリカルな調べを浮かべる。終盤にベース・ソロあり。
「Thats For Cha」(10:48)ディーンはサクセロ、スキッドモアは、ソプラノを使っている。SOFT MACHINE でも耳にしたフレーズが現れる。わざとらしい転調の入ったテーマが愛らしい。ベースは、あたかもギターのパワーコードのように重音を鳴らすなど、発想もプレイも充実している。
「K And A Blues」(9:39)パワフルなテーマが短いながらもスカっと強烈なインパクトを放つ。ソロはモダン・ジャズ調にまとめているのだが、まったく悪くない。
それにしてもものすごいベース・ランニングです。
(CUNEIFORM RUNE 85)
| Elton Dean | alt sax, saxello |
| Sophia Domancich | piano |
| Paul Dunmall | tenor sax |
| Tony Levin | drums |
| Paul Rogers | bass |
95 年発表の「Silent Knowldge」。
「正統的」なフリー・ジャズ作品。
キース・ティペットを除いた、MUJICIAN のメンバーとの録音。
ピアノはソフィア・ドマンシッチ。
フリー創成期の 60 年代を思わせる、ある意味ノスタルジックなサウンドだ。
特に、リリカルなテーマ演奏がいい。
ドマンシッチ、レヴィン、ロジャースがオーセンティックにして安定感のあるプレイを放つ一方、ダンモールとディーンがまさにフリー・ジャズの王道たる爆発的なソロで暴れまわる。
パワーに任せて爆走するダンモールと対照的に、ディーンのソロにはメロディアスにして郷愁を誘う歌がある。
「Gualchos」(28:37)たぎるような演奏の果てに切ないテーマが浮かび上がる力作。
二つのサックスのタイプの違いがよく分かって興味深い。
「Sound Awake」(14:56)
「First In The Wagon」(11:20)
「Trains For Tooting」(13:54)
(CUNEIFORM RUNE 85)
| Elton Dean | sax, flute |
| Alex Maguire | piano |
| Roberto Bellatalla | bass |
| Tony Bianco | drums |
98 年発表の「Headless Quartet」。
エネルギッシュなフリー・ジャズ作品。
ハイ・テンションの演奏にもかかわらず、音質に暖かみがあり、歌には軽やかなクールネスが感じられ聴きやすい。
ピアノとサックスは豊かな表現力をもっている。
フリー・ジャズとインプロヴィゼーション、またフリー・ジャズと現代音楽などの関係には詳しくないのだが、ここで聴くことのできる音楽には、刹那の美しさと凛とした力強さをあらん限り持続させようという意気込みが感じられる。
そして、激しく運動しながらも、どこまでも明朗でオプティミスティックな響きが底流にある。
ポップ・ミュージックによく見られる「製品」的な冷たさからも、ドラッギーで自滅的なヤケっぱちさからも遠いところにある音のように思う。
「Nasty... Not Nice」(16:40)
「Like Bacon」(24:55)
「Web Of Wyrd」(21:52)
(CP 1006)