イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「EGG」。 67 年結成の URIEL から 69 年に改名。 ヒレッジ脱退を受け、デイヴ・スチュアートがフロントにまわるオルガン・ロックとなる。 DECCA から二枚のアルバムを発表し、72 年解散。 74 年に再結成し、さらに一枚作品を残す。 オルガン中心のサウンドながら超絶技巧による音の爆撃のような THE NICE とは対照的に、サイケデリックな感触を残しつつも知的でクールな音つくりである。
| Mont Campbell | Bass,Vocal |
| Clive Brooks | Drums |
| Dave Stewart | Organ, Piano, Tone Generator |
70 年発表の第一作「EGG」。
ヒレッジ以上のプレイヤーは発見できずにギタリストを採用しないと決心し、キーボード・トリオの道を歩むことになったデビュー作。
THE NICE に憧れながらも、オルガン・ロックというにはあまりにこんがらがったリズムを特徴とする、いかにも音楽インテリ風の内容となっている。
第一作にして、すでに彼らの目論見を達成しているような、実験色の強い内容である。
1 曲目とバッハ以外は、全てグループによるオリジナル作品。
プロデュースもグループ。
「Bulb」(0:09)爆音のみ。
作者は Gallen とあるが誰?
「While Growing My Hair」(4:02)8 分の 6 拍子の何気ないジャジーなヴォーカル・ナンバー。
2 拍子系と 3 拍子系が交じり合ったシンコペーションのため、妙におちつかない。
「I Will Be Absorbed」(5:11)静と動のコントラストが面白い曲。
オープニングの 8 分の 18 拍子と穏やかな 4 分の 7 拍子の二つのテーマが、ハードなオルガン、ピアノの奏でる 8 分の 13 拍子リフへと展開する、途轍もない変拍子の実験である。
この「凝り性」は、NATINAL HEALTH から BRUFORD にまで引き継がれてゆく。
(「Fugue In D Minor」(2:49)は、バッハのトッカータとフーガより抜粋。
ヒネリの効いた曲が多い中、この曲は異色ですらある。
ごくノーマルなチャーチ・オルガン・ソロ。
こういうコテコテなスタイルが当時は受けたのかもしれない。
「They Laughed When I Sat Down At The Piano...」(1:21)は、ピアノによる大仰な和音とメロディそして華美にクラシカルな演奏に妙な音のトーン・ジェネレータが笑い声のように絡みつく、ジョークのようなナンバー。
「The Song Of McGillicudie The Pusillanimous」(5:09)8 分の 5 拍子でエネルギッシュに疾走するナンバー。
鋭いベースのリフとハモンド・オルガンの荒々しい響き、そしてたたみかけるようなリズムの上で繰り広げられる、激しくサイケデリックなインプロヴィゼーション。
これぞアート・ロックというエネルギーに満ちている。
「Boilk」(1:04)は、テープ操作のように旋律がユラユラと揺れながら響き、ノイズやテープ逆回転による効果音が現れる。
小さな前衛。
「Synphony No.2」(20:40)旧 B 面を飾ったシンフォニー。
第一楽章は、軽やかなオルガンのリフレインからベースとオルガンによるユニゾンの 4 分の 9 拍子のリフへと、発展する。
テンポアップしたかと思うと、グリーグの「山の魔王の宮殿」のテーマが快調に飛び出してびっくり。
一転落ちつく暇も無く、ジャズ色の強いオルガンのインプロヴィゼーションへと飛び込む。
油断できない展開だ。
両手でフルに弾きまくるハモンド・オルガンは、抜群の音色である。
フレージングもスリリングだ。
さらにブルージーな 4 分の 3 拍子のリズムでソロが続き、オープニングの 4 分の 9 拍子のベース・オルガンのユニゾン・リフレインに戻ってカタがつく。
第二楽章はオルガンによる柔らかなメロディに、フロアタム、スネアの連打が重なるイントロダクション。
不気味な低音が響くと、4 分の 4 拍子でオルガンとピアノがハモるテーマへ。
再び 3 連符のドラム連打、そしてさきほどのテーマにニ拍加えた 4 分の 5 拍子におちつく。
トムトムのようなドラム・ソロが繰返される。
テーマの最後の拍が崩れ、ピッチを揺らすオルガンのメロディが重なり始める。
そしてトーン・ジェネレータの混沌としたソロへと突入。
第三楽章(Blane)ではトーン・ジェネレータのノイズを受け、オルガンが静かに浮かび上がり、ストラビンスキーの「乙女たちの踊り」を奏でる。
声のようなノイズが、繰返されている。
最後の第四楽章では、オルガンがスピーディにして調性の希薄な、7 拍子のテーマを提示。
ベースとドラムはオルガンに反応し、順次ソロを繰り広げる。
複雑なリズム展開と予想も付かないモチーフが、次々と繰り出される痛快な作品。
ハモンド・オルガンの深みのある音あっての作品だ。
キース・エマーソンばりに弾き捲くるスチュアートがきわめて新鮮。
ジャズとクラシックの間を現代音楽が駆け抜けていくようなクールネスがある。
ただしトーン・ジェネレータのプレイが長くやや辟易する。
オルガンの可能性を追求するために、クラシックやジャズを盛り込んだ実験的キーボード・ロック。
サウンドは同時代の THE NICE に通じるが、変則リズムや調性の実験のような面も強調されており、このグループの挑戦的な姿勢が浮かび上がっている。
いわゆるアート・ロック、オルガン・ロックの枠には収まらないスケール感は、スチュアートとキャンベルという優れた作曲/演奏能力を持ったミュージシャンが、緻密な計画とユーモアを駆使した結果だろう。
カッコいいロックは必ずしも巧みな演奏とは直結しないのだが、ここでは演奏力を高めることでロックのグレードを上げるということが試みられている。
ユーモアも交えており、1 つの誠実なアプローチには違いない。
そして、決して理屈ばかりではない。
ハモンド・オルガンのプレイに明らかなようにグルーヴやノリも一流である。
トーンジェネレータのようなテクノロジが陳腐化してしまうのとは対照的に、このオルガンのプレイ、サウンドやノリは決して時とともには色あせない。
ロックの不易な部分である。
キーボード・ロック・ファンのみならず、ジャーマン・ロックのようなサウンド志向のファンにも受けそうな内容だ。
(POCD-1843)
| Mont Campbell | Bass, French Horn, Organ, Piano, Vocal |
| Clive Brooks | Drums |
| Dave Stewart | Piano, Organ, Tone Generator |
| guest: | |
|---|---|
| Henry Lowther | Trumpet |
| Mike Davis | Trumpet |
| Bob Downes | Tenor Sax |
| Tony Roberts | Tenor Sax |
70 年 11 月発表の第二作「The Polite Force」。
オリジナル曲が充実し、曲の性格もはっきりしてきた好作品といえるだろう。
ゲストもブリティッシュ・ジャズ界の名プレイヤーたちが揃っている。
どんなにアグレッシブな演奏でもクールに燃え、上品さを失わないのがデイヴ・スチュアートかと思っていたが、本作ではキース・エマーソンばりに熱いフレーズを叩き出している。
もちろんメロディアスでジャジーなプレイのセンスもいい。
プロデュースはニール・スレイヴン。
1曲目「A Visit to Newport Hospital」(8:26)。オープニングのベースのテーマは EL&P の「Barbarian」を思わせるヘヴィさだ。
しかし、メロディアスな変拍子テーマを奏でるハモンド・オルガン、オブリガートと間奏のプレイ、控えめながらも小粋なピアノ、さらにはディストーションのかかったギターのようなサウンドは、やはりスチュアートのものだ。
順序は逆だが、どうしても HATFIELD AND THE NORTH を思い浮かべてしまう華やかさがある。
ヴォーカルの最後と重なるハモンド・オルガンの決めのフレーズの鮮やかなこと!
ジャジーな歌メロもすばらしい。
ヘヴィさとジャジーなメロディがうまくバランスし、アートロック的なサイケ色も失っていない傑作である。
音色から考えて、二つのオルガンを使い分けているようだ。
2曲目「Contrasosng」(4:24)ブラス・セクションを迎えた作品。
変拍子の実験曲(レコードなら、針が飛んでいないか心配になる)としか思えない内容である。
けっつまずきそうなリフの連続。
テーマは 8 分の 5 拍子 + 8 分の 9 拍子。
おそらくキャンベルが主導権をとった野心作である。
3曲目「Boilk」(9:21)(なぜか第一作にもあった名前の曲だ)
鐘の音やヴィブラフォンそしてテープ逆回転効果のコラージュのような実験曲。
オルガンの逆回転音は、メロトロンに似ている。
ドラムの逆回転音は、ギターのストローク。
電子音ノイズが唸りを上げる。
エンディングに、チャーチ・オルガンの奏でるバロック音楽(原曲はバッハらしい)が重なってくる。
この頃の常套手段ではあるが、救いの手をさし伸べられたようで心やすらぐ。
前作でも同様な部分があったが、やはり少しつらい。
4曲目の組曲「Long Piece No.3」
一楽章(5:07)は、オープニングのシリアスなリフレインが強烈。
ベースが 8 分の 9 拍子でリフを刻み、オルガンは 8 分の 7 拍子 + 8 分の 2 拍子、8 分の 7 拍子 + 8 分の 4 拍子、8 分の 7 拍子 + 8 分の 6 拍子、8 分の 7 拍子 + 8 分の 8 拍子のシーケンス。
頭痛がしそうな演奏だ。
エフェクトで歪んだベースとオルガンの音は、SOFT MACHINE的。
終始ポリリズミックな複雑な曲である。
ドラムの演奏を聴いていると自分の心臓の鼓動が変になりそうだ。
二楽章(7:37)は、鮮やかなハモンドのフレーズからキーボードの限界を確かめるような、無調/リズムレスの電気の混沌へと突っ込む。
そして一転ピアノとオルガンが絡む変拍子アンサンブルへ。
最後はオープニングのハモンド・オルガンが戻ってくる。
三楽章(5:02)は、ベースとピアノが絡み合うイントロからへヴィーなオルガンへ。
ハモンドは軽やかに変拍子の上でメロディを奏でる。
ブレイクの応酬と見事なアンサンブル。
次第にトーン・ジェネレータの電子音が周囲を圧し始め、リズムは去ってゆく。
最終楽章(2:51)は、ハモンドの 7 拍子リフレインと疾走感あふれる演奏。
スピーディーな 5 拍子のドラミングとともに、オルガンが走る。
数多いブレイクをものともせず、9 拍子のオルガンのリフレインと、複雑怪奇な拍子のドラムが続いて終わる。
これは複合リズムの実験である。
第一作とおなじく、一筋縄ではいかないキーボード・ロック。
まずはスチュアートのハードなハモンド・オルガン、ピアノのプレイで楽しもう。
彼はとてもよく楽器を歌わせているし、ヘヴィな演奏をぶちかましてくれる。
特に、オープニング・ナンバーや最後の組曲は楽しめる。
そして実験的な変拍子アンサンブルも組曲で、みごとに花開いた。
流れるようなハモンド・オルガンと変則的なリズムのコンビネーションは、まさに完璧。
したがって全体通して聴いた後には、アート・ロックからよりジャジーで現代的な音へに近づいているような感触が得られる。
このサウンドが HATFIELD AND THE NORTH や NATIONAL HEALTH につながってゆくのだろう。
スチュアートがプレイヤーとしてかなりのエネルギーを使っているのに対して、キャンベルはいよいよ難解で複雑な楽曲をクリエイトする方向へすすんでいるようだ。
後に NATIONAL HEALTH において、名曲を生み出す原点がここにあると同時に、二人の進む方向の違いもはっきり現れている。
スチュアートが、いわゆるレスリーを通したハモンド・オルガンをプレイするのは、この作品が最後ではないだろうか。
完成度は第一作を凌ぐ、オルガン・ロックとカンタベリー・サウンドの分水嶺である。
(POCD-1844)
| Mont Campbell | Bass, Voice, French Horn, Piano |
| Clive Brooks | Drums |
| Dave Stewart | Piano, Organ, Bass on 6 |
| guest: | |
|---|---|
| Jeremy Baines | Germophone, Bonk |
| Lindsay Cooper | Oboe on 1,6, Bassoon on 1,6 |
| Tim Hodgkinson | Clarinet on 1,6 |
| Steve Hillage | Guitar on 5 |
| Maurice Cambridge | Clarinet |
| Stephen Salloway | Flute |
| Chris Palmer | Bassoon |
| The Northets | Choir on 4 |
| Amanda Parsons, Ann Rotherthal, Barbara Gaskin | Vocals on 4 |
74 年発表の第三作「The Civil Surface」。
すでにグループは解散していたが、HATFIELD AND THE NORTH のメンバーとして活躍していたデイヴ・スチュアートが、ヴァージンからソロ作のオファーを受けたことをきっかけにグループを再結成、本作は録音された。
内容は、EGG らしいクラシカルな作編曲と現代音楽指向に、HATFIELDS を経たジャジーなポップ感覚が融合した前衛色濃いロックである。
前作までの迫力あるオルガン・ロック+クラシックというパターンをさらに発展させ、多彩なリズムや器楽による音楽的効果を綿密に計算して仕上げた、完成度の高い作品集である。
管楽器を使用した室内楽作品を盛りこむかと思えば、挑戦的な変拍子がドライヴするスリリングなロックもある。
そして、緻密で強迫的な演奏のみならず、独特のシニカルなユーモア・センスも健在だ。
このサウンドを支えるゲストも多彩。
HATFIELDS のハーモニーを支える NORTHETS ばかりか、HENRY COW のメンバーや旧友スティーヴ・ヒレッジも参加している。
「the civil surface」は「普通の暮らし(の表層)」という意味らしい。Below the civil surface というと「市民生活の表層の下には...」のような、ややジャーナリスティックでセンセーショナルなニュアンスが出るようだ。
ジャケットのオレンジがその市民生活だとすると、その中には?
オレンジを配達したらしいトラックも小さく描かれている。
「Germ Patrol」(8:31)
「Wind Quartet 1」(2:20)キャンベルによる管楽器アンサンブル。
「Enneagram」(9:06)
スリリングにして洗練されたファンタジーの味わいもある名作であり、HF&N 的なセンスが強く感じられる。
キャンベルのファズ・ベースもカッコいい。
坂本さんのライナーノーツにあるとおり、音数を組み合せたアンサンブルではなく、限られた音数の中、各自のフレーズとプレイヤー間の呼吸のみでいかに緊張感やドライヴ感を演出できるかという試みであり、それは大成功している。
「Prelude」(4:17)
NORTHETS が参加し、瞬間 NATIONAL HEALTH と化す。
「Wring Out The Ground Loosely Now」(8:11)ヴォーカルはキャンベル。
スチュアートの爆発的なソロあり。
「Nearch」(3:23)
放送事故誘導箇所があるためラジオではかかりません。
「Wind Quartet 2」(4:45)「1」よりも謎めいた管楽器室内楽。
非常に美しい現代音楽である。
アルバム最後の 2 曲で、非迎合的な姿勢を鮮やかに印象付ける。
(VIP-4075 / VJCP-68688)
| Clive Brooks | Drums |
| Mont Campbell | Bass,Vocal |
| Dave Stewart | Organ, Piano, Tone Generator |
2007 年発表の作品「The Metronomical Society」。
BBC 音源やライヴ音源から構成される編集盤。
「The Civil Surface」に収録された作品も多く、名品「Enneagram」もあり。
改めて THE NICE と並び称すべきモダン・クラシック寄りのオルガン・ロックの高峰であり、オルガンとファズ・ベースによる対位アンサンブルのクールさでは一歩も二歩も先へ行っていることに気づく。
この緻密に計算された、頭いい感じの音にもう一歩親しみやすさがあれば(抜けているところがあれば、かな)、チャートの上位に飛び出しただろう。
アイロニカルなユーモアというのは、信じ難いほどに世間には通じにくいのだ。
モント・キャンベルのヴォーカルがなかなかノーブルであることも再発見した。
音質は超上級の海賊盤程度。
「While Growing My Hair」放送用音源。
「Seven Is A Jolly Good Time」放送用音源。
「Germ Patrol」放送用音源。
「Enneagram」放送用音源。音のパズルのようでいてさまざまな表情を見せる名曲です。カンタベリーの代表曲の一つともいえる。
「Long Piece No.3 Part 2」72 年のライヴ音源。
「Long Piece No.3 Part 4」72 年のライヴ音源。HF&N の第一作でも使われていたキャンベルのテーマが現れる。
「There's No Business Like Show Business」放送用音源。
「Blane Over Camden」72 年のライヴ音源。
「Long Piece No.3 Part 3」72 年のライヴ音源。
「Wring Out The Ground Loosely Now」放送用音源。
「McGillicudie The Pusillanimous」放送用音源。
「I Do Like To Be Beside The Seaside」71 年のライヴ音源。オーディエンス録音。
(CD69-7202)