EELA CRAIG

  オーストリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「EELA CRAIG」。 70 年結成。 初期のオルガン・ロックから複数のキーボーディストをフィーチュアしたロマンティックなシンフォニック・ロックへと変遷する。 ポップ・フィーリングとクラシカルな味わいの絶妙のバランスは一貫する。 オーストリアを代表するアーティスト。 二作目から VERTIGO レーベル。

 One Niter

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Hubert Bognermayr keyboards, vocals
Hubert Schnauer keyboards, flute
Harald Zuschrader keyboards, flute, guitar
Fritz Riedelberger guitar, piano, vocals
Gerhard Englisch bass, percussion
Frank Hueber drums, percussion

  76 年発表の第二作「One Niter」。 透き通るストリングス・シンセサイザー、泡立つエレクトリック・ピアノ、切なくささやくフルートらによるきわめて叙情的、サウンド・トラック的演奏を 大仰なリズム・セクションと管楽器を思わせるシンセサイザーがいやがうえにも盛り上げてゆく、ファンタジックなシンフォニック・ロック。
  豊富なキーボードを活かしてみごとに管弦楽調を再現しており、B 面の大作で見せるクラシック、バロック調の演奏などほとんどパイヤールか、イ・ムジチかという驚異的な水準である。 深みと広がりを意識させるスペイシーな効果もみごとだ。 さらに、「ロック」なパートでは、ギターやベース、クラヴィネットを中心に思いのほかファンキーでリズミカルな演奏を繰り広げて、メリハリをつけている。 このなかなか堂に入った R&B 風の演奏から想像するに、グループ初期において相当さまざまな音楽的な変遷を繰り広げたのだろう。 (たとえば A 面終盤のオルガンが炸裂するシーンなど全く別のグループのようだ) クラシックとハードロックという組み合わせは東西さまざまに多いのだが、こういうファンキー・テイストを兼ね備えるクラシカル・ロックというのは珍しい。 3 人もいるキーボーディストがそれぞれ別の趣味嗜好をもつ可能性も高い。 また、ギターのプレイはアンディ・ラティマー系の極端すぎるほどブルージーな泣き一辺倒だが、意外に突出することなく全体にとけこんでいる。 これはおそらくロマンチシズムの質が首尾一貫しているからだろう。 さらには、ピアノ、メロトロンらによる懐かしめのポップ・テイストも忘れていない。 サンレモ音楽祭に出ても不思議のない高水準のラヴ・ロック的な面もあるのだ。 ヴォーカルはさほど目立たず、控えめなハーモニーとともにインストゥルメンタルに若干の色を添えている感じだ。 やや頼りなげながらうっすらと空気を染めるようなところが、英国の DRUID のイメージに近い。
  全体としては、緩やかな起伏を見せつつ演奏は穏やかに進んでゆき、時おり「ロック」ぽく強まったり、クラシカルで流麗なタッチで迫ったりと濃淡の変化の相を見せる。 ベースにはあくまでゆったりとした空気感がある。 クラシカルで上品な物語性とややサイケデリックな幻想性が交差したところへ、ポップな甘ったるさ、「泣き」、「雅」、逞しいリズムをバランスよく配しているともいえるだろう。 超然と安らぐ姿勢やポコポコ鳴っているパーカッションも合わせて考えると、やはりドイツ・ロック的といえるかもしれない。
  何にせよこの聴きやすさ、シンフォニック・ロック、プログレ・ファンに限らず、普通のポップス・ファンにも十分受け入れられそうだ。 改めて多彩であることがプログレの魅力であることを感じさせる内容でもある。 CAMEL のファンにはお勧め。

  「Circles」(18:51)
  「Loner's Rhyme」(4:17)
  「One Niter Medley」(11:09)
  「Venezuela」(3:23)
  「Way Down」(7:19)
  
(BT-8111)

 Hats Of Glass

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Hubert Bognermayr keyboards, vocals
Hubert Schnauer keyboards, flute
Harald Zuschrader keyboards, flute, guitar
Fritz Riedelberger guitar, piano, lead vocals
Will Orthofer lead vocals
Gerhard Englisch bass
Frank Hueber drums

  77 年発表のアルバム「Hats Of Glass」。 甘く豊かな声質が ANYONE'S DAUGHTERKAYAK を思わせる、存在感のあるリード・ヴォーカリストが加入し、歌の補強が図られた。(ただし、全曲をこのヴォーカリストが担当しているわけではない) このヴォーカリストの加入に象徴されるように、クラシカルだがメロディアスで繊細なイメージがやや強まり、R&B 色はほとんどなくなった。 弾けるようにリズミカルな場面もあるが、どちらかといえば、悠然と歌い込むような場面が多いと思う。 基本的な作風は大きくは変わらず、A 面 2 曲目や B 面 2 曲目のようにシンセサイザーを中心にキーボードが活躍し、特徴の一つである泣きのギターとともに濃密なロマンを描いてゆく。 しかし全体に、前作で顕著だった端正で気品ある姿勢よりも、甘く切ない情感の方が強調されているようだ。 端的にいって無難なポップ路線へ半歩寄ったイメージである。 それでも、この濃厚で熱っぽい叙情性は 70 年代後半にしては奇跡的だ。 ドイツ、オーストリアの感性には目を見張ってしまう。 ジャケットのイラスト(「宇宙戦争」の円盤など 50 年代ハリウッド SF 映画へのオマージュはありそうだ)や一部の作品のタイトルなどから、「宇宙」をモティーフにしたアルバムとも考えられる。
   1 曲目は、新しい作風を象徴する佳曲。 ロマンあふれるメロディ・ラインが、デリケートな歌唱表現と絶妙の一致を見せる。 ロックといったときにイメージされるハードな音のまさに対極にある音だが、こういう音すらも取り込んでちゃんとヴァイブレーションを伝えてくるところがロックの懐の深さである。 この作品だけは、作詞/作曲がグループのメンバーではない。 2 曲目は、アルバム・タイトル曲であり、「Epitaph」を思い切り甘く切なくしたようなシンフォニック大作。 独特の無常感が漂う。 ヴォコーダやシンセサイザーの音がなんとも懐かしい。 格好のシングル向けチューンである。 3 曲目は、いかにもクラシカルなアンサンブルをフィーチュアしたポップス風シンフォニック・チューン。 メロディ・ラインやオルガンのアレンジなど、きわめてポップス的である。 こちらもレゾナンスの効いたシンセサイザーがいい。 全体にドラムスがややおとなしめに録られている。 B 面 1 曲目は、ファースト・アルバムを思い出させるパーカッシヴなハモンド・オルガンのアタックで目を覚ますが、本編はわりとけだるげな 70 年終盤王道ポップス。にじむようなエレクトリック・ピアノの和音とフルート風のシンセサイザーが AOR している。 2 曲目は、フォーク・フレイヴァーある可愛らしい作品。展開部のインストは中央ヨーロッパらしい民族色を見せながら緩急が過激に変化する大胆なもの。 ギターとシンセサイザーがリードするジャズロック風の展開もある。力作。 3 曲目は、優美でロマンティックなポップ・チューン。ファルセットのハーモニーになんともいえぬ垢抜けなさあり。 4 曲目は、山下達郎か?
   ヴォーカルは英語。 プロデュースはグループとウリ・リッツェル。

  「A Spaceman Came Travelling」(4:50)
  「Hats Of Glass」(10:22)
  「Chances Are」(5:26)
  「Heaven Sales」(3:00)
  「Holstenwall Fair」(8:08)
  「Caught On The Air」(3:54)
  「Cheese」(3:30)
  
(BT-8115)

 Missa Universalis

 No Image
Hubert Bognermayr keyboards, vocals
Hubert Schnauer keyboards, flute
Harald Zuschrader keyboards, flute, guitar
Fritz Riedelberger guitar, piano, lead vocals
Will Orthofer lead vocals
Gerhard Englisch bass
Frank Hueber drums

  78 年発表のアルバム「Missa Universalis」。 キリエ・エレイソン(「主よわれを憐れみたまえ」)を唱えるミサ曲をフィーチュアした、クラシカルなコンセプト・アルバムである。 曲の配置も実際の典礼における通常のミサ曲のものになっているようだ。 特徴は、エレクトリック・キーボードを大きくフィーチュアした演奏とうっすら厳かなヴォーカル・ハーモニー。 祈りの唱和がそのままメロディアスなヴォーカル・ハーモニーと重なること、シンセサイザーなどキーボードによるスペーシーなサウンドが宗教的な厳粛さと自然に結びつくことなど、厳かなクラシカル・テイストとメロディアスなポップ・フィーリングが絶妙にオーヴァーラップしている。 もともと哀愁のメロディアス路線であるだけに、クラシカルなアレンジは、ハイトーンのハーモニーが甘ったるくなり過ぎないための薬味としてもしっかりと機能している。 得意のラヴ・ソング風の展開が飛び出しても、甘めの味つけに品があるので浮き上がるようなことはない。 それどころか、厳かなメッセージを心地よく吸収させるための役割をしっかり果たしている。 耳と心に優しく諭すように語りかけ、なおかつ生の躍動とイマジネーションも刺激するという、いわば音楽的に完成されたポップスである。 (ツールとしての音楽としても優れている、という考え方もできる) KAYAK が庶民的な愛らしさ、親しみやすさを基本に洗練を重ねたポップ・スタイルとするならば、こちらは貴族の典雅と退廃をその伝統と騎士道精神性で包んだスタイルである。 したがって、これだけ粛然とクラシカルな作風ながらも、どこかにハードロッカーとしてのマインドも持ち続けているように思う。 もちろん、CAMEL のアンディ・ラティマーを思わせる泣きのギターも健在であり、ミサ曲のエンディングではみごとなプレイを見せる。 イタリアの I POOH に近いセンスを感じます。 もう少し華やか(女性の声があれば、かもしれない)になると、ドイツの EDEN の音楽にも近づいたろう。 ヴォーカルはラテン語、英語、ドイツ語など。 プロデュースはグループとウリ・リッツェル。 クラヴィネットや位相系のエフェクトの音がとても懐かしいです。

  「Kyrie」(11:58)
  「Gloria」(5:57)
  「Credo Part I」(4:18)

  「Credo Part II」(3:44)
  「Sanctus」(8:46)
  「Agnus Dai」(5:19)
  「Amen」(2:03)
  
(BT-8119)


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