モナコのプログレッシヴ・ロック・グループ「EDHELS」。 81 年マーク・セコティとジャン・ルイ・スゾーニを中心に結成。 2003 年第六作となる久々の新作「Saltimbanques」発表。 若干のメンバー・チェンジを経るも、セコティを中心にしたシンフォニックなギター・フュージョン・サウンドは一貫する。
| Marc CECCOTTI | guitars |
| Jean Louis SUZZONI | bass, guitars |
| Jean Marc BASTIANELLI | keyboards, programming, percussion |
2003 年発表の作品「Saltimbanques」。
内容は、アコースティック・ギターとエレキギターをフィーチュアしたアンビエントなフュージョン・ミュージック。
オーヴァーダビングを駆使し、ドラムスもプログラミングである。
そういう景色の中を、さざなみのようにミニマルなアコースティック・ギターのアルペジオが湧き立ち、ロバート・フリップばりの荘厳なエレキギターが悠然と、ときに牙を剥きつつうねり続ける。
ややジャジーなったりエキゾティックな音を使ったり、若干の変化、揺らぎはあるが、透明で暗鬱なトーンが一貫する。
全体としては、アコースティックな音を使ったいかにもヨーロッパ的なモダン・クラシック調がもっとも冴えているようだ。
最終曲の大作は、そういう音とバンドらしい呼吸のよさが現れた傑作。
ピアノ、メロトロンやハーモニウム風のキーボードとアコースティック・ギターがメランコリックな文様を成してゆく。
もちろん 1 曲目もスリリングでカッコいい。
70 年代終盤の EGG レーベル辺りから出ていても不思議のない作品である。
インストゥルメンタルとしての説得力、雰囲気は今までで一番であり、最高傑作といっていいだろう。
音楽性に加えてタイトルに "Schizo" という言葉が現れる辺り、このグループもまた KING CRIMSON の洗礼を受けているのだろう。
(MMP 459)
| Noël Damon | keyboards |
| Marc CECCOTTI | guitars, keyboards, percussions |
| Jacques ROSATI | drums & keyboards |
| Jean Louis SUZZONI | guitars |
86 年発表の第一作「Oriental Christmas」。
内容は、インパクトのあるリフを刻み、サステインの効いた音で説得力をもってテーマを奏でる、ギター中心のシンフォニック・インストゥルメンタル。
また、シンセサイザーは、伴奏にとどまらず、音色を活かしてギターと積極的に絡んでゆく。
リード・ギターとこのシンセサイザーの巧みなコンビネーションによって描かれるのは、クリアかつ爽快な音によるファンタジックな演奏から、硬質でハード・ドライヴィングなシンフォニーまで幅広い。
ギターは、ソロをフィーチュアするだけではなく、ツイン・ギターによるアンサンブルも披露する。
タイトル・ナンバーは、シンセサイザーとギターによる透明感のあるサウンドが特徴の作品。
神秘的なイメージである。
いわゆる「ギター・フュージョン」とは趣を異にするのは、ファンク、ラテン色のないことと、ロック・ギター的なハードで骨太いタッチがあるせいだろう。
全曲セコティの作曲。
LP の不気味なジャケットは、CD 化でややまともなものに変更されている。
なお、本作以前の 81 年に「The Bursting」が録音されているが、発表は 2001 年に行われている。
1 曲目「Ragtag Baby」(3:17)
デジタルで華やかな音色のシンセサイザーとナチュラル・ディストーションのギターによるフュージョン・ナンバー。
やや東洋風のシンセサイザー・リフとギターによる反応のよいアンサンブル、ファンタジックな間奏、8 分の 6 拍子を巧みに交えるリズムなど。
2 曲目「Spring Road」(4:49)
ギターのロングトーンとうっすらと広がるシンセサイザーが生む神秘の世界。
最近の JADE WARRIOR を思わせる民族系アンビエント・ミュージックである。
パーカッションがエキゾチックなムードを盛り上げ、管楽器のように丸みを帯びたシンセサイザーのメロディが流れる。
ギターはフリッパートロニクスばりのディストーテッド・ロングトーン。
微かにささくれた音が特徴的。
瞑想的である。
3 曲目「Tepid Wind」(4:36)
メロディアスなギターのテーマが印象的なシンフォニック・フュージョン・ナンバー。
朗々と歌い上げるギターの脇を固めるのは夢の泡を吹き上げるエレピ、ブラス系のシンセサイザー。
ミドル・テンポのリズムもゆったりとした盛り上がりには欠かせない。
中盤のギター・ソロは内向的なアドリヴ。
後半はテーマをツイン・ギターでつややかに再現する。
エンディングまでギターは泣き叫び歌う。
ファタジックな音色とエモーショナルなギターのコンビは CAMEL を思わせる。
傑作。
4 曲目「Ca...Li...Vi...Sco」(3:48)
変拍子を用いたテクニカル・フュージョン・ナンバー。
5 拍子系のバッキングと 4 拍子系のメロディ部がポリリズミックなアンサンブルをなす。
しかしギターのテーマが太くエモーショナルなために過度な険しさはない。
むしろレイドバックしたフュージョンらしいプレイである。
左手主体の速弾きもあり。
シンセサイザーのリフや終盤のツイン・ギターの絡みは CRIMSON?。
ナチュラル・ディストーションとアームを巧みに用いたヴィブラートによる音色がすばらしい。
リード・ギターの存在感が大きい。
5 曲目「Oriental Christmas」(4:21)
ギターのアルペジオ伴奏でシンセサイザーが高らかに歌うファンタジー。
テーマはやや中華風。
胡弓のようなヴィブラートがおもしろい。
ハープを模したシンセサイザーのオブリガートは目のさめるような美しさだ。
打楽器系の音も微妙なニュアンスがありユーモラスかつデリケート。
全体のイメージはやはりヒーリング系だろうか。
2 曲目に比べると眼前に雄大なパノラマが広がるような飛翔感がある。
ドラムレス。
6 曲目「F...D...Smile」(5:32)
再びドリーミーな作品だが今度はギターが主役。
叙景というよりは叙情、人の心持が伝わるのはギターの特性だろうか。
ロングトーンのヴィブラートがここでも美しい。
リズムとともにやや厳しい表情も生まれるがギターのテーマは慈しみに満ちておりやさしい。
ベンディングはハケット風か。
泣きと力強さを兼ね備えたギターのプレイは GENESIS などシンフォニック系の楽曲のギター・ソロ部分を抽出したようにも聴こえる。
ミドル・テンポのリズムで淡々と進み重みをもちながらも開放を待ち焦がれるような曲調である。
ドリーミーなオープニングからは考えられないくらいシンフォニックで重厚な結末である。
7 曲目「Imaginary Dance」(4:15)
マリンバ風のリズミカルなシンセサイザー・リフに支えられて、ギターが軽やかに舞う西アジア風フュージョン・ナンバー。
ほんのりアジア風のギター・リフによるファンキーな傑作である。
ヘヴィな音と軽妙なリフのコンビがさえている。
またシンセサイザーとギターの絡みもいい感じだ。
アルペジオとベースによるブリッジはややダークな地中海風味もしくは MAHAVISHNU ORCHESTRA を思わせるもの。
一方シンセサイザーとギターのデュオは俄然インド風。
後半ギター・ソロが炸裂する。
8 曲目「Souvenir 76」(3:36)
ギターのアルペジオを伴奏にディストーション・ギターとフルートを思わせるシンセサイザーが対話するドリーミーなナンバー。
繰り返し主体の演奏の背景にはうっすらヴォカリーズが流れている。
ギターはまたもフリッパトロニクス風。
キット・ワトキンスとロバート・フリップの共演の如き様相を呈す。
ドラムレス。
9 曲目「Absynthe」(3:59)
伸びやかなギター・テーマが主役のエキゾチックなシンフォニック・フュージョン。
イントロのテクニカルなギター・デュオにあっけにとられると一転してテーマは民族系管楽器の様に高々と突き通るようなギターである。
スネアを打つ 8 ビートもなぜか民族風に力強く聴こえる。
展開部は軽やかな速弾きソロ。
テーマを経て後半はゆるやかなシンセサイザー・ソロ。
エンディングはブラス・バンド風のシンセサイザーが勢いをつける。
もう少しリズムが切れるとダンサブルなグルーヴが出るのだが。
10 曲目「Agatha」(4:00)
雄大なイントロとは裏腹にデジタリーなビートで進むエレポップ風のナンバー。
チョッパー風のシンセサイザー・ベースとスライド・ギターのようなギター・シンセサイザーがシーケンスの上で跳ねる。
なめらかなメロディ部に対しスネアをアクセント強く打つリズム。
全体にエレクトリックでおちつきがない。
11 曲目「Nan Madol」(5:52)
重厚かつダークなシンセサイザーとヘヴィなギターによる CRIMSON 的世界。
幽玄かつシンフォニックなシンセサイザーの響きの中ディレイを用いたギターがシンプルなテーマを打ち出す。
ギター・ソロはロングトーンの余韻が重なり合う幻想的なもの。
悪夢。
サンプリングと思われるヴォカリ−ズやストリングスが高まると厳粛な空気も生まれる。
ギターのメロディだけは切なくエモーショナル。
ヘヴィ・シンフォニック・インストゥルメンタルである。
メロディアスなギターときらきらしたデジタル・シンセサイザーのアンサンブルによるフュージョン・タッチのシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。
一貫したサウンドでなかなか幅広い曲想を描くが、アルバムの主題と思われるアジアン・エキゾチックなトーンが特に強調されている。
さて、ギターは、太く存在感のある音でメロディを紡ぎ出すスタイルを中心に、ロングトーンの幻惑的なプレイからテクニカルな速弾きまで、堂々たる演奏を見せている。
ロバート・フリップがフュージョン・ギターを弾いているようなイメージもある。
本作は比較的曲想の明解な小品集という印象なため、大作への期待も高まる。
個人的には、デジタルなタッチのサウンドでも曲がよければ、かなり聴けるという発見があった。、
(FGBG 4007)
| Marc CECCOTTI | bass, keyboards, lead & rhythm & synth guitar |
| Noël Damon | piano, keyboards, percussion |
| Jacques ROSATI | drums, percussion, keyboards |
| Jean Louis SUZZONI | lead & rhythm & Acoustic guitar |
| Jean Marc BASTIANELLI | Claviers |
88 年発表の「Still Dream」。
内容は、オリエンタル・ムードこそさほどでないが、基本的には前作の延長線上にある。
明確かつ広がりのあるシンセサイザーを背景に、ロング・トーン・ギターが悠々と歌うシンフォニック・フュージョン・インストゥルメンタルである。
アジアン・エキゾチズムがなくなると、ニューエイジ・ミュージック的な面と GENESIS 系ネオ・プログレという骨格が目立ってくる。
ひょっとすると、マイク・オールドフィールドもあるかもしれない。
きらびやかな音色、明解なテーマ、丹念な演奏とドラマチックな展開は CAMEL のようなファンタジック・ロックにも通じており、やはりその文脈は、プログレッシヴ・ロックなのだろう。
メロディアスなギターが好みの方にはお薦め。
テンポがワン・パターンなこととベース不在のせいで、低音のうねりが弱いところが、ロック・ファンにはやや辛いかもしれない。
ジャケットはよく見るとエロティック。
1 曲目「Capitaine Armoire」(5:02)
ネオ・プログレ風のリズミカルなリフと伸びやかなギター・ソロのレガートが対比するジャン・パスカル・ボフォ調ナンバー。
ロマンティック。
バッキングのシンセサイザーは華やかにして神秘的。
いつもながら思うのは、デジタル・シンセサイザー出現以来一曲で用いられる音色は飛躍的に増えたが、たくさん音を用いることと作品の美感とは全く関係がないということ。
うまく音にひたれないと芯が見つからずかえって聴きにくくすらある。
2 曲目「Butterflychild」(3:35)
ピアノとオーボエのアンサンブルをシンセサイザーでシミュレートしたようなナンバー。
神話世界をイメージさせるシンセサイザー・ヴォカリーズ。
オーボエはギター・シンセサイザーでしょう。
ファンタジックなニューエイジ・ミュージック。
オーボエの音はアナログ・シンセサイザー風でもある。
3 曲目「Boarding Pass」(4:46)
ピアノとギターのアルペジオを伴奏にギターが歌い上げるナンバー。
前半はメランコリックなテーマ。
後半はリズム入りで重厚なシンセサイザーのブリッジから再びギター・ソロ。
サステインの効いたギター・プレイはロック的ななじみやすさがある。
4 曲目「Fee D'hiver」(1:07)
アコースティック・ギター・ソロによるルネッサンス風小品。
5 曲目「October Dawn」(6:15)
随想風に次々と場面の変わってゆくナンバー。
イントロに続くアコースティックな感触のキーボードが美しい。
しかしハードなわりには澱みのあるイントロや中間部のフリップ風のギター・ソロなど内向的というか、今ひとつ吹っ切れない感じだ。
アンビエントというには何か思いがありエモーショナルというにはそっけない。
6 曲目「Gael & Selena」(1:52)
ピアノ・ソロ。
ウィンダム・ヒルでしたっけ、あんな感じ。
7 曲目「Christie Feline Girl」(4:21)
ややヘヴィなビートで追い立てるようなナンバー。
テーマは管楽器系のシンセサイザーによる西アジア風のメロディ。
揺らぎ澱みたゆとうギターがソフトなアクセントとなる。
8 曲目「Still Dream」(4:23)
コラール・ストリングス系シンセサイザーが響くなか打楽器・管楽器系のシンセサイザーが緩やかに歌い上げるニューエイジ・ミュージック。
ドラムレス。
終盤テーマをリードするオルガンのような音が存在感あり。
宇宙の営みを描くようでいて暖かみと人懐こさがあるところがユニーク。
9 曲目「Annibal's Trip」(4:38)
トライバルなドラム・ビートが強烈な神秘的シンフォニック・ナンバー。
テーマはフルート系のアタックのない音による。
鳴声のようなピッチ・ベンドや七色のオルガン(?)の如き深みのあるオブリガートが印象的。
ギターはフィードバックを活かしたユニークな速弾き。
フリップがブリューの真似をしているようだ。
雷鳴からチャーチ・オルガンへと飛び込むイントロなど展開はドラマチック。
傑作。
10 曲目「A La Lisiere Du Soleil」(4:55)
ポジティヴに明るくメロディアスなネオ・プログレ風のナンバー。
8 分の 6 拍子のテンポも快調。
間奏は 8 分の 5 拍子のリフレイン伴奏で二つのギター・シンセサイザーがおりなすアンサンブル。
間奏部分での澱み、沈み込みは読める展開。
終盤のヴァイオリン風のシンセサイザーのテーマが美しい。
いかにもニューエイジを経験したあとのプログレ・サウンドという感じ。
11 曲目「Heart Door」(7:37)
沈痛なテーマを経てドラマの果てにほとばしるようなギター・ソロ、シンセサイザー・ソロを迎える傑作。
アルバム全体のリプライズに痛快なまでのソロを加えたような内容だ。
ピアノと悲壮なギターによるテーマも悪くない。
エンディングは幻想的なシンセサイザーがたゆとう。
傑作。
12 曲目「Twine」(0:42)
エレアコニ重奏による瞬間 DISCIPLINE。
(FGBG 4001)
| Marc CECCOTTI | lead guitar、keyboards, percussions |
| Noël Damon | keyboards, percussions |
| Jacques ROSATI | drums, percussions |
| Jean Louis SUZZONI | lead & rhythm guitar, guitar synthesizer |
91 年発表の「Astro Logical」。
全曲が星座の名前をもち、アルバム・タイトル通り、「宇宙」がモチーフになっているようだ。
音楽的な内容は、シンセサイザーの音色がさらに明快さを増し、ギター・プレイにはアラン・ホールズワースを思わせるアグレッシヴな表現も顕著になっている。
したがって、SF 風の音響とメロディアスなギターというサウンドのスタイルはそのままに、ニューエイジ・フュージョンから、よりテクニカルな方向へと傾斜しているようだ。
この印象は、ギター・シンセサイザーの多用によるのかもしれない。
また、専任ベーシストをおかずに、低音部をシンセサイザーで補ったり、低音部のないアンサンブルが特徴的であったが、今回は、ベースのスラッピングのような音が聴こえる。
これも初めてではないだろうか。
ロバート・フリップ風のアンビエントかつエキセントリックな音響に、巧みなアーミングを用いたアウト・スケール気味の音程による速弾きも交え、ギターの表現力は確実にアップしている。
楽曲も、メロディアスなギターの醍醐味を楽しむ向きにはやや不満かもしれないが、偉大なるワンパターンから若干の変化を見せている。
さまざまな曲調へと挑戦しているという意味では、今までで一番ではないだろうか。
ただし、フェード・アウトが多く曲想がスケッチ風にとどまっていること(星座のイメージをスケッチ風にとらえたトータル・アルバムだからなのかもしれないが)や、リズム・セクションが強くないためやや軽く流れてしまうところがあるのも否めない。
それでも今回は、メロディアス・ロック・ファンだけではなく、KING CRIMSON や BRUFORD のファンにも歓迎されるかもしれません。
そんなに激しくはないのですけれど。
全曲インストゥルメンタル。
個人的にはベスト。
(FGBG 4031.AR)
| Jean Marc BASTIANELLI | keyboards, vocal, percussions |
| Marc CECCOTTI | guitars, keyboards, percussions |
| Jacques ROSATI | drums, percussions, keyboards |
| Jean Louis SUZZONI | guitars |
97 年発表の「Angel's Promise」。
内容は、ギターを中心としたややアンビエントなシンフォニック・ロック。
打ち込みフレーズも交えたデジタルなアトモスフィア/ビート感をもつバッキングに支えられて、サスティンを効かせたギターがきらめきながらうねってゆく、インストゥルメンタル主体の作品である。
謎めきながらもワイルドなギターのスタイルは、ロバート・フリップから、ロングトーンでするすると歌うとハケット、果てはエキゾチックなフレーズからテリエ・リプダルやオールドフィールドまでもが連想される。
シンセサイザーは極めて現代的であり、ヴァイブ/マリンバのようなパーカッション系のクリアーな音や神秘的な広がりをもつニューエイジ風の音が用いられている。
ベースの代わりの低音も特徴的だ。
ドラム、パーカッションはリズム・キープを越えた表情豊かなプレイで展開を支えている。
特にドラムスの細かな表現が印象的。
全体にミステリアスな美感をもつ音響と荒々しくもレガートなギターのうねりで勝負する作風のようであり、ダークな深刻さと淡いファンタジーの合間の微妙な世界を提示している。
クリアーでメカニカルなファンタジーの世界に、次第に、耽美でウェットな翳が見えてくる。
本作では初めてヴォーカルもフーチュアされている。
1 曲目「The Load Of The Fire」(4:33)ヘヴィでメランコリックなギターが強烈なイメージを残す傑作。
パーカッシヴなシンセサイザー・シーケンスをバックにギターがヒステリックにうねってゆく。
ドラムスのプレイも打ち込みのようなデジタリーで無機的なパターンである。
怒りながらも悠然とたゆとうギターとヘヴィでダンサブルなビート感のコントラストが緊張感を生む。
ギターはアーミングなど多彩な技を見せる。
2 曲目「Tension」(4:58)口笛のようなシンセサイザーが寂しげに宙を舞う。
続くキーボード、シンバルの反復とヴァイオリン奏法ギターそして重厚なアンサンブルはハケットによく似た作風だ。
クラシカルなティンパニ風のドラムやニューエイジ風のキーボードも用いたシンフォニック・チューンである。
高らかなギター・ソロが美しい。
チェロのような音はメロトロンだろうか。
3 曲目「IQ 27」(6:02)ブリット・ポップ風のメランコリックなヴォーカル・ナンバー。英語。
4 曲目「Angel's Promise」(5:16)シンセサイザーとギターによるアンビエントなデュオ。
こだまのようなシンセサイザーと哀感あるギターのテーマが重なり合い神秘の世界へと誘う。
終盤にはうっすらとヴォカリーズが加わる。
幻想的な作品だ。
5 曲目「Guinevre's Regret」(6:09)
ジョン・ウィリアムスのオーケストラものを思わせる勇ましいシンフォニック・チューン。
アグレッシヴなギター、スラップ・ベースをフィーチュア。
ブラス・セクションをシミュレートするシンセサイザーとティンパニを模すドラムスによる力強いイントロダクションから、スラッピング・ベースと女性ヴォーカルによるアジテーション風のメイン・パートを経て、激しいスラップによるリフをバックにギターがうねる間奏へ。
中盤は、柔らかくにじむベースとギターがスペイシーな演奏でおだやかに交歓し、再びメイン・ヴォーカルへ。
ベースはシンセサイザーなのだろうか。
再びベース伴奏でギター・ソロ。
今度は奔放に走り捲くる。
最後は、オーケストラ風のシンセサイザーがシンフォニックな余韻を響かせる。
モノローグ調のヴォイスを追いかけるように盛り上がるインストゥルメンタルが、エイドリアン・ブリューが歌う CRIMSON の歌ものを連想させる。
ギターの奏法などから考えて、やはり 80 年代以降の CRIMSON の影響はありそうだ。
6 曲目「Noah's Ark」(4:32)テクノ・ポップかジャーマン・シンセものかというミステリアスなシーケンスをバックにエキゾチックなシンセサイザーとギターが鳴り渡るサウンド・トラック風の作品。
シーケンスは初期オールドフィールドや KRAFTWERK、TANGERINE DREAM などを連想させる。
ギターはここでも奔放にシーケンスに襲いかかりフリーなソロで駆け巡る。
ティンパニとともに高まるヴォカリーズが、エキゾチズムをかきたてる。
テクノ・ポップ以降ともいうべき、複数の雰囲気が並行して進んでゆくような奇妙な味わいの作品だ。
7 曲目「On The Borderland Of Sleep」(6:04)エモーショナルなギターとメロディアスなヴォーカルによる悩ましきバラード。
伴奏はシンセサイザーを抑え、ギターのアルペジオが主。
声を荒げて切々と迫るサビはやはり 80 年代英国ポップスのイメージであり、シンフォニック路線を固める前の PENDRAGON 辺りに近い。
ヴォーカルとともにアルペジオが内省的な雰囲気を醸し出しており、激情を迸らせるソロ・ギターとのバランスもいい。
ギターに凝ったポップスなのだが、ポップスといい切るには謎めいたところが多い。
英語。
8 曲目「Lights Being Messages」(7:42)
ニューエイジ風味のあるファンタジック・チューン。
オムニバス風に雰囲気が変わってゆく。
序盤はストリングス系シンセサイザーによるゆったりと広がるサウンド・スケープで、柔らかく縁どられたさまざまな音色がさえずる。
キーボードのリフレインとアタックを抑えたギターによる演奏は、おだやかな空気の流れのようだ。
丹念にリズムを刻むドラムスとともに、ギターが一気に前面に出て、得意のレガートなソロを奏でてゆく。
感極まるようなギターとキーボードのかけあい、キーボード・ベースの小刻みなランニング。
一転、ギターはミステリアスな調子へと変化し、ドラムスのアタックも強くなる。
ハードな表情が浮かび上がる。
最後はキーボードのシーケンスとトリミングされたギター、ベースによる無機的にして優雅な演奏となってゆく。
9 曲目「Tales Of Mr.KA」(4:14)ハケットのソロ作を思わせる明朗にしてヘヴィなシンフォニック・チューン。
何気ない変拍子テーマ。
シンプルながらも胸躍るギターの間奏。
後半では目の醒めるような速弾きもあり。
ホイッスル風のシンセサイザーやヴォコーダがいかにも 80 年代風。
シアトリカルなヴォイスは GENESIS というよりは落語に近い。
10 曲目「Life, Life」(2:14)エレクトリック・アコースティック・ギター(オヴェーション・クラシック?)による美しい小品。
うっすらとヴォカリーズと鳥のさえずりが寄り添う。
ロマンティックにしてファンタジック。
後半でデュオと分かる。
11 曲目「Gentle But Not Giant」(4:11)
7 拍子や 5 拍子を用い、キーボード、マリンバ、ハモンド・オルガンをフィーチュアした作品。
ブルージーなオルガン・ソロが新鮮だ。
最後は朗々たるギターで締める。
タイトルはもちろん「あの」グループ名からでしょう。
異色作。
12 曲目「And To Think That I Loved You So Much」(6:13)
シリアスなロングトーンを用いたギター・ソロをフィーチュアし、アトモスフェリックな音響で包み込んだ薄暗いインストゥルメンタル。
本作の作風を代表するナンバーだ。
悪夢的。
13 曲目「Visions And Meetings」(9:15)
シンセサイザー、シーケンスによる幻想的なサウンドスケープにパーカッション、ギターが切り込むエキゾチックでアンビエントなシンフォニック・チューン。
エレクトリック・パーカッション、キーボードらがもつれるようなダンス・ビートを打ち出し、ギターが轟々とうねりながら進んでゆく。
(ここまで全作品ほとんどそうなのだが)ミドル・テンポが主なだけに雰囲気にひたれないともどかしさが募る。
(FGBG 4220.AR)