DIXIE DREGS

  アメリカのジャズロック・グループ「DIXIE DREGS」。 75 年スティーヴン・J・モースを中心にマイアミにて結成。 同年アルバム・デビュー、82 年まで活動する。 その後、モースのソロ活動を経て、92 年にスティーヴ・モース・バンドにジェリー・グッドマンを加えて復活。
  サウンドはプログレ、ハードロック、フュージョン、サザン・ロックと何でもありのハイテク・ロック。 陽気でカッコよくセンス抜群という、「理想の彼氏」のようなサウンドだ。

 What If

 
Steve Morse guitar
Andy West bass, fretless bass
Rod Morgenstein drums, vocals on 5
Mark Parrish keyboards
Allen Sloan strings

  78 年発表のアルバム「What If」。 文句なく DREGS の最高傑作。 その内容は、フュージョン、ハードロック、カントリー、クラシック、なんでもありのメリケン・プログレッシヴ・ロックである。 MAHAVISHNU ORCHESTRA への挑戦状のようなヴァイオリン入りジャズロックから出発して、ついに、アメリカンな無邪気さと超絶テクニックを活かした無敵のテクニカル・ロックの最高峰を極めた。 驚くべきは、ヴァイオリンとギターのユニゾン/ハーモニーを軸にしたハードロックとフュージョンの華麗なるブレンドに、あたかも P.F.M を思わせる、エレガントな叙情性を持ち込んでいるところである。 スティーヴ・モースのギター・プレイに象徴されるライトでアーシーなアメリカ感覚と、ヨーロピアンなデリカシーが共存する、まさにマジックのような「フュージョン」である。 深刻さとはまず無縁なはずなのに、どこかにほのかな哀感が漂っているところもすごい。 これは、まさにアメリカン・プログレを見直す絶好の機会でしょう。
  ちなみに、アメリカで編集したプログレッシヴ・ロック・オムニバスのようなアルバムには、「21世紀の精神異常者」や「シベリアン・カートゥル」と並んで、本作の「Odyssey」や「Ice Cakes」が選ばれるようです。 それにしても、70 年代後半にすでに 90 年代を見越したようなテクニカル・フュージョンを創造していたとは、恐れ入る。 キーボーディストも、おそらくかなりプログレ好きの人であり、ハモンド・オルガン、ムーグの変拍子リフをバンバン使ってくる。 また、モースのクラシック・ギターは、本職である SKY のジョン・ウィリアムスを除けば、この界隈ではダントツ。
  ハードロックとフュージョンにカントリー・フレイヴァーをまぶしたサウンドでハイテク・アンサンブルが縦横無尽に駆け巡る、痛快そのもののジャズロックである。 緊密なインタープレイと超絶ソロに重点のあった従来のジャズロックを、ハードロック特有のコミック・ブック的ユーモア感覚でもってブレークスルーした、といってもいいだろう。 もしくは、HR/HM から MAHAVISHNU ORCHESTRARETURN TO FOREVER までカヴァーする究極の器用貧乏ロック。 プロデュースは、もちろんケン・スコット。

  「Take It Off The Top」(4:07) ノリノリの無駄にうまいハードロック。この曲で止めてはいけません。インストゥルメンタル。

  「Odyssey」(7:34)ヴァイオリンをフィーチュアし、変拍子を駆使しながら、キレのいい演奏とリリカルな演奏をせわしなく変転する、テクニック誇示型シンフォニック・ハード・ジャズロック。 エレガントなヴァイオリンと典型的なテクニカル・フュージョンの合体はおろか、BANCOGENTLE GIANT 調の超速ギクシャク・アンサンブルもあり。 KANSAS を数倍ハイテクにしたイメージもある。 本作品をもって第一線に踊り出られなかったのは、カテゴリ分けが不能であったこと以上に、「あまりに弁舌巧みな人には誠実さが感じられない」という深遠な問題をはらんでいたせいだろう。 NATHAN MAHL によく似ている。

  「What If」(5:03) ARTI+MESTIERI を思わせる豊麗な作品。 ただし、ギターの存在感は別格的。ヴェネゴーニもかなりの達人だか、モーズはその上をいっている。 ヴァイオリンを中心とした叙情的な歌い回しがいい。

  「Travel Tunes」(4:36) ユーモラスで素朴な中に、やや民族がかった味わいも現れる舞曲風の作品。 こういうテイストは、アメリカのグループには珍しい。 8+7 拍子に目が回る。 後半のロケンローは、1 曲目と同じで無駄に贅沢。 ナチュラル・トーンのギターの和音がなんとも美しい。 こういうコード・カッティングは憧れである。 このリズムの重たさは独特だ。

  「Ice cakes」(4:38) 本作の水準の中で見ると、わりと普通のフュージョン。 ただし、シンコペーションを駆使するノリとキレのあるリズムは圧巻。 ヴァイオリンを適用して生まれるしなやかさとミュートしたギター・プレイのスタカートがいい感じで混ざり合い、ファンキーかつ優美という、フュージョン本来の魅力を素直に伝えている。 ベースのスラップがきれいだ。

  「Little Kids」(2:03)こういうみごとなクラシックのセンスが P.F.M を思わせる所以か。 ヴァイオリンとアコースティック・ギターによる典雅なデュオ。 スカルラッティ、ヘンデル辺りでしょうか。

  「Gina Lola Breakdown」(4:00) カントリー・フレイヴァーあふれる C&W チューン。 バンジョーにフィドルというベタベタな展開が微笑ましい。 お母さんの世代(いつごろですかね)は、新宿の歌声喫茶や日劇が懐かしくなるはず。

  「Night Meets Light」(8:00)ややカマトト風の大作。ピースフル。 優しげな風情は、リズムを強調し過ぎないためだろう。 もちろん多彩な変拍子。

(CAPRICORN 314 536 359-2)

 Full Circle

 
Steve Morse guitar
Jerry Goodman violin
Rod Morgenstein drums, percussion
T Lavitz keyboards
Dave Larue electric bass

  94 年発表のアルバム「Full Circle」。 ヴァイオリンに MAHAVISHNU ORCHESTRA のオリジナル・メンバーであるジェリー・グッドマンを迎えた、新生 DREGS の作品である。 その内容は、想像とおり、ハードロックとフュージョンをいっしょにしたゴキゲンなインスト・ロック。 モースのギターとグッドマンのヴァイオリンをフィーチュアした技巧的にして白熱するアンサンブルにもかかわらず、小難しい感じは一切なし。 痛快なリフを中心に全員で繰り広げる伸び伸びとした演奏には、音楽を心底エンジョイするようなリラックスした雰囲気が、そこかしこにある。 その余裕あるスタンスが、本作の特徴だろう。 スリリングなジャズロックとラウドで豪快なヘヴィ・メタルの中間をいくようなサウンドは、きわめて現代的であり、なおかつアメリカン・ミュージックの伝統を感じさせるところもある。 この音を、ほぼ 20 年前に確立していたのだから、驚きである。 また、ハモンド・オルガンからシンセサイザーまで多彩な音で、主役のギターをサポートするキーボーディストのセンスもいい。 70 年代の作品と比べて、軽やかさを失わないまま音がさらに豊かになっているように感じるのは、録音技術の進歩だけではなく、キャリアのなせる技だろう。 とにもかくにも、時代を超えて楽しめる好作品だ。 プロデュースはスティーヴ・モース。

  「Aftershock」(3:42) スティーヴ・モーズらしい上品なハードロックの名品。 あまりにシンプルなリズムと明快なバッキングがいかにも今様なのだが、シンプルな分、余裕と安定感が際立つ。

  「Perpetual Reality」(5:31) ややハードポップ寄りのゴージャスなハード・フュージョン。 中盤のピアノを使ったロマンティックな演奏が印象的。 さりげないヴァイオリン、キーボードのオブリガートもいい。

  「Calcutta」(5:26) リズムを強調したメカニカルで挑戦的な序盤を経て、3 拍子系の舞曲調を活かしたギター、キーボード、ヴァイオリンらのスリリングなユニゾンが、つややかでなめらかなようでいて引っかかりのあるアンサンブルを成す。表拍と裏拍のアクセント切り替え、2 拍子と 3 拍子の交錯を巧みに利用した緊張とエレガントな弛緩のコントラストがみごと。 クラシカルなテーマ、中盤のベース、ホィッスル系シンセサイザーなど、さりげなくも技巧的なソロなど見所は多い。 技巧的にしてお洒落な DREGS の面目躍如たる名曲でしょう。プログレです。

  「Goin' To Town」(3:37) アップテンポのスウィンギーなロカビリー・チューン。 クラヴィネット、ギターらがリズミカルに走り、遊び心あふれるフィドル、ピアノが追いかける。

  「Pompous Circumstances」(3:21) メロディアスなヴァイオリン、チェンバロらによるクラシカルかつポップなアンサンブル。 爆発的なギター・プレイが織り込まれる。 ジャジーでポップなクラシック。新鮮です。

  「Shapes Of Things」(3:46) THE YARDBIRDSJEFF BECK GROUP の名曲のカヴァー。

  「Sleeveless In Seattle」(4:05) 華麗にして神秘的な作品。タイトルは変だがプログレ。

  「Good Intentions」(3:58) テクニカルなインタープレイ満載のジャズロック。

  「Yeolde」(2:17)

  「Ionized」(4:00) グルーヴィなジャズロック。


(2-42021)

 The Introduction

 
Steve Morse guitar, synthesizer
Rod Morgenstein drums, synthesizer
Jerry Peek bass
guest:
T Lavitz piano on 7
Albert Lee guitar on 2

  84 年発表のファースト・ソロ・アルバム「The Introduction」。 THE DREGS 解散を経て制作された作品。 ストレートでラウドなギターがハードロックにジャズにブルースにと縦横無尽に駆け巡る。 かと思えばアコースティックな歌心も感じさせる。 快作だろう。 ユニークなギター・プレイは全開であり、ヘヴィなサウンドにもかかわらず、フュージョン的なしなやかさと爽快感をもたらしている。 そして旧友モーゲンシュタインが安定したハードロック・ドラムをプレイし、新人ベーシストのジェリー・ピークもすばらしいテクニックを見せる。 三人の披露する音楽は、ヘヴィ・メタルとジャズそして奔放なロックンロールを融合したアメリカ的なサウンドの集大成といえる。 冴えたプレイをコンパクトにまとめるスタイルもいい。 大音量で、できれば車でぶっ飛ばしながら聴くと最高ではないでしょうか。 このソロ活動は、後年の DIXIE DREGS 再編へのメンバー集めとも解釈できる。 プロデュースはスティ−ヴ・モース。

  「Cruise Missle」(5:32)
  「General Lee」(3:19)
  「The Introduction」(2:50)
  「V.H.F」(4:21)
  「On The Pipe」(4:46)
  「The Whistle」(2:13)
  「Mountain Waltz」(4:24)
  「Huron River Blues」(6:18)

(960369-2)


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