アメリカのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「DISCIPLINE」。 87 年結成。 伊福部昭に影響を受けた卓越したヴォーカリスト、マシュー・パーメンタをフィーチュアした、ダークなお化粧演劇プログレ。 2008 年リード・ヴォーカリストの新作「Horror Express」発表。 2010 年にはグループとしての新ライヴ盤も。
| Matthew Parmenter | written, performed, recorded |
2008 年発表の作品「Horror Express」。
ソロ第二作。
基本はピアノ弾き語りなのだが、音楽総体として VAN DER GRAAF GENERATOR(または初期 ピーター・ハミル)の世界に迫っている。
ピアノ弾き語りをドラムスとオルガンが支える第一曲だけで、この強固な世界へと否応なく引きずりこまれる。
心を病むヴォーカルに古式ゆかしいチェロとピアノが絡みつき、メロトロン・ストリングスがズルズルと渦を巻き始めると、エドガー・アラン・ポーの悪夢の世界が広がる。
「Kaiju」というタイトルの曲(ANEKDOTEN、ANGLAGARD 以来久しぶりに出会った慟哭のメロトロン・チューン)やジャケットのイメージなど、2008 年初頭に盛り上がった「Cloverfield - Hakaisha」を連想させるところがある。
10 分あまりの大作「Polly New」は、キャッチーなポップスとシリアスな器楽をつなぎ合わせた野心作。
今回も歌、メロディは冴えている。
思い切りスタイリッシュな表現や個性的なポップ・テイストもたっぷり披露している。
力作。
個人的に 2008 年ベスト 5 の一つ。
(SOR 6806)
| Matthew Parmenter | vocals, et cetera |
| Mathew Kennedy | bass |
2004 年発表の作品「Astray」。
DISCIPLINE の中心人物マシュー・パーメンタのソロ作品。
その内容は、70 年代プログレ的な音を加味した、内省的な弾き語りフォークである。
薄暗く、絶望と隣り合わせの世界ではあるのだが、この人はおそらく音楽に愛されている。
きわめて多彩な音楽性があり、それらを個性が貫いていて、さらに自然な聴きごこちがある。
20 年早く生まれていたら、Donovan やブライアン・ウィルソンに迫ったかもしれない。
ピーター・ハミル と比するものもあるかもしれないが、声質や表現方法といったスタイル的なものはともかく、器用さでは遥かに勝る。
または、初期 PINK FLOYD の雰囲気をずっと一人で持ちつづけている、といってもいいだろう。
ギターからキーボードまですべてをこなしているが、当然ながら、主役はあくまで歌である。
デリケートな響きが、耽美にして力強いシンフォニック・ロックへと昇華する瞬間も多い。
何より全体に歌がよく、メロトロンは決め所で急所に突き刺さってくる。
3 曲目「dirty mind」は、ジャジーにスイングしながら自虐的な歌を諦めきったようにささやく佳曲。
4 曲目「another vision」は、サウンド、転調のパターンなど初期 PINK FLOYD 風味のある傑作。英国ロック・ファン向け。ハミルのソロ作風でもある。
5 曲目「some fear growing old」は、アメリカン・オルタナティヴ・フォーク。つまりボブ・ディラン。当然のように弦楽器が使われている。
6 曲目「between me and the end」は、ややゴシックなムードのピアノ弾き語り。粘りつくような、狂気を封じ込めたような、それでいてつややかなヴォーカル表現が冴える。サックスをフィーチュア。DISCIPLINE の世界に近い。
最終曲「modern times」は、感動のスペクタクル。
(SOR 6804)
| Matthew Parmenter | vocals, backing guitar, violin, programming, tambourine, recorder, synth |
| Jon Preston Bouda | lead guitar, backing vocals |
| Mathew Kennedy | bass |
| Paul Dzendzel | drums, percussion |
| David Krofchok | piano, organ, synth, backing vocas |
93 年発表の第一作「Push & Profit」。
内容は、妖艶なヴォーカルと余裕の演奏力が抑えの効いた表現を見せる、アメリカ東海岸流の耽美派シンフォニック・ロック。
ユニークなのは、グロテスクな歌詞をささやくヴォーカルを前面に出したダーク・チューンの基調が、フォーク風であるところだ。
そして、一部プログレな音使いとキャッチーなメロディ/調子を交ぜ合わせたようなところもあり、全体としては暗い印象ながらポップな味わいもある。
この点は SPOCK'S BEARD や ECHOLYN と同様、アメリカン・ロックらしいセンスのいい雑食性をイメージしていただきたい。
作曲の中心と思われるヴォーカリストは、デフォルメを効かせた演劇風のスタイルに頼るだけではない、ピーター・ハミルのような本格的な歌唱力をもつ。
おそらく SSW 畑出身かブライアン・ウィルソンのファンではないだろうか。
演奏はギターを中心にきわめて安定感があり、バランスもいい。
控え目でデリケートな表現を用いて、巧みに曲想を浮かび上がらせている。
「Brave」辺りの MARILLION とテクニカル・メタル系のグループのバラードを合わせたような作風に、アメリカン・オルタナティヴの土の香りを一振り加えたようなイメージといえばいいだろう。
歌とともに静々と盛り上がってゆくうちに、ふと粘着性の音にがっちりと絡め取られている自分に気づく。
ヴァイオリンやピアノなどのアクセントも非常にいい。
しかし本作最大の問題点が 4 曲目にある。
サウンドこそメロトロン・フルートを思わせるシンセサイザーが切れ切れに漂う、フォーク・タッチのヴォーカル・ナンバーだが、歌詞内容は尋常ではない。
テーマは、未成年に対するセクシャル・アビュースメントである。
現代社会の悪魔である性犯罪者に扮したヴォーカリストが、7 歳の子供に向けて執拗な愛を語るのだ。
かつて GENESIS が得意とした、寓話にひそむグロテスクな面を誇張した妄想と怪奇の歌詞には、ともすれば建前と綺麗事に終始する現実に対して立つ、カウンター・カルチャーとしてのロックらしい気負いと熱意が感じられた。
しかし、本作の生まれた現代は、どうやら既にカウンターを生み出すこともできないほど病んでいるらしい。
どういうスタンスでこの歌詞を書いたのかは定かでないが、この内容が、現代社会生活の描写の一つであることは否定できない。
あまり正視したくはないが、エンタテインメント/芸術としての音楽における、歌詞の意味を問い直すような挑戦的な試みであるのも確かだろう。
確かに、黒人音楽のようにダイレクトに SEX を描く作品はあるし、猟奇、性倒錯などに言及したグループ(古くはルー・リードなど)もたくさんあるだろう。
しかし、そういう素材を取り込んでいるロックの言葉の中においても、この 4 曲目の内容はきわめて異質ではないだろうか。
(私の解釈の間違いの可能性もありますので、ぜひ一度歌詞に目を通していただきたいと思います)
やや少女漫画風の耽美路線と何気ないポップさのうちに、タブーを無視するような大胆な歌詞を交えた問題作。
これでヘタなら何にもなりませんが、演奏がうまいだけに、この居心地の悪さをなんとかしてほしい。
「Diminished」(7:36)
「The Reasoning Wall」(7:22)
「Carmilla」(9:39)
「The Nursery Year」(5:18)
「Faces Of The Petty」(4:47)
「Systems」(7:26)AOR 風の傑作。
「Blueprint」(6:02)叙情的なインストゥルメンタルの傑作。
「America」(7:42)アコースティックなオルタナティヴ・ロック。
変わったコード進行が特徴的。タイトルに気合を感じる。
(128764-01)
| Matthew Parmenter | vocals, keyboards, violin, alto sax, orchestra chimes |
| Jon Preston Bouda | electric & acoustic guitars |
| Mathew Kennedy | bass |
| Paul Dzendzel | drums, percussion |
97 年発表の第二作「Unfolded Like Staircase」。
デリケートな表現とハードな表現の間にダイナミックな振幅が生まれ、耽美派シンフォニック・ロックとしてのトータル・イメージも明快になった。
楽曲は変幻自在にスケール・アップし、個性的な内容で充実している。
抑制の効いた品のあるタッチで妖しい世界を描いて、静かに湧き上がるような興奮を呼び覚ますスタイルはそのままに、ロックとしての迫力が格段と増したといえるだろう。
いわば、VAN DER GRAAF GENERATOR な GENESIS である。
(ちなみに、本作の謝辞で ANEKDOTEN のメンバーに宛てて、VdGG とピーター・ハミルを紹介してくれてありがとう、とある)
エコーを抑えたヴォーカルには、ゆるぎない自信が感じられる。
とにかくプログレとしての分りやすさが圧巻なのだ。
演奏では、モダンなプレイも軽々こなしそうなテクニシャンのギターによるメロディアスなソロが一際輝く。
キーボーディストの脱退を補うかのように、キーボードの音数やサックス、ヴァイオリンなどのアクセントも増えている。
変拍子を大胆に交えたアンサンブルも、冴えたメロディを伴った独特の空気の中でこそ「自然な歪さ」を発揮して映えるのだ。
ただしあまりに「こわいぞ、こわいぞ」と威かし調が続くので、くたびれてしまうのも事実。
音はヘヴィだが決してゴシック・メタルではなく、あくまでハードなシンフォニック・プログレである。
そして、エレクトリックなサウンドを駆使しても、常に弾き語りの質感を持ち続けているところが、このグループの個性だ。
大作「Crutches」は、妖しくも印象的なテーマを中心にメロトロン・ストリングスを動員した力作。
超大作「Into The Dream」は、KING CRIMSON への思いが感じられる重厚な作品。
CRIMSON 調のヘヴィでアヴァンギャルドなタッチに、本来の持ち味であるメロディアスで伸びやかな歌唱が顔をのぞかせるおかげで、世界がさらに広がっている。
傑作といえるだろう。
二部から成る「Before The Strom」は前半が VdGG、後半は「Red」CRIMSON。
現代アメリカのプログレッシヴ・ロックを代表する傑作の一つ。
「Canto IV (Limbo) 」(13:45)
「Crutches」(13:11)
「Into The Dream」(22:03)
「Before The Strom」(5:20+10:31)
(Strung Out Records)
| Matthew Parmenter | vocals, keyboards |
| Jon Preston Bouda | guitar |
| Mathew Kennedy | bass |
| Paul Dzendzel | drums |
99 年発表の第三作「DISCIPLINE Live Into The Dream」。
ライヴ・アルバム。
一曲を除いて既発のアルバムから選曲されている
リード・ヴォーカルがキーボードを兼任するが、演奏上の問題は無いようだ。
クリアでまとまりのある録音は、いわゆるライヴ盤の意外性の面白みには欠けるものの、このグループの音楽には合っている。
ヴォーカリストは、ピーター・ハミルや GNIDROLOG のコリン・ゴウルディングを思わせる、ナルシズムあふれる本格派。
パフォーマンスをリードするのは、このヴォーカリストである。
スリーヴに綴られた神経症的ホラー小文は、GENESIS のライヴ盤に倣っているのでしょうか。
ベスト・アルバムとしてもお薦め。
「Crutches」
「The Nursery Year」「I'll find you ...」おぞましき囁き。
「Canto IV (Limbo)」MARILLION、IQ、TWELFTH NIGHT といったポンプ、ネオ・プログレ系ど真ん中にある作風。ヴォーカルを中心に表現力はピカ一。
「Carmilla」
「Systems」
「Into The Dream」
「Between Me And The End」新作?
(SOR 6803)