イタリアのジャズロック・グループ「DEDALUS」。 73 年トリノにて結成、TRIDENT レーベルよりアルバム・デビュー。 74 年ベーシストが脱退、トリオ編成で実験色の強いエレクトリック・ミュージックである第二作発表。 同年解散。 サウンドはインテリジェントなアヴァンギャルド・ジャズロック。 グループ名は、ミノタウロスを迷路に閉じ込めた英雄ダイダロスの意か。
| Fiorenzo Bonansone | cello, electric piano, synthesizer |
| Marco Di Castri | guitars, tenor sax, percussion |
| Furio Di Castri | bass, percussion |
| Enrico Grosso | drums, percussion |
| Rene Montegna(AKTUALA) | african percussion |
73 年発表のファースト・アルバム「Dedalus」。
内容は、SOFT MACHINE や RETURN TO FOREVER を思わせるクロスオーヴァー・ジャズロック。
テクニカルなリズム・セクションとエレピを中心にした演奏に、エレクトリックな実験色を盛り込んだ野心的な音楽だ。
チェロやサックスも使われている。
全編インストゥルメンタル。
なお、アフリカン・パーカッション担当のレネ・モンテグナは、エスニック・ポップス・グループの AKTUALA のメンバーである。
1曲目「Santiago」(9:13)変拍子を刻むリズム・セクション、ベースのリフがリードするアップ・テンポの演奏からスタート。
軽快なうねりを見せるリズム・セクションが気持ちよい。
そしてギター・ソロがポリリズミックに始まる。
エレピは静かに伴奏。
ギターはまとわりつくようなサスティンをもつジャズ風のプレイである。
思わせぶりなエレピのコード・ワークに続き再び 7 拍子のベース・リフでリズム・セクションが走り出しサックス・ソロ。
ソロはモダン・ジャズ色が強いもののエルトン・ディーンほどはフリー・ジャズではない。
エレピの伴奏もやや力が入りサックスに反応する。
テンポをキープしたまま左チャネルからチェロのソロが聞こえてくる。
ノイジーなロングトーンをゆっくりと響かせるチェロ。
ベースが口火を切ってフリー・フォームの演奏へと突入する。
リズム・ブレイク。
チェロが激しく揺らぎながら音程を下降してゆく。
電気処理が加わりノイズが幾重にも重なり始める。
ディレイを残しピッチを大きく揺らすチェロ。
早いパッセージでは残響音が重なり共鳴する。
サイケデリック宇宙である。
ロバート・ワイアットのエレクトリック即興を深刻にしたような感じだ。
電子楽器のように変調し音程を揺れ動くチェロ。
低音の広がりに深みがあるのはさすが生楽器。
ピチカートが海の底から上がってくるあぶくのようだ。
最後にようやくチェロに反応してドラム、ベースが復活、フリー・フォームのエピローグである。
ギター、サックス、チェロと次々にソロを披露するジャズロック。
シャープなリズム・セクションによるテクニカルな演奏の前半に対し、チェロが制御を得た後半以降は、一気にエレクトリックな混沌へと飛び込み、そのままサイケデリックの海でおぼれる。
初期 SOFT MACHINE 風のサウンドだ。
ベースはかなりの腕ききである。
2曲目「Leda」(4:30)エレピの和音のピッチがゆらゆらと揺れる眩惑的なイントロダクション。
チック・コリアである。
ファズ・ギターと思われるシングル・ノートがエレピに重なる。
ベースのピックアップでリズム・セクションが始動、まずはサックス・ソロ。
うねるフレットレス・ベースが進行をリードしているようだ。
エレピのバッキングは抑制されている。
乾いた音で小気味よく弾けるドラム。
続いてエレピ、ベースによる穏やかな演奏が続く。
リズム・ブレイク。
再び沈黙の中揺れ動くエレピの和音。
ファズ・ギターのノイジーなシングル・トーン。
ざらざらした感触の音である。
ベースのきっかけで再びアンサンブルが動き出す。
グルーヴィな躍動感のあるリズム・セクションに対しエレピとギターの沈んだ調子の演奏が続いてゆく。
エンディングはシンバル、エレピ、ベースが波のように揺れ動き重なり合う。
耽美だが、抑制されたクールな表情をもつジャズロック小品。
リズム・セクションをフィーチュアしているのかもしれない。
ドリーミーなエレピやシンバルのプレイは RETURN TO FOREVER そのもの。
3曲目「Conn」(3:48)ハイハットの細かい刻みとせわしないベース・リフからスタート。
滴りおちるような音はエレピか。
シンバルや電子音が静かに流れる。
パーカッションを合図になぜか一旦フェード・アウト。
一転してメロディアスなサックスのリードする演奏が始まり仕切り直し。
リム・ショットがカチカチと鳴る。
ベースはここでも積極的に演奏をリードする。
さまざまなパーカッションが次々と散りばめられる。
スネアを淡々と叩く音。
エレクトリック・チェロのノイジーなプレイと狂おしく泣き叫ぶサックスの応酬。
フリーなプレイが続く。
ビートはリム・ショットで刻まれる。
ベースが規則的な動きを見せるがチェロとサックスは大胆に暴れる。
チェロは 1 曲目同様サイケデリック。
スネアを打つ音。
軽やかなドラムのストロークで終わり。
スネアのビート以外はフリー・フォームの演奏を見せるサイケデリック・ジャズロック。
パーカッションとコラージュ風のエレクトリックな音響ギミックがメインのようだ。
秩序の維持はもっぱらスネアとベース。
サックス、チェロは完全に即興。
音は波紋のようにゆっくりと発散するが、どうにも埋まらない隙間がある。
多彩なパーカッション・プレイがちりばめられているが、とりわけ堅実なリム・ショットが時限爆弾のタイマーの如くスリリング。
4曲目「C.T.6」(14:02)シンバル、バスドラが打ち鳴らされワウ・ギターがざわめくイントロダクション。
ベースのリードでハイハットがリズムを刻みエレピが静かにつぶやき始める。
ていねいなドラムのプレイが光る。
そして決め。
一転ドラムのピックアップから凄まじいテンポで演奏が走り出す。
まずはジャズ・ギターのソロ。
ピッキング中心のせわしないプレイがいかにもジャズ風。
ドラムの一撃でブレイク。
続いてサックス。
ドラム、ベース、エレピともにフリー・フォームの演奏である。
再びブレイク。
今度はドラムがシャープな 8 ビートを提示する。
サックスのテーマにエレピが反応し、サックス・ソロへ。
エレピのコードが絡む。
リリカルだがいかにもジャズロック風の展開である。
今度はピアノが加わりエレピとデュオ。
ピアノのプレイもフリー風。
エレピとピアノのもつれるような対話。
そして現れるのはムーグだろうか、メタリックな音色でなめらかに音程が変化する。
再びギター・ソロ。
今度はロックらしくひずんだ音のペンタトニックのソロである。
ピッチを揺らすのは録音処理だろうか。
エレピのコードをきっかけにメロディアスなエレクトリック・チェロのソロへ。
次第に狂おしくひきつるような音になってゆく。
崩しの必要を感じさせない正統的な演奏に思えるほど存在感あるプレイだ。
ようやくベース・ソロ。
ここまで演奏を引っぱってきたのはこのベースと小気味よいドラミングである。
ライド・シンバルの静かな連打に続き突如重々しいピアノの音。
リズムは止み現代音楽風のピアノ・ソロが続く。
グランド・ピアノの弦を直接弾くような音もする。
ドラムのピック・アップから再びリズムが復活、エレピとサックスのデュオが始まる。
さきほどのピアノのことなどどこ吹く風でジャジーなプレイが続く。
最後はシンバルが打ち鳴らされる。
各楽器のソロを連携した大作。
幻惑的なイントロから一気に演奏が立ち上がり、次々とソロを回して疾走し続ける。
即興風の展開を保たせているのは、ソロの面白さよりも、シャープにしてダイナミックなリズム・セクションのおかげのようだ。
エンディング近くのピアノ・ソロは、実験精神にあふれている。
5曲目「Brilla」(5:39)エレピ伴奏でサックスがけだるく歌い始める。
たゆとうような物憂げなテーマである。
一転、テンポ・アップしベースがスピーディなランニングを始める。
そしてチェロのソロ。
緊迫感あるリズム・セクションと対照的に間延びしたようなチェロのサスティン。
ギターが加わりチェロに反応し始める。
続いてギター・ソロ。
フロント・ピックアップの甘めのトーンで細かいパッセージを弾き飛ばす。
ボトムは 7 拍子。
テンポ・ダウンからサックスのテーマへ回帰。
モダン・ジャズ調のメロディアスなサックス。
打ち鳴らされるシンバル。
エレピとサックスによるテーマ部とチェロ、ギターをフィーチュアした展開部から成るジャズロック。
エレクトリックなアンサンブルの中で、一人モダン・ジャズ調で悠然とするサックスがおもしろい。
チェロとギターのソロはテクニカルかつ挑戦的。
ソロを支えるベースもすばらしい。
触れれば火花の散りそうなエレクトリックかつサイケデリックなジャズロック作品。
テクニカルなリズム・セクションがキープする緊張の糸の上を、鋭いテーマと奔放なソロが駆け巡る。
変拍子を用いたテーマとソロというジャズロック的な枠組みを拡大し、エクスペリメンタルな要素や、果ては音響主体のフリー・ミュージック風の展開まで持ち込んでいる。
特にエレクトリック・チェロの存在が過激でおもしろい。
RETURN TO FOREVER 調のジャジーなアンサンブルの中で、意識的に通常の脈絡をぶっ飛ばす試みは、十分野心的といえるだろう。
荒さはあるものの、SOFT MACHINE、ISOTOPE といったエレクトリック・ジャズロックに十分匹敵するイタリアン・ジャズロックである。
ただし、後半はややトーンダウン気味かもしれない。
ベーシストは、アクロバチックなテクニックを披露するわけではないのだが、緻密な運動性では飛びぬけている。
(VM 009)
| Fiorenzo Bonansone | cello, piano, Fender piano, voice, accordion, synthesizer, soprano ocarina, electric mandolin, plastubofono, bottle |
| Marco Di Castri | tenor & soprano sax, guitars, harmonica, flute, Moroccan oboe, plastubofono with reed, voice |
| Enrico Grosso | drums, percussion, noise on 1-6,10-14 |
97 年発表のアルバム「Materiale Per Tre Esecutori E Nastro Magnetico」。
75 年発表の第二作「Materiale Per Tre Esecutori E Nastro Magnetico」に、未発表曲を追加した内容。
ベーシストのフリオは脱退し、トリオによる録音である。
10 曲目から 14 曲目が第二作のナンバーであり、それ以外は 76 年録音の未発表曲。
なお LP 最終曲 14 曲目のエンディングの即興パートは短縮されている。
いわゆるジャズロックのスタイルからは離れ、ノイズやヴォイス、生活音、即興演奏を駆使した実験色の濃い内容となる。
電子音楽的な面も強まり、完全に現代音楽である。
14 曲目で突如のどかな演奏が始まり、度肝を抜かれる。
(ELICA OPP 3220)