CURLEW

  アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「CURLEW」。 79 年結成。作品は十一枚。 80〜90 年代を駆け抜けた先鋭的ミクスチャー・グループの一つ。

 Curlew

 
George Cartwright alto, tenor & soprano sax
Bill Laswell bass
Tom Cora cello, indingiti
Nicky Skopelitis guitars
Bill Bacon drums, percussion, gamelan

  84 年発表の第一作「Curlew」。 画像は、英国盤のもの。 内容は、サックス、ギター、チェロをフィーチュアしたアヴァンギャルドなジャズロック。 スコアによるぶっ飛んだテーマとフリージャズ的な即興のコンビネーションであり、パワフルで一体感のある、しなやかで若干下品な全体演奏でグイグイと突き進んで、アクの強すぎる(サディスティックといってもいい)個人プレイで無理やりスペースを押し広げて居座る。 サックスのプレイがいわゆるジャズの文脈を、個性は強いながらも、しっかりとたどり、どっしりとしつつ手数もあるドラム・ビートやギターがロックや R&B の屋台骨を支えている。 小気味よくスピーディでどこへ行くのか分からないスリルももちろんあるのだが、アドリヴの応酬にはどことなく緩やかさがあり、いわゆる「グルーヴ」のようなフィジカルなカタルシスとは異なる、知的な面白さを提示している。 このまろやかさは意図的なのか結果的にそうなったのか。 サックスのアドリヴだけならば他のフリージャズでもっと尖ったものがあったように思う。 何にせよ、単にジャズ的な技巧を駆使しただけでは、このサイケデリック・ロックやプログレのような味わいは出ない。 諧謔にあふれた優れた精神性を支えるためにこそ音楽的技巧がある、そんな決意があるような気がする。 そして、キレの味のいいインタープレイを支えるのも、その決意への各メンバーの合意の強さではないだろうか。 だとすれば、芸術として極上である。 ETRON FOU LELOUBLAN との共通性にも思い及ぶ。 また、即興空間の成り立ちは、おそらく 60 年代から典型的なフリージャズのそれに近いのだと思うが(不幸にしてわたしはあまりフリージャズに詳しくない)、個人的にはどうしても KING CRIMSON との共通性を見出してしまう。 故トム・コラのチェロはまさに衝撃的な存在であり、ニッキー・スコペリティスのギター・プレイは今の水準でも十分過激でカッコいいと思う。 一部ライヴ演奏も収録されているが、即興を大幅に採用したきわめてアヴァンギャルドな演奏になっている。
   2008 年めでたく CD 化。6 曲のボーナス・トラック(ライヴ録音)と 80 年 10 月のライヴ録音を収めたボーナス・ディスク付き。

(LC 1004 / DMG/ARC-0704)

 Live In Berlin

 
George Cartwright saxophones
Tom Cora cello
Pippin Barnett drums
Dave Williams guitar
Wayne Horvitz keyboards bass, keyboards

  88 年発表の第三作「Live In Berlin」。 86 年ベルリンでのライヴ録音を中心にしたライヴ盤。 演奏曲目は 86 年発表の第二作「North America」収録曲が中心。 内容は、ジャズのスウィング感覚やブルーズのコブシ、カントリー・ミュージックのライトなグルーヴを凝縮して扇動的でアグレッシヴに(時に脱力気味に)解き放ったようなアヴァンギャルド・ファンク・ジャズである。 チェロのパフォーマンスに代表されるアカデミックな前衛音楽への意気込みを、脂っこく下世話な「ジャズ」のテイストに満ち満ちたサックスのプレイに象徴されるストリート感覚たっぷりにインプリメントした音楽だ。 大胆な即興パートでは、各楽器が特殊奏法も多用して訥々と対話をスタートする。 一つ間違えると珍妙になりかねない対話は、弛緩と緊張を彷徨し、きっかけを得ると一気にハイテンションのアンサンブルを構成する。 絶妙の呼吸で攻め、受けるインタープレイとビシッと決まるドラムスがじつにカッコいい。 ただしそれでも、へヴィネスやスピードという単純な方向にはなかなか進まず、ジャズロック的な部分をチラ見せしつつ、フリージャズの解体衝動、どこにも依拠しないという衝動を持ち続けている。 過激な特殊奏法の音は、どちらかといえば、緊張感よりもルーズなユーモアを漂わせるし、ドラムスがタイトにビートを刻みユニゾンで突き進むときにも、意地でも真面目に、真っ直ぐには演奏したくないように、脱力フレーズをブカブカ、ドカドカと演奏するのだ。 個人的には、イタリア RIO 代表の STORMY SIX の後期作品と共通するものを感じる。 もしくは SOFT MACHINE の 「4」をスクラッチやノイズでよりアヴァンギャルドに仕上げた感じ。 ところどころでアクセントを付けるウェイン・ホーヴィッツのキーボード・サウンドに存在感あり。 最終曲「Feelin' Good」(黒人ブルーズのカヴァー)のみヴォーカル入り。 ビル・フリゼールが売れたならこれが売れても不思議はない、なんてことを思った。

(RUNE 12)

 Bee

 
George Cartwright saxes
Pippin Barnett drums
Tom Cora cello
Davey Williams guitar
Ann Rupel bass, vocals

  91 年発表の第四作「Bee」。 前作までの屈折脱力系アヴァンギャルドな即興をやや限定し、密度の高い、エネルギッシュなバンド演奏をクローズ・アップした作品である。 濃密なジャズ・フィーリングをもつカートライトのサックス、現代音楽的なコラのチェロはそれぞれに強烈な存在感を示すが、それらに負けずギターも表情豊かであり、シュアーなビートのドラムスも目立っている。 スピード感とグルーヴを支えるベーシストの復活もうれしい。 じつはサックスも真面目な顔でシャープなフレーズを決めており、フリージャズ的なパワーとファンク・ロック度合いは、本作がピカ一。 攻め/動き一辺倒ではなく、意外なほどに劇的なアレンジ/演出も施されていて、シリアスな現代音楽調から詩的なロマンまでもが現れている。 RIO というキーワードよりも、フリージャズ風のジャズロックという方が合っていると思う。 N.Y ダウンタウンのライヴ・ハウスの熱気を伝えている作品だ。 プログレ、ジャズロック・ファンにはお薦め。
   「To the Summer in Our Hearts」と「Kissing Goodbye」の 2 曲のみドイツ、ケルンでのライヴ録音。 ライヴ録音では、各パートのソロが大きくフィーチュアされる。 「To the Summer in Our Hearts」でのデイヴ・ウィリアムスのギター、トム・コラのチェロのアドリヴがカッコいい。 また、最終曲「As You Said」(CREAM の名曲のカヴァー)のみアン・ラペルのヴォーカル入り。

(RUNE 27)

 A Beautiful Western Saddle

 
George Cartwright alto & tenor saxes
Pippin Barnett drums
Tom Cora cello
Davey Williams guitar
Ann Rupel bass
Amy Denio vocals

  93 年発表の第五作「A Beautiful Western Saddle」。 女性ヴォーカリスト(アルト)が参加。 そして、驚いたことに、このヴォーカルをフィーチュアした歌ものロックと化す。 かなりポップなファンク調ロックから、ややシリアスなリート風の歌曲、ニューウェーヴ調までさまざまなスタイルがある。 大胆な即興やノイズを入れ込んだ器楽演奏そのものは大きく変化していないが、サックスに象徴されるこのグループの器楽の独特のひょうきんさとふんぞり返った感じが、マニッシュで融通の利かなそうな女性ヴォーカルと奇妙な緊張関係を作っているところが新しい。 両者に共通するのは独特の気だるさである。 また、チェロの響きが伴奏に入ると一味変わって非常にクラシカルで厳かな歌曲風になる。 このスタイル、ジョージ・カートライトが気に入った詩人の詩を歌詞にしたいと思ったところから始まったらしい。 ヴォーカルの歌唱には不気味なほどの落ち着きと強烈なデフォルメを表現し切る力量があるので、ART BEARSTHINKING PLAGUE のファンは試してみてください。 異色作という位置づけになりそうだが、いいアルバムだと思う。

(RUNE 50)

 Fabulous Drop

 
Ann Rupel bass, piano on 7
Chris Cochrane guitars, rhythm toy on 4
George Cartwright alto & tenor saxes
Davey Williams guitars, musical toy on 4
Kenny Wolleson drums

  98 年発表の第七作「Fabulous Drop」。 内容は、凶暴なギターとチンドン屋風のサックスが金切り声を上げ続けるエネルギッシュなジャズロック。 南部風ロックンロールとフリージャズの一つの出会いであり、ノイジーだがダンサブルなアヴァンギャルドである。 ユーモア、品のなさ、それなりの体力を駆使して、いわばオッサンの冷や水のような、壮絶な「ジャズロック・バカ」をやり続ける。
  
(RUNE 105)


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