イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「CRESSIDA」。 60 年代末期にロンドンにて結成。 VERTIGO に二枚のアルバムを残す。 解散後、イエイン・クラークは URIAH HEEP、ジョン・カリーは BLACK WIDOW に加入。 哀愁のメロディとリリカルなオルガンによるデリケートな英国滋味と 60 年代終盤のアメリカン・ロックの埃っぽさがクロスした逸品。 サイケデリック・テイストはさほどでないが、DOORS や VANILLA FUDGE のファンへも一応お薦め。もちろん、ベルセバのファンにも。
| Angus Cullen | vocals |
| John Heyworth | guitar |
| Peter Jennings | harpsichord, organ, piano |
| Kevin McCarthy | bass |
| Iain Clark | drums |
70 年のデビュー盤「Cressida」。
内容は、ノーブルなヴォーカルとオルガンをフィーチュアした、フォーキーかつジャジーなオルガン・ロック。
リズムやギター、オルガンなどジャジーな表現が主なのだが、曲想はとっ散らかったといっていいほど多彩である。
もっとも、英国の音らしく、メランコリーと斜に構えたような冷え冷えとしたロマンチシズムが感じられる。
リズムとオルガン以外はさほど技巧的なわけではないが、和声進行やリズムの組み立てはなかなか凝っている。
味わいやすい歌メロで包む辺りのセンスもいい。
楽曲は、長いものでも 5 分程度という小粒(フェードアウトも多い)揃いだが、概ね、短い中でリード・ヴォーカルとインストゥルメンタルのバランスを取って、しっかりした構成を見せている。
印象に残る音という意味では、やはり叙情的なオルガンが筆頭だろう。
地味なジム・モリソンのようなヴォーカル・スタイルや俊敏なオルガン、アコースティック・ギターなど、ほんのりサイケデリックなビートポップの名残も見せる本作を経て、次作では飛躍を見せる。
しかし、ポップでややアメリカンな 60 年代テイストを携えた本作も、なかなか魅力的な作品ではないだろうか。
また、「たられば」はいけないかもしれないが、もしヴォーカルにもう少し渋味があったら、本作は意外にも SPOOKY TOOTH の第一作に近いニュアンスをもったかもしれない。
プロデュースはオシー・バーン。
「To play Your Little Game」(3:15)
オルガンが支える感傷的な歌もの。
クラシカルなオルガンのバッキングとオブリガート、裏拍アクセントの引きずるようなリズムも特徴的。
徹底してセンチメンタルなメイン・パートのメロディと対照的に、サビでは転調とともにハーモニーによる伸びやかな広がりを見せる。
ギターは最後にファズを効かせた、やや荒っぽいプレイを披露。
2曲目「Winter Is Coming Again」(4:42)
DONOVAN、あるいはサンフランシスコ風のキュートなサイケデリック・フォークロック。
若々しさの感じられる作品だ。
ヨれたナチュラル・トーンのギター・ソロはヴェルヴェッツ風。
クラシカルにして軽やかなオルガン・ソロあたりから、心地よい疾走感が生まれてくる。
3曲目「Time For Bed」(2:18)
トラッド・フォーク調とジャズ・タッチが絶妙のブレンドを見せる佳作。
なんとエレキギターではきわめて頼りなかったギタリストが、アコースティック・ギターでは別人のようなみごとなプレイを見せる。
キーボードもブルージーなピアノをフィーチュア。
4曲目「Cressida」(3:57)
オルガンによる 5 拍子のリフがリードするセンチメンタルでブルージーな作品。
投げやりな感じのリフがいい感じだ。
ベースも挑発的なランニングで迫る。
中盤のストリングスのような音はメロトロンだろうか。
オルガン・ソロでは、このリフを微妙に変化させつつ、リズムも変化させる。
後半はセミアコ風のギターによるトレモロを交えたソロもあり。
エレキギターよりもずっと達者な演奏だ。
5曲目「Home And Where I Long To Be」(4:04)
ギターのシャフル・アルペジオによる流れるようなイントロダクション。
何気ないオルガンの調べに、ギターの小気味いいコード・カッティングがからむ。
ヴォーカルは、やや投げやりで平板。
どうやらジョン・ヘイワースによるらしい。
もっともサビのコーラスには、カレンも加わっているようだ。
間奏は、3 拍子に切り換り、唐突ともいえるハープシコードのメランコリックな演奏。
サビのバックのギターがレゲエ風である。
二回目の間奏では、クラヴィネットとギターによるジャズっぽくスピーディなアンサンブル。
受け止める奇妙なキメの連続もおもしろい。
その後はオープニングからの展開を繰り返してゆく。
最後のメジャー・コードの響きもいい。
ギターをフィーチュアした幻想的な作品。
なかなか破天荒な展開を見せ、。
ギター・リフの最後の maj7 コードの余韻がどこか白昼夢的な非現実感を生む。
リズムの変化やコード進行もプログレッシヴ。
リード・ヴォーカルはギターのジョン・ヘイワース。
この人はピックでなく指でエレキギターを弾いているようだ。
6曲目「Depression」(5:05)
オルガンのトッカータによる厳かな教会音楽調のイントロ。
一転テンポよく演奏がスタート。
ヴォカリーズとともに快調にヴォーカルが飛ばす。
得意のウエスタン調のメロディだ。
ドラムが止みオルガン、ヴォーカル、パーカッションによるスリムなアンサンブルへ。
ややミステリアスなムードだ。
再び元気よくドラムが戻り、ハードなギター・ソロへ。
アコースティック・ギターのコード・ストロークにあおられるように、次第に盛り上がってゆく。
続いてスピードあふれるクラシカルなオルガン・ソロ。
ひたすら走るアンサンブルはフェード・アウト。
疾走するハードなナンバー。
クラシカルなイントロやパーカッション、オルガンによるアンサンブルなどアクセントを巧みにつけておりメリハリあり。
間奏のギター、オルガン・ソロの応酬はロックにしかないカッコよさ。
特にオルガンのプレイは重みも粘りもあるいいプレイだ。
軽快に走り抜けるスピード感がいい。
甘めの DEEP PURPLE。
7曲目「One Of A Group」(3:38)GENESIS 調の印象的なオルガン・リフレインによるイントロ。
歌メロは再びフォーク・ソング風。
切ない表情がいい。
長調のクラシカルなオルガンの間奏と短調のピアノ伴奏のヴォーカルの泣きが妙な取り合わせだ。
そしてバロック風のオルガンの間奏からヴォーカル。
再びオープニングのオルガンが入ってすぐにファズ・ギターのソロが始まる。
テンポも快調に上がる。
一転テンポは落ちてピアノ伴奏のロマンティックなヴォーカルへ。
突如リズムが 3 拍子に変わってジャズ・ピアノのソロだ。
ギターも絡みつつフェード・アウト。
バロック風のオルガンのフレーズとメランコリックなヴォーカルの妙なコントラストが活きるナンバー。
そしてピアノがジャズになってしまうというプログレッシヴな(ややとっ散らかった)おまけもある。
ヴォーカル・メロディの切々と訴える哀愁がすばらしい。
8曲目「Lights In My Mind」(2:47)この曲もオルガンのロングトーンからクリアな 8 ビートが始まるテンポのいいナンバー。
歌い上げるヴォーカルと引き締まったリズムそしてタイミングのいいオルガンのオブリガートが疾走感を煽る。
バッキング、オブリガート、ソロ全てにオルガンが冴え渡る。
コーラスの入るサビからヴォーカルの伸びやかな声とオルガンが重なる気持ちよさそして走りつづけるカッコよさ。
ドラムとオルガンがかけ合いながらのエンディングも GOOD。
ウエスト・コースト風のセクシーなヴォーカルと疾走するオルガンがカッコいい。
短いがシャキッとしたメロディアスな曲。
ギターとマインドは完全にグループ・サウンズ風。
9曲目「The Only Earthman In Town」(3:35)こもったオルガンの伴奏でヴォーカルが静かに歌い上げるオープニング。
ハイハットのリズムがスピーディな展開を予感させる。
ドラムのピックアップでリズムが入って演奏が始まるところは息を呑むほどカッコいい。
間奏のオルガンのせわしないアルペジオがさらにスピード感を出す。
テンポが少し落ちたマイナーなコーラスとアップテンポのメジャーな演奏が交互に現れる。
ギターの生々しいアルペジオに続くオルガンのソロも珍しくジャジーで軽快だ。
フェード・アウトは残念。
マイナーのコーラスのどうしようもないメランコリーとメジャーのヴォーカルのポジティヴさの対比がみごと。
また突っ走るオルガンは抜群によし。
イントロもスリリングだ。
10曲目「Spring'69」(2:16)アコースティック・ギターの重苦しいアルペジオから憂鬱なヴォーカルが入る。
トラッド・フォーク風の演奏だ。
次第にほんのり明るさも出てくるがこのメランコリックな旋律が美しい。
アルペジオを続けるギターのコード進行も少し変わっている。
アコースティック・ギターとヴォーカルのみのフォーク・ソング。
夢見るようでいながらもどこか空ろで暗く哀しい。
11曲目「Down Down」(4:17)オルガンのクラシカルなイントロは彼岸の幸せを唱えるような哀愁が漂う。
シンバルの響き。
そしてわらべ歌のように優しいが哀しいメロディのヴォーカルが歌う。
祈りのようなリフレイン。
ゆったりと抱き上げるようなオルガン、メロトロンの響きとつぶやくようなギターそしてシンバルの響きが幻想的だ。
ドラムがマーチのようにリズムを刻む。
突如 8 分の 6 拍子に変わってギターがたたみかけるような不安なリフを繰り返す。
オルガンもこのリフに絡みつく。
しかし決してヴォリュームは上がらない。
沈み込んだ雰囲気のまま進む。
やがて再びリズムが消えるとオルガンはイントロと同じフレーズを繰り返してシンバルが響く。
そしてマーチング・ドラムに乗って静かなオルガンのソロ。
ギターも爪弾いている。
最初から最後まで静かなまま進む幻想的なナンバー。
全てを諦めて達した境地の様に穏やかだ。
後半のリフからのオルガンのクラシカルなソロそしてドラム、ギターとのアンサンブルはドラマチックな展開の準備のようであり後の大作を予感させる。
静かなリリシズムがしみ透る作品。
12曲目「Tomorrow Is A Whole New Day 」(5:18)(すてきなタイトルだ)クラシカルなチャーチ・オルガンの和音に導かれ淡々とした 8 分の 6 拍子でヴォーカルが歌いだす。
アコースティック・ギターが丹念なコード・ストロークで伴奏する。
優雅さと哀しみ。
強い 8 ビートに変わってギターが決めを繰り返す。
そしてたたみかける様なリズムでヴォーカルが歌いコーラスとハモる。
再びギターの決め。
ドラムのきっかけからギター・ソロ。
ややブルージーだがなめらかだ。
リタルダンドしてドラムが退くとオルガンのカデンツァ。
静かに入るアコースティック・ギターがオルガンと反応する。
エレキギターも加わる。
オルガンの静かなメロディ。
ドラムが戻りヴォーカルが勇ましく歌い出すがどこか力なく優男的。これもまたよし。
オルガンから力を得てコーラスが響きロマンチックなメロディがシンフォニックな広がりを持ち始めるとファズ・ギター・ソロが入ってさらに盛り上げる。
オルガンとドラマチックなドラミング、そしてコーラス。
ギターが続く。
シンフォニックな盛り上がりでは一番の作品。
哀愁漂うひ弱なヴォーカルを活かしつつインストクルメンタルが積み重ねられ劇的な展開を作っている。
途中のインスト部分でブルージーな(やはり GS 風である)ギター・ソロからクラシカルなオルガンへ移り再びヴォーカルへと帰るところにはドラマを感じる。
さらにエンディングでドラマチックなドラミングとともにコーラスとギターが絡みつつ盛り上がるところはこのアルバム中では一番感動的である。
ビートポップ風、トラッド風と実に多彩だが、アルバムとしてはやや散漫な印象あり。
しかし、オルガンの彩りが加わることによって、どの曲も輝き始める。
哀感ある歌メロとそれを支えるバッキング、ソロ。
散漫だったはずの印象が、次第にコンパクトにまとまったドラマの綴れ織りに思えてくるから不思議だ。
走っても、ゆったり歩いても、英国の木枯らしのような寂寥感が静かに巻き起こる。
もっとも、ヴォーカル+ギターもしくはオルガン・ソロ+ヴォーカルという展開がワンパターンになりがちなのも確か。
そこをなんとかせねば、というわけで 11、12 曲目、そして次作へと発展してゆく。
オルガンは、クラシックをベースにジャジーなフィーリングと適度な黒さもある。
ブルージーな重みよりも、軽快でメロディアスな表現を得意とするようだ。
アコースティック・ギターの多用もあって、STILL LIFE と比べると黒さは薄く、フォーク色が強い。
ギターは全体に控え目だが、仕事はしっかりやっている。
ヴォーカルは世間で言うほど弱いとは思わない。
むしろ線は細いが魅力的ではないだろうか(DOORS に似すぎですが)。
60 年代のビート・サウンドと 70 年代のニューロックにかかった、ささやかな橋の一つである。
(REP 1299-WP)
| Angus Cullen | vocals, acoustic guitar |
| John Culley | lead & acoustic guitar |
| Peter Jennings | organ, piano |
| Kevin McCarthy | bass |
| Iain Clark | drums |
| Harold McNair | flute |
| guest: | |
|---|---|
| Paul Layton | acoustic guitar |
71 年発表の第二作「Asylum」。
ギタリストはジョン・カリーに交代、さらに、セッション・ジャズメンであるハロルド・マクネアをフルート奏者として迎えている。
内容は、オルガンのトーンが熱気ある時代の息吹を感じさせる正調ブリティッシュ・ロック。
その内容は、オーケストラの導入に始まって、組曲形式の大作、インストゥルメンタルの拡充、さらには予想を裏切る過激な展開など、プログレッシヴ・ロックと呼んでさしつかえない。
前作を整理して、重厚なドラマを編み出した傑作である。
プロデュースはオシー・バーン。
オーケストラ・アレンジはグレイム・ホール。
ジャケットがキーフなのはいうまでもない。
サウンドの特徴は、くすんだ色彩をもつ、フォーク・タッチのヴォーカル、冷ややかにして熱気もはらむオルガン、アコースティック・ギターによる丹念なコード・ストローク、ジャジーなピアノ、そして、管弦楽を代表に全体に散りばめられたクラシカルなアンサンブルなどである。
そして、その凝ったアレンジの上に魔法のメロディを乗せて送り出すという巧みな作風である。
60 年代からの遺産であるグルーヴィな R&B タッチも魅力だ。
1曲目「Asylum」(3:33)
第一作でも見せたリズミカルに疾走する作品。
躍動するベース・リフ、アコースティック・ギターのストロークに追われるような「走り」の魅力とともに、一風変わったオブリガートやオルガン・ソロなど個性的なプレイを打ち出している。
歌メロの勇ましいようでか細いという矛盾した性格がユニークである。
基本的にはメランコリックなのだ。
オルガンはこれらのアイデアあふれるプレイからバッキングまでさまざまに存在をアピール。
オブリガートのギターなどさほど冴えたプレイではないのだが、リズミカルに押す勢いでカバーしている。
カレンの作品。
2曲目組曲「Munich」(9:33)
弦楽とオルガンをフィーチュアした劇的な大作。
メランコリックなヴォーカルが朗々と歌い上げ、熱いインストゥルメンタルがドラマを彩ってゆく。
大まかに三部構成であり、ロマンティックな幻想美をたたえる第一部、ジャジーなインストゥルメンタル・パートの第二部、第一部の再現とフィナーレとなる第三部となっている。
第一部では、正統的な朗唱を見せるヴォーカルを、オルガンとごく自然なストリングスが支え、震えるようなロマンをかきたてる。
中盤は 8 分の 6 拍子でギターのブルージーなアドリヴ、クラシカルなオルガンとソロをフィーチュアする。
第三部では管絃、オルガンとともにエネルギッシュなクライマックスへと達する。
順に追ってみよう。
ベースとオルガンの G#+9 のアルペジオによるオープニング。
冷ややかにしてうっすらと夢見るような演奏は GREENSLADE の初期作品にも通じる。
また胸に迫る感じは「A Whiter Shade Of Pale」だろうか。
いずれにせよ、英国ロックならではのロマンティシズムである。
ヴォーカルは、水彩画のような淡い色合いのタッチをもつ。
左右のチャネルから流れ出て交わるギター・ソロも今度はカッコいい。
中盤は、8 分の 6 拍子でギターとオルガンによる R&B 調のインタープレイが続く。
ブルージーなギター・ソロに続き、ソウル・ジャズ調のオルガン・ソロ。
荒々しくも音を惜しまないドラムスにも注目。
この間奏パートは、初期の CAMEL に迫る出来映えである。
ここから、終盤への切りかえとなるオーボエ、ストリングの入りがまた絶妙である。
終盤は冷ややかなメイン・ヴォーカル・パートが管弦楽、オルガンとともにロマンティックな表情へと変化してゆく。
ジャジーなギター、息を呑ませるアカペラ、クラシカルなオルガンのカデンツァ、そして管弦楽と一体となった熱っぽい演奏とともに爆発的なエンディングを迎える。
明快にして無駄のない構成、必要十分な音づかい、切れ味ある演奏と豊かな情感、全てそなえた名作である。
PROCOL HARUM の諸作と通じる重厚なロマンといえるだろう。
密やかにしてロマンティックなオープニングと、そのオープニングと対照的するように過剰なセンチメントを冷ややかに切り捨てるようなギター、オルガンのソロがすばらしい。
ギターはロビン・トロワーの線をやや細めたような印象である。
ジェニングスの作品。
3曲目「Good Bye Post Office Tower Good Bye」(2:50)
切れ味いいアコースティック・ギターとピアノをフィーチュアしたブリティッシュ・ビート調のナンバー。
ワンノート連続の歌メロが ROLLING STONES にすら通じる不良っぽさを演出。
なぜか最後は爆音。
カレンの作品。
4曲目「Survivor」(1:34)
管弦楽、オルガンを用いたシンフォニックな小品。西部劇映画のサウンド・トラックを思わせる勇壮な盛り上がりがある。
一瞬で終わってしまうがシャープな管弦楽とワイルドなオルガンが真っ向ぶつかり、ストレートに昂揚させる。
カレンの作品。
5曲目「Reprieved」(2:28)
センチメンタルでお洒落なフレンチ・ポップ風のインストゥルメンタル。
ジャズ・ピアノ・ソロとスキャットをフィーチュアしたジャジーな作品である。
心地よく響くベース・ライン、シンバル中心の大人なドラミング、そして本格的なジャズ・ピアノ・ソロ。
前々曲のようなビート風の作品と、本曲のようなロマンティックな正統ジャズが同居するから驚きだ。
ジェニングスの作品。
6曲目「Lisa」(5:08)
オルガン主導のクラシカルなモチーフを散りばめ、テンポ、リズム、音量、曲調の急激な変化を見せつつも、終始メロディアスな印象を与える、プログレらしい作品。
やや甘めのビート・ポップ調メイン・ヴォーカル・パートに続き、さまざまな音と演奏がパノラマのように次々と現れ消える。
イタリアン・ロックに多い作風である。
オルガン、管弦楽とともに、本作品でみごとな存在感を見せるのがフルート。
ヴォーカルを彩り、ロマンティックな味わいを付与するのが、ストリングスとこのフルートである。
特にフルートは、終盤での舞い踊るようなプレイがみごと。
一方オルガン、ギターは、強烈なアクセントとして機能。
中盤、ストリングスが寄り添う哀愁の弾き語りに続く、クラシカルなオルガン・ソロ、ブルージーなギター・ソロが見せ場だ。
メロディアスなプレイ、アンサンブルとリズミカルでひっかかるようなプレイを巧みに対比して、自然に流してゆく辺りがすごい。
もっとも、曲の最後で最初が思い出せないのも確かなのだが。
シンプルなラヴ・ソングを思わせるタイトルにもかかわらず、内容はかなり芸術的であり、フリー・フォームに近い演奏でも堂々としたロマンを感じさせる。
カレンの作品。
7曲目「Summer Weekend Of A Life Time」(3:25)
再び、日本のフォークを思わせる、メランコリックな C&W 調の作品。
内ジャケの写真でもメンバーが西部劇風の衣装に身を固めており、ひょっとするとそっち方面への憧れがあるのかもしれない。
ヴォーカルはなかなか颯爽とした表情なのだが、スリリングというにはやや甘ったるい歌メロが、どうしても ジャップス・フォークを思い出させる。
伴奏は、豊かにこだまするオルガンの和音、間奏は、クールなファズ・ギターとトーンをコントロールしたハモンド・オルガンによるインタープレイだ。
最後のヴォーカル・エコーなど、リリカルなタッチをやけっぱち気味のアイデアで崩壊させるところも面白い。
カレンの作品。
8曲目「Let Them Come When They Will」(11:44)
小粋なフォーク・タッチの弾き語りから始まる。
リズミカルなギターのストロークが都会的な空気を漂わせるヴォーカルに絡む。
やや頼りないサビは、上品なストリングスが支える。
ここから、各パートのソロをフィーチュア。
まずはジャジーなギター・ソロ。ウェス・モンゴメリ風のオクターヴも披露。
歯切れよく刻むドラムス、オルガン、ベースも堅実にギターを支える。
続いてオルガン・ソロ。
クラシカルにしてソウル・ジャズ風の粘りもある、かなかなカッコいいアドリヴだ。
リズム・ギターもいい感じだ。
続いて、アフロなパーカッション・ソロ。
リズムに刺激されたかのように、管楽器セクションがパワフルに飛び出して、最初のクラマックス。
爆発の余韻のように、一転静寂が訪れ、うっすらとたなびくオルガン、リム・ショットの音とともに、ギターがつぶやき、空ろな歌がこだまする。
悩ましげな詠唱に、寄り添うは哀愁のストリングス。
トラジックなバラードである。
高らかな歌唱を、哀れを誘うオーボエが追いかけ、オルガンと管弦楽が次第に力を蓄えてゆく。
重厚な悲劇といっていい。
オルガン、ギターの余韻がたなびき、すべてが沈んでゆく。
バロック調のオルガンによるカデンツァが左右のチャネルを駆け巡る。
謎めくオルガン、トリル、うっすらとこだまするストリングス。
軽やかなドラム・ピックアップから始まるのは、4 ビート・ジャズ。
快調なベース・ランニングを経て、オルガンが炸裂、ギターとともに走り出す。
ソウル・ジャズ風の演奏に、フォーキーなメイン・ヴォーカルが飛び込み、管弦楽も加わる。
一気に最高潮の大団円。
スピード感あふれるギター・アドリヴ、そして、パワフルにして一体感ある演奏でひた走る。
各パートのアドリヴを大きくフィーチュアした大作。
大まかには、小洒落たビート・ポップス、無常感ある中間部、情熱的な疾走の 3 部から成り、オルガンとギターを軸にしてジャズからクラシックまでを大胆に駆け巡る。
管弦楽を味つけに熱気たっぷりに繰り広げられるジャムがカッコいい。
クラシカルにしてソウル・ジャズ風の粘っこいプレイを見せるオルガンもさることながら、ギターも多彩にして腰の据わったプレイを見せる。
ジャズからオーソドックスなブルーズ、ハードロックまでなかなか多芸だ。
テーマとなるものに存在感がないため、若干散漫な感じも否めないが、演奏そのものにはかなり迫力がある。
前任ギタリストのヘイワースの作品。
1 曲目の軽やかな「走り」に明らかなように第一作の延長線にありながら、より練られた曲展開と管絃との協調などで、さらなるグレードアップを遂げた快作。
単にギターがうまくなっただけではなく、ドラマ性とストーリー・テリングでも前作を凌ぐ。
そして最も味わいがあるのは、斜に構えたような淡々とした表情である。
メロディ、ヴォーカル、オルガンからストリングスの響きまですべてに、穏やかにして真剣なクールネスが感じられる。
オルガンの音色、プレイについては、もはや多くを語るに及ばない。
ジャジーでソウウフルな逸品とだけいっておこう。
全体に渋めの演奏にあって、色彩感を出しているのは、フルートやヴァイオリンの繊細なプレイ、オルガンのパワフルなフレージング、そしてなかなか器用なギターだろう。
2 曲目の大作は英国ロックの代表作の一つでしょう。
(RR 4105-WP)