CORTE DEI MIRACOLI

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「CORTE DEI MIRACOLI」。 ツイン・キーボードをフィーチュアしたキーボード・ロック。 テクニカルなインストゥルメンタルと甘く情熱的なメロディ・ラインがマッチしたロマンあふれるイタリアン・ロックである。 唯一のスタジオ・アルバムに加えて初期のライヴが発掘されている。 GROG レーベル。グループ名は「ノートルダムのせむし男」の章題らしい。

 Corte Dei Miracoli

 
Alessio Feltri keyboards
Riccardo Zegna keyboards
Graziano Zippo vocal
Flavio Scogna drums, percussions
Gabliele Siri bass
guest:
Vittorio De Scalzi guitar

  76 年発表の作品「Corte Dei Miracoli」。 内容は、二人のキーボディストが操るオルガン、エレピ、シンセサイザー、ピアノらのアンサンブルを中心とした典型的なキーボード・シンフォニック・ロック。 キーボードのアンサンブルによるクラシカルな演出は、BANCO に十分匹敵する。 また、クラシック、ジャズと多様な音楽性を叩き込みながらも、コケオドシ風の大仰さやおどろおどろしさが感じられず、むしろロマンチックなポップ・フィーリングがある。 このエレガントなポップ・テイストは、英国プログレになれた耳にはかなり新鮮だ。 これは、意識するしないにかかわらず、あくまでポップスを基本に過激なアレンジを施すというイタリアン・ロック的なスタンスによるものなのだろう。 コテコテ過ぎることもナイーヴ過ぎることもなく、全体のバランスもとれている。 いわば、EL&P の攻撃性と LE ORME のたおやかさの中間地点である。 情熱的なヴォーカルとシンセサイザーやオルガンにどっぷり漬かっているにもかかわらず、サッパリとした軽やかさがあるといってもいいだろう。 イージー・リスニング風のユーロ・ポップスをプログレ化してしまったイタリア人のセンスに、あらためて乾杯。 ただし、泥酔しそうなエコーやうわずり気味の録音など、プロダクションは好みを分けそうだ。

  「...E Verra L'uomo(男はやって来た)」(7:00) 挑戦的な導入にもかかわらず、全体としてはロマンティックなキーボード・シンフォニック・ロック。 テクニカルなオープニングで耳をひきつけ、切ない歌で酔わせてクラシカルなシンセサイザー・オーケストレーション、オルガンで興奮させる、理想的な展開である。 ノイズににじむようなエレピの音が、なんともクラシックである。 そして、さわやかな歌心に満ちたメロディと、ストリングスやエネルギッシュなドラミングによる雄大なバッキングの取り合わせの妙。 うっすらとヴォーカルをなぞるミュージック・ソーのような音はシンセサイザーだろうか。 メロディアスなメイン・パートと対比するクラシカルかつスリリングなオルガンのリードするインスト・パート。 このオルガンによる間奏部の迫力は、プログレ的醍醐味たっぷりであり、BANCO に迫るものがある。 ティンパニを思わせる連打をタイミングよく使ってぐいぐいと盛り上げてゆく。 終盤はムーグ・シンセサイザーによる哀愁のファンファーレ調の演奏が引き締める。 オープニングの悲鳴のようなギターは、NEW TROLLS のヴィットリオ・ディ・スカルツィ。

  「Verso Il Sole(太陽に向かって)」(6:30) ジャジーなプレイと軽やかな疾走感が心地よいアップ・テンポのナンバー。 明快なリフ、テーマにアドリヴを散りばめてドライヴ感を失わずに進んでゆく曲展開に、YES を思い出してしまった。 軽快なオルガンのリフとシンセサイザー伴奏のメランコリックなヴォーカル・パート、そしてピアノ・ソロを中心に、ジャズ的なアドリヴが盛り込まれている。 もちろん要所では、ストリングス、ムーグによるシンフォニックな展開のワサビを効かせている。 ハードロックというよりはテンポのいいポップス調である。 走るところとゆったりとテンポを落とすところの配分がいい。 中盤オルガンのリフ、パーカッションで走るところへ、本格的なピアノがオーヴァーラップするところのイメージは BANCO である。 歌ものの間奏部分を拡大したスタイルは 1 曲目と同様。 エンディングの一ひねりでお腹いっぱいな感じである。

  「Una Storia Fiabesca(御伽噺)」(7:50) ゆったりとため込み歌い上げるヴォーカル・パートを軸に、各種キーボードのクラシカルな演出を次々に綴ってゆく作品。 打楽器がやかましいのも特徴的だが、全体の流れはストレートである。 ピアノによるロマンティックかつ思わせぶりなイントロを経、万を辞して幕開ける雄大にして哀愁もたっぷりなメイン・ヴォーカル。 このテーマがいい。 ヴォーカルが非力という通説は、ここで覆される。 繰り返し主体の展開を、ムーグ・シンセサイザーによる細やかな伴奏で、さまざまに彩ってゆく。 ムーグから、ジャズ・ピアノや音程のあるパーカッション(シンセサイザーか)、緻密なドラミング、クラヴィネットなど小技も効かせて、単調にならないような工夫がなされている。 間奏の 8 分の 6 拍子によるヘヴィなオルガン・ソロ周辺でもう少し盛り上がると、さらによかった。 チェンバロのバッキングはリマスター盤で初めてしっかり聴こえてきた気がします。 ギターの存在を補うようにベース・ラインが非常に明確に進路をリードしている。

  「Il Rituale Notturno(夜の儀式)」(6:23) ファンタジックかつドリーミーな物語調の作品。 夢見るようなエレピのささやきから甘美なストリングスが満ち溢れ、一気にナイト・ミュージック調である。 情熱的かつ正統的なヴォーカルを、エレガントなバッキングが守り立ててゆく。 尾を引くようなシンセサイザー。 「夜のガスパール」ラベルか「月の光」ドビュッシーか薄めの萩原朔太郎か、といった涼やかでながらもなまめかしいムードである。 水滴のしたたたるようなエレピに導かれた物語は、深海を思わせるエコー、あふれんばかりのポール・モーリア風ストリングス、そして情熱的なピアノから成る優美な流れへと注ぎ込む。ムーグによる金管楽器のファンファーレ。 6 連のピアノ、オルガンの激しいユニゾンがいいアクセントになっている。 ムーグは、ブラスからミュージック・ソーのようなヴィブラート、さらにはいかにもな「ビョンビョン」レゾナンスによるメタリックなフレーズまでさまざまに使われている。 ジャジーなピアノ・ソロを受けて、込み入ったフレーズの果てに空へ放たれるようなシンセサイザーのファンファーレが高鳴る。 典型的ながらもキーボード・ファンをくすぐる音だろう。 多彩なプレイとテンポ切りかえで、やかましく全編を支えているドラムスにも注目したい。 エンディング、「Disco volante...(空飛ぶ円盤...)」というセリフを残して泡(「あわ」でなく「あぶく」です)とともに消えてゆくヴォーカル、ダメを押すストリングスなど、ストーリー上で意味があると思われるが、詳細は不明。

  「I Due Amanti(二人の恋人)」(11:39) 緩急巧みなパワフルでダイナミックな大作。 悩ましげなテーマを繰り返し変奏しながら、一気に最後までいってしまうストレートな展開に、さまざまなキーボードの音が彩りをつけてゆく。 冒頭から 16 分の 14 拍子によるスリリングなリフでたたみかけてゆき、ストリングス、ピアノでゆったりと受け止めて、シンフォニックな高まりを作り上げてゆくところはこれまでと似た展開。 長めのイントロから、悠然とメイン・パートが始まるパターンだ。 メイン・テーマは今までも聴いたようなメロディ・ラインなのだが、ややメランコリックな表情が印象的だ。 一人かけあいのような節回しがおもしろい。 ピアノによるジャジーなテーマ変奏からは、オルガン、ムーグとメイン・テーマを引き継いでゆき、細かなリズムによるジャズロック的な演奏となる。 ややファンキーなプレイも織り交ぜながら、クラシカルなピアノによる変奏を経て、メイン・パートへと回帰する。 暗めながらもメロディアスなヴォーカルと激しいビート感/攻撃的なリフが拮抗する緊張感を支えに、テーマ変奏を主にしてぐいぐいと進んでゆく。 力強くリリカルなピアノと加速をあおるような金管風ムーグのリフレインが印象的。


  ツイン・キーボードによる豊かな音色とスリリングなアンサンブルが横溢するキーボード・ロック。 オルガンとエレピ、ストリングスとピアノなど、バッキング/リードのコンビネーションは多彩であり、次々とパノラマのように歌心のある演奏が現れる。 特に、一方がメロディアスなときに他方がリズミカルになるなどの、対比づけが巧みだ。 エフェクトで加工したエレピの多用とパーカッションの効果的な挿入も個性的。 ロマンチックな歌メロも特徴である。 どちらかというとドラマチックな重厚さよりも若々しい爽快さが目立ち、ヴォーカルが魅力的なせいもあってシンフォニックなテーマが加熱しすぎず、ほどよいリリシズムが感じられる。 それでいてキーボード・ロックの醍醐味たる、たたみかけるような挑戦的なフレーズもある。 いわば、ハードロック向きのハイトーン・ヴォーカルとイージー・リスニング的な甘美でリラックスしたムード、そしてせめぎあうシンセサイザーの嵐が、ちょうどよくバランスしているのだ。 潔い手数勝負のドラムスも痛快だ。 そして脈絡をぶった切るようなアレンジもある。 要は、典型的なイタリアものということである。 76 年にしてはやや古めかしい音かもしれないが、キーボード主体のプログレとして逸品であることにかわりはない。 2002 年 ARCANGELO のリマスター盤がお薦め。 バスドラの連打もよく聴こえます。
(GROG 004 / Arcangelo ARC7022)

 Dimensione Onirica

 
Alessio Feltri Hammond organ, Davoli synth, Fender Rhoes
Michele Carlone Solina, piano, lead vocals
Mario Alessi Fender Precision bass
Alessandro Della Rocca Fender Telecaster guitar, Gibson guitar
Flavio Scogna Hollywood President drums

  92 年発表の作品「Corte Dei Miracoli」。 発掘作品。音質はブートレッグの最上級品並。 録音は、73 年から 74 年にかけてであり、オリジナル・アルバム発表前に脱退した、キーボーディスト、ベーシスト、ギタリストを擁する旧編成である。 ヴォーカリストもまだ加入していないが、ツイン・キーボード体制は出来上がっている。 後にオリジナル・アルバムに入る作品は、アレンジこそ異なるがテーマ部分はほぼ完成形として演奏されている。 さて、演奏はそのキーボードを活かした、ハードで色気もあるシンフォニックなものである。 オルガンがクラシカルにハードにと縦横無尽に走り、リリカルなピアノが降り注ぎ、管弦楽組曲を彩るバロック・トランペットのようなシンセサイザーがパンパカパーンと高鳴る。 緩急、明暗の変化は明快に描き分けられていて、企画力と演奏力がハイ・レベルにあることが分かる。 意外な発見は、EL&P はさておき、THE NICEDEEP PURPLE への意識がたっぷりあるところだ。 つまり、クラシカルなハードロックというニュアンスが強い。ギタリストの存在もその一因だろう。 歌にはイタリアン・ロックらしいロマンティックな面が強く出ているが、演奏はかなりワイルドで奔放に弾けている。 このスタイルから、ジャズ、ポップス風味を強めてゆき、第一作の独特なポップ・プログレに到達したようだ。 70 年代中盤のポップ・シーンの変遷を真正面から受け止めている感じだ。 また、憂鬱で翳りのある表現において、GENESISP.F.M(7 曲目「Breve Esistenza」は名作)にも影響を受けていそうなところもある。 ヴォーカルについてはキーボーディストのミケレ・カローネが兼任するが、第一作のリード・ヴォーカリストほど派手ではないものの、落ちつきあるいい歌唱を披露している。 総合的にいって、発掘ものの逸品の一つといえるでしょう。

(MMP 104)


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