イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「COLOSSEUM」。 68 年結成。 ブルーズ・ロックの研鑽を経て、ジャズ、ロック、クラシックの融合へと進み、新たなサウンドを創出した実験精神旺盛なグループ。 傑物揃いのブリティッシュ・ロック勢にあっても、一際燦然と輝く音楽集団だ。 2004 年、ボーナス・トラック付のイクスパンディッド・エディション発売中。
| Jon Hiseman | drums |
| Dick Hecktall-Smith | tenor & soprano sax |
| Dave Greenslade | hammond organ, vibraphone |
| Tony Reeves | bass |
| James Litherland | guitars, vocals |
69 年発表の第二作「Valentyne suite」。FONTANA から VERTIGO への移籍第一弾。(VERTIGO レーベルの第一作でもある)
前作が、徹底してハードなブルーズ・ロックであったのに対し、本作はあまりに多彩な音楽性をパンチのあるサウンドへと叩き込み、R&B のなめらかさで仕上げた痛快な内容である。
ブルーズの魂、ロックのワイルドさ、ジャズの運動性、クラシックの構築性、全てを充実させた稀代の傑作であり、いわゆるブリティッシュ・ジャズロックの代表作の一つといえるだろう。
荒々しく猛るようでいてどこまでも緻密な演奏には、ライヴで培った手練の術ばかりか、アカデミックな学究精神すら感じられる。
アートロックという名の下の甘っちょろいブラス・ロックや、ビートポップに毛の生えた青臭いニューロックとは訳が違うのだ。
そして精密さとワイルドさの高次のバランスを象徴するのが、ハイズマンのドラムス。
美しいシンバル・ワークと怒涛のフィル、タム回し、バスドラ連打。
爆発的手数と超ド級の重さが、演奏の推進力なのは間違いない。
この強力なリズムに立ち向かうのが、ヘクトール・スミスのモダン・ジャズ調のつややかな管楽器と、グリーンスレイドのクラシックとソウル・ジャズをブレンドしたようなヘヴィなオルガンだ。
リーザーランドのギターも健闘するが、これだけ猛者が集まるとやや分が悪い。
もっともヴォーカルだけは、ソウルフルな黒さが適度であり、なかなかいい線をいっている。
作品は、前半 R&B 色の強いしなやかなナンバーでまとめ、後半はグリーンスレイドのクラシカルかつジャジーなオルガンがリードする巨大なインストゥルメンタル組曲である。
本アルバムを象徴するこの大作は、多くのミュージシャンの蒙を啓き、ロックの可能性を押し広げたに違いない。
特に、インタープレイの嵐と化して熱狂する終盤がすばらしい。
プロデュースはトニー・リーヴスとジェリー・ブロン。
「The Kettle」(4:28)ワウ・ギターをフィーチュアしたブルージーな歌もの。
聴きものはとにかく凄すぎるドラムス。
牙をむくように挑戦的な姿勢を見せるにも関わらず、安定感は抜群であり総体としては重厚という表現が相応しい。
遠慮会釈のないプレイである。
ヴォーカル/ギター、ベース、ドラムスのトリオによる演奏である。
「Elegy」(3:13)やや線は細めながらソウルフルなヴォーカルがカッコいい R&B 調の快速チューン。
弦楽がなめらかに伴奏する。
ここでもドラムスが凄まじい。
間奏では、メロディアスなソプラノ・サックスが朗々と歌う。
黒人映画のサントラのような強烈な匂いがある作品だ。
ストリングス・アレンジ/指揮はニール・アードレイ。
「Butty's Blues」(6:46)オルガン、ブラスをフィーチュアしたサイケでジャジーなブルーズ・ロック。
この作風は前作に通じる。
重厚にしてギトギトなハモンド・オルガン。
ヘクトール・スミスの悩ましげなテナーに加えて、ブラス・セクションもフィーチュアし、BS&T ばりのビッグ・バンド風の展開を見せる。
「The Machine Demands A Sacrifice」(3:55)
再び R&B 調のジャズロック。
主役がオルガンと管楽器であるにもかかわらず、ジミ・ヘンドリクスを思わせる謎めいたところがある。
泥臭いファンクなグルーヴとフルートらによる素朴なデリカシーが交差し、独特の雰囲気をもつ。
中盤のオルガン・ソロでは、4 ビートへと変化し、一気にジャズ。
終盤の奇妙な反復が、呪術的なムードを強める。
「The Valentyne Suite」次々と飛び出すモチーフと縦横無尽のソロが一丸となり、最後までハイ・テンションのキープされる圧倒的な演奏である。
ややオリエンタルな響きを帯びた旋律が用いられることにも注目。
オルガン・ロックのファンは、本作を英国ロックの峰々を眺望するための足場としてもいい。
「Theme One - January's Search」(6:20)きわめてシンフォニックなオープニング。
勇壮なオルガンのテーマを軸にピアノ、サックスによる幻想パートも交え、疾走感あふれる演奏を繰り広げる。
荒ぶるオルガンをピアノで破断するシーンに息を呑む。
熱いブラス・セクション、リリカルなギター、破天荒なヴァイヴのアクセントもみごと。
ワイルドなオルガンに加えてシャフル・ビート的なウラを刻むベースなど、THE NICE の「Rondo」に通じる雰囲気もある。
即興の海へと全てが沈むと、後半はブルーズ、バロック音楽と多彩な変化を見せるオルガン・ソロから、そのまま熱狂的な全体演奏へ。
オルガンは大胆にピッチを揺らし、トッカータとフーガの一節も飛び出す。
「Theme Two - February's Valentyne」(3:36)
クラシカルかつメロディアスなオルガンとコラールによる教会音楽風の演奏へ、ジャジーなサックスが重なるアレンジの妙。
「Theme Three - The Grass Is Always Greener」(6:57)
緩やかながらも堂々とした演奏へと落ちつくかと見せて、やはりどうしても掟破りの熱狂へと突き進んでしまう。
しかしこれがたまらなくカッコいい。
(Vertigo VO 1 / ESMCD 642)
| Jon Hiseman | drums |
| Dick Hecktall-Smith | tenor & soprano sax |
| Dave Greenslade | hammond organ, vibraphone |
| Mike Clarke | bass |
| Louis Cennamo | bass |
| Dave "Crem" Crempson | guitars, vocals |
| Chris Farlowe | lead vocals |
70 年発表の第三作「Daughter Of Time」。
ハイズマンによれば、前二作がライヴで培った演奏力とアレンジメントをスタジオで解き放った記録であるのに対して、本作は初めからスタジオ・アルバムとして、用意された楽曲を演奏して製作されたそうだ。
一方バンドの状態は、ギター/ヴォーカルのジェームス・リーサーランドの脱退、ベーシストのトニー・リーヴスの脱退などやや揺らぎ始めたようだ。
ベーシストは、RENAISSANCE のルイス・セナモ、新人マイク・クラークで演奏を分け合うなど、アルバム製作での苦心の後が見える。
そして、リーサーランドの後任は、BAKERLO の天才ギタリスト、デイヴ・「クレム」・クレムソンとなったわけだが、ギターのみならずリード・ヴォーカルも任せられたクレムソン、さすがに荷が重かったようで、ヴォーカリストとして JUICY LUCY のポール・ウィリアムスに白羽の矢が立つ。
しかし、ウィリアムスもバンド脱退不能と判明し、急遽スタジオに迎え入れられたのが、英国 R&B の帝王、クリス・ファーロウ。
パワフルな演奏に上条恒彦かマンダムかというくらい男臭いヴォーカルが映え、王者の風格漂う重厚な作風が完成する。
確かに、やや爆発のスケールが小ぶりになったような印象はあるのだが、ストリングス・セクションやバーバラ・トンプソンの管楽器など、スタジオ盤としての丹精こめたアレンジがそういう点を補って余りある。
名曲「想像されたウェスタンのテーマ」収録。
グリーンスレイドのファンは、THE NICE も真っ青のファンキーにしてクールな「Bring Out Your Dead」で満足。
ボーナス・トラックは、ハイズマンの破壊的なドラム・ソロ。
うまいドラマーはそれなりにいるが、「ものすごい」ドラマーというのはこの人とコブハムくらいである。
そして、爆発力だけではなく、丹念で緻密な印象も与えるからすごい。
プロデュースはジェリー・ブロン。
(Vertigo 6360 017 / ESMCD 644)
| Dick Hecktall-Smith | tenor, soprano & electric sax |
| Paul Williams | vocals |
| Careb Quaye | electric & acoustic guitar |
| Mike Clark | bass, vocals |
| Rob Tait | drums |
| Dave Greenslade | piano |
| Gordon Beck | piano |
| Graham Bond | piano, organ, moog synthesizer, vocals |
| Jon Hiseman | drums |
| Chris Spedding | guitars |
| Chris Farlowe | lead vocals |
72 年発表の作品「A Story Ended」。
COLOSSEUM 解散後に発表された管楽器奏者ディック・ヘクトール・スミスのソロ作品。
ソロとはいえ、顔ぶれはほぼそのまま COLOSSEUM であり、音楽も R&B 色の強いジャズロック、つまりほとんど COLOSSEUM である。
さらに、ヘクトール・スミスは、若干ソロのスペースを広げているものの、基本はアンサンブルの一員であり、バンド全体の強靭なグルーヴにすべてを捧げている。
白眉は、爆発的な「The Pirate's Dream」。スペディングのギター、ボンドの飛び道具、ムーグ・シンセサイザー、ファーロウのヴォーカル、圧巻としかいいようがない。
ARCHIVE の CD には、本作の作品のライヴ・ヴァージョン、および MANCHILD としての二作品をボーナス収録。
このライヴ録音が、ものすごい。もちろん、「The Pirate's Dream」もあり。
プロデュースはジョン・ハイズマン。
アルバム・タイトルは、T.S. エリオットの詩からだそうです。文武両道とはこのことか。うーむ、カッコいい。
(BRONZE ILPS 9196 / AIRAC 1187)