CITIZEN CAIN

  イギリスのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「CITIZEN CAIN」。 スコットランド出身。 82 年結成。 初期 GENESIS のフォロワー。 さまざまな表情を操るヴォーリストとダイナミックな演奏は、素朴な憧れの到達点にしてはかなり高度なものだ。 2002 年秋新作「Playing Dead」発表。

 Serpents In Camouflage

 
Cyrus vocals, flute
Stewart Bell keyboards
Frank Kennedy guitar
David Elam bass
Chris Colvin drums

  92 年発表の第一作「Serpents In Camouflage」。 サウンドは典型的な GENESIS リヴァイヴァル。 発声から節回しまでピーター・ゲイブリエルそっくりなヴォーカリストを中心に、堅実な演奏を見せている。 よく聴けばアコースティック 12 弦ギターのアンサンブルはないし、ハモンド・オルガンも伴奏程度にしか聴こえないのだが、ヴォーカルと太く叩き込むベースのおかげで完璧に初期 GENESIS に聴こえる。 初期 MARILLIONIQ と比べても、再現を目指した音作りの丹念さでは全くひけをとらない。 あえて本家との違いをあげるとするならば、フォーク・タッチの徹底的にロマンティックな作品というのがなく、「Nursery Cryme」や「The Battle Of Epping Forest」のような、諧謔と狂気に叙情性が交わる作風を主とするところである。 それでも、個人的には音の感触は最も似ていると思う。 もっとも、他のグループが早々と自らのスタイルを求めて変化していったのに対し、(おそらく)偏執的にコピーにこだわり続け精進を重ねたのだろうから勝って当然とも思う。
  ところが、無理と知りつつ「似ている」という観点を取り除いて味わうと、ていねいな器楽でヴォーカルをきわだたせるストーリー・テリング主体の演奏スタイルが、実はかなりいい出来なのだ。 このバランスのいい音の配置は、アクロバチックなプレイばかり氾濫するヘヴィメタル・サウンドが横行する中ではきわめて異色だ。 綴ってゆくべき物語をしっかり胸に抱き、かつ外へと向けて出してゆく表現技術も身につけているという点で、非常に優れたグループである。 いわば、フィジカルなカタルシスのみではなく、想像力をふくらませてゆくことのできる余地を残してくれているサウンドというようなイメージである。 最近の LE ORME やアメリカの ILUVATOR などが近いニュアンスかもしれない。 とはいえ弱点もあって、メロディ・ラインとテンポがややワン・パターン。 うがって考えると、初期のクリカン同様似せられることのできるメロディの持ち駒が少ないということだろうか。
  また GENESIS に似ているという物言いは、正確にいうとヴォーカルの声・歌い方と演奏の丹念な語り口が GENESIS に似ているということであり、この長い歴史のなか先例から完全に逃れたオリジナルなものなぞほとんどないことを考えれば、その点ばかりとり上げて騒ぎたてるようなことではない。 オリジナリティがないという表現が安易に使われすぎるように思う。 「重大なのはかくのごとき傑作が生まれたということであって、模倣であるか否かではない」(和辻哲郎) ただし、GENESIS を先に知っていたリスナーが、似ているが本家ほどではないという感触を抱くことをとめることはできない。 また初めは憧れだったものがいつのまにか目の上にたんこぶとなったときに彼らがどうするのか、とても興味があります。
  音で特筆すべきは大活躍するアナログ風シンセサイザーとハイテクではないが立派な存在感のあるギター。 ハケットよりも少々ハードなのだが、ロザリーほどは自己陶酔していないようだ。 堅実なアルペジオがうれしい。 そして曲はご本家同様大作主義らしく 10 分を超えるものが 4 つもある。 これも率直にいってうれしいです。 あえていうならもう少し歌詞が凝っているとさらにいいのでは。 また、ハナから 7 拍子のパターンを模索するのではなく、すてきなメロディを思いついたらたまたま 7 拍子だったという方が健全な気がする。 ともあれ、完全コピー・バンドを除けばおそらく一番ゲイブリエル GENESIS に似たグループでしょう。

  「Stab In The Back」(6:49)
  「Liquid Kings」(11:25)
  「Harmless Criminal」(10:29)
  「The Gathering」(11:05)
  「Dance Of The Unicorn」(6:27)
  「Serpents In Camouflage」(13:23)
  「Nightlight-As The Wheel Turns」(4:06)ボーナス・トラック。
  「Stab In The Back(Live Demo)」(7:06)ボーナス・トラック。

(CYCL 064)

 Somewhere But Yesterday

 
Stewart Bell keyboards
Nick Arkless drums
Andy Gilmonr bass
Alistair MacGregor guitar
Cyrus voice

  94 年発表の第二作「Somewhere But Yesterday」。 キーボーディストとヴォーカリスト以外のメンバーがすべて交代した。 キーボードの布陣に前作になかったオルガンも加わり、また、エレキギターもエフェクトでアコースティック風のアルペジオを奏でており、いよいよ GENESIS サウンドに磨きがかかる。 テンポとリズムの巧みな変化、ヴォーカルを守り立てるメロディアスなシンセサイザーと角張ったオルガン、フルート、テヌートとスタッカートの鮮やかな対比など、全体的な演奏のグレードは上がっている。 また、ギターのタッチだけは比較的今風なために前作と比べると全体に重みが増したような気もする。 GENESIS のセンチメンタルでメロディアスなところだけではなくエキセントリックなところや怪奇趣味をも広げたようなところがあり、特に、息詰るような切迫感とその裏返しのようで不気味な感じもあるポップ・テイストは独特のものだ。 また、10 分を超える曲ばかりにもかかわらず、流れるような語り口とこまめな変化など工夫を惜しまない編曲のおかげで、集中して聴きとおすことができる。 スタイルは真似ましたが内容がありません的な作品とは、格が違う。 パッチワークにしてもこれだけみごとに織り合わせれば、それはもう一つの別の芸術である。 あえていうならは、ヴォーカルを交えたアンサンブルの充実度合いと比べると、インストゥルメンタル部分はやや手薄かもしれないが、それとて大きな瑕疵ではない。 怪奇な挿絵の詰まった絵本を読む様に味わえるアルバムであり、書斎にこもって大人が一人楽しむにはもってこいの作品である。 もちろんヴォーカルのスタイルは、往時のゲイブリエルそのもの。 個人的にはベストの作品。

  「Jonny Had Another Face」(10:30)緩急など変化の付け方が巧みな王道作品。冒頭 MARILLION そのものな表情にその先が危ぶまれるが、次第にダイナミックな変化が現れてきて、MARILLION を軽く超えてしまう。傑作。
    「Parallel Lines」(1:07)
  「Junk And Donuts」(9:19)
    「An Afterthought」(0:21)
  「To Dance The Enamel-Faced Queen」(10:24)
    「Beyond The Boundaries」(1:03)
  「Somewhere But Yesterday」(25:40)六部から構成される組曲。GENESIS ファンは第一章冒頭でかなりヤられるのでは。第二章では、IQ ばりのネオプログレらしい疾走も。傑作。
    「A Word In Your Ear」(2:18)
  「Strange Barbarians」(11:48)
    「The Mother's Shroud」(2:29)

(CYCL 049)

 Ghost Dance

 
Gordon Feenie drums, keyboards, flute, guitar, vocals
Tim Taylor guitar, keyboards
Cyrus voice, bass

  96 年発表の「Ghost Dance」。 新作ではなく、84 年から 86 年に録音された第一期 CITIZEN CAIN (87 年解散)の作品集。 基本的な路線は同じ。 ヴォーカルもみごとに変わっていない。 一部「オールド GENESIS」風ではない作品もあるが、やはり目を惹くのは「Trespass」あたりの GENESIS をさらに強引にしたような演奏だ。 やたらと音数が多いのだが、オーバーダビングというよりは、弾きまくり、叩きまくりという印象である。 キーボードよりもギター、ベースがメインであり、アコースティック・ギターのアンサンブルもほとんどない。

(MELLOW MMP332)

 Raising The Stones

 
Stewart Bell keyboards, guitar, drums
Cyrus voice, bass, flute

  97 年発表の「Raising The Stones」。 遂にメンバーはヴォーカリストとキーボーディストの二人となり、ゲストの助力も得て完成させた第三作。 同じ「お芝居 GENESIS」路線ながらも、前作までに比べるとインストゥルメンタルが格段に充実する。 ゲストのせいか、思い切ったオーヴァー・ダビングのせいかは定かでないが、デリケートでカラフルなアンサンブルのできばえは今までで一番だろう。 技巧的でトリッキーなアンサンブルが冴えており、メロディアスで叙情的な表現と巧みに対比して、めくるめくドラマを作っている。 また、前作でやや気になったハードロック色は払拭され、クラシカルで重厚、なおかつ透明感のあるキーボード・オーケストレーションとアコースティック・ギターの精妙な響きが活かされている。 シンセサイザーとゲストによる管弦楽は圧巻だ。 ベースのプレイは、独特のたたみかけるようなアタックで積極的にアンサンブルに絡んでおり、本家に近いセンスを感じさせる。 また、キーボードのサウンド含め、全体に製作に力が入っており、音質は格段に向上している。 もともと長編をメリハリある演奏で描いてゆく手腕はかなりのものであったから、ダイナミックな音を得ていよいよ最高潮へ達したと見るべきだろう。 器楽の充実は楽曲の充実にもそのまま通じており、ややクセはあるもののメロディはきわめて多彩で、ヴォーカルの表現も初期の作品と比べると格段にメリハリが効いている。 リズム/演奏面では中期以降の GENESIS を思わせるところもあるが、雄大にして怪奇なファンタジーの雰囲気は、正に甦ったゲイブリエル GENESIS といえる。 大袈裟にいうと、本家の初期の路線のままレベル・アップを遂げているのだから、すでに本家を越えているかもしれない。 2 曲目の可憐な器楽とヴォーカルの表情や、3 曲目の目まぐるしくも風格ある展開には、そんな思いすら湧いてくる。 今回は似ているということ以上に、緻密なアンサンブルによる緩急/静動のメリハリのある語り口の巧みさに息を呑みます。 近年の GENESIS 風プログレの中では屈指の一枚。 THE WATCH といい勝負です。

  「(Hells Greedy Children)Last Days Of Cain」(13:17)
  「Bad Karma(Monsters And Men)」(8:07)
  「(i)First Gate - Open Yet Closed(Ghost Of Jericho Part 2)」(4:06)
  「(ii)Looking Heaven In The Face
  「Corcyra - The Suppliance」(6:31)
  「(i)Dreaming Makes The World」(11:51)
  「(ii)Variations
  「(iii)The Blood Plains Of Hev-Hem
  「(iv)Forever
  「(v)Aborted
  「(i)The Last Supper(Ylixiea's Dream)」(2:29)
  「(ii)In Deep Waters
  「Ghost Of Jericho(Part 1)」(5:24)
  「(i)Black Rain」(6:30)
  「(ii)Webs
  「Silently Seeking Euridice」(13:42)

(CYCL 049)


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