CAST

  メキシコのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「CAST」。 78 年結成。 デリケートなメロディをスピード感あふれる演奏で支える、いわばラテン風 GENESIS ともいうべきユニークなスタイルを築き上げた。 2003 年のメンバー・チェンジ以降、音楽性はさらに多彩となる。

 Nimbus

 
Carlos Humaran guitars
Kiko King drums, percussion
Flavio Jimenez bass
Alfonso Vidales keyboards
Francisco Hernandez vocals, guitars
Jose Torres wind
guest:
Guadalupe Acuna vocals, chorus

  2004 年発表の作品「Nimbus」。 新メンバーによる二作目。 演奏がシャープになり録音が若干クリアーになったおかげで引き締まった印象の作品となる。 ただ、息せき切るように走り続けながらロマンティックに歌うという繊細なようでスタミナあふれる作風には、基本的に変化はない。(4+3 拍子好き、道化師好きも変わらないし) 音が以前より明確になったおかげで、各場面や展開が分かりやすくなり、音楽の深みを感じ取れるようになった。 元々クラシカルな演奏はお得意だったが、それに加えて、ジャジーな音も自然に取り込まれていている。 このジャジーな音の導入は、実は大きな変化といえるだろう。 独特の忙しなさや音数の多さに慣れれば、芳醇なロマンティシズムに酔うことは可能である。 管楽器の説得力ある音色も印象的。 邪悪な表情を見せてグイグイとたたみかけるアンサンブルが、サックスと重なって初期の KING CRIMSON に迫るところや、ラテン色露な HM/HR 調は新機軸だろう。
   第三部までがアルバムにちりばめられた「Ladrona De Suenos」(「夢盗人」でしょうか)の第一曲は、インパクトのあるへヴィ・シンフォニック・チューン。 どちらかといえば KING CRIMSON より EL&P な感じがするのは、オルガンとピアノががんばっているからでしょう。 最初の組曲「911」はジャジーな音と CAST らしいエモーションがともに現れた作品。エネルギッシュな演奏と厳かな、ときに無常感すらある表現がすばらしい。 二つ目の組曲「Sucio Nino Bein」は、ギターもがんばるオールド・ロック調の名曲。往年のプログレらしさもある。 8 曲目「Dias De Sol Y Luz」は BACAMARTE を思わせるゲストのコントラルトをフィーチュアし、ピアノ、フルートが伴奏する相聞歌風の作品。ファズ・ギター、まろやかなシンセサイザー。 結成 30 年余りだそうだが、ここまで来ても GENESIS のメロディアスなところはしっかりと受け継いでいる。 後半の組曲「Un Siglo De Invierno」は、HM/HR 色を強めた作品。へヴィなサウンドはキーボードのテイストとあまり合っていないような気がするのだが。 「Hojarasca」は、アコースティック・ギターのさざめきといいエレキギターの歌い方といい、木管風の音といいスティーヴ・ハケットそのもののような佳品。タイトルは謙遜か?
   ヴォーカルは英語とスペイン語。

(MYLOCD 020)

 Landing In A Serious Mind

 
Dino Carlo Brassea voice, flute
Francisco Hernandez guitar, chorus, voice on 6
Alfonso Vidales keyboards
Rodolfo Gonzalez bass
Enrique Slim drums, percussion
Javier Rosales guitar on 3

  94 年発表の第一作「Landing In A Serious Mind」。 70 年代終盤から活動を続ける CAST が初めて発表した CD である。 この後ニ作が旧作品も交えたものであるのに対し、本アルバムの作品は 90 年代に入ってからの新作。 アルフォンソ・ヴィダルスのトニー・バンクスをさらにクラシカルにしたようなキーボードとディノ・カルロのデリケートな歌唱が、全編をリードする。 リズム面の不安定さやポンプ典型風のところもあるが、演奏/曲想は最近の作品と遜色ないすばらしいものだ。 「Imaginary Window」や「Legacy」のファンには一聴の価値あり。 ヴォーカルは英語。
  最終曲「Chris Col」は MARILLION の「Market Square Hero」と P.F.M の「Celebration」の中間地点。

 Sound Of Imagination

 
Francisco Hernandez voice, guitar on 3,5
Alfonso Vidales keyboards
Rodolfo Gonzalez bass, chorus
Enrique Slim drums, chorus
Javier Rosales guitar, chorus

  94 年発表の第二作「Sound Of Imagination」。 80 年代からの楽曲をまとめた作品。 前半は総じて、がんばれ MARILLION クローンと応援したくなるポンプ・ロック。 疾走一直線型の演奏を一段引き上げているのは、華麗なキーボードである。 PENDRAGON のギターとキーボードの音数が逆転した感じといってもいいだろう。 走るわりにはドラムが危ういのと、ヴォーカル含め各楽器の分離が悪い録音さえ気にしなければ、なかなかの力演だ。 特に、後半のヴォーカルものにおけるメロディ・ライン、コーラス、そして繊細なアンサンブルがすばらしい。 ポンプ系に共通な、シンプルな表層によって隠されたメロディやハーモニーが聴き込むことによって次第に見えてくるという特徴は、ここでもあてはまる。 エンディングの 94 年の作品「A Run In The Rain」は、胸に迫る哀愁のヴォーカル・パートと緻密なインストゥルメンタルが見事にとけあった大傑作。

 Third Call

 
Francisco Hernandez voice on 1,2,3,4,6,8, guitar on 5,6,7,8
Alfonso Vidales keyboards
Rodolfo Gonzalez bass
Antonio Bringas drums
Dino Brassea flute, voice on 5

  94 年発表の第三作「Third Call」。89年の作品 4 曲と 94 年の新作 4 曲からなるアルバム。 内容は、繊細でセンチメンタルな歌メロをきわめて多彩なキーボードが守り立てるメロディアスなシンフォニック・ロック。 89 年の作品である前半 4 曲はギターレス。 後半の 94 年の作品も、ギターはやや控えめであり、全体にキーボードの存在感が大きい。 忙しいリズム・セクションとシンセサイザーのリフがドライヴする演奏は、中期 GENESIS、初期 MARILLION への思い入れたっぷりのポンプ・スタイルである。 シンセサイザーとピアノを主とするキーボードのプレイは、せわしなく小刻みなオスティナートからつややかなソロまで、演奏を完全に仕切る。 後半のみ入るギターは、アタックを消したハケット風のメロディやアルペジオなど、いいプレイを見せるもののやはり脇役である。 ヴォーカルは、やや巻き舌の英語なるも、デリケートな美声と悩ましげな表情がカヴァーしている。 音数多く弾けるような打撃を連発するドラムス、低音を太くパワフルに叩き込むベースなども、いかにも GENESIS 風である。 繰り返しが多くややせわしなさ過ぎるところもあるのだが、さまざまな音を矢継ぎ早に繰り出し一気呵成に進むところと、メロディアスでゆったりとしたところの対比がくっきりしており、そのおかげで、痛快さばかりかエモーショナルな盛り上がりまでが深く印象に残るのである。 場面転換のリズム・チェンジもカッコいい。 録音がもっときめ細かければ、さらにイメージが上がるのではないだろうか。 ジャケットは三つ折になっており、広げると全貌が分かる。

  「Where The Wind Blows」(7:42)
  「Sleeping Fortress」(7:22)
  「Time In Space」(7:21)
  「Door Of The World」(15:07)緩急の対比がドラマを生む傑作。終盤の演奏が感動的だ。

  「Static Dreams」(6:57)新ヴォーカリストをフィーチュア。 歌メロはかなりラテン歌謡調なのだが、クラシカルなキーボードが寄り添いギターとベースによるヘヴィで沸き立つような演奏が盛り上げフルートがさえずると、やはりシンフォニック・ロックといっていい内容になる。 正確には、日本で耳慣れた歌謡曲なるものが、ラテン・ミュージックを基調の一つとしているのだろう。 終盤のギターがカッコいい。

  「I'm Waiting」(7:29)ラテン・フュージョン・ポップス風の健康的で涼しげな余裕を見せる作品。新旧ヴォーカルの共演のようだ。ハイトーンのハーモニーが YES を思わせるところもある。

  「Veto Be」(3:56)ロマンティックにして愛らしいシンフォニック・チューン。疾走するリズムとともにギターとキーボードがせめぎあう。インストゥルメンタル。

  「House By The Forest」(7:15)メインストリーム・ポップス(昔ならバーブラ・ストライサンド辺り)風のロマン薫るメローなテーマから、エネルギッシュにしてクラシカルなインストゥルメンタルへと展開する傑作。 クラシカルなピアノ、木管・弦楽を思わせるシンセサイザーが美しい。 妖しげな表情を駆使するヴォーカルをはじめ、柔らかくポルタメントするギターやせせらぎのようなピアノなどは、もろに GENESIS だ。 ここでも緩急の変化が効果的。 エンディングはお伽話の幕切れのようなノスタルジックで優しさあふれる語り口である。

(CD ALF-003)

 Beyond Reality

 
Dino Carlo Brassea voice, flute
Jose Antonio Bringas Caire drums, percussion
Alfonso Vidales keyboards
Francisco Hernandez voice, guitar
Rodolfo Gonzalez Quiroz bass

  96 年発表の第六作「Beyond Reality」。 フルートも演奏する専任ヴォーカリストによるデリケートな歌唱のおかげで、走りぎみの曲にぐんと表情がついてきた。 充実した布陣によって、アルバムは長大な組曲を中心に構成されている。 インストゥルメンタル・パートは、キーボードとギターが交互にソロを取りながら弾けるようなリズムで飛んでゆくスリル満点の演奏であり、ヴォーカル・パートは、優美に表情かにメロディを綴ってゆく。 この二つのパートを巧みに組み上げ、波瀾万丈の物語が展開する。 たたみかけるようにスピーディな演奏を得意としているが、決してハードに過ぎず、あくまでファンタジックでメローな音色のロックとなっている。

  「The Rescue」優美なテーマを用いながらも徹底して走り続けるエネルギッシュなシンフォニック・ロック。 力強さをもったファンタジック・ロックの傑作。

    「Introduction」(5:28)白熱する 7 拍子のインストゥルメンタル。 緩急・エレクトリック・アコースティックの音色を巧みに使い分けている。 流れるようなシンセサイザーと麗しきピアノ、そしてロングトーンで泣き叫ぶギターが交錯する。 溌剌とした、それでいてデリケートな曲だ。

    「To The 7th House Of Huitzilopochtli」(8:29)スペイシーな広がりをもつヴォーカル・ナンバー。 キーボード中心の伴奏は雄大かつカラフル。 サスティンの効いたメロディアスなギターは、ハケット風。 ティンパニのようなドラムで驀進する EL&P 風のクラシカル・テイストあふれるアンサンブル。 ピアノとコラール風のシンセサイザーを背景に、ヴォーカルが優美な旋律を謳い上げる。 このシーンは、いかにも CAST らしいたおやかな情感にあふれ、アルバム最初のハイライトといえるだろう。

    「The Rescue」(7:27)典雅なピアノとフルートから始まる終章。 やがてオルガン、ストリングス・シンセサイザーも高鳴り、分厚い音の流れができてゆく。 ギターとオルガンのリフへとまとまると一気にスピードは上がり、力強い演奏が続く。 ハードポップ風の音なのに安易さがないのは、あくまでクラシック調のアンサンブルとして各パートが反応しあっているだからだろう。 とにかく、押し捲るのに美しい。 音の奔流の表層へ浮かび上がるギターやフルートのメロディも生命力にあふれている。 そして、天上の音楽のように響き渡る第ニ章のヴォーカル・パートのテーマ。 シンセサイザーによるクライマックスを経て、感動的なエンディングを迎える。 さらに各曲も鑑賞予定。

  「The North
    「Northern Place」(7:55)
    「All The Way From Nowhere」(5:52)
  「The Mirror's House
    「Marcato」(5:46)
    「The Mirror's House」(13:17)

  「Transparent Symbols」(3:14)

  「Another Night」(4:38)ボーナス・トラック。 CAMEL の名曲のカヴァー。

(ALF-006CD)

 Imaginary Window

 
Antonio Bringas drums, percussion
Francisco Hernandez voice, guitars
Rodolfo Gonzalez 5 & 6 string bass
Dino Brassea voice, flute, acoustic guitar, bass
Alfonso Vidales keyboards

  99 年発表の第九作「Imaginary Window」。 優美なフルートとストリングスの調べに酔わされる傑作。 ほんのりポップなテイストも加わって、遂に一段上のステージへと上がったようだ。 キーボード・オーケストレーションを駆使しつつもアコースティックな音を散りばめた楽曲は、マイナーな喩えで恐縮だが、ブラジルの RECORDANDO O VALE DAS MAÇÃS を思わせる色彩と繊細なエモーションでいっぱいである。 緩急の変化もナチュラルな流れにのり、得意の 7 拍子アンサンブルがいっそう効果的。 ピアノの音が象徴するように、全体的にエネルギーの迸りをやや抑えて、メローなタッチを強めたようだ。 しかし、根底にあるのは瑞々しい生命感であり、官能的でファンタジックなシンフォニック・ロックといえるだろう。 もう少しアンサンブルの音の分離がよくなると、さらに聴きやすかっただろう。
  5 人体制でのパフォーマンスが飛躍的に充実した作品。 音質や演奏は作品毎にどんどんよくなっている。

  「Moving Universe」(8:46)躍動感とデリケートな美感、泣かせるメロディのあるインストゥルメンタル。
  「Alter Ego」(4:38)
  「A Blossom In The Spring」(4:02)
  「Dawn」(5:06)
  「Simple Things」(3:55)
  「Snail」(2:48)
  「Around And Around」(9:07)
  「Dessert Rainbow」(2:11)
  「Cotton Dreams」(6:32)
  「Imaginary Window」(9:15)
  「There Is The Light?」(10:31)

(MUSEA FGBG 4295.AR)

 A Live Experience

 
Francisco Hernandez voice, guitars
Antonio Bringas drums
Dino Brassea voice, flute
Rodolfo Gonzalez bass
Alfonso Vidales keyboards

  99 年発表の第十作「A Live Experience」。 今までのアルバムを網羅したベスト・ライヴ盤。 ここへきて初めて大きな驚きに我を忘れる。 全ての楽曲はスタジオ盤を凌ぐ勢い、スピード感、リリシズムをもち、ものすごい迫力で押し寄せてくる。 現メンバー以前の古い作品も、おそらくここでの演奏が原曲を凌いでいるに違いない。 CAST とは史上最強のライヴ・グループであったのだ。 ひょっとすると、この一枚で全てはいい尽くされているのかもしれない。 CD ニ枚組。

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 Legacy

 
Antonio Bringas drums, percussion
Francisco Hernandez voice, guitars
Rodolfo Gonzalez bass
Dino Brassea voice, flute
Alfonso Vidales keyboards

  2000 年発表の第十一作「Legacy」。 「Imaginary Window」に続いて、再び映画音楽のような芳しきシンセサイザー・ストリングスの調べで幕を開ける本作は、「Legacy」を巡るトータル・アルバム。 きらびやかにして格調あるキーボード、切なく歌うギター、たおやかなヴォーカルのコンビネーションは盤石、より洗練されたタッチで物語を綴ってゆく。 楽曲は一貫してスピーディなメロディアス・ロックだが、音数を抑えた場面や穏やかな場面も交えて、ストーリー・テリングの機微がぐっと深まっている。 演奏も進境著しく、特に、緩急自在のリズム・セクションには安定感あり。 アルフォンソ・ヴィダルのキーボードを中心としたアンサンブルは、まさに花が咲き乱れるような色とりどりのファンタジーのイメージである。 オルガン、シンセサイザー、アコースティック・ピアノの音が惜しみなく全編を彩っている。 ロマンティックなオプティミズムの香りとともに、華やかにして高雅なクラシカル・テイストも効果的。 ベタつきそうなところを、宗教的な厳かさと気品で整え、救い上げてゆく。 そして、タイトな演奏でメリハリをつけることも忘れていない。 ポンプ・ロック嫌いでも、このでき映えなら納得できるだろう。 もはやクローン云々ではなく CAST の歌がはっきりと聴こえてくる。 キーボードを中心にしたメロディアス・シンフォニック・ロックの大傑作。

  「Proemio」(2:21)
  「Legacy's Executor」(9:19)
  「Key Of Life」(9:30)
  「Celestial Garden」(4:03)
  「Magic Of Love」(6:58)
  「Personal Status」(4:30)
  「We Are The Ones」(5:54)
  「Take A Look Back」(7:41)
  「Beneficiaries」(4:22)
  「Living Dreams」(1:26)
  「Before Me」(4:04)
  「The Will」(4:40)
  「Conclusion」(7:41)

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 Laguna De Volcanes

 
Francisco Hernandez voice, guitars
Antonio Bringas drums
Dino Brassea voice, flute, acoustic guitar
Rodolfo Gonzalez bass
Alfonso Vidales keyboards
guest:
Javier Rosales guitar on 2-8
Omar Pinera vocals on 2-5
Eduardo Ortiz guitar on 2-11

  2000 年発表の第十二作「Laguna De Volcanes」。 これまでの代表曲をスペイン語のヴォーカルにて再録した作品。 初期作品への追加ミックスなども行われているようだ。 原語の響きには、何ものにも代えられぬ趣がある上に、演奏/録音も優れており、ベスト盤として十分機能する。 当初はカラーのジャケットだったが、初版を売り切ったせいか白黒のコピーによるジャケットものもあり。 CD 二枚組。

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 Al-Bandaluz

 
Francisco Hernandez vocals, chorus, percussion
Carlos Humaran guitars, vocals
Kiko King drums, percussion
Flavio Jimenez bass
Alfonso Vidales keyboards
guest:
Pepe Torres sax, flute, clarinet, kena
Jose Luis Algaba bass
Lupita Vidales voice

  2003 年発表の作品「Al-Bandaluz」。 理由は不明だが、リーダーのアルフォンソ・ヴィダレス、ギタリストのフランシスコ・フェルナデス以外のメンバーが交代、フェルナンデスはヴォーカリストに専念し、新ギタリストを迎えている。 得意の奇数拍子でキーボードがさざめくシンフォニックな作風はそのままに、リズム・セクション、ギターの演奏含め表現のバリエーションが広まった印象を与える内容となっている。 クラシカルでロマンティックな面は維持しながら、ハードロック風のワイルドさや現代音楽風の険しさも取り入れ、音楽にメリハリがある。 確かに初めはディノ・カルロのデリケートな歌唱やフルートが懐かしくなるのだが、新ギタリストによるきわめて現代的なプレイに刺激されているうちに、気がつくと作品世界に惹きこまれている。 冒頭 1 曲目の 5 拍子の怪しげなピアノのオスティナートから、今まで以上力が入っているのは明らかだ。 そして、製作面にも力が入ったせいか、今までなかなか出し切ることのできなかった積み上がった音の魅力が、ちゃんと伝わるようになっている。 このグループの音楽の中心である華やかにしてスピード感もあるキーボードのプレイも、ようやくその本当の実力を開陳できたというべきだろう。 2 曲目のように IQ も凌ぐほどに冴えた作品のよさも、今回の明快な製作あってのものだろう。
  新しいギタリストはさまざまなプレイ・スタイルをごく自然に操る逸材である。 テクニカルになった分、匂いたつようになよやかな叙情性が後退したことは否めないのだが、全体として、新生面を見せつつも CAST らしさも打ち出した傑作といえるだろう。 CD 二枚組。 一枚目は、上に述べたとおり今までの作風を継承、格調、グレードアップした力強い作品が集まり、二枚目では素朴にして雅な表現や音を削ぎ落とした表現、ややジャジーな表現など、新しい方向性も示している。 二枚目の中心となる 2 曲目の超大作後半に現れるスキャットなんて、初期の CAMEL のようであり、ベテランとは思えぬほどに若々しくナイーヴである。(元々 CASTCAMEL のカヴァーもやっていたのではあるが) ヴォーカルはスペイン語。ただし、バランスとしてはインストゥルメンタルが主の作品である。

(FGBG 4512.AR)


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