イギリスのジャズロック・グループ「BRAND X」。
ジョン・グッドソールを中心にスタートしたセッション・グループが本格化、76 年アルバム・デビュー。
その後三枚のアルバムを不動のメンバーで発表。
しかし、78 年フィル・コリンズが GENESIS に専念するため脱退、新たにアル・ディ・メオラのグループからチャック・バーギを迎える。
80 年代前半に解散するも、92 年グッドソール、パーシー・ジョーンズの二人を中心に再結成、ハイ・クオリティなアルバムを発表。
再休眠するが、97 年再復活、活動中。
70 年代イギリス・ジャズロック・シーンを総括するグループ。
一流スタジオ・ミュージシャン集団による技巧とエキゾチックな神秘性に満ちたサウンドが特徴。
アメリカの先達への敬意とライバル意識は、英国流のヒネクレの効いた洒脱なグループ名に明らか。
| Percy Jones | bass |
| John Goodsall | guitars |
| Robin Lumley | keyboards |
| Phil Collins | drums |
| Jack Lancaster | wind |
76 年発表の第一作「Unorthodox Behaviour」。
英国ロック畑のハイテク・ミュージシャンが集まり、時代の音であった「クロスオーヴァー・フュージョン」という土俵の上で勝負を挑んだ快作。
様式はアメリカの音の踏襲に近いのだが、真っ向勝負の緊張感とロック寄りのパワー、弾力性、さらには英国的、ヨーロッパ的な陰影も活かされて、いわゆるフュージョンとは一線を画するサウンドになっている。
形式こそすでに決められていた分けだが、この硬質で暗い色彩美を持つサウンドはその中で彼らの創造したオリジナルなものといえるだろう。
ハードロックを加速したようなハイテク・ギター、スリリングなフィルで演奏をドライヴするドラムス、看板ともいえる摩訶不思議なフレットレス・ベース、そして丹念に隙間をうめてゆくキーボード・ワークまで、すべてのプレイがハイレベル。
どうしても明るく突き抜けず、内に向かって収斂してゆくような演奏がいかにもイギリスのグループらしい。
なににせよ、聴けばすぐに BRAND X だとわかるサウンドが確立されている。
フュージョン系のグループでこういう個性は希ではないだろうか。
プロデュースはグループとデニス・マッケイ。
全曲インストゥルメンタル。
「Nuclear Burn」(6:23)
テクニックを見せつけるド派手にして硬派なジャズロック。
個性的なフレージングを駆使するハイテク・ベースと音数勝負のドラムスを中心に、前傾のまま転げてゆくような凄まじい演奏を見せる。
ギターによるせわしなくもほのかにスパニッシュなテーマとその余韻は、明らかに 中期 RETURN TO FOREVER からのものだ。
いわゆる「フュージョン」よりも遥かにインパクトがあるのは、メロディに安住せずにキメのフレーズへ向けてぐいぐいと押し捲るからだろう。
また、審美センスあるキーボードのプレイには、アメリカのフュージョン・グループとは異なる、ファンタジックなプログレ滋味が感じられる。
中盤、ブリッジ風のアンサンブルに我慢ならないかの如く猛り狂うドラムスに感動。
そして、ビジーなベース・リフから始まる終盤のジャムは、楽器同士の呼応が熱気へと変化し、炎のようにみるみる全体へと燃え広がってゆく。
手に汗握る演奏という表現が相応しい。
タイトル通りのこの爆発力は、イタリアの AREA や後期の KING CRIMSON を連想させる。
「Enthanasia Waltz」(5:42)
ドリーミーな音響とテクニカルなプレイが品よく調合された、抒情味あるジャズロック。
ふくよかな 12 弦アコースティック・ギター、ファンタジックな余韻を響かせるエレピらによる優美な演奏が、シャープなリズムととけあってロマンを生み出す名品である。
テーマはメローな和声によるのだが、メロディではなく和音の響きに依存しているために「含み」を感じさせ、「快適リゾート・フュージョン」とは 100万 光年くらい離れた、ストイックで芸術的な世界になっている。
あまりブルーズ的でないエレピのソロもこの幻想味あふれる世界の重要な構成要素だろう。
3 連を刻み捲くる精密かつ攻撃的なドラミングにも注目。
中盤、アンサンブルが次第に加熱してベースが弾け捲くる。
RETURN TO FOREVER と同種の緊張感とそこからの解放のカタルシスがある。
クールなサウンドの感触が U.K. の第一作に通じるような気もする。
コリンズのドラムスは通常硬めにチューンしてあるように思うのだが、ここでのタムは音がやや緩めであり、そのせいでタム回しの感じがブルフォードに似て聞えるせいかも知れない。
三作目のライヴ・アルバムにも取り上げられた傑作だ。
「Born Ugly」(8:15)
ほぼ即興に近いジャム作品。
前半は、ファンキーなリフを主体とした「柔らかめのハービー・ハンコック」といった感じのフュージョン調である。
跳ねるリズム主体の演奏に、華やかにして愛らしいアコースティック・ピアノのテーマが映える。
何気なく決める超絶ユニゾンもみごとだが、最も面白いのは演奏に奇妙に抽象的なイメージがあるところだ。
ノリはいいのだが、一筋縄ではいかない演奏なのだ。
ピアノに導かれてメローでエモーショナルな世界も見えてくるが、再び原色ファンクに取り込まれる。
ブリッジを経て、ギターのリードで荒々しいアンサンブルがスタート。
後半からはさらに即興風になり、やや冗漫なスペース・ジャズロックへと突入。
それでも、緊張と弛緩が交互に訪れて、メリハリはある。
きっかけがあると、ギターを軸に瞬時にハイテンションの全体演奏へとまとまる。
鮮やかな技巧だ。
次第に分かってきたが、4 人でこの音数の多さというのも凄い。
ドラムスは、ときおり目のさめるようなプレイを見せる。
ギターの音が「Wired」ジェフ・ベックを連想させる。
「Smacks Of Eurhoric Hysteria」(4:30)
ギターのテーマを軸に、過激な変転を盛り込んだ野心作。
挑戦的なタム回しが、安定した演奏を拒絶するように場面展開を促してゆく。
後半続くギターとシンセサイザーのソロ合戦が、抜群にカッコいい。
特にシンセサイザーは、つややかな音色と上品で丹念なポルタメントやピッチ・ベンド・プレイがいい。
歌わせ方がうまいといえばいいのだろうか。
曲としてはやや脈絡がぶっ飛んでおり、初めと終わりで別の曲のような趣である。
「Unorthodox Behaviour」(8:29)
タイム・キープはされるが、インプロヴィゼーションに近いせいか、結局最後までアンサンブルらしいアンサンブルには収束せず、張りつめたような緊迫感もない。
その代わり、カラフルでほのぼのとした穏やかさに満ちており、聴き心地はいい。
百戦錬磨のスタジオ・ミュージシャンによる「賄い膳」的即興ジャムなのだろう。
「Running Of Three」(4:38)
弾けるような前のめりのリズムを強調したハード・ジャズロック。
ブレイクをはさんだスタッカート気味のテクニカルなユニゾンと、メロディアスなテーマを対比させつつ、過激に突き進む痛快な演奏である。
やたらと音の多いベース・リフ/オブリガートとドラムスは相変わらずだが、ここではギターもタガがぶっ飛んだように弾き捲くる。
終盤は、どうやったら呼吸を合わせられるのか不思議になるほどストップとスタートを繰り返す、技巧的な演奏が続く。
地味ながらもシンセサイザーの暗くつややかな音色がここでも活きている。
「Touch Wood」(3:04)
東洋風味の即興アコースティック・アンサンブル。
ギターはアコースティック、ピアノもアコースティック、ベースもダブルベースのようだ。
Virgin もしくは Island レーベル風の薄墨を流したような色合いのニューエイジ・サウンドは、本アルバムでは異色である。
ソプラノ・サックス担当はジャック・ランカスター。
完成度の高い独特のハイテク・ジャズロック作品。
独特のテンションとせわしなさをもつリズム・セクションを筆頭に、どのプレイヤーも極めて高度な技巧を誇る。
そして、最も特徴的なのは、深海の暗闇で蛍光を放つ微生物が伸縮するようなイメージを与える、謎めいたアンサンブルである。
いわゆる超絶技巧という言葉から連想されるような演奏にはない、奇妙な穏やかさと妖しい非現実感が魅力だ。
「引き」のうまさというのだろうか。
わびさびという感じもある。
もしくは、いかにもイギリスらしい翳りのあるグルーヴということだろう。
そして特に印象的なのはリズム・セクション。
こねくり回すようなフレットレス・ベースのプレイと、弾け飛ぶようにフィルを入れ、タムタムを叩きまくるドラムスは、テクニカルであると同時にきわめて個性的だ。
キーボーディストは、ツボを心得ており、最小の音で最大の効果を出す腕の持ち主。
プロデューサーとしてもセンスを発揮しているにちがいない。
ミステリアスでトリップできる即興アンサンブルのおもしろさは随一だろう。
(CASCD1117)
| Percy Jones | bass |
| John Goodsall | guitars |
| Robin Lumley | keyboards |
| Phil Collins | drums |
| Morris Pert | percussion |
76 年発表の第二作「Moroccan Roll」。
パーカッションに SUN TREADER のモーリス・パートを迎え、5 人編成となる。
内容は、オープニングのヴォーカル・ナンバーや終盤の大作らに見られるように、エキゾチックなテイストも取り入れた技巧的ジャズロック。
RETURN TO FOREVER がもっていたラテン・テイストの代わりに、ワールド・ミュージック風味と PINK FLOYD 風のスペイシーなサウンドを取り入れ、ユニークなジャズロックを確立したといえるだろう。
作曲は、モーリス・パート以外の 4 名で分け合い、各自のソロが冒頭に散りばめてある。
白眉はジョーンズ作の「Malaga Virgen」。
プロデュースはデニス・マッケイ。
ちなみにパートの眼鏡とマイク・ラトリッジの眼鏡が似ている。
「Sun In The Night」(4:25)なんとなくジョージ・ハリソンなエスニック・ナンバー。
サンスクリット語のヴォーカル入り。
新加入のパートのパーカッションがフィーチュアされている。
グッドソールのシタールはギターと手癖が同じ。
グッドソールの作品。
「Why Should I Lend You Mine」(11:16)即興主体の大作。
パーカッション、エレピ、ギター、ベースらの余韻に縁取られた音が、いかにも BRAND X らしい質感を持つ。
トレモロ風の細かな音による目まぐるしいプレイが多いにもかかわらず、エキサイトという言葉の対極にあるような演奏が続く。
奇妙によどんだ暗闇のなかを蛍光魚が回遊するようなイメージ、もしくは楽器のひそひそ話である。
即興風に各パートが、刺激しあいながら静かに進んでゆく。
シンセサイザーとギターのやりとりなど、メロディアスなふくらみをもち流れるように動くところもある。
全体としてはミステリアスかつファンタジック。
テーマの全体演奏的な部分はなく、いつしかフェード・アウト。
コリンズの作品。
「...Maybe I'll Lend You Mine After All」(2:10)水の滴るようなピアノをフィーチュアしたファンタジックでややメローなナンバー。
うっすらと聴こえるヴォカリーズはコリンズだろう。
コリンズの作品。
「Hate Zone」(4:41)冒頭はドラムス・ソロ。
メタリックな 3 連のテーマとファンキーにバウンスするリズム。
無限にグリッサンドするシンセサイザーが強烈。
ギター・ソロもすさまじい。
凶暴なるエレクトリック・ファンク。
グッドソールの作品。
「Collapsar」(1:35)シンセサイザーをフィーチュアした小品。
フルートを思わせる旋律部、鍵盤らしい丹念なバッキング、透き通るストリングスなどていねいな音作りである。
後に流行するニューエイジ風味も現れている。
あまりに短く発展の余地がないのが残念。
ラムレイの作品。
「Disco Suicide」(7:55)前作のナンバー同様アメリカ、メイン・ストリームのジャズロックとして明快な作品。
スピーディな疾走感あるテーマ、テクニカルな決め、ロマンティックでメローな緩徐パート、ファンタジックな停滞、どこもみごと。オムニバス風のなめらかな曲の表情の変化が、演奏力を物語る。
4:30 辺りの強引な突っ走りとシンセサイザー、エレピのリードによる全体演奏がカッコいい。
イギリス人がやると、フュージョンがプログレとシームレスにつながるムーヴメントであるという事実にようやく納得ができる。
終盤はシンフォニックに広がり高まってゆく。
ラムレイの作品。
「Orbits」(1:38)ベース・ソロをフィーチュアした小品。
ジョーンズの作品。
「Malaga Virgen」(8:28)ジョーンズの超絶プレイが披露されるテクニカル・ジャズロックの傑作。
メロディ・ラインに漂うラテン/サラセンなスパニッシュ独特の翳りは、まさに RETURN TO =「Romantic Warrior」= FOREVER への挑戦状か。
幻想美にあふれなおかつ緩急・動静の変化も大きくダイナミック。
アコースティックな音も巧みに活かされている。
ジョーンズの作品。
「Macrocosm」(7:24)和風ながらもややレイドバックしたフュージョン調のテーマが、かえって異色なテクニカル・ジャズロック・ナンバー。
グッドソールはマクラフリンばりのプレイを連発。
後半のラムレイとのソロ合戦・かけあいは壮絶。
アメリカでは受けそうな内容だ。
グッドソールの作品。
(CASCD1126)
| Percy Jones | bass |
| John Goodsall | guitars |
| Robin Lumley | keyboards |
| Phil Collins | drums |
| Morris Pert | percussion |
| Kenwood Dennard | drums |
77 年発表の第三作「Livestock」。
超絶技巧と陰影に富んだサウンドが巧みにブレンドされた、屈指の名ライヴ・アルバム。
5 曲中 3 曲がスタジオ・アルバム未収録の作品である。
オープニング「Nightmare Patroll」のフェード・インからテーマが決まるまでの神秘的な演奏は、WEATHER REPORT や RETURN TO FOREVER のスタイルのイギリス的咀嚼とも考えられる名演。
SOFT MACHINE の名曲「Facelift」にも似た法悦の瞬間がある。
直線的に突っ込むかと思えば絶妙の呼吸でひるがえり、うねりながら再びグルーヴィな流れへと注ぎ込んでゆく。
ゲストでドラムスを叩くケンウッド・デナードの豪快なプレイも、コリンズの弾力性あるプレイとは趣が異なり新鮮である。
本作では、フュージョン/ジャズロック特有のテクニカルな「決め」や超絶ユニゾンももちろん堪能できる。
しかし、そういったあからさまな技巧以上に、蠢きながら放たれる、ぬぐいようにもぬぐい切れない「翳り」が印象的だ。
もっというならば、このアルバムは「うるさくない」のである。現代のデジタルな音のプレゼンスに慣れてしまうと、恐ろしいくらいにこのアルバムは音がない。ただし、その音と音の間隙には、プレイヤーが互いの様子を探り合っている緊張感が詰まっているのが分かる。
この静けさとテンションは、KING CRIMSON の即興とよく似ていると思う。
ライヴ独特の空気が入っているアルバムなのだ。
個人的に口ずさめるほど聴き込んだアルバムのように記憶するが、複雑過ぎて実はとても口ずさめない。
当時いわゆるフュージョンが大嫌いだった私が、初めて意識して聴いたジャズロック系のアルバムです。
プロデュースはグループ。録音は、76 年 9 月 Ronnie Scott's Club、77 年 8 月 Hammersmith Odeon と Marquee Club。
余談。LP では「Nightmare Patroll」と「Malaga Virgen」の 2 曲のドラムスがケンウッド・デナードとクレジットされていたが、CD では「Nightmare Patroll」と「Isis Morning Part.1/2」となっているらしい。
真実や如何に。
「Nightmare Patroll」(7:57)インテリジェントにしてファンタジック、キメもカッコいい傑作。
フュージョン嫌いの私も惚れました。
「-Ish」(8:30)
「Enthanasia Waltz」(5:26)第一作より。
「Isis Morning Part.1」(5:36)異教的なムード漂う幻想即興曲。
「Isis Morning Part.2」(4:41)
「Malaga Virgen」(9:06)第二作より。スタジオ盤を上回る迫力。
(CAROL 1388-2)
| Percy Jones | bass |
| John Goodsall | guitars |
| Peter Robinson | keyboards |
| Chuck Burgi | drums |
| Morris Pert | percussion |
78 年発表の第四作「Masques」。GENESIS の活動に専念するために脱退したコリンズの後任としてチャック・バーギが加入。
さらに、前作までキーボードを担当したラムレイもプロデュースに回り、演奏は元 QUATERMASS、SUN TREADER のピーター・ロビンソンが受けもつ。
彼のプレイはきわめて技巧的かつ明快であり、ラムレイのような神秘性というか「含み」のあるタイプではない。
またモーリス・パートは進境著しく、三曲の作品を提供。
さて、即興よりもまとまりのある楽曲を目指したせいか、全体にハイテクなままポップな味わいが増した内容となっている。
また当時のメイン・ストリームの音の影響も強いようだ。
フュージョン・ブームへの迎合や、TOTO のような技巧派イージー・リスニング・ロックへの接近も見られ、パワフルなファンク色やイマジナティヴな即興性がかなり薄れたような気もする。
しかし、それでもかなりカッコいい。
もっとも、個人的には、もっとダークで耽美な世界を見せてほしかったのだが。
各曲も鑑賞予定。
プロデュースはロビン・ラムレイ。
「The Poke」(5:06)グッドソール作。
「Masques」(3:17)ジョーンズ、ロビンソン作。
「Black Moon」(4:48)パート作。
「Deadly Nightshade」(10:54)パート作。
「Earth Dance」(6:10)パート作。
「Access To Data」(8:04)グッドソール作。
「The Ghost Of Mayfield Lodge」(10:08)ジョーンズ作。
(CASCD 1138)
| Mike Clarke | drums |
| Phil Collins | drums, percussion, vocals |
| John Goodsall | guitars, vocals |
| John Giblim | basses |
| Robin Lumley | keyboards, gunfire, chamsaw |
| Morris Pert | percussion |
| Peter Robinson | keyboards, gunfire, vocals |
| Percy Jones | basses |
79 年発表の第五作「Product」。
コリンズの復帰は実現したが、音楽の方向性の違いから、ほぼ二つの別々のユニットによる録音となった異色作である。
コリンズ、グッドソール、ギブリン、ラムレイのユニットは、ヴォーカル曲に取り組むなど、よりメインストリーム・フュージョンに近づくキャッチーなサウンドで、新たな方向を模索している。
一方、ジョーンズ、クラーク、パート、ロビンソン、グッドソールのユニットは、テクニカル・エスニック・ジャズロック路線を堅持しつつ、ファンキーさをアピールし、やはり新たな面を見せている。
グッドソールだけが両ユニットをまたがっているところが、いかにも彼のグループ内での位置を示すようで興味深い。
アルバムとしては一貫性に欠けるのだが、実験的であり、二枚分楽しめるほど毛色の違うさまざまな曲の入った作品ととらえることもできる。
プロデュースはグループとコリン・グリーン、ニール・カーノン。
「Don't Make Waves」(5:31)
コリンズの巧みなヴォーカルに驚かされるアップテンポのキャッチーな作品。
オープニングのヘヴィな決めは次第に軽やかな音色へと変化する。
ギターのリフは従来のサウンドからの脱却を象徴するようだ。
基本はハードポップだが、随所で見せるプレイは洗練されたジャズロック。
少しもったいない気もする。
ラテン色がほとんどないために、普通のフュージョンというイメージはない。
コリンズ組の作品。
「Dance Of The Illegal Alienst」(7:49)
いきなりテクニカルなユニゾン、そしてややオリエンタルなリフでベースが跳ねはじめる。
流麗なピアノもギターもホンワカ中華風。
アンサンブルをリードするベースは、エフェクトをかけソロも取る。
軽快なのにどっしりしたリズムがすばらしい。
ピアノとベースの短い交歓に続いて、エスニック風味のないハードなアンサンブルが始まる。
キーボードの神秘的な変拍子リフを聴きながら、このグループ特有のハードな決めが続く。
そしてギター。
アクセントの強い演奏が繰り返される。
やはり和音の響きに、どことなくエキゾチックな味わいがある。
再び激しいユニゾンが迸るが、ピアノのリフレインが再現し、ギターがリードを取る。
オブリガートのベースがすばらしい。
ドラムスもタムをフルに使ってアピールしている。
やや抑え目で繰り返しの多い展開だが、間違いなく BRAND X の音である。
ドラムスは、張詰めた感じのコリンズのプレイとはまた違ったテクニシャンである。
ジョーンズ組の作品。
「Soho」(3:40)
いかにもこの時代らしい、ほんのりテクノなヴォーカル・ナンバー。
1 曲目とともにグッドソールの作品。
彼はこういうポップ路線を目指していたらしい。
最後の SE はソーホーの街だろうか。
コリンズ組の作品。
「Not Good Enough - See Me!」(7:29)
ジョーンズの超絶ベース・ソロから始まるファンキーなジャズロック。
ベースのソロやユニゾン、リフなど内容はあるが、全体を通してはまとまりが感じられないセッション風の作品。
ベースとエレピのみでバトルを続けた方が、古臭くはあるがシンプルかつテクニカルで面白かったような気がする。
ギターはやや浮き気味。
ジョーンズ組の作品。
「Alagon」(6:08)
フレッシュなサウンドに独特の美感を漂わすジャズロック。
シンセサイザーがフィーチュアされたスピーディな展開である。
ユニゾンを狂言回しにしたおかげで、分かりやすくメリハリもできている。
ベースは、最初のピアノとのインタープレイはいいのだが、後半のアグレッシヴな場面ではやや力不足に思えてしまう。
もっとも本作品が、アルバムでは一番の出来かもしれない。
ジョーンズ組はジャズロックまでコリンズ組に譲ってしまい、やや残念。
コリンズ組の作品。
「Rheses Perplexus」(4:00)
もろにラテン風のフュージョン・ナンバー。
キーボード、ギターともに典型的な演奏である。
コリンズ組の作品。
「Wal To Wal」(3:14)
コリンズ、ジョーンズ、ギブリンによるツイン・ベース、ドラムスの変則トリオ。
コリンズはリフ、ジョーンズがあいかわらず変った音で跳ね回る。
「And So To F...」(6:28)
スピーディな変拍子リフとともにグッドソールのギターがしなやかに走る、重量感あるナンバー。
一直線に走る展開とギターの音はややハードロック的である。
得意の暴走気味の速弾きもあり。
コリンズ組の作品。
「April」(2:08)鳥のさえずりの中でギブリンのベースがゆったり歌う。
コリンズ組の作品。
(CAROL 1390-2)
| Percy Jones | fretless bass |
| John Goodsall | guitars, MIDI-guitar |
| Frank Katz | drums |
92 年、再結成後発表された「Xcommunication」。
内容は、MIDI ギター、ベース、ドラムスのトリオによる、ファンキーかつワイルドかつ澱みのあるジャズロック。
やや硬質で金属的なサウンドではあるが、基本的な作風は 70 年代当時から大きくは離れていない。
もっとも、「変わらない」という印象は、パーシー・ジョーンズのフレットレス・ベースの超絶個性的なプレイ・スタイルによるものだ。
ハーモニクスやグリッサンドなど、左手を駆使するプレイによる独特の音が懐かしい。
グッドソールのギター・プレイも、コード・ワークがややヘヴィなものの、無茶な疾走型のソロ・スタイルはまったく変っていない。一方、ドラムスは相当な技巧派だが、音は軽目。
これはおそらく、ジャズ出身のプレイヤーであるためだろう。
こういうスタイルのドラムスの採用は、このグループが、近年流行の HM/HR 系フュージョンではなく、ブルーズ、ジャズ、ファンク・フィーリングを備えたサウンドを目指していることの証ともいえそうだ。
全体に、流れそうで流れず、停滞しそうで轟々と突き進む、あの独特の晦渋なスタイルが貫かれている。
全編インストゥルメンタル。
プロデュースは、パーシー・ジョーンズとジョン・グッドソール。
1 曲目「Xanax Taxi」(5:57)ソロ・パートも含む自己紹介風の作品。
全体演奏の部分は、和声含め不思議なほど昔と同じ。
一方、グッドソールのギター・ソロは、モダン・ジャズ風。
グッドソール作。
2 曲目「Liquid Time」(4:39)
ギターがぐっとハードになったヘヴィ・フュージョン。
ロックっぽいシンプルなビートがカッコいい。
展開部の 4 拍子と 5 拍子のコンビネーションによる奇妙な座りの悪さが印象的。
グッドソール氏、ホールズワース氏と比べると格段にハードロックなマインドにあふれる方のようです。
グッドソール作。
3 曲目「Kluzinski Period」(7:00)
超絶的ドラムンベース+ ギター+ MIDI シンセサイザーによるインダストリアル・チューン。
ギターがきわめて効果音的に使われる一方、ベースは完全に進行をリード。
タイトで険しい作品だ。
ジョーンズ作。
4 曲目「Healing Dream」(3:51)
ラテン・フレーヴァーあるアコースティック・ギター・ソロ。
序盤は、5+7 や 5+6 を組み合わせつつもシンプルなアルベジオ中心のプレイ。
中盤からデメオラばりのスピーディなソロも交える。
グッドソール作。
5 曲目「Mental Floss」(3:17)
ミステリアスな超絶ハードロック。
FIRE MERCHANTS の流れか、一人 MAHAVISHNU ORCHESTRA といった趣も。
タイトルの駄洒落はいかがなものか。グッドソール作。
6 曲目「Strangeness」(3:23)
ほとんどベース・ソロなエスニック・ジャズロック。
ハイハット以外の打楽器の音もベース?
ジョーンズ作。
7 曲目「A Duck Exploding」(6:47)
シンプルなビートとぐにゃぐにゃベース、シンセサイザーらのコンビネーションがいかにもモダンな印象を与える作品。
これが現在の BRAND X なのだ。
グッドソール/ジョーンズ作。
8 曲目「Message To You」(0:25)グッドソール作。
9 曲目「Church Of Hype」(5:54)
ヤクザな 8 ビートがカッコいいジャズロックンロール。
いわば、ジャジーでハードな DIRE STRAIGHTS である。
トリオのシンプルな音を活かした作品である。
ジョーンズ作。
10 曲目「Kluzinski Reprise」(4:25)
緊張感あふれる、BRAND X らしい音の演奏に、MIDI キーボードとダニー・ワイルディングのフルートが吹き荒れる。
テクニカル。
グッドソール/ジョーンズ作。
(OZ 001)
| Percy Jones | fretless bass, Wah bass, keyboards, sequencing |
| John Goodsall | electric & acoustic guitars, MIDI-guitar, Wah guitar, narration |
| Frank Katz | drums, vocals |
| Marc Wagnon | MIDI vibes, 3D synth pad |
| Frank Pusch | keyboards, 3D percussion, sample, sound effect, vocals, sequencing |
| Danny Wilding | flute |
97 年の再々結成作「Manifest Destiny」。
パーシー・ジョーンズのグループ TUNNELS からマーク・ワグノンも迎え、より強力なサウンドで甦った BRAND X。
前作が、トリオによるストイックな音作りであったのに対し、今回はエスニック、ファンク、ハウスにサイケデリックな音響と即興演奏もふんだんに取り入れた、貪欲な内容である。
カッツのシンプルにしてダイナミックなリズムと、グッドソールのハードロック的なセンスに、ワグノンのヴァイブ、キーボードがアクセントと大胆な広がりを与える演奏は、きわめてコンテンポラリーなジャズロックの提示といえる。
とにかくファンキーでカッコいいです。
HR/HM ファン、テクニカル・フュージョン・ファンはもとより、ジャム・バンド・ファンにもお薦め。
1 曲目から 3 曲目までは本当に圧倒されます。
詰め込むばかりが能じゃないといわんばかりの間の取り方、サイケデリックな音響、さりげなくもじつは挑戦的なポリリズムに、変わらぬセンスを感じます。
TRIBAL なんとかや VITAL かんとかとは、住む時空が若干違うようであり、わたしはこちらに住んでます。
プロデュースはグループとデヴィッド・ヘンチェル。
アルバム・ジャケットのデザインは、曲名にもある「ウィルス」だと思いますが、「感染力強し」というメタファーによるメッセージとともに、マーク・ワグノンの "理系好き"(おそらく)も伝わってきます。
「True To The Clik」(5:22)
「Stellerator」(6:14)
「Virus」(7:53)
「XXL」(5:51)
「The Worst Man」(4:32)
「Manifest Destiny」(4:10)カッコいいハードロック。
「Five Drops」(3:51)ディメオラばりのアコースティック・ギターをフィーチュア。
「Drum Ddu」(5:47)
「Operation Hearts And Minds」(4:39)普通のテクニカル・フュージョンもできます、という表明か。器用なグッドソール氏らしい曲である。
「Mr. Bubble Goes To Hollywood」(2:27)続きは TUNNELS のアルバムでお聞きください。
(PCCY-01046)
BRAND X の音楽性から影響を受けた作品として、ISOTOPE のギタリスト、ゲイリー・ボイルの名作「Dancer」やイタリアの OSANNA のメンバーによるグループ、NOVA の「Vimana」がある。ピート・ボーナス、ダニー・ワイルディングによる「Pleasure Signal」、ジャック・ランカスター、ロビン・ラムレイらによるプロジェクト作「Marscape」もまだ探せば見つかるかもしれない。