アメリカのドラマー、作曲家「Bobby Previte」。 「Empty Suits」、「Weather Clear, Track Fast」などさまざまなユニットを率いてフリージャズからジャズロック、ニュー・エイジなど多岐にわたる活動を行なう才人。 80 年代から 90 年代前半の作品はプログレッシヴなニューミュージック。
| Bobby Previte | drums, marimba, keyboards, vocals |
| Wayne Horvitz | Hammond organ, piano, harmonica |
| Ray Anderson | tuba, trombone |
| Bill Frisell | electric guitar, banjo |
| Josh Dubin | pedal steel guitar |
| Joey Baron | drums |
| Carol Emanuel | harp |
| Guy Klucevsek | accordion |
| Jim Mussen | electric drums, sampling |
88 年発表の「Claude's Late Morning」。GRAMAVISION からの二作目。
打楽器、ギター、管楽器(チューバ、トロンボーン)をフィーチュアしたアトモスフェリックなアヴァンギャルド・ジャズ作品。
シュアーなビートを打ち出すドラムスが全体を仕切るのは間違いないが、スライド・ギターに象徴されるように、鋭角な音を抑えたまろやかなテクスチャを活かして、淡い色彩と深い奥行きのある世界を描き出している。
ギター、チューバ、オルガン、アコーディオン、ハープなどそれぞれが見せ場をもっており、これらの音の個性的な質感を生かした作曲になっている。
ギターやツイン・ドラムスが蠢く強暴な表現もあるのだが、そういうところでも音の密度/緊張感はさほどではない。
やや緩めのリフの上で、奇妙な音がざわざわと会話をしてゆくようなイメージである。
したがって、サウンドの色合いこそ違え、思い切って SOFT MACHINE といってしまってもかまわない場面もある。
しかし、どちらかといえば、おだやかに進んでゆく場面での、奥底の哀愁や不安感がこだまのように遠くから静かに浮かび上がってきて、さざ波をたててゆくようなところが印象的である。
したがって、ビル・フリゼールの作風が現れている感じもする。
ピチカートやピアノ、マリンバのような減衰系の音の使用も巧みだ。
アフリカ、中央アジア風の呪術的でエキゾチックな音使いも多い。
フリゼールのヴォリューム奏法がメロトロンに聴こえたらしめたもの。
フリゼールはもちろんのこと、ジョエイ・バロンやウェイン・ホーヴィッツなど NY の「顔」が連なる中、ガイ・クルセヴィックという意外な人選もあり。
1 曲目「Look Both Ways」は、トロンボーンの奇妙なテーマとフリゼールの凶暴なギターが印象的なハイテンションの作品。
2 曲目「One Bowl」は、エキゾティックなパーカッションが鳴り響き、チューバが蠢く即興風の作品。
緩やかな調和とぱらぱらと振りかかるノイズ。
5 曲目「The Voice」は、高まるオルガンの前でギターが朗々と歌うシンフォニックな佳作。
全曲ボビー・プレヴィットの作曲。
CD は 95 年の再発版。
(GCD 79448)
| Bobby Previte | drums, percussion, marimba, keyboard, vocals |
| Robin Eubanks | trombone |
| Steve Gaboury | Hammond B-3 organ, piano, keyboard |
| Jerome Harris | bass, guitar, lap steel, vocals |
| Allan Jaffee | guitar |
| And many guests... |
90 年の作品「Empty Suits」。
GRAMAVISION での三作目。
プレヴィットは、今回も全曲の作曲を手がけ、ドラマーとしても参加している。
作風は、ロック色の強いエレクトリック・ジャズ。
ジャズを軸にエキゾチックなワールド色からロックなビート感とへヴィなギターまで多彩を極めた上で一つの色にまとめ上げている。
ミニマリズムの影響を強く受けた現在版マイルス・ディヴィス(ただし、管楽器はトランペットではなくトロンボーンが好みのようだ。オーケストラルな表現に向いているから?)、または、アングラ版パット・メセニー・グループといったところだろうか。
メンバーこそ総取替えだが、最後に第一曲をリプライズするアルバム構成を始め、全体に前作の変奏というべき内容である。
もっとも本作品では、体が別の位相空間へ無理やり移行させられそうなスライド・ギターの独特な使い方、ハモンド・オルガンやアフロなパーカッションなどの得意技とともに、目の醒めるようなサックス、ピアノが存在する。
そして、ドシャメシャとまではいかないが、フリー・ミュージックらしいケイオティックかつ強圧的な瞬間は増えている。
前作がアトモスフェリックとするならば、今回は強いロマンチシズムを感じさせる作品である。
ジャック・デジョネットも顔負けのドラム・ワークにも注目。
2 曲目「Flying Buttress」は、ジャズ・ジャム・バンド作品としても逸品。
最終曲「A Door Flies Open」もスネア・ビートとアフロなヴォイスに次々と音が折り重なる濃密な作品である。
アフロなヴォーカル・ハーモニーもあり。
(GCD 79447)
| Bobby Previte | drums |
| Robin Eubanks | trombone, electronics |
| Wayne Horvitz | hammond organ, keyboards, piano |
| Steve Gaboury | piano, keyboard, keyboard bass |
| Jerome Harris | guitar, acoustic bass guitar |
| Roger Squitero | percussion |
94 年の作品「Slay The Suitors」。
EMPTY SUITS 名義の二作目。
ライヴ録音ながらも、エレクトロニクスを多用したミステリアスな曲調が主である。
この内容のため、GRAMAVISION は発表を拒否、日本のレーベルから発表された。
フリージャズとポップス、現代音楽の間には何よりビジネスとして大きな間隙があるようだ。
挑戦的な反復とエフェクトに浸された静かなサイケデリアには、初期の SOFT MACHINE のイメージも。
抑え目の演奏なだけに、アッパーなノリが膨れ上がった時のカタルシスはまた格別だ。
ウェイン・ホーヴィッツのキーボードを中心に聴くときわめてプログレっぽいことが分かるし、ロマンティックな音もたくさんある。
それにしてもカッコいいドラムスです。
「Fantasy And Nocturne」(16:15)悠然とした巨編。ピアノが奏でる神秘的な序奏/インタールード、パワフルでケイオティックな全体演奏、トラジックなトロンボーンのテーマ。
「Waltz」(13:39)オルガン、ドラムスが導くシャープなインスト・ロック。
エレクトリックなエフェクトの効きがいい。プレヴィットは、マイルス・デイヴィスと同じで CREAM のような演奏をしたかったのではないのだろうか。
「Canon」(9:41)トロンボーンの響きがしみる神秘的なジャズ作品。即興が主だと思う。
冒頭のパーカッシヴな音主体の即興は後から挿入されたのだろうか。
「Prelude And Elegy」(14:32)リリカルなジャズなのでしょうが、トロンボーンが鳴った瞬間、KING CRIMSON であることに気づきました。この位置にあることでさらに美しくなった佳曲。
(AVAN 036)
| Bobby Previte | drums, voice |
| Lindsey Horner | electric bass, tin whistle, voice |
| Andy Laster | baritone sax, clarinet, flute, voice |
| Cuong Vu | trumpet, voice |
| Jamie Saft | piano, Fender Rhodes, Hammond organ, clavinet, voice |
| Curtis Hasselbring | trombone, voice |
| Andrew D'Angelo | alto sax, bass clarinet, voice |
96 年の作品「Too Close To The Pole」。
WEATHER CLEAR, TRACK FAST 名義による最終作。
内容は、10 分を越える二つの大作を軸に繰り広げる、エネルギッシュかつシリアスなビッグバンド・アヴァンギャルド・ジャズ作品。
複数の管楽器(木管、金管ともに全編で非常にキレのいいプレイを放っている)が重層的にフロントを取ったオーケストラであり、演奏は圧迫的で疾走感にあふれる。
込み入ったリズムや過激なフレーズが折り重なるが、難しさはなく、むしろキャッチーでありアクセスしやすい。
1 曲目など犯罪アクション映画のテーマとなっても不思議ではない。(実際、「Payback 」のテーマもこんな感じの曲だった)
アフリカン・ミュージックなど民族音楽の影響も強そうだ。
また、クラリネットやピアノらによるアコースティック・アンサンブルには、きわめてチェンバー・ロック的な面もある。
しかしなんといっても、ドラムスの存在感がすごい。
とにかく手数音数が多く、演奏の枠組みというかエンジンというか、ステージはこのドラムスが用意している。
2 曲目「3 Minutes Heels」は、超絶エキゾチック舞曲。
管楽器が参加したまじめな SAMLA から、複数管の対位的なアンサンブルのジャズ的解釈、打楽器ソロへと進む壮絶な大作である。
他にも、チャイコフスキーの引用もあり。
最終トラックは、未クレジットの 15 分あまりにわたる幻想的な大作。5 または 6 パートから構成される。おそらく一部はライヴ録音だろう。
これでトドメ。
トランペッターのクオン・ヴーは、この後パット・メセニー・グループへと参加する。
プレヴィットにはこういうオーケストラ作品をもっとたくさん作っていただきたい。
SOFT MACHINE、 CUNERIFORM レーベル からプログレへ進んだ方にはお薦め。
「Too Close To The Pole」(4:15)冒頭の挑戦的なファンファーレから、ひたすらアッパーに突き進む。カッコいいです。
「3 Minutes Heels」(13:02)フェンダー・ローズ、クラヴィネットが活躍。しかし主役はトランペットとトロンボーン、そしてエネルギッシュ過ぎるドラムス。
「The Countess' Bedroom」(8:25)現代音楽調のロマンス。バリトン・サックスをフィーチュア。
「Save The Cups」(7:33)アフリカン・ミュージックらしきコーラスが入る。ものすごい疾走。
「The Eleventh Hour」(14:17)サフトのクールなオルガンが絶品。
「Too Close To The Pole(reprise)」(8:30)
「Box End, Open End」(16:02)CD にはクレジットが見当たらなかったが、オフィシャル・サイトによるとこういう曲名らしい。
(ENJ 9306 2)
| Bobby Previte | drums, voice |
| Jerome Harris | guitar, fretless bass, voice |
| Marc Ducret | guitar |
| Jamie Saft | Hammond organ, Fender Rhodes, Mini moog |
97 年の作品「My Man In Sydney」。
LATIN FOR TRAVELERS 名義によるライヴ録音。
スリーヴによると、本ユニットはプレヴィット自身の初期の音楽体験への回帰を目指しているそうで、特に、ギターを前面に出すことを意識しているようだ。(ロック少年だったのかも)
そしてその内容は、エレクトリック・ギターを大きくフィーチュアしたソウル・ジャズ、ラテン・ジャズ色の強いグルーヴィなジャズロック、ほんのちょっぴりニューエイジっぽさあり。
プレヴィットは、爆発的な手数プレイで、この直後に MMW、SOLIVE や GALACITC らによって隆盛する、ぶっとい演奏力を活かしたジャム・バンド系の音ににらみを効かせている。
ジェイミー・サフトのハモンド・オルガンも熱いサウンドでバンドの音を悠然と広げている。
ライヴなだけあって、一展開のために一気呵成の勢いに頼っている感もあるが、それでも、ベースにも持ち替えるジェローム・ハリスのボトルネックや、ゲストらしいマルク・デュクレのやりたい放題のギター(たとえば 3 曲目の前半など)はかなりカッコいい。
熱気もあるが、同時に、音楽的な冷静さをキープした知的な印象もある作品だ。
「Albuquerque Bar Band」(9:04)二つのエレキギター(スライドもあり)が管楽器っぽいカラミを見せる。
「My Man In Sydney」(12:17)ナチュラル・トーンの二つのギターが文様を成すように絡み合い、80 年代 KING CRIMSON への連想も。ジャム・バンドっぽいダラダラ感が懐かしい。
「London Duty Free」(8:11)デュクレのソロをフィーチュア。
「Bear Right At Burma」(5:33)バックのオルガンとドラムスがカッコいい、雄大な佳曲。プログレ・マインドあり。
「Deep Dish Chicago」(8:52)METERS 、GALACTIC ばりのファンク・ジャズ。 オルガンが走る!
「Love Cry New York」(8:08)ローズ・ピアノをフィーチュア。ドラムスは爆発しっ放し。
(ENJ 9348 2)
| Bobby Previte | drums, percussion |
| Charlie Hunter | guitar, bass |
| Jamie Saft | keyboards, bass |
| Steve Bernstein | trumpet |
| Skerik | sax |
| Stanton Moore | drums on 2,5 |
| Stew Cutler | slide guitar, harmonica |
2005 年の作品「The Coalition Of The Willing」。
内容は、へヴィなギターとオルガンをフィーチュアしたインストゥルメンタル・ロック。
ジャズロックというにはリズムもギターもオルガンもあまりにロック(50 年代テイストあふれるロカビリー調からハードロック、プログレまで、さまざま)である。
ドラムスは前に後ろに出ずっぱりだが無闇な主張はなく、きっちり演奏を締めている。
ギターに主役を譲るあたりは、「ロックの基本だろ」といわんばかりだ。
8 弦ギターの名手チャーリー・ハンターや GALACTIC で一世を風靡したスタントン・ムーア(ドラムスがリーダーのバンドにドラムスのゲストというのはどういう感じなのだろう?)、個性派管楽器奏者のスケリックなど、今回もプレヴィットの豪華競演好きが思い切り出ている。
アルバム・タイトルは、9/11 以降の世界において、国連軍ではない対テロ連合軍を象徴的に表現した用語「有志連合」より。
曲名にはオーウェルの「1984」から由来するものもある。
どうやら不穏で不安定な格差社会について訴えるものがある作品らしい。
そういうシリアスな主張があるのかもしれないが、音楽そのものは、ジャズのなめらかさと技巧のキレがあるロックンロールである。
ただし、ジャズマンによるロックというのは、ダラシナイところがあまりなく、「お手本に忠実」な感じがする。
「The Ministry Of Truth」(5:16)
「Airstrip One」(4:45)
「Versificator」(6:09)ハンターのブルーズ・ギターは余技にとどまらない、カッコいい。
「The Ministry Of Love」(5:50)スペイシーなハードロック。
「Oceania」(5:08)エキゾティックなけばけばしさが印象的なギター・ロック、後半レゲエ。
「The Inner Party」(5:56)LATIN FOR TRAVELERS にありそうな作品。
「Memory Hole」(7:55)ジャズ。
「Anthem For Andrea」(6:09)
(Ropeadope)
| Bobby Previte | drums, Fender Rhodes on 7 |
| Wolfgang Puschnig | alto sax, baritone sax |
| Gianluca Petrella | trombone |
| Benoit Delbecq | Fender Rhodes |
| Nils Davidsen | bass |
2009 年の作品「Pan Atlantic」。
近年イタリアの独立レーベル AUAND から作品を発表しているが、本作もその一つ。
内容は、フリー・ジャズ寄りのスペイシーなジャズロック。
SOFT MACHINE なら「5」である。
シャープな二管、幻想的なローズ・ピアノなどが特徴だが、とにかく全体に毅然、泰然とした演奏である。
プレヴィットは、管楽器(サックス、トロンボーン)、キーボード、ベースら、かなり個性の強そうな面々に囲まれるも、ドラムスによってタイミングよく自己主張し、仕切る。
そして、空間への反響を活かしたフェンダー・ローズが主役になっており、その象徴性の高さゆえに 70 年代ジャズロック、たとえば WEATHER REPORT の初期作品などのイメージは確かにある。
ただし、彼の時代の音と比べるとソフィスティケートされていて、音が明晰すぎるほどに明晰であり、陰影が切れ味鋭く付けられている。
変拍子リフも鋭過ぎるほどに鋭い。
この音、くっきりとした視界のままにトランス状態に導かれるような、奇妙な感覚を生じさせる。
ストレートかつへヴィなロックのセンスも抜群。
2 曲目なんて KING CRIMSON ですぜ。
「Deep Lake」(10:17)
「Stay On Path」(8:22)
「The Eternity Clause」(8:10)
「Destruction Layer」(8:47)
「Pan Atlantic」(8:52)
「Queation Mark」(7:00)
「Veltin」(8:43)
(AUAND AU9020)