イギリスを代表するロック・ドラマー「 Bill Bruford 」。 YES、KING CRIMSON、GONG、GENESIS、NATIONAL HEALTH、U.K. とメジャー・グループを渡り歩いた華麗な経歴の持ち主。 70 年代終盤から自らのグループを率いてジャズロックをプレイする。 80 年代以降は、KING CRIMSON の活動とともにジャズ・グループ EARTHWORKS を結成し、コンスタントに作品を発表する。2008 年引退発表しましたが、どうなるのでしょうね。
| Bill Bruford | tuned and untuned percusion, kit drums, tunes and final say |
| Dave Stewart | keyboards, reasonably advanced harmonic advice |
| Alan Holdsworth | guitars |
| Annette Peacock | vocals |
| Jeff Berlin | bass |
| Kennt Wheeler | flugelhorn |
78 年発表の第一作「Feels So Good」。
初リーダー作品は、カンタベリーのユーモアの代わりにハードな表情を加味した NATIONAL HEALTH 流ジャズロック。
アネット・ピーコックのヴォイスはやや不気味だが、クールなテクニックの応酬にほのかな詩情/ロマンチシズムの漂う傑作となった。
冒頭の挑戦的な変拍子ジャズロックでは、アグレッシヴな姿勢を見せる一方で、レガートなギターとシャープなリズムの鮮やかな対比をオルガンが縁取るなど、シンフォニックな余韻をはらませることにも怠りない。
鋭すぎるリズムとギターの応酬にエキサイトした後は、ピーコックのドリーミーなヴォイスとホイーラーのリリカルなホーンが癒しの空間を用意する。
また、ヴァイヴやパーカッションを駆使して凄まじい技巧を遠慮なく放つ、明らかにドラムス主導の展開も多い。
本作の後、ブルフォードは U.K. 結成へと向かうため、当然ながら U.K. の第一作に通じる音がそこここにあり、共通する雰囲気もある。
特に、アグレッシヴでミステリアスな場面は、そういう印象が強い。
また、タイトル・ナンバーは、スチュアート・ガスキンを思わせるポップなカンタベリー・サウンドの代表曲。
この愛らしいテーマがブルフォード氏の手になるのだから、作曲者としても、どうして並々ならぬセンスである。
そして、スチュアートがポリシンセとともに HATFIELDS を思わせる音を放つとくれば、どうしたって頬が緩むはず。
音の密度や速度だけではない、デリケートなジャズ・アンサンブルの妙味を放つ佳作であり、70 年代初頭から SOFT MACHINE や BRAND X らによって試みられたブリティッシュ・ジャズロックの旅路に燦然と輝く逸品である。
個人的には、このメンバーでもう何枚かアルバムを作ってもらいたかった。
プロデュースはロビン・ラムレイ。
「Beelzebub」(3:22) ごく個人的に、ホールズワースといえば本作品の演奏のイメージあり。挑戦的な変拍子ジャズロック。
「Back To The Beginning」(7:25)
「Seems Like A Lifetime Ago(Part One)」(2:31)
「Seems Like A Lifetime Ago(Part Two)」(4:29)
テクニカルにエキサイトしてゆく名作。
「Sample And Hold」(5:12)
「Feels Good To Me」(3:53)スチュアートのキーボードが冴える、ポップなカンタベリー・サウンドの名作。
ジョン・グッドソールが客演しているそうだ。
「Either End Of August」(5:24)
「If You Can't Stand The Heat...」(3:26)
「Springtime In Siberia」(2:44)
「Adios A La Pasada(Goodbye To The Past)」(8:41)
(EGCD 33)
| Bill Bruford | drums, percusion |
| Alan Holdsworth | guitar |
| Dave Stewart | keyboards |
| Jeff Berlin | bass, vocals |
| guest: | |
|---|---|
| Sam Alder | narration on 5 |
| Norman Taylor | voice on 5 |
79 年発表の第二作「One Of A Kind」。
クールな大傑作であった第一作に続く本作は、一言でいうと「NATIONAL HEALTH によるテクニカル・フュージョン」もしくは「ジャズロック型 U.K.」。
カンタベリー・スタイルと、KING CRIMSON、YES らに端を発し U.K. がまとめあげた幻想的なプログレ・サウンドが融合した大傑作である。
U.K. を離れたブルフォードが、第一作のメンバーと再会(スチュアートはこの時期 NATIONAL HEALTH を脱退している)して録音された。
全体演奏のテーマがアメリカンなフュージョン・タッチになると、英国プログレの陰鬱なロマンチシズムとは離れるような印象もあるが、演奏そのものは、サウンド、リズム、アンサンブル、ソロ、全ての面で技が尽くされた驚異的なものである。
ブルフォードは、エレクトリック・ドラムスも積極的に用いている。
そして、挑戦的な変拍子を操るばかりか、作曲家としても才能を発揮している。
5 曲目「Fainting In Coils」は、幻想的な空気と余韻をたたえた名作といえるだろう。
アグレッシヴなサウンドにもかかわらず、これだけの哀愁と洒落っ気がある。ブリティッシュ・ロックそのものの魅力を放つ作品である。
8 曲目「Forever Until Sunday」も、優美なヴァイオリンからシンフォニックなキーボードが高まる、U.K. といっていい力作だ。
そして 9 曲目からの組曲「The Sahara Of Snow」も、ブルフォードの作品(後半はエディ・ジョブソンとの共作)として永遠に残る名作。
やはり本作は U.K. の三作目か、いや "Discipline" CRIMSON はここから始まったのか、なぞとあらぬ妄想も浮かんでしまう。
強圧的にしてロマンあふれる逸品である。
また、作曲の先生と思われるスチュワートは、抜群のテクニックに加えて幻想夢の BGM のようなシンセサイザーなどきわめて多彩な音色を駆使して、ドラムスとともに楽曲の枠組を支える。
記名性という意味でも傑出したパフォーマンスである、
ホールズワースは、音階や和声という点できわめて個性的な(非ギター的な)プレイを見せるが、素人にはその特異さ加減がややワンパターンに聴こえてしまうところもある。
弾け過ぎるというのも悩ましいことだ。
また、この頃からベーシストもギター並の技巧で注目されるようになるが、このバーリン氏もそういう新時代のベーシストの一人といえる。
スチュワート/ガウエンによる 1 曲目は、カンタベリー・シーンへのオマージュ兼あいさつ代わりなのかもしれない。
全体としては、英国ジャズロック作品を代表する一枚といえる。
ノン・クレジットだがエディ・ジョブソンが、客演(CD 8 曲目の導入部でしょうか)しているとのこと。
全編インストゥルメンタル。
「Hell's Bells」(3:33)7+7+5/16 拍子のリフが印象的なファンタジック・チューン。ブルフォード/ガウエン作。
「One Of A Kind part one」(2:20)
カンタベリー・ジャズロックらしい名品。
機知に富みながらも安定感あふれる演奏だ。
エレクトリック・ピアノ、エンヴェロープを効かせたシンセサイザーなどキーボードの音も魅力的。
そしてこのタム回しの音、間違えようがない。
ブルフォード作。
「One Of A Kind part two」(4:04)
パート 2 は即興風のアンサンブルからスタート。
挑発的なギター、受け止めるエレピ、何気なく超絶技巧を放つベース。ドラムスは、おとなしいのだが意地悪くパターンを変化させる。
ブルフォード/スチュアート作。
「Travels With Myself - And Someone else」(6:13)
ドリーミーなナイト・ミュージック風の作品。
美しくさえずるムーグ・シンセサイザー、デイヴ・スチュアートらしからぬロマンティックなピアノ。
クライマックスで弾けるシンセサイザーの和音の響きは、この時期になって現れたものだ。
キーボードがリードする後半の展開は、カンタベリーらしいウィットと活気があるもの。
ブルフォード作。
「Fainting In Coils」(6:33)
音像が大きく揺れ動くようなイメージの過激でドラマティックなヘヴィ・ジャズロック。
中盤 PROCOL HARUM のようにリリカルな瞬間が訪れる。
思い切りジャジーなソロ・ピアノを凶暴なシンセサイザー、ギターが切り裂いてゆく。
ブルフォード作。
「Five G」(4:46)
前半は、荒々しくもしなやかにひた走り、後半は、爆発的なギター・アドリヴ。
若干、メローな旋律も現れるが、基本的には、ISOTOPE のような硬派のテクニカル・ジャズロックである。
バーリン/スチュアート/ブルフォード作。
「The Abingdon Chasp」(4:54)
RTF 風のわりとストレートなテクニカル・フュージョン。
ややラテン調になってからのキーボードがカッコいい。
ホールズワース作。
「Forever Until Sunday」(5:51)
序盤は、ジャンリュック・ポンティ風のリリカルなエレクトリック・ヴァイオリン、そして珍しく緩やかに朗々と歌うギター。
これで最後?と思います。
ブルフォード作。
「The Sahara Of Snow part one」(5:18)ピアノによる挑戦的な変拍子リフレイン、ワイルドなリズムに小気味よくマリンバが弾む。
モーダルなギターの調べが最高潮で美しい和声へと弾け、シンセサイザー・シーケンスが渦を巻く。
どう聴いても U.K. である。 ブルフォード作。
「The Sahara Of Snow part two」(3:24)
鋭いミドルテンポで進む終章。ギターが叫び、オルガンがつぶやく。
ブルフォード/ジョブソン作。
(EGCD 40)
| Bill Bruford | acoutic & electric drums, percussion, whirled instruments |
| Django Bates | keyboards, E♭tenor horn, trumpet |
| Iain Ballamy | soprano, alto, and tenor sax |
| Mick Hutton | acoustic bass |
86 年発表の作品「EARTHWORKS」。
KING CRIMSON 終焉とともにソロ活動へと戻ったブルフォードは、ジャズへのアプローチを深めてオリジナル・グループ EARTHWORKS を結成する。
本作はその第一作であり、その内容は、快調なジャズロック/フュージョンと、打楽器をフィーチュアしたアヴァンギャルドな作品がこん然となった意欲的なものである。
INCAHOOTS や HUGH HOPPER BAND らのサウンドに、メイン・ストリーム風の洗練されたテーマを重ねたようなイメージである。
これもカンタベリーの発展形の一つだろう。
ベースはアコースティックのみであり、ピアノなど 60 年代風のジャズ然とした演奏が顔を出す瞬間もある。
しかしながら、エキゾチックな音使いやエレクトリック・ドラムスなどは、いかにもこの時期のものだ。
これらの刺激的な音に、管楽器のメロディアスにして存在感あるオーソドックスなプレイが重なるところがユニークだ。
プロデュースとキーボード客演としてデイヴ・スチュアートがクレジットされており、エレクトリックなビートの処理は、彼の手腕によるところが大きいと思う。
3 曲目「Up North」は、本グループのキャッチーな代表曲。懐かしい音です。
4 曲目「Pressure」は、かつての BRUFORD を思わせるハード・チューンなのだが、真ん中にいきなりピアノ・コンボが入る。
奔放なドラミングが痛快な力作だ。
5 曲目は、エレクトリック・パーカッションによる変拍子パターンがもろに CRIMSON な作品。
全体としては NATIONAL HEALTH を思い出す音だ。
6 曲目は、ベイツの作品。パワフルなフリー・ジャズ。
最終曲は、エキゾチックな超絶技巧曲。
プロデュースは、デイヴ・スチュアートとブルフォード。
(EEGCD 48)
| Bill Bruford | acoutic & electric drums, percussion, whirled instruments |
| Django Bates | keyboards, E♭tenor horn, trumpet |
| Iain Ballamy | soprano, alto, and tenor sax |
| Tim Harries | acoustic bass, fretless bass |
89 年発表の EARTHWORKS 第二作「Dig ?」。
得意の技巧派アヴァンギャルドという面を見せつつも、前作よりもさらにメロディアスなジャズ風味を強めた作品。
音的な主役はフロントの管楽器であり、ブルフォードはサイドに控えて、ロック的なビートとエレクトリック・ドラムスを駆使して音楽的なにらみを効かしている。
サウンド全体がふくよかなのは、まろやかな管楽器に加えて、ベイツのキーボードが、何気なくもツボをおさえたプレイで画竜点睛するおかげだろう。
オルガンもいい。
ブルフォードのプレイは、その豊かな音に奇妙なパーカッション音でアクセントを散りばめているイメージだ。
しかしながら、最後から 2 曲目「Libereville」は、本作を特徴つけるコロニアル/カリビアン・テイストのソフトなオープニングをもつ(ナベサダすら頭をよぎる)にもかかわらず、中盤からは、きわめて挑戦的な演奏となり、ブルフォードならではの世界が繰り広げられる。
この一曲のために本作はある、といっていいかもしれない。
確かにジャジーなのだが、いわゆるモダン・ジャズらしいスリルやノリはあまり感じられず、きわめてメロディアスな管楽器が貫くコアを取り巻いて、音をにじませたり捻じ曲げたりしているようなイメージである。
もちろん、フュージョンとは到底いえないタッチである。
奇妙に歪んだイージー・リスニングという趣であり、やはり独特のアヴァンギャルドな色合いがある。
「Downtown」のアレンジなんて、かなりプログレ。
カテゴライス不能に近い音であり、カンタベリー・ファン、フリー・ジャズ・ファン、ザッパ、ユーロ・ジャズ・ファンにはお薦め。
プロデュースは、アダム・モズレイとブルフォード。
(EEGCD 60)
| Bill Bruford | electric, acoutic & chordal drums |
| Django Bates | keyboards, E♭peck horn, trumpet |
| Iain Ballamy | sax |
| Tim Harries | acoustic & electric bass |
91 年発表の EARTHWORKS 第三作「All Heaven Broke Loose」。
内容は、カリビアン/ワールド・ミュージック調の管楽器アンサンブルを目まぐるしい変拍子が支える個性的な「ジャズロック」。
南国の涼風の如くなよやかな二管をキーボードの多彩な音が取り巻き、挑戦的なパーカッションが雨あられと降りかかる。
エレクトリック・ドラムによるキーボードばりの音響効果も無理なく楽曲にしみわたる。
ジャンゴ・ベイツのフリー感覚あふれる幻想的なピアノもいい。
叙情的な表現の完成度は、前二作を凌ぐだろう(これはベイツの作曲能力に負うところ大である)。
アヴァンギャルドにしてメローの極みという実験的ユニットの集大成といえるみごとな作品だ。
上ものだけ聴いていると、時にチャック・マンジョーネを思い出しますが。
プロデュースは、デヴィッド・トーンとブルフォード。
色彩感と広がりある音響は、トーンのセンスによるところも大だろう。
(EEG 2103-2)
| Bill Bruford | drums, percussion, a little keyboards |
| Tony Levin | basses, stick |
| David Torn | guitars, loop |
| Chris Botti | trumpet |
97 年発表のアルバム「Bruford Levin Upper Extremities」。
90 年代初頭、離合集散を繰り返す YES を経て、再始動した KING CRIMSON と合流、即興演奏を極めるアプローチの末に、積年の名パートナー、トニー・レヴィンと本作を製作する。
デヴィッド・トーンの傑作「Cloud About Mercury」の「裏」アルバムのようなイメージもややあるのだが、本作は、間違いなくアヴァンギャルド・ジャズロックの佳作である。
KING CRIMSON のリズム・セクションの圧倒的威力、そして、それに敢然と挑むトーン、ボッティ。
ブルフォードによる傲慢なまでの変拍子パターンの追撃は、もはや感動的である。
そして、スペイシーにしてモノトーンの幻想美、インダストリアルな凶暴さ、冷ややかなロマンティシズム、煮えたぎる剛の衝突らが、不思議なことに次第に精神を落ちつかせ、やがてしっとりとした余韻を残す。
ドラムスティックのような棒でベースを打弦するプレイや、ボウイング、ベースとドラムスの融合体のような新楽器を使うなど、レヴィンもアイデアを駆使している。
パーシー・ジョーンズ/マーク・ワグノンの TUNNELS のファンはぜひ。
CRIMSON によるドラムンベース、ゲストはマイルス・ディヴィス、そんな感じです。
(PCCY-01226)
| Bill Bruford | drums |
| Patrick Clahar | tenor & soprano sax |
| Steve Hamilton | piano, keyboards |
| Mark Hodgson | bass |
99 年発表のアルバム「A Part, And Yet Apart」。
新編成の EARTHWORKS による アコースティック・ジャズ・アルバム。
透明感のあるスムースな「ジャズ」・サウンドがなかなか新鮮だが、すぐに変拍子マニアぶりが明らかになる。
ドラムスのプレイは、モダン・ジャズにはあり得ない目立ち方だし、フュージョンと思って聴くとプログレに聞こえてくる。
このドラムスと対照させるためか、他のメンバーは、サキソフォニストを筆頭にオーソドックスなプレイをこなすタイプのミュージシャンのようだ。
地味ではあるが、音は引き締まっているし、時おり要求(!?)されている変拍子のフレーズもきっちり決めてくる。
ただし、ジャンゴ・ベイツのような変り種はいない。
奔放さはドラマー一人が発揮している。
ジャズらしい意匠と枠組を提示して、ドラマーがそれを突き崩して楽しむ、砂山の砂を少しづつ取っていって倒れる瞬間を固唾を呑んで待つ、そういう趣向なのかもしれない。
カンタベリーの DNA は、元気に、シニシズムとユーモアのための酵素を作り続けているようだ。
ジャケット・アートもセンスあふれるものだ。
(DGM 9905)