BLOQUE

  スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「BLOQUE」。 78 年アルバム・デビュー。 作品は四枚。 99 年、未発表曲を交えたライヴ・アルバムを発表。 ツイン・ギターがリードする、ハードにして透明感あるサウンド。Chapa レーベル。

 Hombre, Tierra Y Alma

 
Sixto Ruiz guitar, vocals
Juanjo Respuela guitar, vocals
Juan C. Gutierrez keyboards, vocals
Francisco Banos drums
Luis Pastor bass

  79 年発表の第二作「Hombre, Tierra Y Alma」。 内容は、ストリングス系シンセサイザー、メロトロン、メロディアスなツイン・ギターをフィーチュアしたハードロック系シンフォニック・ロック。 ブルージーにして牧歌的、そして気品もある曲調は、ブリティッシュ・ロックの直接的な影響を受けたと思われる。 WISHBONE ASH ばりのセピア色のハードロックの魅力ばかりか、YES を思わせる、明朗で歯切れのよいファンタジー性もある。 ヴォーカルは、イタリアン・ロックを思わせる伸びやかな声であり、スペイン語独特の響きも魅力である。 歌メロには、アルゼンチンのグループのようなたおやかな響きもあるのだが、そこへエキゾチズムが浮かび上がってくる辺りが、スパニッシュ・ロックの醍醐味だろう。 リズム・セクションがややもたつき、切れがないのが残念だが、これは好みによって許容範囲が分かれるところだ。 イタリアン・ロックに比べると、時期もあってか、録音そのものはいい。
  そして、最大の特徴は、ソロにバッキングに、ユニゾンにハモリに大活躍のツイン・ギターである。 二本のギターの音色はよく似ており、コンビネーションはかなりのもの。 ブルーズ色が少ないフォークがかった音は、やはり WISHBONE ASH につながるイメージであり、フレージングはスティーヴ・ハウに倣ったようなところもある。 そして、ソロでは、ラテン的な熱気を孕みつつメロディをしっかり歌わせる。 オブリガートやリフも、なめらかな音色できっちり決めている。 ギターの速弾きや加熱したヴォーカルには濃厚なスパニッシュ・テイストが現われるが、TRIANAGRANADA と比べると、まったくその程度は低く、どちらかといえば、抑制された英国調の美意識が感じられる。 ヴォーカルはスペイン語。 アルバム・タイトルは「人類、地球、そして魂」であり、アルバム構成は、一つのコンセプトに基づいているようだ。
  ギター中心のアンサンブルに、キーボードが控えめながらも厚みを加えて、フォーク調のメロディをシンフォニックなサウンドへと引き上げている。 ギターが吠え、ストレートなビートで邁進する演奏の傍らで、子供の合唱やチェロを用いた叙情的な情景も配されている。 また、オープニングの SE や後半の組曲における宗教的/神秘的な場面演出なども、ともすれば荒々しい情熱で押し切ってしまうスパニッシュ・スタイルに、ジェントルなイメージを付与している。 緩急の変化が巧みなため、シンプルな曲がドラマチックに膨らんでいる。 全体的には、ブリティッシュ・ロックの影響の強いサウンドだと思う。 5 曲目は、シンプルな構成ながらも、ミステリアスなムードの強い作品。 6 曲目は、スパニッシュ色の強いヘヴィ・シンフォニック・ロック。 ツイン・ギターのユニゾンによるワイルドな決めのフレーズがカッコいい。

  「Humanidad Indefensa」(6:03)清涼かつ牧歌的なシンフォニック・ロック。 ヴォーカル、ストリングス・シンセサイザー、メロディアスなツイン・ギターがフィーチュアされる。 ギターはヴォーカルに絡みつくように全編ヴォーカルとともに流れ出てゆく。 ガラスが破られて赤ん坊の泣き声がするオープニングが象徴的。

  「Ya No Hay Nada En La Calle」(3:33) アコースティック・ギター弾き語りがストリングス・シンセサイザー、メロトロンによってシンフォニックな広がりを見せるフォーク風の叙情的な作品。 ヴォーカルが叩きつけるのは、やるせない怒りか、哀しみか。 イントロ、オブリガートでは、メロトロン・フルートの哀しげな旋律がストリングスに浮かび上がる。

  「El Llanto Del Poeta」(3:29) 前曲から間髪入れずツイン・ギターのキャッチーなリフが刻まれる、劇的なオープニング。 呪文のように上ずったハーモニーの繰り返しには、素朴なエキゾチズムがある。 ブルージーなギターがハーモニーを追いかけてゆく。 いつのまにか、男声ハーモニーは子供の声へと引き継がれてゆき、ギター・リフ、印象的なベースとともに不思議な祈りへと変わってゆく。 最後を看取るようなフルート・メロトロンの哀しげな調べ。 リズミカルなのだが郷愁と哀感がない交ぜとなった小曲。 おそらく前曲とあわせて一つの作品なのだろう。

  「El Infierno Esta Aqui ? parte 1 & 2」(5:15) ハンガリーの OMEGA を思わせるマッチョな快調ロックンロール。 オープニング、シンセサイザーとドラムス連打によるイントロからギター・リフへと進むところがカッコいい。 メイン・パートは、イタリアン・ロックにもよく見られる連呼調のシンプルなブギーだが、中間部では、一転してチェロによる哀愁の伴奏が支えるメロディアスなバラードへと変化する。 後半は、再び BLACK SABBATHDEEP PURPLE のようなハードロックへと戻り、ツイン・ギターが走りながらスリリングなかけあいを見せる。 ヴォーカル・ハーモニーのバックでドライヴ感たっぷりに演奏を支えるベースもカッコいい。 本作を聴くと、お里は完全にハードロックである。 タイトルも "地獄のナントカ" のようだし。 エンディングのシンセサイザーが、かろうじてそこを越えた世界を示している。

  「Meditacion parte 1 - Descubrir El Sentido Terrible De La Vida - Meditacion parte 2」(6:58) ディミニッシュのシリアスな響きを活かしたドラマティックなハードロック。 メロトロンだろうか、ノイジーなクレシェンドからクライマックスを経て、余韻とともに去ってゆくミステリアスなオープニング。 まさしく「瞑想」のイメージである。 巨大な隕石が眼前に迫り、すぐさま視野の外へと去ってゆくようなイメージだ。 一転して、ピアノのビートに支えられた、思い切り土臭い歌唱による AOR 調のメイン・パート。 メロトロンの枯れた音も流れるのだが、全体としてはいかにも 70 年代後半らしい演奏である。 個人的には STYX を思い出した。 力強くも切ないヴォイスとメロトロン、ピアノのアンサンブルは、無常の果ての怒りを現すのか、どこかチグハグ。 サビでは、ヴォカリーズをもつれるようなツイン・ギターのハーモニーが追いかける。 ギターの表現力に比してリズムのモタリが辛い。 エンディングもイントロと同じ。 このメロトロンのシーケンスは、宇宙を舞台にした SF 映画のイメージである。 全体としては、エピローグとプロローグほどには垢抜けない内容だ。

  「El Verdadero Silencio paerte 1 - La Muerte Renacida - El Verdadero Silencio paerte 2」(7:00) オルガンをフィーチュアし、ヘヴィにしてクラシカルな重厚さをもつ傑作。 バラードのパートと重々しくたたみかけるパートから構成される、三部作である。 モノローグ調の男性的な詠唱がドラマを盛り上げ、ツイン・ギターが華麗に舞う。 MUSEO ROSENBACHBiglietto、はたまた東欧ロックの路線である。 ツイン・ギターがむせび泣く、きわめて叙情的な間奏。 2 コーラス目では、ヘヴィ・メタリックなギターが挑戦的なフレーズを叩きつけて、演奏から激しく飛び出す。 晩鐘、厳かなヴォカリーズ、ストリングス・シンセサイザーの嘆き。 祈りのようなモノローグへ、ヴォカリーズが重なる。 巻き舌のスパニッシュが荘重なイメージを高める。 再びメロディアスなツイン・ギターのハーモニーに、メロトロンも重なり、オプティミスティックに未来を目指すような感動のクライマックスである。 そして、歌うようなツイン・リードとともに、曲調はブルーなバラードへと回帰。 男くさく荒々しくも哀しげなヴォーカルは、イタリアン・ロックと同じニュアンスである。 最後は、再びヘヴィなギターのインタープレイである。 明暗強烈なコントラストと雄々しい歌い込みなど、濃厚な辺境テイストをもつ傑作。

  「Por Fin He Vuelto A Ti」(4:33) ツイン・ギター・ユニゾンとムーグ・シンセサイザーの華やいだ活躍に 70 年代テイストあふれる、愛すべきシンフォニック・インストゥルメンタル。 クライマックスである前曲を受け、本曲はエピローグ的な意味合いの存在だろう。 やや時代がかったシンセサイザーのテーマ、ツイン・ギターによる伸びやかなリード。 ギターは、かなり奔放にソロで跳ね回る。 もっとも、どちらかといえば小気味よいツイン・ギターのハーモニーがいい感じだ。 ギターにメロトロン・コーラスが重なるエンディング。 勇ましくも愛らしい演奏は、大団円に相応しい。

(Serdisco 50601081)

 El Hijo Del Alba

 
Sixto Ruiz guitar, vocals
Juanjo Respuela guitar, vocals
Juan C. Gutierrez keyboards, vocals
Francisco Banos drums
Luis Pastor bass

  81 年発表の第三作「El Hijo Del Alba」。 シンフォニック・ロック、ハードロックの両面に手を大きく伸ばし、ポップな味わいも加えた佳作。 どっちつかずの半端なイメージを強引に抑えこむのは、キーボードから管絃楽に至るシンフォニックな役者と、「ニューミュージック」然とした、この時代の記号ともいうべきポップ・サウンド。 冒頭から、シンセサイザーが PINK FLOYD ばりの神秘のヴェールを張り巡らすかと思えば、メロトロン・コーラスに伴われたアコースティック・ギターのシャッフル・アルペジオがかそけきギターの調べを支える哀愁のフォーク・ソング、そして OMEGA ばりの濃厚なハードロックへとまったく予測不可能の展開が繰り広げられる。男臭いヴォーカルを支えるのはギターに加えて弦楽セクションであり、サンレモ系イタリアン・ロックといっても決していい過ぎにならない。 これらさまざまな要素を駆使したアレンジは、かなり大胆であり、後半の組曲で極限に達する。 リズムのキレがアップしたおかげで、破天荒な展開でも迷いなく突き進んでいる感じがある。 最高潮に達したインストゥルメンタルは、YES のイメージが近い。
  6+5 拍子が印象的な 3 曲目は、弦楽奏を大きくフィーチュアしたフォークダンスから、8 分の 6 拍子のスパニッシュ・ギター・ソロ、ギター・ソロ、シンセサイザー・ソロへと進むテクニカルな作品。 全体にギターは、英国的なくすんだ色合いのタッチから、西海岸風のメロディアスで饒舌なプレイへと移行している。

(Serdisco 74321 25997 2)


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