BLAST

  オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「BLAST」。 89 年結成。 作品は 2009 年現在七枚。2009 年新作「Sift」発表。 HENRY COW/ReR 流アヴァンギャルドの後継グループの一つ。 エネルギッシュな即興と複雑なリズムを駆使したアンサンブルが特徴。現在、即興専門集団として活動中。リーダー格の一人、Dirk Bruinsma は新グループ「Brown vs Brown」にも注力。

 Wire Stitched Ears

 
Edward Capel alto & soprano sax, alt clarinet
Dirk Bruinsma baritone sax, bass, vocals, organ, tapes
Frank Crijns guitars
James Meneses drums, percussion
guest:
Wim van der Maas clarinet on 2, 4
Emanuela Cavallaro vocals on 5

  95 年発表の第二作「Wire Stitched Ears」。 二管(片方の奏者はベーシスト兼任なため、適宜オーヴァーダビングを使っている)とギター、ドラムスによる編成。 音楽は、徹底した変則リズムと素っ頓狂なフレーズが特徴的なアンサンブルに、発展性ある即興も交えた、アヴャンギャルドなものだ。 オールドファンには、HENRY COW というキーワードで充分だろう。 突発的かつ挑戦的、過剰な発展性(ワルノリというべきか)は、フリージャズからのものであり、二管の奇怪なポリフォニーや変則リズムは、現代音楽の研鑚から生まれたのだろう。 そして、全体を推進するパワーはまさしくロックのものである。 ニ管は、奇天烈なフレーズによって、ときにハーモニーを成し、ときにポリフォニックな進行を見せる ギターが加わり三者によるポリフォニーを構成することもある。 このギタリストは、近年の同様な編成のグループには珍しく、凶暴な主張とともに、ノイズを放ちつつも管楽器アンサンブルのサポートも怠りない。 もっとも、KING CRIMSON 的な狂暴極まるリフをぶちかますところもある。 オルガンの代わりに管楽器がある、つまりニ管の SOFT MACHNE といっていい瞬間もあるのだが、リードする管楽器のフレーズは、あまりに意識的な脱秩序、脱構築型である。 自然でタイムリーな効果音やヴォーカルから、PICCHIO DAL POZZO のイメージも浮かんでくる。 全体としては、即興性に加えて意図的な逸脱調を徹底した、管楽器中心のチェンバー・ロックといってもいいだろう。 ほとんどの作品がリズミックなテーマを中心に発展するスタイルなので、みんな同じに聴こえてしまう可能性もあるのだが、ヴォイスなどのアクセントや緩急の曲構成などをきっかけにすると面白さが見えてくる。

  1 曲目「Radio Talk」(0:26) タイトル通り、実際のラジオ放送のエアチェックのようだ。 モノローグ、もしくはアナウンス、そしてノイズ。 何語かまったく分かりません。

  2 曲目「Pain Of Fear」 (03:56) 8 分の 9 拍子によるとぐろを巻くような怪奇なベース・リフ。 金属的な音色と挑戦的な姿勢は、KING CRIMSON に直結する。 リフの上では、ソプラノ・サックスとクラリネットによる素っ頓狂なハーモニーが飛び跳ねる。 ギターは歪みきった音で和音を挿入し、アクセントをつける。 管楽器アンサンブルはリズムがベース・リフとは微妙にずれているようだ。 8 分の 7 拍子のリフが繰り返されると、ベースも応じ、一点リズムレスのスローなヴォーカル・パートへ。 緩衝空間に漂うスタンダード・ジャズ風の不気味な歌。 メタリックなギター、オルガンは、きわめて HENRY COW 的。 二管のユニゾンが加速し、冒頭のベース・リフが復活すると、再び二管、ギターの素っ頓狂アンサンブルへ。
  変拍子、ポリリズム、普通のメロディ・ラインを意識的にはずしたアンサンブル、ヴォーカル、そこはかとなくドライなユーモアなど典型的なアヴァンギャルド・ロック。 演奏の切れ味がいいです。

  3 曲目「Seismograph '93」(8:08) サックスによるスタカートのユーモラスなユニゾンが、調子よくリードするオープニング。 妙に可愛らしいリム・ショットとディストーション・ギターのトレモロが時を刻む。 乾いたスネアの入りとともに、管楽器、ギターはともにノイジーなラインでうねり出す。 ハーディガーディか、何とはいえぬがインドの楽器のようなイメージだ。 進行に対して拒絶を表明するような演奏である。 ギターが生々しいパワーコードを叩きつけると、それをきっかけに、2 つのサックス、ギターによる頓狂なアンサンブルがスタート。 サックスによるパターンの執拗な反復、8 ビートからのズッコケ、やはり普通の進行は拒否されている。 というか、直線的な進行ではなく、回転運動に近いモーメントを感じる。 たとえば、大きな歯車がかなりの速度で回り続けているようなイメージだ。 アルト・サックス・ソロは、脱メロディ、脱リズムな即興、しかし洒脱。 ギターとのハーモニー、ドラムス乱れ撃ちをきっかけに、さらに演奏は秩序を失い、ドラムスの打撃とギター、管楽器のコンビネーションが戦いの火蓋を切る。 空しさあふれるブレイクを経て、じわじわと湧き上がるように、2 つのサックス、ギターによる変拍子アンサンブルへと帰ってゆく。
  堅固な 8 ビート上で、不協和音の響きによるアグレッシヴな停滞、ポリリズミックに迫る管楽器デュオによる旋回と前進、ソロによる飛翔をイメージさせる大作。 もっとも、突き抜け感はなく、見えない壁に跳ね返っては反対側の壁に跳ね返りを繰り返すような感じである。 即興の応酬や、ソロなどスリリングな場面も多い。 堅実なビートとワイルドな連打など、ロックっぽい骨太なドラミングがフィーチュアされている。 これだけ普通じゃなく演奏するのもたいへんだろうな、という思いもあり。

  4 曲目「Welter」(5:32) 二管ユニゾンが問いかけギターが応じるリズミカルな 5 拍子リフ、そしてアジテーション風のヴォーカル。 二管とギターがこちょこちょと絡み合うアンサンブルを経て、不気味にテンポ・ダウンし、底のほうから浮かび上がってきたソプラノ・サックスとギター、ベースらが、やがて変拍子カノンでぐるぐると回り出す。 ここに堅実なビートでオーヴァーラップするドラムスがカッコいい。 サックス、ギター、クラリネットらが追いかけ合い、螺旋を描いてゆく。 敏捷なユニゾン、突如叩きつけるヘヴィなキメの連発(かなりカッコいい)を経て、序章の 5 拍子ヴォーカル・パートへ回帰する。 軋むような最後のノイズは何の音?
  軽妙な変拍子リフによる挑発的なメイン・パートと、中間部の抽象画のような構築世界が鮮やかにコントラストする佳作。 ギクシャクした運動とこんがらがった停滞。 中間部からのサックス、クラリネット、ギター、ベースによる変拍子フーガは、かなりの聴きもの。 現代音楽のようでいて、ロックらしいパワーもある。

  5 曲目「Pastorale」(6:12) 鋭いスタッカートでリズムを強調するニ管、ギター、ベースのアンサンブル。 奔放なようでいてリズミックな一体感があり、躍動的なようで、頑なな感じもある。 サックスのリードは即興だろう。 突如、リズムレス(HENRY COW っぽい)で、デメトリオ・ストラトスばりの女性ヴォイス・パフォーマンスのパートが現れる。 これはイタリア語? 悪夢のような落差、そして女性ヴォイスの鮮烈な存在感。 タイトルに示すパストラルな感じはまったくない。 ギターのかき鳴らし、ソプラノ、バリトン・サックスのロングトーンがヴォイスを通りすぎる。 やがて、序盤の演奏が復活、そして後半は、凶暴なギター・リフの上で二管が気まぐれのようにポリリズミックに跳ね回る。 二管は鮮やかにハーモニー、ポリフォニーを決める。 どこまでが即興なのだろう。 全体に、管楽器の音は低音のシグナルのような断続音である。
  得意の変拍子リズミック・アンサンブルによるアーバン・フォーク。 中間部は ELEPHANT 6 系をレコメン化したような世界だ。 細切れのフレーズをたたみかける、あたかもリスナーを振り回すような演奏だが、3 曲目のようなドラム・ビートによるロックらしさよりも、管楽器とギターの「ストローク」によるリズムが特徴的である。

  6 曲目「Wire Stretched」(7:06) 得意の頓狂二管ハーモニーで快調に走るスピーディなレコメン・ロック。 8 分の 5 拍子から、キレ、ノリのいい 8 ビートに切り換わる。 管楽器のソロは、意外にジャジーである。 二管のテーマこそ、いつもの変態型だが、展開部でのアコースティック・ギターとのやりとりなどは、独特の叙情性も現れる。 初めて現れるギターのアドリヴは過激そのものだが、ギターそのものよりも、それを煽るドラムスや管楽器がえげつない。 序奏とエンディングでの沈痛な表情など、緩急や硬軟の演出にも通常の脈絡が感じられる。
  

  7 曲目「Zozoter Au Funiculaire」(6:00) ベースが刻む、初めて普通にカッコいいオープニング。 サックス、ギターが断続的に突っ込むも、グラインダーのようなベースがダイナミックな推進力となる。 その後はサックスとギターのフレーズにしたがって、8 ビート、8 分の 13 拍子、快速 7 拍子とめまぐるしくリズムは変わる。狂おしく暴れ続けるギター、吼えるディストーション・ベース。 ギターのパワーコードをきっかけに叩きつけるようなサックス、そして凶暴なベースが飛び出す。 最後は、80 年代 KING CRIMSON 風の超絶ギター・シーケンスとベースのハーモニクスが、きわめてメタリックなデュオを成す。
  ギター、ベースをフィーチュアした変拍子ヘヴィ・チューン。 金属的な音が耳に残るハードコア・マインドあふれる作風である。 冒頭はイビキと金属の軋む音。

  8 曲目「This Is Not A Folksong」(6:55) サックスが爆発するポップなレコメン・ロックンロール。 他の曲と異なりサックスのフレーズが短くキレがいいのと、リズム・パターンがシンプルなので、意気のいいロックになっている。 ギターはノイジーなストロークで小気味よくバッキングする。 次第にぐしゃぐしゃになってゆくのだが、ギター、ドラムス、サックスのうちの誰かが必ずキレのいいリフで勢いをキープする。 珍しく、かろうじてメロディアスといえなくもないクラリネット・ソロもフィーチュア。 終盤、奇怪なヴォイスとギターによるザラザラした演奏となる。
   快調レコメンロックンロール。 威勢のいい快作である。 クランチなギターや意味不明な絶叫など、STORMY SIX の後期作を思い出します。

  9 曲目「Or-Na-Ra-Tio」(4:52) お経+絶叫+クラッシュ。 断続音による強烈なアクセントを活かして迫る激烈へヴィ・レコメン。


(CUNEIFORM RUNE 71)

 Stringy Rugs

 
Edward Capel alto & soprano sax, alt clarinet
Dirk Bruinsma baritone sax, bass, vocals
Frank Crijns guitars
David Kerman drums, percussion
guest:
Rob Snijders drums, percussion
Cor Links marimba
Harm Langermans, Dre Thewessen, Gon Mevis trumpets
Tom Koster, Martjn Van De Klok, Peter De Hoop trombones
Hein Van Leeuwen, Joost Kappe tubas

  96 年発表の第三作「Stringy Rugs」。 ドラムス、パーカッション担当に 5UU'S のデヴィッド・カーマンを迎えて、ニューヨークとオランダ、フランスで録音された。 内容は、前作の路線にメタリックで凶暴なタッチを加味し、その運動性とともに複雑怪奇な構築性を真正面から提示するアヴァンギャルド・ロック。 管楽器と多彩な打楽器をフィーチュアした、どちらかといえば重苦しく、攻撃的な音楽である。 とはいえ、いわゆるところの「筋の流れ」や「展開」といった係り結びはなく、ロックらしい単純な力強さや速度によるカタルシスは慣れないと見つけられない。 さらには、SE などによるイメージ喚起の手法も使っていない。 ややアクセスしにくい音なのは確かだが、繰り返し聴くことでさまざまな面白さが分かってくる。 この音楽は、いわば、楽器の音とそれらの間の直接的な関係性のみを取り出したような、複雑なスコア再現と瞬発的なプレイのキレのみを目指したような、「音楽至上」のスタンスで作られた内容なのだ。 演奏主義的といってもいいかもしれない。 その姿はといえば、どこもかしこも旋律ならざる旋律とその断片にあふれかえり、ときおり訪れる強力なユニゾンやポリフォニーのエネルギーもすぐに胡散霧消する。 奇妙な呼吸で音同士が反応する、いわゆるアンサンブルとして形を成すこともあるのだが、ほとんどの場面では、この音の激しい離合集散を、解釈の余裕なくそのまま浴びるしかない。 そして、浴びているうちに何か今までに見えなかったものが見えてくると、止められなくなってくる。 9 曲目「O.A.L.I」は、暗黒ブラス・ロックの傑作。
  プロデュースはグループ。エンジニアはボブ・ドレーク。

  「E Se Di Questo Voi Dicere Piue」(5:29) メタリックなギターを中心に、即興と作曲パートを交錯させた凶暴な作品。 編成は、ギター、二管、パーカッション(ドラムス、マリンバ)。 タイトルは何語? フランク・クレインス作。

  「Limbaire」(5:48) ソプラノ・サックスを中心としたノイジーでへヴィな作品。 サックスが前面に出るといわゆるフリージャズらしい肉感的なタッチが現れる。 エレクトリック・ベースとギターはへヴィ・メタリックで凶悪なアドリヴを放つ。 ブラス・セクションのドローンによるスペイシーで神秘的な場面もある。 編成は、ソプラノ・サックス、ベース、ギター、パーカッション、ブラス・セクション。 カペル作。

  「Outgrouth」(6:45) ニューウェーヴ/インダストリアル調の奇怪に折れ曲がった歌もの。 管楽器は無調のレガートなテーマを不気味に奏で、ギターは緩い変拍子リフを刻む。 中間部に完全即興空間あり。 編成は、アルト・クラリネット/アルト・サックス、ベース/ヴォーカル、ギター、ドラムス。 ドラムスはデイヴ・カーマンが担当。 ブリュインスマ作。

  「Litho 1」(1:26) マリンバ、ソプラノ・サックス、アルト・サックス、ギターによるポリフォニックなアンサンブル小品。 ポリフォニックだが旋律は無調であり、和音は不協である。 どこへも着地しない珍妙なアンサンブルだが、室内楽的ではある。 クレインス作。

  「Communifade」(6:44) ブラス・セクションを動員したドラマティックな作品。 分厚い管楽器群のドローンに向かってデイヴ・カーマンの超絶ドラミングが爆撃のように放たれる。 轟々とうねる濁流の力強さがある。 モールス信号のように反復されるパーカッション。 終盤、巨象の群れが大きく旋回するように、地獄のビッグバンドが走り出す。 編成は、アルト・サックス、バリトン・サックス、ギター、ドラムス、ブラス・セクション。 ドラムスはデイヴ・カーマンが担当。 カペル作。

  「Bouncing」(8:43) ギター主導のへヴィ・ロックとサックス主導のフリージャズを合体させた暴力的な作品。 作曲されたテーマと思われるパートではジャズ vs ロックのような熾烈かつナンセンスなバトルがある。 緩急の変化がカッコいい。 前半に即興パート、後半は膨張するノイズのようなドローンの上でギターが吼える。 編成は、ソプラノ・サックス、ベース、ギター、ドラムス、トランペット、トロンボーン。 ドラムスはデイヴ・カーマンが担当。 ブリュインスマ作。

  「Ink」(8:27) ギターと管楽器がもつれながらラッシュする快速チューン。 キレのいい変拍子リフ、管楽器による遁走曲風のアンサンブル、ジャズロケンローな疾走。 終盤は重厚。 編成は、アルト・サックス/ソプラノ・サックス、バリトン・サックス/ヴォーカル/オルガン、ギター/シンセサイザー、ドラムス、トランペット、ブラス・セクション、マリンバ。 ドラムスはデイヴ・カーマンが担当。 クレインス作。

  「Litho 2」(1:08) 二つのサックスとマリンバがハーモニーを成す室内楽風の作品。 編成は、アルト・サックス、バリトン・サックス、ベース、ギター、ドラムス、ブラス・セクション。 ドラムスはデイヴ・カーマンが担当。 クレインス作。

  「O.A.L.I」(6:30) パワフルなドラミングとともにギターのリードで突き進む変拍子ビッグ・バンド・ジャズロック。 一体感ある音によるスピーディな反復、展開がカッコいい。 珍しく普通に近い「ノリ」や「ビート」があり、ギターは噛みつくようなフレーズを刻み、サックスもエルトン・ディーンばりのアドリヴを放つ。 他の楽曲が超発散または超骨折しているだけに、インテンシヴな音が一際目立つ。 編成は、アルト・サックス/アルト・クラリネット、ベース、ギター、ドラムス、ブラス・セクション。 ドラムスはデイヴ・カーマンが担当。 クレインス作。

  「Tectonic Afterbirth」(6:45) 二管の微妙にずれたハーモニーにギターがツッコミを入れドラムスがあおる、要は、ようやく分かってきた、このグループの基本作曲スタイルである。 ダンサブルな運動性/連続性を捨てる代わりに、5 秒ごとに別次元に移動するようなスリルを味わえる。 編成は、ソプラノ・サックス、バリトン・サックス、ギター、ドラムス、マリンバ。 ブリュインスマ作。

(CUNEIFORM RUNE 95)

 A Sophisticated Face

 
Edward Capel soprano & alto sax, alt clarinet
Dirk Bruinsma soprano & baritone sax
Frank Crijns electric & acoustic guitars
Pad Conca electric bass
Fran Lorkovic percussion, vibraphone, glockenspiel
guest:
Bart Maris trumpet, flugelhorn
Jan Erk van Regteren Altena violin
Michiel Weidner cymbalom, cello
Cor Links marimba
Rob Snijders percussion

  99 年発表の第四作「A Sophisticated Face」。 専任のベース・プレイヤーに加えて、前作同様ブラス、ストリングスなど多くのゲストを迎えている。 今回はデイヴ・カーマンは不在。 新参加のヴァイオリンが大胆なピチカートをはじめとして積極的な演奏を見せ、これまでになかった室内楽的な緊張感を加味している。 歪んだギターの音と突発的に暴れるアンサンブルは、やはり HENRY COW をイメージさせるものであり、さらに運動性を高めたような感じである。 テーマ部分のみならず、本来自由なはずの即興演奏にも、お手本は必要なのかもしれない。 さて、本作のアプローチは、アドリヴ・ソロで刺激しあってアンサンブルの自発的な発展を促すということらしい。 作曲パートの充実のせいか、きわめて反応のいいスリリングな応酬が多くあるのだが、管絃打楽器が短いフレーズで応酬しあい錯綜するシーンはまだ準備段階に思える。 そこから発展してパターンを共有、収束して疾走し始める瞬間にこそ息を呑む醍醐味があると思う。 ここではドラムスですら他の楽器と同じく一つの点/線となっていて調子/速度の維持という通常の観点を根こそぎにしているのだが、カッコいいのはやはり疾走感のあるシーケンスである。 一見無秩序風にわらわらと広まった演奏が、あたかも不恰好なモビールのように細い糸でつながって揺れ続けているさまも面白くはあるが、やはり一つびしっと筋を通すと、格段の面白さが生まれるような気がする。 その点、5 曲目「Transversal」あたりはかなりいい線をいっている。 断片的なフレーズが多いなかで、ピチカートや打楽器などパーカッシヴな音がうまく使われていることに気がついた。 トランペットとベースもかなりいいセンスではないだろうか。
   全体としては、前作よりもクラシカル/現代音楽的な要素が増したこと、および作曲部分が充実したことにより、"分かりやすさ" 、"読み取りやすさ" が生れたと思う。 (こういう音が分かりやすくてどうする、といわれそうだが) ジャズの汗臭さをうまく振り払ったせいで、インテリジェントなイメージも強まった。

  「One Path」(2:34)
  「Visceral Ooze」(6:27)
  「Metrolodic」(5:51)
  「Rind」(2:14)
  「Transversal」(8:20)力作。
  「Solstice」(2:15)トラジックなドローンにギターのスクラッチ・ノイズが重なるフレッド・フリス風の作品。トランペットのアドリヴもいい感じだ。
  「Zoot」(4:13)ヴィブラフォン、ヴァイオリンのピチカートが印象的。各パートの呼応の反応がいい。
  「Oc」(1:00)ヴァイオリン、チェロ、クレインスのアコースティック・ギターによるトリオ。ドラムレス。
  「Transmotude」(2:01)ブリュインスマのサックス、ギター、ベース、パーカッションによる一人多重録音。
  「Hogh」(5:07)前作の作風。
  「Emety Nepraco」(8:10)ブリュインスマのサックスとコンカのベース/ギターによる作品。ドラムレス。

(CUNEIFORM RUNE 125)


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