BIGLIETTO PER L'INFERNO

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「BIGLIETTO PER L'INFERNO」。 73 年結成。 70 年代に二枚のアルバムを残す。 (二作目は後年発掘) クラシカルかつヘヴィなオルガン・ハードロック。 キーボーディストのバンフィは、バンド解散後三枚のソロ・アルバムを発表。 TRIDENT レーベル。

 Biglietto Per L'Inferno

 
Fausto Branchini bass
Mauro Gnecchi drums
Giuseppe Banfi keyboards
Marco Mainetti guitars
Claudio Canali vocal, flute
Giuseppe Cossa keyboards

  74 発表の第一作「Biglietto Per L'Inferno」。 ジャケットには、メンバー写真と担当楽器及び歌詞が掲載されているが、発表年度がない。 別途調査し、74 年の作品と判明。 この写真のような髭面と長髪が最後に隆盛を誇ったのも、たしかに 74 年くらいのような気がする。 内容は、ムーグ、オルガン担当およびピアノ担当の二人のキーボードとハードなギター、ワイルドなフルートらをフィーチュアしたハードロックである。 ヴォーカルはイタリア語なのだが、メロディや曲調に独特の虚無感があり、いわゆるイタリアものとは微妙にニュアンスが異なる。 フォーク・タッチの部分も、素朴なだけではない屈折感があるような気がする。 むしろ 70 年代初期のブリティッシュ・ロック調というべきだろう。 全体に、極端な静と動のコントラストを用い、音量の変化でびっくりさせるのが得意技である。

  1曲目「Ansia」(4:16) イタリアン・ロックらしさあふれる牧歌的作品。 クラシカルなフォーク調を基本に、ハードなサウンド、リズミカルなプレイ、キーボードによるシンフォニックな演出を加えたインストゥルメンタルを盛り込んでいる。 前半はオルガンとギターのアルペジオによるおだやかな演奏が、JETHRO TULL 風のリズミカルな演奏へ進み、シンセサイザーによるシンフォニックなテーマが現れる、ストーリーのある進行。 結局は、マーチング・スネアとシンセサイザーによる、けたたましくもクラシカルな演奏へと落ちつく。 ヴォーカルは後半ようやく現れ、今までの展開をなぞるように進む。 歌メロは、いかにもイタリアン・ロックらしい響きをもつ。 ツイン・キーボードだけあって、オルガン、シンセサイザーとピアノのコンビネーションが用いられる。 のどかなようで、わりと大胆に変化しながら展開し、結局は弾き語り調でしめるというイタリアン・ロック典型である。

  2曲目「Confessione」(6:32) キーボードがざわめくリリカルなバラードと、ファズ・ギターが唸りを上げるハードロックが、交差しながら次第にとけあい、爆発的なクライマックスへと進む劇的な作品。 ギター・リフを軸に強烈なシャウトも用いたハード・ドライヴィンな演奏を、ピアノ、オルガン、シンセサイザーがクラシカルなロマンで彩り、ハイトーンのファルセット・ハーモニーがロマンティックな潤いを与えている。 ギターは全編通してフィーチュアされ、ヘヴィな音で圧倒的な存在感を示す。 パワー・コードによるリフは、シンプルだがなかなか強力だ。 このリフをアクセントに、流れるように曲が展開してゆく。 後半、演奏はフルート乱れ吹きとヘヴィなギター中心に目まぐるしい変化を見せながらシャフル・ビートで暴れ回る。 最後は、シャフルからイタリアン・ロックならではのタランテラ風のリズムへと進み、豪快にしてスムースに攻め立てる。 最後は、エピローグ風にシンセサイザーからピアノへと荒々しい演奏が進む。 このエンディングは、BANCO を思わせるみごとなものだ。

  3曲目「Una Strana Regina」(6:11) 哀愁と明日への希望がまじりあい、CRESSIDA のような英国ロックの香気が漂うシンフォニック・バラードの名品。 オープニングは、コントラバスを思わせる陰鬱なキーボードの調べなのだが、メイン・パートでは、オルガンを用いたクラシカルで叙情的な演奏になっている。 PROCOL HARUM とは異なりケレンがなく、情熱を素朴に伝えてくる感じだ。 ゆったりとしながらも説得力あるムーグ・ソロがいい。 伸びやかなサビはいかにもイタリアン・ロックらしい。 突如フルートが暴発し、ヴォーカルがつばきを飛ばして早口でたたみかけ、リズム/音量が激変する、不意打ち的な場面転換もあり。 そういう変化すらも英国本流並にこなれているところが、このグループのすごいとこだろう。 また、ここでもツイン・キーボードを活かして、ピアノ、ムーグがぜいたくに配されている。 エンディングでは、突然歌謡曲風の能天気な曲調に変化してびっくりするが、それでもナチュラル・トーンのギターを中心としたクラシカルなアンサンブルである。 こういうところも大陸風なのだろう。

  4曲目「IL Nevare」(4:36) ギター、オルガンをフィーチュアし、音量の変化で強引にドラマを叩きつけるハードロック・バラード。 前曲の空気をそのまま引き継いだオルガンのフェード・インによるオープニング。 A、B 面で雰囲気が途切れないようにするために、LP 時代によく使われた手法である。 2 曲目同様、メイン・パートでは音量の極端な変化を用いているが、沈み込むような英国風の演奏の方が印象的だ。 エフェクトされたヘヴィなギターに引きずられるままに、リズムは 8 分の 6 拍子へ変化し、ギトギトのギターが流れてゆく。 再びメイン・パートでは、ささやくようなヴォーカルが突如高まる極端な演奏から、オルガン、ギターが轟くサビへ。 8 分の 6 拍子のブリッジを経て、またも陰鬱に沈み込む。 バッキングのギターのアルペジオとシンセサイザー、オルガンの演奏には、かなりいい味わいあり。 最後は、乱れ打つドラムス、泣きのギター、スキャットによってベタベタなバラードで迫る。 前曲と対をなす、または一つとみなしていい作品である。

  5曲目「L'Amico Suicida」(13:20) 雄大かつ叙情的、そして少しコワれた(よくいえば現代音楽的な)大作。 オープニングは、MUSEO ROSENBACH の名作に匹敵する堂々たる語り口である。 即興風のプレイからノイズ、唐突な SE も用いているが、キーボードを主役にしたテーマやアンサンブルはクラシカルであり、全体としてはシンフォニックな作品といえる。 そして得意の空ろな表情と伸びやかな歌唱の対比も、活かされている。 フルートは、JETHRO TULL 風のワイルドなトーキング・スタイルから、イアン・マクドナルドまで、いい感じで全編活躍する。 また、アコースティック・ギターの軽やかなストロークとホルンのようなムーグ・シンセサイザーで歌い上げる場面では、キャッチーなセンスが横溢する。 ノイズや思いつき風のプレイで破綻しかけると、強引なまでの全体演奏で次の展開への踊り場を作る。 この踊り場の作り方がなかなかうまいので、急展開を乗り切ってゆける。 そして、醍醐味である、おぼえていられないくらいどんどん変化する曲調をしっかり味わえる。 音質、作風的にかなり異なりますが、ユーモアというか独特の感覚については、BARCLAY JAMES HARVEST に共通するものがある。 終盤、音が周期的に変化するのですが、盤起こし CD の問題なのか、音楽的な効果なのか

  6曲目「Confessione」(3:31) 2 曲目のインストゥルメンタル・ヴァージョン。


  キーボードを多用した叙情的にして雄大なるハードロック。 英国マイナー・バンド風味とパタパタ入れ代わる「動」と「静」が特徴だ。 70 年代初頭によく見られた、ギター、オルガン中心のハードロックとクラシカルなピアノやアコースティック・ギターによるバラードを融合させる試みのイタリア版である。 このアルバムを歴史に残した要因は、アヴァンギャルドな箇所とうまくバランスを取っている、テーマ、フレーズ、リフのノリのよさだろう。 ノスタルジックなハモンド・オルガンに加えて、ハードロック王道ギターとフルートが大活躍する。 特にギターは、荒っぽいリフから、いわゆる「泣き」のソロ、ジャジーなプレイまで芸風が幅広い。 すさまじくチープな音色のシンセサイザーも、今となっては魅力である。 そして、ヴォーカルは、伸びやかな唱法にもかかわらず、いわゆるイタリア風のベル・カントとも少し異なる個性的なスタイル。 哀愁漂うバラードは喩えるならば、メタリックさをぐっと抑えてほんの少し陽気さを加味した URIAH HEEP。 「Confessione」のギター・リフは傑作でしょう。

(TRIDENT TRD1005 / VM 006)


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