イタリアのジャズロック・グループ「ARTI+MESTIERI」。
73 年、TRIPを経た超絶ドラマー、フリオ・キリコとジジ・ヴェネゴーニ、ベッペ・クロヴェッラ等によって結成、翌年アルバム・デビュー。
78 年解散。その後キリコを中心に再結成し 85 年解散。
2000 年再結成及び新譜発表。
イタリアン・フレイヴァーあふれる技巧的なジャズロック。
アヴァンギャルドの雄 AREA と双頭を成す CRAMPS レーベルのアーティスト。
| Furio Chirico | drums, percussion |
| Marco Cimino | keyboards |
| Beppe Crovella | piano, keyboards, Hammond organ, accordion |
| Marco Gallesi | bass |
| Gigi Venegoni | electric & acoustic guitar |
| guest: | |
|---|---|
| Corrado Trabuio | acoustic & electric violin |
2000 年発表の最新作「Murales」。
このところ往年のグループの再結成・新譜発表が続いたが、遂に大御所 ARTI+MESTIERI まで現れた。
ゲストのヴァイオリン奏者と三作目から参加のマルコ・チミノ以外は、オリジナル・メンバーでの再結成である。
キリコのドラムに過剰なまでのケレンがないだけで、ヴァイオリン、ギター、キーボードによる流麗かつスリリングなサウンドは、全く健在。
ラテンのリズムやケルティック・テイストを散りばめらながも、つややかさは一層の輝きを放っている。
そして豊かさとすっきりとした明るさは、かえって増しているのだ。
イージー・リスニングとしてのメイン・ストリーム・フュージョンの普遍性や、ワールド・ミュージックへの注目度合いの高さを利用しつつ生来の歌心を十分に活かした、いわばテクニカル指向へのアンチ・テーゼともいうべき云々....などというとややこしいばかりだが、要するにわたしのモノサシでは「聴きやすいプログレ」の大傑作である。
決してノスタルジーだけではなく、今演りたい音をグループとしての存在意義と照応し、ビシっと重なった瞬間のきらめきがあるのだ。
充実した瑞々しいサウンドである。
底辺に流れるプログレの奔流に耳を傾けてもよし、リラックスして聴くもよし。
それにしてもクロヴェッラ氏のプログレ魂は、正真正銘のホンモノだ。
爽やかなスタカートのオープニング・ナンバーが「Gravita 9,81」を思わせニンマリしていると、最終曲で椅子から転げ落ちる。
(ART)
| Furio Chirico | drums, percussion |
| Beppe Crovella | keyboards |
| Marco Gallesi | bass |
| Gigi Venegoni | guitar, synthesizer |
| Giovanni Vigliar | violin, percussion |
| Arturo Vitale | sax, clarinet, vibraphone |
74 年発表の第一作「Tilt」。ヴァイオリンと管楽器を含む 6 人のメンバーで録音されている。
豊かな音楽性が封じ込められた、70 年代イタリア・プログレッシヴ・シーンからの贈物のような大傑作である。
テクニックが強調されがちなグループではあるが、本作では技巧のみならず豊かな歌心をもしっかりと印象づける。
サウンドとしては、ふくよかな音色のヴァイオリンや管楽器がリードするアンサンブルに、キーボードが奥行きをつけるシンフォニックなジャズロックといえる。
リズム・セクションとサックスにジャズのセンスを感じさせる一方、ギターはロックっぽいハードなプレイを鮮やかなテクニックで決めている。
また、キーボードはプログレッシヴ・ロックの常套句というべきメロトロン、アナログ・シンセサイザーを多用する。
そして特に有名なのが、ドラムのフリオ・キリコの超絶プレイ。
確かにすばらしい技巧であり、正確無比なリズム・キープに加えて素早いフィルとの切りかえなど、打撃技にもかかわらず「歌」を感じさせてくれる。
さて、そもそもイタリアン・ロックは、バロック音楽と土臭いフォークソングを容易に往来させるくらい懐が深い。
それは伝統的な美意識によるものであり、高々20世紀に生まれたポップ・ミュージック・カルチャーにとってあまりに贅沢なバックグラウンドというべきだろう。
したがって、英米から登場したジャズロック、フュージョンといった音楽のもつ「ミクスチャー感覚」や「都会的洗練」という側面に対しては、特に ARTI のような「芸術家+職人」からは、どちらかといえば「何を今さら」という反応が自然だったのかもしれない。
もちろん、ありとあらゆる音楽に英米からの影響があるのも事実であり、確かに PERIGEO や IL BARICENTRO、NOVA といった RETURN TO FOREVER や WEATHER REPORT への意識を隠さないグループもある。
このグループも MAHAVISHUNU ORCHESTRA などの音は当然参考にしているだろう。
それでもなお、本作の音楽は、英米のジャズロック、フュージョンとは異なるタッチ、ニュアンスをもっていると思う。
それはおそらく、素朴でロマンティックな叙情味である。
主流のフュージョンのもつラテン/ファンク・タッチとも異なるこのエキゾチズムが、全体のまろやかなみずみずしさの源泉となっている。
音楽的には、ジャズを出発点の一つとしながらも、黒人音楽の影響から離れてゆくような音使いが感じられるといってもいい。(プログレ心あふれるというべきか)
本作を傑作たらしめているエッセンスは、全編に満ちわたるこの独特の叙情的な歌心といえる。
1 曲目「Gravita 9,81(重力)」(4:07)
豊かなイメージのテーマとソロによるシンフォニック・ジャズロックの傑作。
シンプルな作品ながら、しなやかなテーマは、あたかも各プレイヤーのエネルギーが注ぎ込まれているように圧倒的な存在感を示す。
音にツヤとテンションをすべて同時に付与するヴァイオリンの魔術など、演奏面では MAHAVISHNU ORCHESTRA (「Trilogy」だろう)の影響下にあるようだが、決して火を吐くようなスタイルが主ではなく、まるで湖水をわたってゆく風のように涼やかでみずみずしい生命感に満ちたイメージの演奏となっている。
次第に高揚するアンサンブルがゾクゾクするような興奮を呼び覚ますのだが、それ以上に、しっとりと官能的な響きが秘められているところが憎い。
ギター、ヴァイオリン、管楽器らのユニゾンによるテーマをしっかりと刻み込むと、ベース、サックス、ドラムと緻密な技巧を披露する見せ場が続くが、やはりメロディの隅々に歌心がゆきわたっている。
ほぼ最高/完璧のオープニング・ナンバーだろう。
多面的な魅力を孕んだ、まさに目の醒めるような作品である。
2 曲目「Strips」(4:40)
前曲の高まりを静めてゆくようなクラシカルな響きのある作品。
アコースティックなヴォーカル・パートあり。
豊かなハーモニーとユニゾンを織りあわせたテーマは、切れ味鋭いリズムに支えられて、シンフォニックな高揚を生み出す。
レガートなヴァイオリンが主導する気品と官能美を備えたテーマを、古色蒼然たるメロトロンの響きが支える。
こういうコンビネーションは、非常にユニークだ。
ヴォーカルのバッキングと間奏における繊細で表情豊かな演奏がみごと。
キーボードはさまざまな音色を操りながらも抑えの効いたプレイに徹し流れを彩っている。
ジャズ、フォークとクラシックを吸収しきった本格的なシンフォニック・ロックであり、初期 CRIMSON すら連想させる内容である。
切ない気持ちを込めたようなメロディがいい。
3 曲目「Corrosione(侵食)」(1:25)
今度はサックスによるレガートなテーマが、前曲のセンチメンタリズムから前々曲を回想するように勇ましさを取り戻してゆく。
小さな橋渡しの曲だが、サックスのまっすぐな音と駆けずり回っているタム回しが緊張を高める。
オブリガートでは、ヴァイオリンも寄り添い鋭いアクセントをつける。
4 曲目「Positivo/Negativo」(3:38)
あたかも対話のように前曲のテーマに応ずるヴァイオリンの優美なテーマ。
伴奏はアコースティック・ギターの力強いコード・ストローク。
ヴァイブのおだやかな旋律が、テーマを受け止める。
一転すさまじいドラム・ロールとともに、演奏が走り出す。
テーマは三倍速で再現し、ギターも加わる。
後半は、超絶的な快速ギター・ソロから、テーマ変奏を取り巻くシンセサイザーの不気味な響きをはさみ、快速アンサンブルが走ってゆく。
この後半の爆発的な演奏は、まさしくジャズロックの醍醐味といっていいだろう。
ギターはここで初めて、大きくフィーチュアされる。
5 曲目「In Cammino(路上にて)」(5:31)
幻想美をたたえるアンサンブルからタイトにして優雅な演奏を経て、最後にはドライヴ感たっぷりのインストゥルメンタルへと発展する劇的な作品。
序奏は官能的なサックス、深いエコーにたゆとうエレピによる演奏であり、初期の WEATHER REPORT へ通じる世界である。
ずっしりとしたピアノに導かれて、ヴァイオリンのリードによる第一曲の変奏のようなアンサンブルが走り出す。
朗々とテーマを歌いつつも、すっと抜くように小粋なワルツを挿入する辺りがみごとである。
優雅なテーマから、一瞬にしてぶわっと沸騰するように立ち上がる迫力は、RETURN TO FOREVER に近い。
後半は、フリーキーなサックスのアドリヴからエレピと続き、ピアノ伴奏でギターの豪快なソロへと進む高密度な演奏。
一人かけあい風に左右のチャネルからギターが攻め立てる。
最後は、ヴァイオリン、サックスによる最後のテーマが朗々と奏でられる。
こういう文脈でメロトロンが用いられるのも珍しいのでは。
ここまで LP の A 面は、一つのコンセプトにしたがった連作というべき内容のようだ。
6 曲目の小品「Scacco Matto(チェス狂)」(00:57)
一瞬の中にハイテンションの演奏を叩き込んだ佳曲。
大曲の一部を取り出したような完成度を持つ。
7 曲目「Farenheit(華氏)」(1:15)
一つのテーマをピアノ、クラリネット、ヴァイオリン、サックス、シンセサイザーの順で奏でてゆく小曲。
メランコリックだが豊かな響きをもつテーマがみごとな存在感を示し、一分あまりでしっかりとしたイメージを作ってゆく。
次第に楽器が増えることによる劇的効果もあり。
テーマがいいだけにもう少し聴きたかった。
8 曲目「Articolazioni(関節)」(13:51)
シリアスにしてヘヴィなオムニバス風のシンフォニック・ジャズロック。
フュージョンだけに収まらない濃厚なロマンチシズムと構築性を誇る大作である。
ヴァイオリン、サックスらによるレガートなテーマはそのままに、シンセサイザー、メロトロンを主としたキーボードが活躍を見せ、より劇的な展開を見せてゆく。
リズムの変化も大胆だ。
それどころか、くるくると変化する曲調をリードするのが、ドラムであるようにすら聴こえる。
中盤は、クールなヴォーカルを狂言回しに、ヘヴィ・ロックとフュージョンの混ざったような独特のスリリングな演奏が続いてゆく。ギターやベースのヘヴィな演奏もカッコいいが、ドラミングも圧巻だ。
謎めいたメロトロン・フルートをきっかけに、テンポ・アップした超絶演奏とゆったりとした演奏を交互に配して、緊張感を高めてゆく。
メロトロン・ストリングス、ヴァイブらが伴奏するヴォーカル・パートには、周りをハイテクニックの応酬のような演奏に取り囲まれているにもかかわらず、いかにもイタリアン・ロックらしいのどかさがある。
メロトロン・ストリングスの渦をヴァイオリンのテーマが切り裂くと、終盤である。
ジャジーでおだやかな演奏は、最後の高まりの前の小休止だろうか。
けだるげなヴォーカルもいい感じだ。
そして最後は、やはりヴァイオリン、管楽器のユニゾンによるテーマを堂々と支えてゆく演奏となるのだが、最後の最後ではアコースティック・ギターが演奏をリラックスさせ、鮮やかなポップ・センスを振りまきながら終わってゆく。
1 曲目と同じく多面的な魅力にあふれ、P.F.M の作品にも匹敵するイタリアン・ロックの大傑作といっていい。
9 曲目「Tilt」
コンクレート・ミュージック風のアルバム・エンディング。1 曲目のテーマも変調したヴァイオリンにて再現。
イタリアン・ポップスの伝統とジャズロックの技巧が一体となって、シンフォニックなサウンドを生み出している大傑作。
ヴァイオリンのリードするアンサンブルには、えもいわれぬ美しい光沢がある。
そして、ジャジーでおだやかなムードをぶち破るように、ヘヴィ・ロックの顔をのぞかせるギターとキーボードのプレイも魅力的だ。しかし、切れ味鋭くクールな演奏という第一印象は、音に込められたみずみずしい情感に気づくにしたがい次第に変化する。
南欧の風をたっぷりはらんだジャズロックは、全ての旋律に豊かな歌がある。
テクニックで圧倒するような強烈なインパクトをもつ演奏というのは確かにあるのだが、本作のもつ衝撃は、そういうものとも若干異なる。
その違いとは、奔放ながらも歌を活かすことを一義としたアンサンブルとサウンド・メイキングの結果として、メロディに浮かび上がってくる芳しい詩情だろう。
作風こそ多彩だが、それぞれの曲はごくストレートでシンプルといっていいほどであり、この手の音楽にありがちなすさまじいまでの複雑な構築性はない。
それでも、テーマと奔放なソロからは若々しく爽やかな歌心が立ち昇ってくるのだ。
ソロを支えるおだやかなメロトロンの調べや、アコースティック・ピアノ、管楽器のテーマに込められた詩情にいつまでも抱かれていたくなる、そんな魅力をもつ作品なのだ。
特筆すべきはやはりオープニング・ナンバーだろう。
まぎれもない傑作である。
続いてシンフォニックな 2 曲目。
7 曲目の何気ないデュオも美しい。
そしてテクニカルなアンサンブルの奏でるテーマをエキゾチックなヴォーカルやキーボードで彩ったドラマチックな 8 曲目の大作もいい。
38 分弱とは思えない内容の濃さである。
月並みな表現だが、シンフォニック・ジャズロックの決定盤であり、イタリアン・ロック屈指の作品の一つ。
(KICP 2838)
| Furio Chirico | drums, percussion |
| Beppe Crovella | ac. & el.piano, synthesizer ARP, Mellotron, Hammond |
| Marco Gallesi | bass |
| Gigi Venegoni | guitar, synthesizer ARP |
| Giovanni Vigliar | violin, percussion, vocals |
| Arturo Vitale | soprano & baritone sax, clarinet, bass clarinet, clavinet, vibraphone, vocals |
| Gaza Gianfranco | vocals |
75 年発表の第二作「Giro Di Valzer Per Domani(明日へのワルツ)」。
サウンドは前作とほぼ同じだが、スピーディなアンサンブルとソロを強調してソウルフルなヴォーカルも取り入るなど、楽曲、演奏スタイルは若干変化した。
全体にシンフォニックな広がりよりも、ジャジーでタイトなイメージが強まっている。
メロディアスでつややかなサウンドなのだが、腕達者の集団だけあって、ドラムスを筆頭に各楽器の主張はすさまじい。
流麗なユニゾンを活かしたテーマやソフト・タッチのエレピなどの涼感とともに、メインストリーム・フュージョン色も強まったようだ。
1 曲目「Valzer Per Domani(Walz For Tomorrow)」(2:17)。
ピアノが刻むシンコペーションもスイングするエレガントなワルツ。
イントロダクションはうっとりするほど優雅なピアノである。
ギターとヴァイオリンによるふくよかなテーマを、マイナーでメランコリックなヴァイオリン・デュオが切り返し、再びメジャーでおだやかなヴァイオリン、ギターのデュオへと進む。
管楽器は、さりげないオブリガートでバックアップ。
キーボードも、ピアノからチェンバロに切りかえるなど小粋である。
ドラムスはすでに全開だが、不思議と優美な流れを損なわない。
ロマンティックな佳曲。
2 曲目「Mirafiori」(6:00)。
テーマ・アンド・ソロという明確な構成から成るジャズロック・インストゥルメンタル。
ギター、ヴァイオリンにユニゾンによるによるレガートなテーマを軸に、エレクトリック・ヴァイオリン、ギター、サックスら音色を活かした迫真のプレイが連続する。
サックス・ソロの手前で一回急ブレーキをかけて、ややフリーでスペイシーな表情も見せる。
そしてドラムスは、最初から最後まで表情豊かな超絶プレイを続ける。
エレピはバッキングに徹す。
前曲とは対照的に一直線に進む姿が痛快だ。
このグループらしさの出たオーソドックスな作品。
3 曲目「Saper Sentire(To know To feel)」(4:45)。
ファンキーで熱っぽいラテン・ロック。
ソウルフルながらもクールな表情のヴォーカルはさすがに本職である。
位相系のエフェクトを使ったクラヴィネットが特徴的。
ギターはバッキング、間奏のソロ、ともに技巧的にしてセンスある個性的なプレイ。
ロックっぽい骨がある魅力的な演奏であり、凡百のフュージョン・ギタリストではないことを再認識。
珍しくタメを効かせたドラムスがカッコいい。
抑えるところがあると暴走気味のフィルも活きてくる。
グルーヴィな佳作である。
4 曲目「Nove Lune Prima(Nine Moon Before)」(00:53)。
サックスがモダン・ジャズ調のブローでテーマを刻みつける序曲。
管楽器とリズム・セクションだけの演奏であり、ドラムスは雷鳴のようにロールしっぱなし。
サックスとドラムスが全体を引きずりまわすようなイメージだ。
5 曲目「Da Nord A Sud(From North To South)」(5:17)
ミステリアスな響きのあるジャズロック・インストゥルメンタル。
テーマ・ソロではなく繰り返し主体のアンサンブルが翳りのある色合いを醸し出している。
サステインの強いメロディアスな上声部に対しベースやギターがヘヴィなリフとアルペジオで、またエレピが暗いコード感で対抗し全体を重々しい演奏にしている。
ヴァイオリンと管楽器によるアンサンブルも緊迫感を高める方向に働いている。
2 曲目と好対照をなす深みのある演奏だ。
全体に抑え目の演奏の中、手数多くロールを駆使するドラムはここでも圧巻のプレイが続く。
6 曲目「Nove Lune Dopo(Nine Moon After)」(1:08)
4 曲目の別楽器による再現。
美しいテーマである。
7 曲目「Mescal」(2:01)
スリリングなギターにヴァイオリンが絡む疾走感あふれるジャズロック・ナンバー。
前曲で垂れ込めた暗雲を払いのけるような躍動感のある演奏だ。
バッキングにも重量感がある。
ハモンド・オルガンの音色が印象的。
8 曲目「Mescalero」(00:37)
7、8 曲目はどうやらつながっているようだ。
こちらはいきなりクライマックスの超絶ユニゾン連発大会。
9 曲目「Dimensione Terra(Earth Dimension)」(1:33)
リフ、テーマ一発のスリリングで小粋な小品。
それぞれがすごくよいだけにもう少し長いとうれしかった。
リフを経てテーマを歌い出すところの心地よさはやはり絶品。
10 曲目「Aria Pesante(Heavy Air)」(3:57)
アーバンなフュージョン風ポップス。
ソプラノ・バリトン両サックスとヴォーカルをフィーチュアしつつ、ピアノ、ベース、ギターによるリズムの歯切れよさも印象的。
終盤の静かな盛り上がりがいい。
11 曲目「Consapevolezza Parte 1(Knowledge Part 1)」(3:25)
ギターが主役の落ちついたジャズロック・ナンバー。
こんなにいい音ならヴァイオリンに負けずもっと弾いて欲しい。
最後のユニゾンはいかにもこのグループらしい音。
12 曲目「Sagra(Festival)」(3:06)
緊迫感あふれるジャズロック・ナンバー。
煽り立てるような緩急の落差の中に強い生命感が躍動する。
RETURN TO FOREVER や BRAND X に通じるテクニカル・アンサンブル。
痛快。
13 曲目「Consapevolezza Parte 2(Knowledge Part 2)」(1:15)
Parte 1 はギターが主役だったが今度はヴァイオリンが主役。
短いが柔らかな音色のヴァイオリンがテーマを優美に奏でる。
14 曲目「Rinuncia(Renunciation)」(2:52)
驚きのイタリア語ヴォーカルによるウエスト・コースト・ロック。
70 年代前半のイタリアン・ロックの濃厚な味わいに一陣の涼風が吹く。
ギターはリラックスしたプレイである。
ドラムも大活躍。
普通のロックもうまいのよという見本。
15 曲目「Marilyn」(2:45)
ピアノ・ソロをプロローグとエピローグに配しメインにサックス、エレピ、ドラムのアンサンブルをすえた作品。
ピアノはごく短いが絶品。
中間のアンサンブルはドラムがひたすら叩き捲くる脇でサックスとエレピがリラックスした演奏を見せる。
ドラムがなければ美しい小品。
ひょっとするとドラム・ソロをすこしお化粧した曲なのかもしれない。
16 曲目「Terminal」(2:21)
しなやかなテーマをもつ小品。
ヴァイオリンとギターのユニゾンはたおやかなメロディに弾性を与えており、えもいわれぬ味わいをもつ。
やはりこのヴァイオリンの存在がこのグループの魅力の大きな部分を占めていることを再認識。
素直にメロディと音の響きを味わえるフュージョン小品である。
ドラムは少し控えめか。
いわゆるジャズロックから軽めのフュージョン、歌ものまでさまざまな作品を詰め込んだアルバム。
短い曲も多いのでヴォリューム感はさほどでないが、一曲のテンションの高さと詰め込まれた音の量はかなりのものだ。
特にハイテクで突っ走るショート・ナンバーが強烈。
フュージョン風のリラックスした曲でもメロディに身を任せていられる時間は短く、すぐに壮絶な展開に翻弄されるか、次の曲の超絶ユニゾンにぶちあたることになる。
爽やかさを感じさせる音にもかかわらず、ハイ・テクニックなモチーフを次々に繰り出すことによって独特の緊張感が生まれている。
エレピやピアノによる情感豊かなプレイの味わいはほぼ一作目と同じなので、よけいに他の面が目立ってくる。
やはり、どちらかといえばハイパー・テクニック志向へと重心が移ったのではないだろうか。
目の醒めるようなメロディは少ないものの、全体的な聴き応えは一作目に劣らない。
テーマで前後をはさむような組曲風の構成を散りばめるところも面白い。
やはり傑作だろう。
(VM 005)
| Claudio Montafia | clavinet on 1, piano on 1, flute on 1,4,5(solo),6, guitar on 3,9,10 |
| Gianni Cinti | soprano sax on 1,4,10 |
| Marco Gallesi | bass on 3,4,5,6,7,9,10, fletless bass on 1,2,8 |
| Giorgio Diaferia | drums, percussion |
| Marco Cimino | piano on 2,6,7, Arp 2600 on 2,7, cello on 3,9,10, flute on 5,8, voice on 7 |
| Marco Astarita | percussion on 2,5,6,7,8 |
| Arturo Vitale | tenor saxon 2, soprano sax on 2,3,6,7,9, vibraphone on 2 |
| Giovanni Vigliar | violin on 3 |
| Aldo Rindone | fender rhodes on 3,10, piano on 4,5,8, mini moog on 5,6,8,9, electric piano on 9, Arp 2600 on 10 |
| Gigi Venegoni | guitar on 6 |
76 年発表のアルバム「Vicolo」。
脱退したヴェネゴーニら、ARTI の主要メンバーが集結した新グループ「ESAGONO」の唯一作。
このメンバーが、そのまま 79 年の再編へと向かう。
サウンドは、サックス、フルート、ヴァイオリンをフィーチュアした ARTI の延長上のもの。
ほのかにエキゾチックなメロディを、水際を渡る風のように涼しげになめらかに綴ってゆく、あのスタイルだ。
ヴァイブなどパーカッションも、要所で用いられている。
ファンキーなフュージョン調も見せるのだが、それ以上にロマンティックかつスリリングなアンサンブルに酔うことができる。
ギターは抑えられ、テーマは主としてフルート、サックスらが中心となる。
作曲は一部以外はすべてマルコ・チミノ。
タイトル・ナンバーは再編 ARTI の作品「Quinto Stato」にも収録された。クレジット上の最終曲 10 曲目はタイトル・ナンバーのエピローグ。
ややチープな製作であることを除けば、かなりの出来映えのジャズロック・アルバムといえる。
「Five To Four」(4:37)5拍子のテーマがキャッチーなファンキー・フュージョン。
サックスのテーマをリズミカルなクラヴィネットが支える。
やや「Raindances」期の CAMEL を思わせるところもあり。
録音のせいかエフェクトのせいかサックスの音がにじむ。
「Serpento Piumato」(4:37)ソプラノ・サックスのつややかな響きはまさしく ARTI のもの。
「Dedalo E Icaro」(5:32)ヴァイオリン、ギター、シンセサイザーをフィーチュアして作品。初めてエレキギターが登場する。後半ヴァイオリンとともに大活躍するフルートがなぜかクレジットにない。
「Diatomea」(6:40)弦楽カルテット入り。
「Arena」(5:45)ディアフィリア作曲。
「Araba Fenice」(8:24)ガレシとチミノ共作。
「Maya」(4:13)
「Niño」(4:15)ディアフィリア作曲。
「Vicolo」(4:06)ガレシとモンタフィア共作。
「Anaconda」
(ARTIS 9011)
| Max Aimone | drums, gongs |
| Gigi Venegoni | bass, guitar, percussion, vibraphone, piccolo, steel drums, voice |
| Pietro Pirelli | percussion, symbals, conga, vibraphone |
| Ciro Buttari | percussion, piano, sitar, voice, drums |
| Luca Francesconi | electric piano |
| Ludovico Einaudi | electric piano, clavinet |
| Claudio Pascoli | soprano sax |
| Maurizio Gianotti | tenor sax |
| Roberto Possenaini | bass |
| Claudio Montabin | flute |
| Francesco Revelli | flute |
| Artuzo Romano | flute |
| A.R.P 2600 | ARP synth |
77 年発表のアルバム「Rumore Rosso」。
ARTI を脱退したヴェネゴーニが結成した新ユニット「VENEGONI & Co.」の第一作。
グループというよりは、数多くのミュージシャンを巻き込んだレコーディング・ユニットと思われる。
内容は、民族楽器、パーカッション、アコースティック・ギターを多用した、エキゾチックでライトなジャズロック。
キャッチーなテーマを巡り、さまざまな音が散りばめられた、かなりぜいたくなパフォーマンスである。
中心となっている楽器の脇にも、キーボードやパーカッションらの音がさりげなく配されて、豊かな響きを生んでいる。
全体に演奏はリズミカルで軽快であり(ドラマーはかなりのテクニシャン)、ポリリズミックな変拍子での進行すら小気味よさと人懐こさが先行する。
ARTI の作品のアレンジや、デメトリオ・ストラトスばりのヴォイス・パフォーマンスもあり。
この時期のメインストリームの音を意識しつつ、独自性も織り込んだジャズロックの佳作でしょう。
(CRAMPS 522 653-2)
| Marco Astarita | percussion |
| Giovanni Vigliar | violin |
| Gigi Venegoni | guitar |
| Marco Cimino | cello |
79 年発表のアルバム「Sarabanda」。
ヴェネゴーニの新ユニット「VENEGONI & Co.」の第二作。
内容は、パーカッション、アコースティック・ギターを多用し、シンセサイザーで的確にアクセントしたジャズロック。
民謡風のヴォーカルも用いたエキゾチックな民族舞踏音楽の密度を上げて加速し、なおかつメロディアスで叙情的なシーンも現れる、個性的な音楽である。
スリーヴ内の写真にも、数多くの民族楽器らしきものが並んでいる。
民族ものというとリズムに重きをおいた作風という印象があるが、本作はリズミカルな面と「Tilt」で見せた歌心あるメロディが絶妙のブレンドを見せている。
また、同時期の P.F.M と同じく、英米の影響を消化した後に再び自らの足元を見直して作り上げた音楽という見方もできそうだ。
ソフトにして芯もある豊麗なジャズロックである。
「Mezzogiorno」(4:45)ムニエラ風のリズムによるアップテンポの楽しげな作品。
ギター、キーボードが連携して螺旋を巡るように登ってゆくテーマがいい。
P.F.M の「Celebration」を思わせるゴキゲンなナンバーだ。
「Opa」(9:08)
「Balon」(5:16)
「Sarabanda」(18:38)
(CRAMPS 5205 504 / EDEL 0136562CRA)
| Furio Chirico | drums, percussion |
| Marco Cimino | keyboards |
| Marco Gallesi | bass |
| Claudio Montafia | guitar |
| Gigi Venegoni | guitar |
| Rudy Passuello | vocals |
| Arturo Vitale | sax, clarinetto, vibraphone |
再編後の 79 年発表の第三作「Quinto Stato」。
開巻劈頭パンチのあるヴォーカルが唸り始めてビックリ。
実は第二作から三年の間にグループは解散状態にあり、本作は新メンバーを迎えた再結成作ということになる。
キーボードは、ベッペ・クロヴェラから ERRATA CORRIGE 出身のマルコ・チミノに交代、ジジ・ヴィネゴーニも参加しているが、オープニング一曲で弾いているのみであり、正ギタリストの座はクラウディオ・モンタフィアヘ譲っている。
モンタフィアは、作曲も含め完全にヴィネゴーニの役割を引き継いでいる。
ヴォーカリストとして、ルディ・パッスエロも新加入。
これらから、新生グループはフリオ・キリコを中心とした編成といえるだろう。
サウンドは、前作のフュージョン路線を踏襲しており、さらにリラックスした雰囲気になっている。
イタリアン・エキゾチズムともいうべき特徴は、インストゥルメンタルよりもヴォーカル・ナンバーに集約されたようだ。
演奏面では、キーボードの比重が上がり音の厚みが増したものの、ヴァイオリンとギターによるスリリングなアンサンブルの不在が強く意識される。
またキリコはスタイルを変えており、以前ほど神経症的に細かいロールは見せない。
全体に、第一作の頃のカラーが薄まっているといえる。
技巧的にしてバランスのとれたフュージョン・グループへと変貌した、といっていいだろう。
こうなると独自色をどうだすかがポイントだが、どうやらそれが存在感抜群のヴォーカル・ナンバーらしい。
確かに、エキゾチックな個性を一手にひきうけたダミ声ヴォーカルには、70 年代前半のイタリアン・ロックを思わせるエネルギーが感じられる。
本作の後、グループはキリコを中心としたプロジェクトと化す。
1 曲目「Quinto Stato」
2 曲目「Vicolo」
3 曲目「Arterio」
4 曲目「Torino Nella Mente」
5 曲目「Mercato」
6 曲目「D'eesay」
7 曲目「Arti」
8 曲目「Sui Tetti」
地中海のリゾートを思わせるオシャレで涼しげな演奏と、泥臭いイタリアをアピールする歌ものが交互に現れる個性的なフュージョン・アルバム。
初めギョッとさせられるが、次第にニヤリとさせられる内容である。
音楽的なリーダーシップは新ギタリストへ移り、肩の力の抜けるとともにいわゆる普通のフュージョンとしての風合いが強まった。
またこの人のギター、フルートの独壇場も多い。
典型的なフュージョンとして見ても、シンセサイザーによる管弦のようなアコースティック・サウンドが美しいし、フレットレス・ベースとドラムの活躍も見逃せない。
そして、個性的なヴォーカル存在とどうしても突出してしまうドラムスのプレイが典型的なサウンドにいいアクセントとして機能している。
個人的にはもう少し曲展開が豊富であってほしかった。
(CRAMPS 7243 8 57433 2 0)
| Furio Chirico | drums, percussion |
| Beppe Crovella | Wurlitzer electric piano, Farfisa & Welson organ |
| Marco Gallesi | bass |
| Gigi Venegoni | guitar |
| Giovanni Vigliar | violin, vocals |
| Arturo Vitale | soprano sax, vibraphone |
92 年発表のライヴ・アルバム「arti+mestieri LIVE」。
74 年トリノでのライヴ録音。
曲目は、未発表曲一曲以外はすべて第一作から。
音質は海賊盤レベルだが、尋常ならざるテクニックをもつ演奏家による、迫力満点のパフォーマンスが押し寄せるライヴを疑似体験するには、十分ではないだろうか。
疾走感にあふれつつも、荒々しさよりも豊かに澄んだ歌心が感じられるところがすごい。
圧巻は、壮絶なインプロヴィゼーションと端正なテーマが華麗なドラマを成す「Gravita 9.81」でしょう。
また、オリジナル・アルバム未収録の「Comin' Here To Get You」は、YES 風のヴォーカルと CRIMSON 的叙情性をもち MAHAVISHNU ORCHESTRA にもつながるプログレ大傑作。
全体にメロディアスなヴァイオリンの存在感が大きい。
本作の内容は、2003 年発表の「Live / 1974-2000」にリマスター、ボーナス追加で再収録されています。(ジャケットは右側)
2000 年のライヴでは、新作、第一作、第二作を中心に演奏されており、特に、旧作品のアグレッシヴな演奏がすばらしい。
「Strips」(3:44)ミドル・テンポとギター、メロトロンがきわめて初期 CRIMSON に近いニュアンスをもつ。ヴォーカルは英語。
「Corrosione」(1:28)何気ないタム回しに異常な迫力あり。
「Positivo/Negativo」(3:14)ヴァイオリン、ヴァイブによる凛としたテーマから、一気呵成の豪快な演奏へ。
ギター・ソロはライヴ・オリジナル。
ここまではほぼ一作目と同じ展開である。ジャズロックというよりシンフォニックなプログレッシヴ・ロックという面を改めて感じる。(後年発表される初期作品集で、その事実が明らかになる)
「Comin' Here To Get You」(6:24)鋭角的な演奏とサビでぶわっと高まるメロトロンがいかにも英国プログレに通じる佳作。
ヴォーカルは明らかにジョン・アンダーソンを意識。
残念ながらフェード・アウト。
「Articolazioni」(13:30)緩急自在のアンサンブルによるオムニバス・テクニカル・チューン。
気まぐれ風のようでいて全編にしっかり芯が通っている。
意外なことに、卓越した技巧で奮い立たせてもたせているという印象もない。(ただしドラムスはすさまじいですが)
やはりメロディの魅力が大きいのだろう。
この曲の伸びやかなエンディング、大好きです。
「In Cammino」(4:56)スタジオ盤そのものの序盤にびっくり。
「Gravita 9.81」(7:29)ケレン味たっぷりのドラミングが味わえる大傑作。スリリングにして豊麗。
(VM 018)