ANEKDOTEN

  スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・グループ「ANEKDOTEN」。 90 年結成。 2015 年現在オリジナル・アルバム六枚、ライヴ作品四枚。 他にもコンピレーション、フェスティヴァルの録音あり。 KING CRIMSON 流ヘヴィ・ロック復興の星。

 Until All The Ghosts Are Gone

 
Nicklas Barker guitars, Mellotron, organ, vibes, voice
Anna Sofi Dahlberg Mellotron, organ, Rhodes
Jan Erik Liljeström bass, voice
Peter Nordins drums, cymbals, vibes, percussion
guest:
Per Wiberg organ on 1
Theo Travis flute on 3,5
Marty Wilson-Piper guitars on 5
Gustav Nygen sax on 6

  2015 年発表の作品「Until All The Ghosts Are Gone」。 2009 年にベスト・アルバムを発表したがオリジナル作品としては実に八年ぶりとなった。 作風は変わらず。 ささくれたギターとベースが轟々と咆哮し、感傷と運命的な悲劇が交差するメロトロン・ロックである。 ヴァイヴやフルートといった小物のアクセントも活きている。 ただし、若干ながらコンテンポラリーなギター・ロックとしての感触が現れ隠れする。 それは、轟音の渦にちぎれちぎれになりつつも荒々しさの中に確かにとらえられた身も世もないほどの切なさとは一線画す、冷徹なる現実認識である。 Fender Rhodes を使ってもカーディガンズにならなかったところがエライと思うが、同時代性の縛りというのは確かにありそうだ。 ここまで二十年、衝動を「スタイル」に依拠して送り出すことに耐えられているのは、セミプロ・バンドだからこそできる技なのだろう。 と、いろいろと考えさせておいて、最終曲ではサックスの響きとともに地鳴りが起こり、この音から見えるべき風景を叩きつけてくるから困る。 くれぐれも最終作にならないことを祈りたい。 ヴォーカルは英語。

  「Shooting Star」(10:10)
  「Get Out Alive」(7:32)
  「If It All Comes Down To You」(5:52)
  「Writing On The Wall」(9:03)
  「Until All The Ghosts Are Gone」(5:07)
  「Our Days Are Numbered」(8:36)

(VIRTA 006)

 Vemod

 
Nicklas Berg guitar, keyboards, voice
Peter Nordin percussions
Jan Erik Liljestrom bass, voice
Anna Sofi Dahlberg cello, mellotron, voice

  93 年発表の第一作「Vemod」。 極北の大地から生まれ出た KING CRIMSON の嫡子であり、英国流のラウドなギター・ロックのきわめて叙情的な亜種である。 全編スタイリッシュにして朴訥であり、現代の脆弱さと古代の蛮力が自然に交わった、狂おしい絶唱というべき表現を見せる。 世紀末の奇跡といっていいヘヴィ・ロックの金字塔である。
  「OK Computer」を世に問うた RADIOHEAD がこの作品を聴いていたかどうか、興味深いです。

冒頭「Karelia」のイントロからのチェロ、そして古の無声映画のオーケストラを思わせるメロトロンが織り上げる叙情とヘヴィなギター/ベースによる暴力的リフの振幅に、体が震えないだろうか。 鋭く牙を剥くメタリックなリフ、あらゆるものを波打たせるドライヴ感、チェロとギターの交歓が孕む狂気と悲哀。 チェロが奏でる寂漠たる旋律と、唸りを上げるベースが体に突き刺ささり、重苦しいリフを経て、心に残るのは消え入るように去るフィナーレ。 吹き荒れる嵐のような轟音が、実は、哀しい旋律を奏でていることに気がつく。 荒々しさとは裏腹に、繊細な筆致を駆使して描く暗黒絵巻であり、緻密な演出が冴える。 迸る怒りと心の奥底に秘めた哀しみを、メタリックにしてアコースティックなアンサンブルが鮮やかに表現する。 名曲。

  「The Old Man & Sea」 冒頭から、リスナーを圧倒するのは、殴りつけるように暴力的なギター、ベース、ドラムスのユニゾン・リフレイン。 リズムが刻まれるとともに、ギター、ベースのリフレインは次第におさまり、物悲しいチェロと透明感あるピアノをしたがえてか細い歌が始まる。 それでも、冒頭の激しいギターの嵐の記憶が、次にいつあの嵐が襲うのかという緊張感を胃の底に残す。 予測通り、ギター・ソロは狂気を秘めた悲鳴のように捻じれ、ベースが唸りを上げる。 ギターのパワー・コードに導かれ、青白く冷たくハードなアンサンブルは凄まじい音圧で迫る。 悲痛なコーラス。 アコースティックなアルペジオが一瞬響き渡るのだが、再びヘヴィなアンサンブルが轟々と唸りを上げる。 ギターはあたかもヴォーカルを呼び覚ますかのように、哀しげなロングトーンで歌うのだ。 消え入る歌が最後を飾り、轟々たる演奏の彼方に、波頭は白く海は荒れ、垂れ込めた灰色の空がどこまでも続くのだ。 霧笛が鳴る。 激情と悲哀を往復するような破壊的かつメタリックなアンサンブルと、情感あふれるメロディが入り交じった作品。 最後の一音まで緊張が続く。

  「Where Solitude Remains」緊張感をいやがうえにも高めるヘヴィ・メタリックなベース・リフ。 そしてギターとメロトロンの重厚な響きが重なる。 静寂を取り戻して流れ出る歌とオルガンは、あまりにか細く、吹けば飛ぶようだ。 緊張感を持続するシンバルの裏で爪を研ぎ、隙あらば襲いかからんと身構えるギター。 アンサンブルは 8 分の 6 拍子による強烈な演奏へと変化。 ベースのリフに支えられたギターは、静かに獲物を貪る獣を思い起こさせる。 あまりに不気味だ。 オルガンもミステリアスである。 再び狂乱するギター、ベースのコンビネーション。 神経をすり減らせるシンバルのビートがヴォーカルを導く。 凄まじいギター・リフにしがみつくヴォーカル。 静かな演奏でもメロディを食い尽くすような獰猛さがある。 メロディックなギター・ソロがメロトロンの響きにおおわれると、アンサンブルは抗うように暴れ、そして終わる。 センチメンタルな歌詞とは裏腹に、クールなメロディと情感を蹴散らすような現代的な演奏が、無機的なイメージを強調する。 眼に見える起伏はあるのだが、あたかも全体の統率が崩壊してしまったような印象を与える、究極のヘヴィ・メタリック・チューン。 本作においては、即興性が高い作品かもしれない。

  「Thought In Absence」 ギターによる幻想的なアルペジオと時間をもぎ取るようなパーカッションが重なるオープニング。 メロトロンとチェロのもの寂しい旋律が浮かび上がる。 エレピとギターによる最後の交歓が哀れである。 静けさとセンチメンタリスムに満ちた叙情的なヴォーカル・ナンバー。 「My Time Has Come Now And This Bird Has Flown」という歌詞が象徴的だ。

  「The Flow」 静寂は、フェード・インする暴力的なギターに引き裂かれ、一気に唸りを上げる演奏が肉迫する。 メロトロンとギターを中心とするアンサンブルが圧倒的な力で迫り緊張を高める。 張り詰めたヴォーカルと唸りを上げるベース。 そしてオブリガートする哀しげなチェロ。 メロトロンとギターが圧倒的な響きで流れてゆく。 8 分の 6 拍子に変化した後ら、メタリックなギター・リフとチェロの激しいインプロヴィゼーションが無秩序なパワーを示し、続くギターのフレーズも神経がちぎれ飛ぶような狂気をはらむ。 異常なテンションのまま演奏は続くのだが、唐突に消える。 秩序をあえて放棄し、破壊的な狂気に身を任せた作品。 ヴォーカル伴奏にややアコースティックな面も見られるが、総体としては全楽器がアグレッシヴでハイ・テンションな演奏を繰り広げており、「恐怖の」という形容詞が相応しい。

  「Longing」 チェロの反復音が刻む旋律とアコースティック・ギターの和音によるイントロダクション。 ギターの調べは哀愁に満ち、チェロの響きがもの寂しさを倍化する。 メロトロンは厳かな重々しさを加えるのだが、ふと気付けば、寂寥感もさらに高まっている。 葬送曲のイメージ。 シンプルなトリオが、なぜにここまで哀しみを演出できるのか。 夕暮れに紐解いた古い書物の色褪せた頁に、謎めいた符号で綴られた楽譜があり、その楽譜を演奏したのが本曲である、そういう幻想が似合う。 トラッド風味あふれるアコースティック・アンサンブル。 哀しくも美しい旋律と重厚なアンサンブルが味わい深い。 魂の奥深くをかきたてて古い悲しみを湧き上らせるような演奏だ。

  「Wheel」 轟々と迸るギター、ベース、ドラムス。 重厚でメタリックなアンサンブルに圧倒されるオープニングだ。 ギターによるリフレインの残響が導く怪奇と不安に満ちたヴァースは、じつはシンプルである。しかし、なぜか耳に残るのだ。 そして、狂乱するチェロとヘヴィなギターのリフレイン。 メカニカルなギター・フレーズが静かに、不気味に繰り返され、虚空に消える。 やがて、ベースがヘヴィなリフレインを導く。 トランペットによる素朴な哀愁に満ちた旋律が、目を覚ますように走る。 ドラミングが力を取り戻し、次第にメロトロンのリードする演奏のヴォリュームが上がってゆく。 再び、幽鬼のようなヴォーカルから狂気のチェロとギターのユニゾンが次第に広まり、引きつるような叫びを上げ、強烈なリフとトランペット、メロトロンが響く。 悪夢のようなアンサンブルは、イコライザで捻じ曲げられた残響を残しつつ、去ってゆく。 いきなりクライマックスを迎えたような圧倒的なパワーの演奏を中心に、幽鬼のようなヴォーカル・パートと引きつるように神経質なギターのリフレイン、刃物を思わせるトランペットなどを配した作品。 悪夢と狂気の世界で一人あがくような印象を与える。 フォーク風ながら怪奇趣味のヴォーカル・メロディとトランペットの透徹な響きが耳に残る。

  「Sad Rain」圧倒的なメロトロンの響きで始まるロック・シンフォニー。 重厚かつ悲劇的な旋律。 ヴォーカルはメロトロンとアコースティック・ギターを背景に靜かにしかし熱っぽく歌う。 ギターを中心としたアンサンブルにメロトロンが加わると重厚にして叙情的な響きが生まれ、フルートの音色が強く哀感をかきたてる。 重なりあうメロトロンから壮大な決めのメロディへと飛び込み、ギターの轟音を背景にヴォーカルが帰ってくる。 再びメロトロンをしたがえたヴォーカルが続き、歌が終わってもメロトロンの演奏は続く。 ベースが唸りドラムスが激しく叩きはじめ、メロトロンの音量も上がり演奏は緊張感が一気に高まる。 弦楽風のメロトロンを伴奏に主旋律もメロトロンが奏で壮大な音絵巻が繰り広げられるのだ。 最後はアコースティック・ギターのアルペジオに吸い込まれて消えてゆく。 70 年代 KING CRIMSON の美学をそのまま取り入れ消化した、「Epitaph」や「In The Court Of The Crimson King」と並べるべき正統シンフォニック・ロック。 叙情にあふれながらも厳かで端正である。 巧みなドラミングが特に印象的。


(ARC-1001)

 Nucleus

 
Peter Nordin percussives
Jan Erik Liljestrom bass, voice
Nicklas Berg guitar, rhodes, clavinet, pumporgan, mellotron, voice
Anna Sofi Dahlberg cello, mellotron, voice
guest:
Helena Kallander violin
Tommy Andersson rhodes on 2

  96 年発表の第二作「Nucleus」。 KING CRIMSON 的音楽世界の高度な再現を超えて、ヘヴィで凶暴な音楽性を前面に出した作品。 猛り狂う嵐の中に厳粛にしてメロドラマチックなトーンが貫いた前作と比べると、牙を剥くような猛々しさと別人のような繊細さのレンジを過激に揺れ動く、波瀾に満ちた音楽となる。 メロトロンに象徴されるプログレッシヴ・ロックのイディオムの「縛り」を遮二無二何かを振りほどくようにひた走り、悲鳴のような軋みを上げつつ血を吐く絶叫を迸らせる。 ずばりクランジ、オルタナティヴ・ロック的な苛立ちと孤高と裏腹の開放感がある。 または、「不安定さの美学」といってもいい。 間違いなく現在の音であり、この境地は苦しみ抜いた末の成長の証だろう。 ひょっとすると、不安に満ち、ヒステリックに叫ぶように聴こえる演奏は、新たな地平を見つけた喜びと驚きの歓声なのかもしれない。 叙情的な表現でも、生真面目にトラディショナルな根っこを見せていた前作と比べ、クールで醒めた感覚を見せている。 つまり、青臭いロマンティシズムを抑制し、その結果、「Red」の世界そのもののようにドライで荒々しいスタイルを手中にするとともに、リアルに現代的 な意識を表現に入れ込んでいる。 過去を編集して現在に散りばめたようなポスト・ロック的姿勢もあるようで、プログレという源からたどっても、簡単に何々風といい切れない宙ぶらりんな感じがある。 さりながら、完全な路線変更ではなく、前作のファンにも通用するサウンドであるのも、また確かだ。 苛立つように渦巻く音が、すっと裾を翻すようにメロトロンやチェロに吸い込まれてゆく瞬間に酔わせる手管は、おそらく前作以上だろう。 作り手は最新作こそ最高傑作と思っているだろうが、ファンにとっては理想的な第二作という位置づけになるだろう。 裏切られるのもまた楽し、という感じである。 また、ギター・リフのバリエーションを模索しているようなところもある。

  「Nucleus」(5:08) 大胆にして繊細、自信にあふれつつ不安が迸る、危険な矛盾をそのままエネルギーに変えたようなウルトラ・ヘヴィ・チューン。 冒頭は、緊張に震えるあまり神経が次々と音を立てて千切れてゆくような、恐るべきイメージだ。

  「Harvest」(6:50) 濃密な夜霧によって捻れ歪んでしまったようなエレクトリック・ピアノの麻痺性の響きと物狂おしいチェロの調べが導く狂気の飛沫。 唸りを上げるディストーション・ベース、猛り狂い、その果てに虚脱するギター。 ヴォーカルはヒリヒリとした感受性をむき出したまま業火に身を曝す。 業火の迸りと薄暗い感傷の喚きが止まない拷問のように繰り返される。 詩的な叙情性と抑え切れない狂気の噴出がもつれて一つに融合した傑作。 残響にも詩がある。

  「Book of Hours」(9:58) 暗闇の果てから降りしきる驟雨のようなエレクトリック・ピアノの変拍子反復が次第に空間から力を得て魔術的なメロトロン・ストリングスを呼覚まし、灼熱の混沌の坩堝から切々と弾き語りが浮かび上がってくる。 オクターヴ奏法によるジャズのニュアンス。 重厚なアルペジオと衒いなく感傷を迸らすメロトロン、硬く弾けるフロアタム回しは本家直伝。 気まぐれな即興風のブリッジを連ねた呪術的サイケデック・チューン。

  「Raft」(0.58)ノイズ。ピチカート。

  「Rubankh」(3:07)再び轟音ベースとドラムスが地を揺るがすパンキッシュなヘヴィ・チューン。 つぶやくように奇妙なリフレインはクラヴィネットか。4 拍子から 3 拍子へのチェンジも緊張感を高める。

  「Here」(7:23)足踏みオルガンとチェロの物悲しいハーモニーが支える挽歌風の弾き語りバラード。

  「This Far From The Sky」(8:47)かそけき叙情性と崩落するが如き不安感をない交ぜにした大作。 アヴァンギャルドな表現も噴出し、本アルバムを象徴するような作風である。 メロトロンはフルートもあり。 KING CRIMSON な音ながら、脈絡を破断する展開は VdGG 的、美意識は GENESIS 的。(適当です)

  「In Freedom」(6:27)サロン、ラウンジ風味のあるたおやかなポスト・ロック。 弦楽とヴァイブが効果的。 こういう曲想では虚脱したようなヴォイスが活きる。 アンナさんのハーモニーも。 ギターはほとんどなし。 エンディングのローズ・ピアノが印象的だ。


  「完成されたクローン」のイメージを振り払うための勢いが感じられる佳作。 前作と同系統の音質ながら、様式は抑えられ、より自由に発想した演奏が聴ける。 グランジっぽいサウンドも、彼らの生の現代的な感性が活かされてこそと思えば納得できるし、そもそも今の音として充分通用するワイルドネスやヘヴィネスがある。 KING CRIMSON から一度距離を置いて、伸び伸びと動き出した結果がこの危険で耽美なサウンドだとするならば、まったく文句はない。 突き進んで欲しい。 そういいながらも、「Book Of Hours」や「Here」に涙する私ですが。 つまり、過渡的な内容だが、それがまた応えられないということである。 吠えるギターと、シンプルながら見事な抑揚をつけるリズム・セクションのコンビネーションは完璧である。 荒々しくもストイックなアンサンブルだ。 そして、弦楽器デュオとキーボードのフィーチュアは新機軸であり、効果も抜群である。 メロトロンは、要所でグサッとくるようにしかけられている。

(ARC-1002)

 Live EP

 
Jan Erik Liljestrom bass, voice
Nicklas Berg guitar, mellotron, voice
Peter Nordin percussions, vibraphones
Anna Sofi Dahlberg mellotron, cello, voice

  97 年発表の作品「Live EP」。4 曲入りライヴ EP。96 年地元スウェーデンでの録音。

  「Nucleus」(5:10)第二作より。ヘヴィだが締まった小気味いい演奏。

  「The Flow」(6:04)第一作より。狂気をはらむ凶暴なる演奏。

  「A Way Of Life」(8:13)初出。サイケデリックにして瞑想的な即興風の作品。

  「Karelia」(6:03)第一作より。KING CRIMSON の「Fallen Angel」に通じる凶暴にして繊細な叙情詩。身を焼くようなチェロの調べ、いきり立つファズ・ベース、空ろに泣き叫ぶようなメロトロン・ストリングス。イントロのメロトロンはなし。

(ARC-1035)

 From Within

 
Jan Erik Liljestrom bass, voice
Nicklas Berg guitar, mellotron, wurlitzer, voice
Peter Nordin percussions, vibraphones
Anna Sofi Dahlberg mellotron, piano, rhodes, cello, voice
guest:
Simon Nordberg hammond organ, piano

  99 年発表の第三作「From Within」。 挑発的に、沸き立つような序章が印象的な傑作。 前作より 4 年のインターバルを経て発表された。ゲストは元 LANDBERK のキーボード奏者。 KING CRIMSON 路線完全継承の反動とも、芸風の膨らみとも取れるグランジ、オルタナティヴ系サウンドへの傾斜が見られた第二作、そして次に来たものは何か。 その答えはこうだ、つまり、本作は再び KING CRIMSON、70 年代ロックへの憧憬を自らの自然な表現として取り込んだヘヴィ・ロックの傑作である。 抑制ともサイケデリックな効果のための反復とも取れるシンプルなギターの奏法や、ヴィブラフォン、キーボードの多用など、演奏面の新機軸もあるのだが、何もかもが一体となった切なくも荒々しい演奏のもつ魅力を、自らが意識して十分に使いこなしている印象である。 おそらく、濁流のような轟音の果てにメロトロンの調べが浮き上がれば、他には何も要らないだろう。 ファズ・ベースが牙を剥きライド・シンバルが晩鐘を響かせるようなプレイで切り返すまでもない。 延々と轟々と音が鳴り響いてほしい。 第一作で圧倒的な攻撃力で迫ったアンサンブルは、さらに苛ついた荒々しく無機的なサウンドへと変貌し、そして、その彼方に暗黒とともに垣間見えるのは、ひ弱なまでに剥き出しの感情である。 この変化は、経験による余裕によるものであるとともに、新しいヴィジョンを模索し続ける不断の努力によるのだろう。 ヘヴィ・メタリックかつトラッドでアーシーな感覚から解放されることで、より緩やかでサイケデリック、スペイシー、アナーキーな方向に向かっているのかもしれない。 圧倒的なパワーが地の底から噴き上げる冒頭タイトル・ナンバーから、第一作の作風をさらに鍛えなおしたような第二曲への流れは圧巻。

  「from within
  「kiss of life
  「groundboud
  「hole
  「slow fire
  「firefly
  「the sun absolute
  「for someone

(ARC-1049)

 Gravity

 
Jan Erik Liljestrom bass, voice
Nicklas Berg voice, guitars, mellotron, rhodes, farfisa
Peter Nordin drums, cymbals, vibraphones, mellotron
Anna Sofi Dahlberg mellotron, voice, piano, farfisa, organ

  2003 年発表の作品「Gravity」。 圧倒的に曲が明快になり、ヴォーカルがよくなった第四作。 普通になったというと語弊があるが、普通に演ったら、やっぱり並ではないことが、かえって明らかになった。 轟々と塗り込めたように分厚く鳴り響く弦の音はメロトロンだけになり、その分、轟音に隠されていたフィーリングがきちんと曲になって外に出てきている。 このグループのサウンドにシンプル、メロディアスといったキーワードが似合うようになるとは、まったく想像できなかったが、今、それらの言葉が最も当てはまるように思う。 オルガン、ローズ・ピアノなどキーボードの多用も、力いっぱい振り絞った衝動的表現から、秩序ある作りへの進化を象徴するように感じられる。 前作辺りからうかがえた、淡々とした反復が生み出す独特のサイケデリックな効果も、エレクトロニックなエフェクト含めきわめて自然な演奏として示されている。 もちろん、第一作で確立した、荒ぶる叙情性を KING CRIMSON のサウンドに託したスタイルは、ここでも自信を持って提示されている。 しかし、押し寄せるサウンドに身を任せるだけではなく、ギターのリフとともにフロアへ降りて、うつむきながらステップを踏みたくなる。 今までで一番 KING CRIMSON らしくないが、今までで一番サウンドに頼らず曲のよさで勝負できている作品といえるだろう。 最終曲は、キーボードがメインになった新しい名曲である。 このスリルと序破急の妙、完成度は、VAN DER GRAAF GENERATOR の全盛期に匹敵する。 英米その他のコンテンポラリーなギター・ロック、スペイシーなポスト・ロックとして一線級である。

  「Monolith
  「Richchet
  「The War Is Over」 弾き語り風ながらもグルーヴィな逸品。アコースティック・ギターが冴える。
  「What Should But Did Not DieDOORS のようなオルガンと G.S.Y.B.E のように密やかなアンサンブルが描くヘヴィな幻想バラード。
  「SW4」 今現在、よく耳にするタイプの音。「抜いた」リズムが特徴的。
  「Gravity」 いつもの作風なのだが、どことなくスタイリッシュな感じのする作品。サビのように轟くメロトロンもいいのだが、それよりも、シンプルなリズムを刻むギター・リフがカッコいい。8 ビートが妙に新鮮。
  「The Games We Play」 美しくかそけき弾き語り。スペイシーな音響がいい。
  「Seljak」 こういうイントロはなかった。オルガン、メロトロンがリードする快速チューン。

(VIRTA 004)

 A Time Of Day

 
Peter Nordin drums, cymbals, percussion, vibes
Anna Sofi Dahlberg mellotron, organ, moog, rhodes, cello, piano, voice
Nicklas Barker voice, guitar, mellotron, moog, vibes
Jan Erik Liljestrom voice, bass
guest:
Gunnar Bergsten flute

  2007 年発表の作品「A Time Of Day」。 再来日公演を経て 2 年、久しぶりのはずだがあまりそう感じさせない内容である。 ロマンチシズムのほとばしりをうっすらながらもさまざまに色づけて整理して見せた前作だったが、本作品は、まとまりを見せながらも初期のプログレッシヴ・ロックへの憧憬とロックらしい衝動が強く渦巻いている印象がある。 淡々としたバラードにもアジテーションになり切らなかった思いの丈の熱さがあり、メロトロン・ストリングスも激しく身悶えするように流れる。 ただし、PORCUPINE TREE もそうだったが、沈みっ放し、投げ出しっ放しではない。 なんとか軌道を取り直して、飽くなき歩みを続けている。 昔のフォーク・ソングやフォークロックのようにタフなところがあるし、前作にもあった裏 STEREOLAB のようなポップ・チューンもある。こういう「メロトロン・パンク」のようなスタイルならば、いわゆるエモの伴流としてメインストリームに自然に受け取られても不思議はない。 もっとも、そういうところとは無縁の場所でじっくりといつまでも思いをつづって行ってもらいたいという気持ちもある。 いらつくように吼えるギター・リフにからみつくムーグ・シンセサイザーは新機軸だろう。 個人的にはフルートの起用がとても気に入っている。

  「The Great Unknown」(6:22)
  「30 Pieces」(7:14)
  「King Oblivion」(5:02)
  「A Sky About To Rain」(6:29)
  「Every Step I Take」(3:06)
  「Stardust And Sand」(4:30)
  「In For A Ride」(6:47)
  「Prince Of The Ocean」(5:30)

(VIRTA 005)


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