ATOMIC ROOSTER

  イギリスのハードロック・グループ「ATOMIC ROOSTER」。 69 年 THE CRAZY WORLD OF AUTHR BROWN 出身のヴィンセント・クレインを中心に結成。 メンバー交代と解散、再結成を繰り返しつつ、80 年代終盤まで活動。 89 年クレイン逝去。
  オルガンを軸にクラシックやジャズを取り入れたハードロック。 ラウドでメタリックな HM の元祖的存在。

 Atomic Rooster

 
Vince Crane organ, piano
Nick Graham guitar, bass, vocals
Carl Palmer drums

  70 年発表の第一作「Atomic Rooster」。 後に EL&P へと参加するカール・パーマーがドラムスを叩いていることで有名な作品。 オルガンとノイジーなギターを中心にしたクラシカルかつジャジーなハードロック、もしくはハードなアートロックである。 オープニング・ナンバーのタイトルに明らかなように、BLACK SABBATH と同じく悪魔崇拝的な演出を強調しているようだ。 ヘヴィさよりも、駆け抜けるような疾走感を重視したスタイルは、第二期 DEEP PURPLE に近い。 手数のやたら多いドラムスとオルガンによる派手目のプレイの連続の中で、グラハムのヴォーカルがなかなかの健闘を見せる。

  「Friday The Thirteenth」(3:31) メタリックなリフとともに突っ込んでゆくキャッチーでスピーディなハードロック。 クラシカルな響きを持つオルガンで、これだけハードなサウンドを生み出しているところが新しかったんだろう。 シンプルな展開ながらも、ピリッと引き締まった佳曲だ。 THE NICE と似たアプローチだが、サイケ/モッズ系の THE NICE と比べるとロックンロールのノリ・歯切れよさという点では、こちらに軍配。 追い立てるような性急さが個性。

  「And So To Bed」(4:11) いかにも英国調のフォーキーな翳りあるオルガン・ロック。 メインが 5 拍子という野心的な展開である。 歌メロに VERTIGO (たとえば CRESSIDA など)調のセンチメンタリズムが感じられ、ピアノとともにシャープなサウンドに陰影をつけている。 ヴォーカルの表情、歌唱もノーブルだ。 CAMEL のハードロック版といえなくもない。

  「Broken Wings」(5:46) オープニングとエンディングにブラス・セクションをフィーチュアしたミドル・テンポの悠然たるバラード。 ブラスとオルガンによる雄々しくクラシカルな曲調は COLOSSEUM に通じる。 ソウルフルなヴォーカルとオルガンのやりとりには、独特のストイシズムあり。 ドラムスは、おっかなびっくりのような不思議なプレイ。音の間隔が空くと調子が出ないらしい。 エモーショナルながらも抑えを効かせたヴォーカルは、クリス・ファーロウに担当していただきたかった。 オルガン・ソロも抑えた渋いプレイである。

  「Before Tomorrow」(5:50) スピーディなオルガンとメタリックなギターの応酬をメインに置いた快速 R&B ハードロック。 オルガンにワウワウを使って変化をつけている。 オルガンとギターは互いにソロで弾け、最後までけたたましい激突を繰り返しながらひたすら疾走する。 中盤のエコーを効かせたノイジーなギター・ソロはジミー・ペイジ風。 初めから終わりまで、一貫してハイ・テンションで迫り、ドラムハひたすら刻み、音を入れ込みまくる。 スピード感あふれるインストゥルメンタルだが、やや品がない感じもある。

  「Banstead」(3:33)郷愁あふれるオルガンの響きが胸に迫る、男のバラード。 いわば「A Whiter Shade Of Pale」のハードロック版である。 インスト・パートでは次第に強まる熱気をオルガンが懐深く受けとめる。 バッキングのチェロが効果的。 チンピラ風のヴォーカルはややミスマッチ。

  「S.L.Y」(4:56) ワイルドかつソウルフルなハードロック・チューン。 聴きものはパワフルなヴォーカルを彩るカラフルなオルガンのバッキング、そして集中豪雨のようなドラミング。 オルガン・ソロは、3 連リズムがキース・エマーソンの Rondo を思わせる。 シャープなギターとのかけあいもカッコいい。 軽さと重さの配合が絶妙である。

  「Winter」(6:59) クラシカルかつジャジーな演奏が支えるフォーク・ソング風のバラード。 フルートとピアノをフィーチュアし、物寂しいタッチで冬枯れの並木道のようなモノクロームの世界を提示している。 チェロも用いたクラシカルな響きをもつ演奏は次第に熱気を帯び、ジャジーなグルーヴも生れる。 エンディングは管弦楽も巻き込み、密やかな音なのだがスケールの大きなロマンを感じさせる。 英国ロックらしい名曲である。

  「Decline And Fail」(5:48) 目まぐるしい"鼓笛隊" ドラム・ソロを盛り込んだソウル・ジャズ風味たっぷりのアグレッシヴなオルガン・ロック。 ジャジーでワイルドなハモンド・オルガン、爆発的手数とともにけたたましいロールを放つドラムス、武骨なベースが一体となってハードな演奏を繰り広げる。 ヴォーカルはやや付け足し風だが、ブルーズ色の希薄な鋭角的な音はブラス・ロックに通じるものがある。

  「Play The Game」(4:45)ボーナス・トラック。 オーヴァーダブされたギターとオルガンのユニゾンによるひきずるようなリフが特徴的なハードロック・チューン。 ヴォーカルとタメの効いたラウドな器楽のからみもカッコいい。 後半、ギター・ソロを中心にしたけたたましい演奏でラスト・スパートをかける。


  クラシカルかつジャジーなオルガン、ピアノをフィーチュアしたけたたましく性急なハードロックを中心にさまざまな作風を披露するブリティッシュ・ロック・アルバム。 ワイルドなリフとともに転落するような激しい演奏は、中期の DEEP PURPLE と同じくカッコ悪さとカッコよさの瀬戸際に立ち尽くすスリリングなものだ。 ハードなのだが重みはさほどでなく、スピーディだがキレはさほどでない。 それでも、CRESSIDA のようなアート色の強いオルガン・ロックの香りをたっぷり残したままハードロックへと進んだ作風は、ブリティッシュ・ロック・ファンなら必ず気に入るはずだ。 バラード風の作品ではデリケートな表情をきちんと描いている。 特徴はクレイン、パーマーともにジャズの影響が見られること。 特に、ドラムスは明らかにジャズ風であり、こういう細身の音によるハードロックというのも珍しい。 パワーはないのだが、それを補う手数はすさまじい。 確かにスピーディな演奏にはこのドラムスがうってつけである。 エマーソンがいっしょに演りたがったのがよく分かる。 グラハムのギターも、テクニックはともかく、スケールが大きく破天荒で面白い。 線の細いヴォーカルが、かえってブリティッシュ・ロックらしいデリカシーを生んでいるのも予期せぬ効果だろう。 ブラスやチェロ、フルートなど、細かいアレンジにも気を配っており、楽しめる曲が多い。 デビュー作にしてオルガン・ハードロックという新たなサウンドをぶち上げた好盤といえるだろう。
(CAS 1010 / RR 4135-WZ)

 Death Walks Behind You

 
Vince Crane organ, piano, vocals
John Du Cann guitar, lead vocals
Paul Hammond drums, percussion

  71 年発表の第二作「Death Walks Behind You」。 ドラムスがポール・ハモンド、ギタリストはジョン・デュ・キャンに交代、新ラインナップによる再スタートとなった。 アートっぽいけれん味やけたたましさが目立った一作目と比べると、英国ハードロックらしい渋みとメタリックな重みのある内容になっている。 ギター、ヴォーカル、ドラムス、すべてがハードロックとしてグレード・アップ。 ブルーズ・テイストはさほどでなく、DEEP PURPLE にも通じるクラシカルで鋭い味わいである。 ギタリストのデュ・キャンはヴォーカルのみならず作曲家としても活躍する。 不気味なジャケットはウィリアム・ブレイクの作品「ネブカドネザル」である。

  「Death Walks Behind You」(7:22) 繰り返しの多いヴァースが呪文のような効果を上げ、ダークで怪しいムードを盛り上げる。 シンプルなギター・リフがたまった澱のようなエネルギーを一気に解放してカタルシス。 クレインはミステリアスなピアノをプレイ。 謎めいた序盤が一気にリスナーをこの妖しい世界に惹き込む。 暗く粘りつくようでいて意外にキャッチーなハードロック。 クレインとキャンの共作。

  「Vug」(5:00) ハモンド・オルガンをフィーチュアしたハードなインストゥルメンタル。 シャフル・ビートでオルガンとギターが絶妙の絡みを見せ、3 連ユニゾンで暴れまくる。 キース・エマーソンを髣髴させるワイルドで扇情的、なおかつグルーヴィにスイングするプレイがみごと。 オルガン・ファンにはこのジャジーな味わいがたまらない。 8 ビートへの鋭いリズム・チェンジもカッコいい。 クレインの作品。

  「Tomorrow Night」(4:00) 後ノリがいい感じの小気味いいロックンロール。 キーボードは、バッキングでピアノ、サビと間奏ではジャジーなオルガンがオブリガートする。 雰囲気は軽めの FREE でしょうか。 フェード・アウト後もテープを回し続けたせいで、最後は訳がわからなくなる。 クレインの作品。

  「7 Streets」(6:44) ギターとオルガンが激しく交差するエネルギッシュかつ腰のすわったハードロック。 ドラムスの連続打撃が生む爆発的なけたたましさは一作目と共通するが、ここではさらにどっしりとした安定感がある。 ユニゾンによるメイン・リフはいかにも 70 年代ハードロックらしい。 間奏はしなやかなギターとかみつくようなオルガンのアドリヴ風のかけ合いから壮絶なバトルへ。 イントロとアウトロを厳かなチャーチ・オルガンが悠然と彩る。 キャンの作品。


  「Sleeping For Years」(5:27) 金属的な爆音ギターが縦横無尽に暴れる男臭いイメージのへヴィ・ロック。 アドリヴで狂乱するギター、ベースもサポートしヴォーカルをなぞりつつバッキングで分厚く鳴り響くオルガンと役割分担も完璧。 いまさらながらに、ギターとは質の違うワイルドさを演奏に与えるオルガンの在り方に舌を巻く。 ギターはほとんどアドリヴ大会。 間断なく攻め立てながらも、サビでほのかにメランコリックな表情を見せる辺りがいかにも英国モノらしい。 キャンの作品。

  「I Can't Take No more」(3:34) グラムっぽさもある、キャッチーでトリッキーなハードロック。 ドラムスは安定感抜群でリズムを刻み、軽妙なグルーヴを打ち出す。 オルガンのオブリガートだけ重厚でカッコいい。 ギターも二つ現れ、5 度のハーモニーやユニゾンを見せる。 こういう感じの曲をひっさげたグループが次々と現れては消えていったように思います。 ピアノの低音が効果的にアクセントになっている。 キャンの作品。

  「Nobody Else」(5:01) ジャジーなピアノが一際光るメロディアスなバラード。 ギター、オルガンともに抑制された表情を見せる。 やや弱めのヴォーカルもこの曲にはピッタリ。 動き出してからはブルージーなツイン・ギターがさりげなくもいい表情で歌う。 ドラムスもジャズ調の軽やかなプレイである。 アーシーなスワンプ・テイストなどほのかにアメリカン・ロックのイメージも。 クレインの作品。 「掃きだめの鶴」

  「Gershatzer」(7:59) キーボードとドラムスをフィーチュアしたインストゥルメンタル。 ハモンド・オルガンのワイルドかつキャッチーなリフとエレガントなピアノ・ソロの落差に耳キーンとなる。 メイン・リフを支える千手観音状態のドラムスも痛快だ。 ドローバー制御によるフルートのような音からステレオを駆け巡る煮えたぎるような音まで、ハモンド・オルガンが縦横無尽に用いられる。 中間部は完全に "サイケデリック・ウォリアー" クレインのインスピレーションの独壇場。 終盤にジャジーなドラム・ソロあり。 ギターはバッキング以外は最後の大見得のみ。 クレインの作品。


  ハードロックへと的を絞った好アルバム。 ギターとリズムのグレード・アップにとどまらない多彩な曲調の深まりは前作を大きく凌ぐ。 リフとソロをカバーするためにオーヴァーダブが施されているが、音数を補うというよりも曲の要請としてごく自然に感じられるところがみごとである。 ギター・トリオの限界を感じたキャンにとっても幸運な出会いだったのでしょう。 大仰な表現や含みをもたせることをしないためにやや地味であり B 級扱いされがちですが、凶暴さと渋みが入り交じった個性的なハードロックです。
  雑談。 本来格式やお作法を大音量でぶっ飛ばしたハードロックは、その進化の過程で、アヴァンギャルドな方向へ進むよりもエッセンスの抽出とスタイル継承を繰り返し、セールス・テンプレート的なものをつくりあげた。 これはポピュラー音楽としての宿命とはいえ、常なる革新を目指してオルタナティヴであることに誇りをもつロックとしては、あまりに皮肉な進化の方向ではないだろうか。 そろそろポスト・ハードロックが現れてもおもしろいかも。

(CAS 1026 / RR 4069-WZ)

 In Hearing Of Atomic Rooster

 
Vince Crane organ, piano
John Du Cann guitar, vocals
Paul Hammond drums
Pete French vocals

  72 年発表の第三作「In Hearing Of Atomic Rooster」。 元 LEAFHOUND のピート・フレンチをリード・ヴォーカルに迎え、ブルージーなうねりと重み、さらには切味のよさも加わった。 ハードロックとして、きっちりグレード・アップしたといえるだろう。 全体にシンプルでラフな音作りだが、ラウドなサウンドにさまざまなアクセントをつけるという基本スタイルが貫かれている。 ソロよりも一体感あるリフやヴォーカルを支えるプレイが主であることなどから考えて、彼らの身上は、キーボードを前面に出し過ぎず、あくまでバンド全体の音/調子によるヘヴィさとヴォーカルを活かした小気味いいハードロック、ということのようだ。 ブラスを用いる、ジャズ・フィーリングを活かすなど小技も効いており、アートロックを引き継ぐプログレッシヴなスタンスが感じられる。 ロジャー・ディーンによる小話風のジャケットが秀逸。 同じようなアプローチのピート・ロビンソンの QUATERMASS と比べると、ストリートっぽさ(ワルっぽさというか)が強い。

  「Breakthrough」(6:16)ピアノがリードするハードロック。 ポップスとしては常套手段となったピアノを、ハードロックにてフィーチュアするというのは、かなり新奇な試みだろう。 リフ中心のシンプルな演奏であり音の薄さが妙にハマっているのだが、丹念なアレンジが雄大なドラマをもたらしている。 ピアノに沿ってオルガンがうっすらと音を重ねており、間奏部での叙情的な広がりが非常にいい。 フレンチのヴォーカルは、さすがに今までのどのヴォーカリストよりも存在感あり。

  「Break The Ice」(4:59)ハモンド・オルガン、ヴォーカルをフィーチュアし、黒っぽくうねるリズミカルなハードロック。 ワイルドなギターのストロークが苛つくようにまとわりつく。 ソロよりも小気味のいいアンサンブルでもたせる演奏である。 オルガンとギターによる無常感あふれるイントロが印象的。 エンディングはギター・アドリヴ。

  「Decision/Indecision」(3:48)ピアノを用いたバラード。

  「A Spoonful Of Bromide Helps The Pulse Rate Go Down」(4:37)ワイルドなリズムで走るクラシカルなハードロック・インストゥルメンタル。 もたつくほどに重いモーメントのある演奏だ。

  「Black Snake」(5:58)耽美な妖しさをもつバラード。 ギター、オルガン、ドラムスすべてジャジーなフィーリングを活かしている。

  「Head In The Sky」(5:38)オルガン、ギターが唸りを上げるハードロック王道の傑作。 パワフルにしてスピード感もある痛快な演奏だ。

  「The Rock」(4:31)ブラスも加わった R&B テイストの強いハードロック。 ハモンド・オルガンがカッコいいプレイを連発する。 インストゥルメンタル。

  「The Price」(5:15)ソウルフルなヴォーカルとピアノ、オルガンによるヘヴィ・チューン。 ギターはほとんど現れず。 ハモンド・オルガンがワイルドなソロを見せる。

  「Devil's Answer」(3:28)ボーナス・トラック。全英第一位を獲ったシングル。

(Pegasus PEG 1 / RR 4563-WP)


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