イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「ART BEARS」。 78 年 HENRY COW の解体によって発足する。82 年解散後も散発的に活動した。作品は三枚。
| Dagmar Klauze | singing |
| Fred Frith | guitars, violin, viola, piano, harmonium, xylophone, bass on 6, 7 |
| Chris Cutler | drums, electrified drums, percussion, noise |
| guest: | |
|---|---|
| Linsay Cooper | bassoon, oboe, soprano sax, recorder |
| Tim Hodgkinson | organ, clarinet, piano on 9 |
| Georgie Born | bass, cello, 2nd voice on 4 |
| Peter Blegvad | bass on 16 |
| Marc Hollander | piano on 16 |
78 年発表のアルバム「Hopes And Fears」。
当初 HENRY COW の作品として製作されるが、音楽性の変化に伴うメンバー間の確執を経て新グループ名義で発表された。
その内容は、暗いダグマー・クラウゼのヴォーカルを中心にしたヴァラェティに富む「歌もの」を基調とするが、器楽の発想や演奏は HENRY COW の延長上にある。
そのままなところもある。
クラウゼの歌唱表現は、冒頭より憑き物が憑いたようにいかめしく不気味、ヒステリーの発作の寸前のような怖さがあるのだが、「In Praise ...」や後の作品と比べると、若干ではあるが、表情に自然なコケットリーが交差することがある。
それが救いだ。
ケイト・ブッシュほどには「不思議ちゃん」特有のギラギラした顕示欲がなく、ジョニ・ミッチェルほどには「度女々」していないため、いっしょにいてもこの両名ほどには緊張しなそうである。(あくまでこの二人と比較してということである)
また、英国人ではないためにか、発音に微妙なぎこちなさと生硬さがあり、それが演劇風の表情によく合っている。
この独特のヴォイスが、カトラーやフリスの目指す主義主張のある音楽へのテコ入れにうってつけだったのだろう。
峻厳な器楽表現やノイズなどによる実験性も見られるが、器楽全体としては、音楽の徹底的な解体/再構築によって「前衛性」を掲げることよりも、ヴォーカルと伴にあって楽曲のメッセージを支え、伝える役割を果たすことを重視しているように感じる。
ロックらしいカッコよさがストレートに現れているところも多い。
「In Two Minds」のように他の作品では聴くことのできない「普通のロック」っぽさあふれる作品もある。
もちろん、だからといって器楽表現に手抜きがあるわけではなく、フリスは緊迫感あふれるギターとしみ入るようなピアノを奏でているし、打楽器表現もサウンド面も含めてかなり多彩である。
一部には非常に厳格なアンサンブルもあるし、現代音楽調のノイズも的確に処理されて効果を上げている。
この「歌もの」への傾斜は、ガリガリ亡者のように主義理念で突き進むだけではロックとしてカッコよくならない(つまり、ロックを主張の媒体とするにあたって効果的でない)ということに気がついたためなのかもしれない。
民族楽、フォーク的な表現が多々あることも興味深い。(イタリアの STORMY SIX を思い出す場面もある)
「歌もの COW」ととらえると、どことなく中途半端に思えるが、この過渡状態を見せてくれたおかげで次作以降がまた楽しめる。
HENRY COW がダメだったプログレ・ファンにも再入門としてお薦め。
現行 CD は 3 曲のボーナス・トラック付き。
この頃から、アメリカやヨーロッパに COW の種子による芽が育ち始めてきた。
「On Suicide」(1:27)どシリアスな歌ものであり、このグループの作風を強烈に印象づける。
「The Dividing Line」(4:11)この作品のような唯我独尊風なドラムスはこのアルバムの特徴である。
「Joan」(3:06)凶暴なギター、キーボードと唸る管楽器。HENRY COW そのものな作品。
「Maze」(5:06)セカンド・ヴォーカルはジョジー・ボーン。弦楽器を多用した作品である。
「In Two Minds」(8:46)3 分付近からのノリのいい演奏にカタルシスを得る傑作。ロックです。歌詞は暗いですが。
「Terrain」(3:49)アヴァンギャルドとポップの出会いを導くは、あざやかなギター・プレイ。バスーンもどことなくユーモラスだ。インストゥルメンタル。「Nirvana for Mice」を思い出しました。
「The Tube」(3:05)ノイズ渦巻くインダストリアル調にコケットなヴォイスと三味線ギターがからむ。
「The Dance」(5:10)弦楽器やオルガンなどのサスティンによるレガートなワルツ。中盤以降、行進曲になる。
「Pirate Song」(1:28)ホジキンソンのピアノ伴奏による可憐な歌唱。
「Labyrinth」(2:15)歌ものと併走するパーカッションのノイズ。頭痛。
「Riddle」(2:49)現代音楽、インダストリアル・ミュージック風の険しい作品。
リコーダーだけが場違いに愛らしい。
「Moeris Dancing」(5:09)壊れた歌姫による壊れたロックンロールや唐突なフォーク・ミュージック化を経て、鮮やかに、安定感あふれるアンサンブルへと発展する。唐突に降り出すアフリカンなパーカッションと唸る羽音のような弦楽。傑作。
「Piers」(2:10)厳かな、毅然とした終曲。
以下ボーナス・トラック。
「All Hail!」(4:49)
「Collapse」(4:03)
「Coda To Man And Boy」(7:13)
(ReR ABCD2)
| Fred Frith | guitars, violin, keyboards, xylophone |
| Chris Cutler | drums etc, noise |
| Dagmar Klauze | singing |
79 年発表のアルバム「Winter Songs」。
内容は、カトラー、フリス、クラウゼの 3 人体制による厳かで険しく、いかめしい歌ものアヴァンギャルド・ロック。
クラウゼのヒステリックにしてややシャーマニック(女性はすべて魔女か? 伝ミシュレ)な歌唱を中世風な響きのある辛口の器楽が取り巻く。
ヴォーカル・ハーモニー、ギターとキーボード、弦楽奏などオーヴァーダビングを積極的に行いその効果もみごと。
しかし、全体としては、シンプルでソリッドなイメージが強い。
構築された前衛もあるのだが、よりインパクトがあるのは、瞬発力を活かした即興による、満身創痍のまま突っ走るような演奏と、教え導きアジり呪うバラード風の歌唱である。
教会音楽のような響きとガレージ、パンクっぽい噛み付くような勢いのよさが一つになって、重みのある主張になっている。
HENRY COW の姿をそのまま残していた前作と比べると、格段とオリジナルな世界となった。
作詞は、ジャケット内に写真が掲載されているレリーフ(古い寺院の柱の基礎部分にあるものらしい)に描かれた題材にしているようだ。
ここの CD は 次作との 2 in 1。
(ReR ABCD1)