イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「ARGENT」。
元 ZOMBIES のオルガン・プレイヤー、ロッド・アージェントを中心に 69 年結成。
76 年解散。
多彩なキーボード・ワークとメロディアスな楽曲がバランスしたポップなプログレッシヴ・ロック。
| Bob Henrit | drums |
| Rod Argent | keyboards |
| Jim Rodford | bass |
| Russ Ballard | vocals, guitar |
74 年発表のアルバム「Nexus」。
キーボード中心のプログレ・サウンドとポップなヴォーカルがブレンドされた英国ロックの逸品。
冒頭 3 曲のクラシカル(ベルリオーズだそうです)なインストゥルメンタル連作は、挑発的なロックンロールからメロディアスな英国情趣あふれるバラード調、クラシカルなアンサンブルなど、EL&P をセンスよく小ぶりにまとめたような完全なるキーボード・シンフォニック・ロック。
演奏は、メロトロン、ハモンド・オルガン、チャーチ・オルガン、ミニ・ムーグ、ピアノを主役に、クラシックの翻案も交えながら、カラフルに軽快に展開してゆく。
シャフル・ビートの痛快な演奏などアージェントのプレイがエマーソンと類似するのは、R&B からビート、モッズ、サイケなど過ごした時代が重なるためだろう。
他にも、ジャズロック調のインストゥルメンタルなど、アージェントの作品は、キーボードを大きくフィーチュアしており、ヴォーカル・ナンバーでもメロトロンやエレピが積極的に使われている。
一方、ラス・バラードの作品は、メロディ・センスのいいブリティッシュ・ロック。
ナイーヴで叙情的な表現からスケールのある幻想イメージまで、珠玉といっていい作品が並ぶ。
ギターでも、メロトロンに負けないピリっとワサビの効いたプレイを見せているの。
もちろん、メロトロンの幽玄な調べは随所に配されている。
ただし、さすがに二人の作風の乖離がこれだけハッキリしてしまうとアルバム製作も困難になったようで、バラード在籍最後の作品となった。
英国ロック屈指の名曲「Man For All Reasons」収録。
「The Coming Of Kohoutek」()
「Once Around The Sun」()
「Infinite Wanderer」()
「Love」()
「Music From The Spheres」()
「Thunder And Lighting」()
「Keeper Of The Flame」()
「Man For All Seasons」()
「Gonna Meet My Maker」()
(Epic EPC 65924 / Epic 489442 2)
| Robert Henrit | drums, percussion |
| Rod Argent | Hammond organ, piano, Fender Rhodes, Hohner electric piano, Moog, Mellotron, vocals |
| Jim Rodford | bass, vocals |
| John Grimaldi | vocals, guitar |
75 年発表のアルバム「Circus」。
ラス・バラード脱退後、さらにサウンドは、ジャジーなキーボード・オリエンティッド・ロックへと突き進む。
インストゥルメンタルは拡充され、キーボードをフィーチュアしただけに留まらない、BRAND X のようなハイテンションで硬質なジャズロック・アンサンブルが現れる。
メロトロンの轟音を鋭いリズムが切り裂く 1 曲目「Circus」のいきなりのハイ・テンションに度肝を抜かれ、2 曲目「Highwire」のポップ・センスとギターとキーボードのスリリングなやり取りの落差に失神寸前になる。
この密度と速度、そこいらのフュージョン・グループは顔色が悪くなったであろう。
エレクトリック・ピアノ、メロトロン、ムーグなど、キーボードのサウンド、プレイは驚異的なまでに技巧的、多彩かつ的確であり、アージェント氏のサウンド・メイカー、プレイヤーとしての力量は、時代を問わないことがよく分かる。
ジョン・グリマルディのギターの切れもかなりのものである。
そしてもちろん、ヴォーカル・パートは、60 年代から鍛えた R&B タッチ、ライトなファンクネス、ビタースウィートネス、すべてを兼ね備え、キャッチーで洒落っ気もたっぷりである。
このセンスのいいヴォーカル・ハーモニーが、ジャズロック的でハードなインストと非常にうまくブレンドされている。
シンセサイザー・サウンドを交えたそのタッチは、AOR や後年のシティ・ポップスの先駆けといっていいほど洗練されている。
1 曲目、2 曲目はその典型であり、ヴォーカル・パートがあるおかげで曲にぐっと奥行きが付いている。
テクニカルなポップ・センスという点で 10CC に匹敵し、QUEEN 辺りとではキャリアの深みが違う。
全体に、70 年代後半に向けたクールでハイブラウな空気があるのだが、ブルーズ、R&B を追い求めた正統的英国ロッカーが次に目指したスタイルに、キーボーディストであったが故にプログレが交じってしまった、といった感ある作品である。
これだけキレと重量感のあるテクニカルな演奏をするポップ・グループはないでしょう。
CD はデビュー・アルバムとのカップリング。(このデビュー作がまたすごい。69 年でこれだけ完成されたサウンドによるポップスというのは驚異的)
「Circus」(3:51)とにもかくにも「ものすごくカッコいい」ジャズロック。
メロトロンとムーグの響きをエレピが貫く衝撃のオープニングから、東欧のグループに通じる多彩なセンスと哀愁があふれる。
ものすごいスケールを感じさせるが、あまりに惜しげなく終わってしまうのです。
「Highwire」(9:06)ファンキーな R&B 風味とハードなジャズロック、多彩なキーボード・サウンドが絶妙のコンビネーションを見せる傑作。
エレピ、メロトロン・ストリングスがいい。
ギター・ソロの入りは、中期 RETURN TO FOREVER のよう。
タイトルは「綱渡り」でしょう。
「Clown」(5:55)キーボードが利いたメロー・バラードの絶品。
後半のシンセサイザー・ソロの表現力に唖然。しかしあくまでさりげない。だからカッコいい。
CAMEL のピート・バーデンスもそうだが、60 年代に音を鍛えている人達は格が違う。
「Trapeze」(8:53)エレピ、ギター、ベースによるファンクっぽいアンサンブルにメロトロンが鳴り響く意外性。キレたリズムで跳ねるうちに、いつしかハードロック化。しかし、ヴォーカル・ハーモニーはメローなのだ。
もうほとんど、マイルドな GENTLE GIANT である。
タイトルは「空中ブランコ」でしょう。
「Shine On Sunshine」(3:51)再び、スウィートなバラード。こういう曲でのメロトロン・フルートは新鮮。マッカートニー入ってます。
「The Ring」(1:18)
「The Jester」(3:40)ヴォーカルは甘いのだが、曲調としてはジョン・レノンが得意としそうな作品である。
(Epic EPC 80691 / WOU 6525)
| Bob Henrit | drums |
| Rod Argent | keyboards, vocals |
| Jim Rodford | bass, vocals |
| John Verity | vocals, guitars |
| John Grimaldi | guitar, lap steel guitar |
| Phil Collins | drums, percussion |
75 年発表のアルバム「Counterpoints」。
前作とほぼ同路線ながら、いわゆるジャズロックのスタイルは超越して、自由なイメージの演奏をより奔放に繰り広げている。
キャッチーな面はよりキャッチーに、ぶっ飛んだ面はさらにぶっ飛んでという感じだ。
ファンキーでエキゾチックな 2 曲目などは新たな展開といえるだろう。
時として、デリケートなヴォーカル・ハーモニー入りの RETURN TO FOREVER のようにすら感じられる。
自由気ままなだけに、テクニカルに集中したときのインパクトはすごい。
リズムのキレ、爆発的なキーボード/ギター・プレイには目を見張り、息を呑む。
多彩なキーボード・サウンドと、ギターとキーボードのコンビネーションの冴えは変わらず。
メローなバラードの旨味もそのままだ。
しかし、残念ながら、前作ほどのブレンドの絶妙さはなく、ソロ、インタープレイの広がり、展開が楽曲の締まりをなくしているようにも思う。
最終作となる。
共同プロデュースにトニー・ヴィスコンティの名前あり。
(RCA RS 1020)