アルゼンチンのプログレッシヴ・ロック・グループ「ANACRUSA」。 フォルクローレとクラシック、ラウンジ・ジャズをクロスオーヴァーさせた作風を貫く現役グループ。 主要メンバーのフランス亡命中に録音された二作品(日本盤あり)が名高い。
| Susana Lago | vocals, piano, organ |
| Julio Pardo | flute, clarinet |
| Ruben Izaurralde | flute, vocals |
| Alex Oliva | guitar, bass guitar |
| Jose Luis Castineira De Dios | bass, vibraphone, guitar |
| Elias Heger | drums |
93 年発表の再発 CD 「Anacrusa」
73 年発表の第一作「Anacrusa」、74 年発表の第二作「Anacrusa II」のカップリング CD。
内容は、ともに、フルート、ギター、ピアノ、女声ヴォーカル、弦楽奏らをフィーチュアしたアコースティックなフォークソングである。
地味なサウンドではあるのだが、いわゆる「アンデス」な音が一つの素材として新鮮に響くほど、多彩な雰囲気をもっている。
整合感のあるクラシカルなアンサンブル、ヴァイヴやピアノなどのラウンジ・ジャズ風のソフトな音の処理、安定したリズムなど、フォルクローレと現代ポピュラー音楽のプログレッシヴな融合体といえるだろう。
いわゆるフォークロア風の音を使っているが、立ち昇ってくるのは、土臭い素朴さの対極にある都会的なアンニュイである。
そして、ヴァイヴやオルガン、フルートのアンサンブルが奏でるナイト・ミュージックが幻想世界の BGM へと変貌し、ゆっくりと心に沈みこんでくる瞬間がある。
一作目の終曲のフェードアウトには、まさにそういう力が感じられる。
別のいい方をするならば、素朴な音を紡ぎ合わせて、きわめて現代的なエモーションを映し込むことに成功しているということだ。かように洗練されたセンスのある演奏の中、唯一女声ヴォーカルの表現が、ストレートに素朴な手触りをもっている。
深い夜霧をまとうようなクラリネット、朝靄の都会に物憂くさえずるフルートなど、切ない音に満ちています。
第二作では、インストゥルメンタルが拡充し、アンサンブルはクラシカルな方向へとさらに充実する。
瑞々しくもロマンティックな叙情性が加わるとともに、キレのあるリズム・セクションが支えるテクニカルな見せ場までが用意される。
フランス移住前の作品なのだが、なぜかシャンソン風のニュアンスも加わっている。
いやそれとも、タンゴ風なのだろうか?
(REDONDEL CD 45003)
| Jose Luis Castineira De Dios | musical director |
| Susana Lago | vocals, keyboards |
| Julio Pardo | flute |
| Bruno Pizzamiglio | oboe |
| Daniel Sbarra (Abuelo Et Nada) | guitars |
| Juan Mosalini | bandneon |
| Phillipe Pages | synthesizer |
| Jorge Trasante | drums, percussion |
78 年発表の第四作「El Sacrificio」。
フランスに拠点を移して製作された。
リーダーのカスティネイラ・ディオスは、ディレクター兼アレンジャーとなる。
アコースティック中心のサウンド、旋律や和声は前作と同じくフォルクローレ的であるものの、演奏の緻密さ、緊迫感は一気に強まってスケールもアップ、ジャズロック的な迫力が前面に出る。
エレキギターが存在感を大幅にアップし、サックスのブローとともに快調なラテン・ロックで突っ走るところもある。
もちろん、エキゾティックなヴォイス、ソロ・ピアノ、フルート、オーボエ、バンドネオンらによる哀愁の調べ(ややシャンソン・タッチもあり)は変わらないし、ジャズやクラシックへの「振れ」(アレンジ)も巧みなのだが、演奏全体のダイナミクスはぐっと大きくなっている。
端的には、緩急、静動、疎密、陰陽すべてにコントラストが付き、スピード感のあるスリリングな演奏になってきた、といえばいいだろう。
また、弦楽奏とバンドががっちりオーヴァーラップした場面では、NEW TROLLS や OSANNA の著名なバカロフ・アレンジ作品と同等のエレガントな世界が広がる。
本作の音楽性は最終曲の大作、その名も「Tema De Anacrusa」で実を結ぶ。
それは、モダン・ジャズとクラシカルなアンサンブルを融合してみせたチャレンジングなビッグ・バンド・ジャズロックである。
後半のジャジーな演奏が新鮮だ。エンディングもすごい盛り上がりである。
3 曲目「Sol De Fuego」は、ざわめくピアノがドライヴするジャズロック。2 拍子と 3 拍子のポリリズミックなテーマがカッコいい。切ないオーボエもいい。
4 曲目「Quien Bien Quiere」は、エキゾティック(東洋風?)な管弦楽、シャーマニックなヴォイスによる映画音楽調と、ギター、サックスらによるジャズロック調がブレンドした痛快な小品。
5 曲目「Homenaje A Waldo」は、ピアノと管弦楽による悲恋物語風のロマンティックな作品。フルートとバンドネオン、サックスをフィーチュア。
ボーナス・トラック 1 曲。
(RAYUELA 072)
| Jose Luis Castineira De Dios | musical director |
| Susana Lago | vocals, keyboards |
| Narciso Espinosa | guitars |
| Tony Bonfits | bass |
| Andre Arpino | drums |
| Julio Pardo | flute |
| Jacky Tricore | guitars |
| Gustavo Moretto (Alas) | trumpet |
82 年発表の第五作「Fuerza」。
内容は、哀愁のメロディを管弦楽とバンドで綴るシンフォニックなものであり、作風は前作の延長上にある。
すべてに染み渡った「ペーソス」が日本人の胸には響いてやまないはずだ。
バンド演奏は技巧的にもサウンド的にもさらに充実、緩やかに波打つ管弦楽との調和、対比もみごとである。
冒頭、逞しいベースに導かれるバンドが管弦楽につながってゆく展開のなめらかさに息を呑むのもつかの間、湧き立つピアノの調べにフルートが絡み、鋭いリズムと緩やかな管絃の波に巻かれながら、音は飛翔してゆく。
オーケストラは、管楽器やハープなど今まで以上にさまざまな音を使っている。
エキゾティックな女声にリードされる演奏は、メロディアスかつ重厚、徹底して劇的であり、物寂しいささやきが一気に巨大な音の波に巻き込まれてゆくようなスケールがある。
映画のサウンドトラックのように思えるところが多いのは、それだけドラマティックということだろう。
弦楽には、エンリケ・バカロフ流の流麗華美調に近いニュアンスもある。
しかし、基調にあるのは、アコースティック・ギター、ピアノ、フルートによる弾き語り風のエレジーであり、その哀愁の旋律を、アレンジの魔法が、あたかもふいごで熱い空気を送り込むように、大きく深く膨らませている。
音は、侘しく密やかなせせらぎ、力強い奔流、悠然たる大河の間を、何ら矛盾することなくごく自然に変化しながら流れつづける。
一方、バンド演奏についても、ギター、サックス、ベース、ドラムスそれぞれが、随所で、短いながらも鋭いジャズ/ハードロック調のプレイで切り込んでいる。
ラテン・ジャズロック調の演奏(カッコよすぎる 6 曲目)、心温まるクラシカルな小アンサンブルも健在。
ALAS の グスタフ・モレットがトランペット奏者として参加している。
本作品で一度解散する。復活は 1990 年代に入ってから。
(RAYUELA 069)